私にとって、今回の知事選の焦点は「脱原発」「早急な放射能汚染対策の実現」です。
そこで、多くの自治体が無かった事のように目をつぶる、放射能汚染対策について質問をさせていただきました。

当初、選挙公報で放射能汚染対策を訴えていた原冨氏に、具体的にどういう対策を取るのか
興味があり、質問させていただきましたが、かなり正面から向き合った内容だったので
後になって他の候補者にも聞いて見なくてはと思い、原冨氏の回答が先行しています事ご了承下さい。


まず質問書を掲示します。
その後、各候補者からの回答を載せています。

質問書

埼玉にも放射性物質が降り注いでしまった今、埼玉産の野菜が安全だといえるんでしょうか。
秩父の牧草や狭山茶からセシウムが出ていますが、原発が終息していない今、放射性物質の量が増えることがあっても減ることはないのではないかと思います。

このことをふまえて、埼玉県内の校庭、園庭、公園、農地などでβ線α線を含む土壌線量を定期的に測り発表して欲しいです。

まず前提は、「年間被ばく量、外部被ばく・内部被曝合わせて1mSvを目指す」でよいでしょうか。
国は今の暫定基準年間20mSvは福島県に於いての8月までの基準で、その他の県は原則年間1mSvだと言っているので、その基準にのっとって規制値を設け農地の汚染が分かったら、そこは除染をすれば規制値まで下がるのか。もしくは除染で済まないなら耕作禁止にするのかといった基準を設けていただきたいです。

国の食品の暫定基準値は、その基準値いっぱいまで1年間食べ続けると、年間17mSvの内部被曝をすると言います(文科省より)。食べ物による内部被曝だけで17倍です。なので国の基準に従わず県独自の基準を作るべきと思いますが、どのような対策を執られますか。

更に、もうすでに汚されてしまった農地に、追い打ちをかけて汚染肥料が出回っています。これから高濃度の汚泥肥料も出回りそうです。県ではこれらの肥料を県内で使わないようにしなければ、安全な野菜の栽培が出来ないと思います。
これ以上の農地汚染を食い止めたいと思いますがどうお考えですか。

今知るかぎりでは、三郷市がホットスポットとして高い線量の数値が出ています。県の調査で1時間当たり0.33μSvという値が出ましたが年間にすると外部被ばくだけでおよそ2.9mSvに達します。内部被曝は空気、水、食糧による内部被曝はこの5倍とも10倍とも言われています。
三郷市が一番高いというだけで、これ以下のところも十分に高いのです。これについて、どう対処していきますか。

ベラルーシなどで、年間0.15μSv(家庭用ガイガーカウンターで狭山市はこのくらい)まで下がったところでも、健康被害が後を絶ちません。
それは地産地消による内部被曝があるからです。空間線量が下がっても土壌の汚染はなくならないのです。早く除染をしないと放射能物質は1年で2㎝沈むとも言われています。
ただ、事故が終息していないため除染後も降り注ぐ可能性があります。このことをどう考えられますか。

国は情報を十分に出していません。放射性物質の核種がヨウ素、セシウムしか分かりません。猛毒のストロンチウムやプルトニウムの調査すらされていません。
17日のECRR議長のバズビー教授の発表で、都内のエアフィルターで集塵された放射性物質は734mBq/㎥、その中にプルトニウムが含まれていました。チェルノブイリ事故時にイギリスで確認されたフォールアウトは8mBq/㎥。大気圏内核実験の200倍、なので埼玉も安全だとは言えません。
県外移住を考える人に補助が出るようなお考えがありますか。

今、給食の問題でお母さんたちが敏感になっています。東北・関東産の食材を使うことをどう思っているでしょうか。ちなみに私は九州から野菜を取り寄せています。関東東北のものは避けています。
松本市長さんは給食に関しては内部被曝ゼロを目指し西日本の野菜を使うとおっしゃっています。埼玉県でも子どもの給食は最優先に考えて頂きたいと思いますが、どのような対策を考えられていますか。

以上、質問させていただきます。
ぜひともご回答をよろしくお願いいたします。

***************************************

回答:原冨さとる氏

放射能汚染防止に関する質問に対する回答
県知事候補・原冨さとる

●埼玉県内の校庭、園庭、公園、農地などの放射線を定期的にはかり、その結果を速やかに公表するとともに、高い濃度が測定された地域については必要な除染対策を進めます。

●世界と日本の一般人の人為的放射能による被曝の年線量限度は1mSv/yと決まっており、これは10万人に5人程度ガンの死亡者が増える量と言われています。ここで云う被曝の年線量限度は、一年間に受けた外部被曝と内部被曝の合計量です。

●秩父の牧草や狭山茶からセシウムが検出されたことからも判りますように、埼玉県産の野菜も汚染していると考えられます。
原発から放射性物質の放出が終息していない以上、気象状況によって埼玉県内への放射性物質の集積が進むと考えることは妥当だと考えます。
しかし同時に、降雨、特に台風などの大雨で洗われる事で汚染が減少することも考えられます。もちろん、そのことで下水処理場の汚泥が汚染したり、河川を通じて海が汚染されるという事態も考えられます。(その根拠は、広島への原爆投下後の台風により広島市内の空間線量が低下したと言われています)
大気放射線量の高い地域の農地については土壌の汚染状態や農作物への影響を科学的に分析し、対処します。

●埼玉県内で生産される全ての食品について放射能の合理的な抽出測定を実施し、県民自身が内部被曝量を計算できるようにすることが大事だと考えます。食品の暫定基準値については、科学的な知見に基づいて本来、国が定めるべきものですが、それが不備であったり不十分であれば、埼玉県が独自に暫定基準を設けることも検討します。

●農地や畜産に汚染飼料や汚染肥料が広がらないように、個々の農家に対する指導を徹底するとともに、汚染された飼料や肥料が見つかった場合は安全に処分して、農地の汚染を防ぎます。

●文科省が示した年20mSv/yは校舎の利用『目安』であり、これを校庭に当てはめると毎時3.8μSv/hとなります。年20mSv/yは白血病の労災認定基準の4倍に相当し、毎時3.8μSv/hは労働基準法で18歳未満の作業を禁止している「放射線管理区域基準」(0.6μSv/h)の6倍に相当します。
 全国的な批判の高まりを受けて文科省は「当面、年間1mSv/yを目指し、校庭の空間線量率が毎時1μSv/h以上の学校の除染の財政支援を行う」と通達しましたが、まだ問題点はありますが、国民が声をあげたことで政府の姿勢を変えさせることができたと考えます。

●政府は、年20mSv/yを校舎の利用『目安』と言いながら、実は、校舎を利用する一般人の被曝の年線量限度量を緩めた基準であったことは許せません。

●土壌に関しては、汚染基準も除染方法も未だ決まっていないので、埼玉県としても早急に暫定的に決め、対策を進めるべきと考えます。

●下水処理場の放射能汚泥は、職員の被曝を避けつつ、農地などへの2次汚染にならないよう一時保管し、最終処分場などで長期に安全に保管できるようにしたいと考えます。

●埼玉県内の全ての子どもを放射線被曝から守るために、全ての保育園、幼稚園、小・中・高校に放射能の簡易測定器を貸与し、抜本的に測定点を増やし、県が定める暫定基準以上の汚染土壌の廃土と園舎や校舎の除染を実施します。
この取り組みを通じて埼玉県内のホットスポットを見つけ、対策をとります。

●福島原発事故が終息せず、今後、爆発などで高濃度汚染が追加されるとしても、時々刻々被曝する県民の命と健康を守るため、ホットスポット(高線量地)から除線対策を開始します。

●埼玉県は国に対して福島原発事故関係のあらゆる情報を国民に開示するよう働きかけます。また、埼玉が安全でないということになれば、それは全県民の命と健康に関わる問題ですから、国と県をあげて財政支援を含めて対策を講ずる問題だと考えます。
ただし、今回の原発事故は、安全神話をふりまき、安全対策を怠った結果であります。そうした意味で東京電力に第一義的な責任があることを免罪するわけにはいきません。
同時に原発推進をしてきた財界や自民・公明・民主の各政党にも重大は責任があることを付言しておきます。

●乳幼児や児童生徒は成長期にあり、細胞分裂が盛んです。大人より放射線感受性が高く、被曝による影響を受け易いと言われています。
従って子供たちの飲み物、食べ物は放射能汚染していないものを与えなければ、この国の未来はありません。
食物の暫定基準を超えたものが黒で、基準値未満は白(0%)というのは誤りで、80%は80%の内部被曝を受けます。給食の食材は可能な限り非汚染地域のものを選ぶようにするのが当然だと考えます。

以上


回答:現職・上田知事(回答待ち)

参考:『5年後 10年後こどもたちが健やかに育つ会 さいたま [すこやかさいたま]』で集められた知事への質問の回答があります。
http://sukoyakasaitama.blog51.fc2.com/



回答:武田信弘氏

まず、大まかに自分の考え方を述べさせていただきます。

1.原発事故は一度起こってしまえば、人間の手には負えないのです。正直に言って「除染」は不可能です。例えば一定の狭い土地の除染はできるでしょうが、一定の地域の環境全体を除染することはできません。つまり、移住・移民しか対処の方法はないのです。

2.食物についても、もし余裕があるなら、汚染地域以外のものを食べるのがいいのは当然です。ただ、今回のようにある程度の地域の広がりがある汚染が発生すると、その地域全体を避けるわけにも経済的問題やその他の問題から行きません。そのため、一定基準値以下ならあまり影響を受けない人が中心になり食べていくしかない。もちろん、子供についてはなるべく汚染の少ないものにするべきです。

3.ただし、食物の汚染については難しい問題があります。
同じ市、同じ農地で採れた野菜でも、必ずしも同じ程度に汚染されているとは限らないのです。キャベツ一つ一つが、大根一本一本がすべて同じように汚染されているわけではなく、水がたまるようなくぼみがあればそこで栽培されたものは高い汚染を受け、風通しのいい少し高くなったところでは汚染の程度は低い。

一応検査は汚染程度のひどいと思われる場所からサンプルを採取することになっている様子ですが、例えばタケノコの出荷制限が解除されたことから考えると、タケノコは地中にあるものを採取するわけですから土壌が汚染されていたことになり、3週間後に出荷制限が解除されるには土壌そのものを除去しなければ解除はありえません。

しかし、タケノコについて土壌の除去が行われたと言う報道はないのです。つまり、サンプル採取の段階で、汚染の程度が軽い地域からの採取が行われ、その結果出荷制限解除に至ったと言うことのはずです。

これと逆の例も当然あり得て、かなりの程度汚染された作物があっても、たまたまその程度が低いものだけを採取検査していて、出荷制限にならないと言うこともあり得ます。

4.人体への影響の問題もあります。免疫力や遺伝子などの回復力がありますから、一概にこれだけの放射性物質を取り込んだらこれだけ危険だとは言えません。
逆に言えば、ビタミンや乳酸菌などを取り、免疫力をつけ、過度の飲酒や喫煙を避ければ、放射線の影響を最小限にとどめることもできるわけです。


以上のことを踏まえて、各ご質問に答えさせていただきます。


1.国の食品の暫定基準値は、その基準値いっぱいまで1年間食べ続けると、年間17mSvの内部被曝をすると言います(文科省より)。食べ物による内部被曝だけで17倍です。なので国の基準に従わず県独自の基準を作るべきと思いますが、どのような対策を執られますか。

答え: 県独自の基準を作るよりも、国の基準自体をより厳しい、人体への影響を軽減するものに変える必要があるでしょう。県だけで対応するには予算の問題もあります。少なく見積もっても数十年の対処が必要なのですから、県独自の対応は難しいと思います。

2.更に、もうすでに汚されてしまった農地に、追い打ちをかけて汚染肥料が出回っています。これから高濃度の汚泥肥料も出回りそうです。県ではこれらの肥料を県内で使わないようにしなければ、安全な野菜の栽培が出来ないと思います。これ以上の農地汚染を食い止めたいと思いますがどうお考えですか。

答え: 上にも書いたように、一度汚染されてしまえば農地全体の除染は不可能です。ただ、肥料の問題は別で、汚染肥料は当然使用禁止にし、一定の場所に蓄えて、放射線量の低減を待つしかありません。行政が引き受けて、何処かに保管するしかありません。

3.今知るかぎりでは、三郷市がホットスポットとして高い線量の数値が出ています。県の調査で1時間当たり0.33μSvという値が出ましたが年間にすると外部被ばくだけでおよそ2.9mSvに達します。内部被曝は空気、水、食糧による内部被曝はこの5倍とも10倍とも言われています。三郷市が一番高いというだけで、これ以下のところも十分に高いのです。これについて、どう対処していきますか。

答え: 内部被ばくにしても、外部被ばくにしても、数十年この状況にある環境に住み続けるのですから、マスクなどの対処方法は現実的ではありません。究極的に言えば、移住しかないのです。
本来は、行政が音頭をとり、大掛かりに関東から東北一円を居住禁止にし、その他の地域へ移住するべきであったのです。ただ、幾つかの問題のためそれができていないわけです。

 自分の予想としては福島県内は今後数年の内に居住をしなくなるでしょう。福島県内でさまざまな症状が顕在化し、多くの方が福島での生活をあきらめざるを得なくなると考えています。
そういった影響をどの程度例えば埼玉県民の皆さんが受け止め、埼玉に住み続けるかどうか、それが重要な要素です。
 どちらにしても、環境そのものが汚染される時、それへの対処方法は短期的なものはあっても長期的なものはありえないはずです。

4.ベラルーシなどで、年間0.15μSv(家庭用ガイガーカウンターで狭山市はこのくらい)まで下がったところでも、健康被害が後を絶ちません。それは地産地消による内部被曝があるからです。空間線量が下がっても土壌の汚染はなくならないのです。早く除染をしないと放射能物質は1年で2㎝沈むとも言われています。ただ、事故が終息していないため除染後も降り注ぐ可能性があります。このことをどう考えられますか。

答え: 繰り返しになりますが、土壌汚染を含めて環境自体が汚染されたら、その除染は不可能です。
現在、一部地域で行われている土壌の上下の入れ替えや表面土壌の削除なども、結局は一時的な効果しかありません。
10年後、20年後にはその地域一帯の環境が汚染されることに変わりはないのです。上下の入れ替えは地下水汚染を早めるだけですし、表面土壌の削り取りも、保管した場所での環境汚染になるからです。

ただ、こうして除染した幼稚園などは安全になりますから、今すぐにでも環境の改善が必要な幼児関連施設はやる価値があります。

ただ、これも、現在の原発政策に似ていて、現在生きている人々の要求だけを見て、将来世代の被る影響を無視しています。その意味で、今最も必要なのは原発自体を廃止することです。使用済み核燃料の発生を止めることです。

5.国は情報を十分に出していません。放射性物質の核種がヨウ素、セシウムしか分かりません。猛毒のストロンチウムやプルトニウムの調査すらされていません。17日のECRR議長のバズビー教授の発表で、都内のエアフィルターで集塵された放射性物質は734mBq/㎥、その中にプルトニウムが含まれていました。チェルノブイリ事故時にイギリスで確認されたフォールアウトは8mBq/㎥。大気圏内核実験の200倍、なので埼玉も安全だとは言えません。県外移住を考える人に補助が出るようなお考えがありますか。

答え: 少なくともプルトニウムなどの危険性を県がきちんと検証する必要性はあります。ただ、県外移住をする方に補助金を出すべきかどうかはかなり難しい問題です。
正直に言って幼児と妊婦の方たちに限って移住を勧め、補助金も出すべきだと思います。それ以上は負担の合理性の関係で難しいと思います。

6.今、給食の問題でお母さんたちが敏感になっています。東北・関東産の食材を使うことをどう思っているでしょうか。ちなみに私は九州から野菜を取り寄せています。関東東北のものは避けています。松本市長さんは給食に関しては内部被曝ゼロを目指し西日本の野菜を使うとおっしゃっています。埼玉県でも子どもの給食は最優先に考えて頂きたいと思いますが、どのような対策を考えられていますか。

答え: 西日本や九州の野菜が完全に汚染されていないと言うわけではありません。九州にも原発はありますし、そこから大気中へ常に微量の放射能漏れは起こっているはずです。更に、実際に一つ一つの野菜やお肉がどの程度汚染されているかを調べるのはかなり難しい。

 この問題は例えば、空中にある汚染物質の取り込みと運動との関係と似ています。部活などで激しい運動をすれば当然呼気の量は増え、それだけ汚染物質の肺への取り込みが増えます。だからと言って、運動を一切しないわけにもいかないし、サッカーや野球などを楽しみたいと言う欲求自体も無視できません。

 結局、なるべく予算の許す限り汚染程度がなるべく低いと思われるものを学校給食に使うということでしかありません。この問題も数十年は続くのですから、軽々に予算をかけて九州産の野菜を使うとは言えないはずです。

 最後に、繰り返しますが、原発事故は起こってしまえばもう対処のしようがないのです。移住しか本来は対処の方法がない。

武田信弘

***************************************

候補者のみなさん、お忙しいところ、このような真摯なご回答をいただき 誠にありがとうございました。
 
参考:『埼玉の子どもたちを放射線被曝から守る会』による「埼玉県知事選挙立候補者への公開質問状と、その回答」に武田氏及び原冨氏の回答があります。
http://saitama311.seesaa.net/article/215736422.html#more