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2012-02-11 10:34:30 テーマ:ファイナンス戦略

IPO今昔物語と問われる「会社」の意味

ライフネット生命の東証マザーズ上場が承認された。

数少ない超優良ベンチャーのIPOであり、ユーザーオリエンテッドな「ネット生保」という時代を先取りする業態からも、「まだ日本の企業も捨てたものではない」と思わせてくれるトピックだと思う(そう言えばこの会社の事をD大学の講義で話させてもらったなあ)。

しかしライフネット生命のように、しっかりとしたリードインベスターを核として優良事業会社が株主に名を連ねる理想的なIPOは極めて異例。加えて生保業界のベテランとハーバードMBAホルダーで戦略系コンサルおよび投資銀行の経験者がタッグを組んだマネジメントチームが率いる、こんな教科書に忠実なベンチャーの上場というのは、ひょっとすると日本ではこれが最初で最後かもしれないと私は思う。

IPOとは無縁の数年間を過ごして株式公開周りの世界に戻ってみると、風景が様変わりしている事にまず驚かされる。

ベンチャーキャピタルは、東京のIT周りで成功した企業の子会社キャピタルこそ元気だが、それ以外には全く何の存在感もなくなった。証券は独立系で有力な会社が少なくなり、さらにそれらにも元気がなく、銀行の息のかかった企業が幅をきかせている。仕事が減った監査法人はIPO支援にまた力を入れ始めているが、肝心の候補企業数が細ってしまっているのでどうしようもない。その結果、優秀で魅力的な人材がこのフィールドから殆どいなくなったように思う。

IPO企業数は2010を底に増加に転じているけれども、資金調達のオプションとしての魅力は薄れ、IPOのための手間とコストだけが増えた。若き起業家達は多様化し、優秀な人々が「IPOを目指すようなベンチャー」ではなく、「社会的企業」を興す方に関心を向けている。特に未来に鋭敏なセンサーを持っている人達ほどそうだ(だからベンチャー起業家は最近オッサンとオバチャン~一昔前の若者~の方が多い)。

こうしたIPO今昔物語を通じてわかることは、下り坂経済の中で、株式公開に留まらず、そもそも「会社」といものの意味付けが大きく問われる時代になっているということではないかと思う。ただ、それは日経新聞が好きな「会社は誰のものか」というようなストック視点の射程の短い問いではない。

何のために興し、どう展開して、利益追求以外には何を目指し、次代・次々代へと何をどう引き継いでいくのか。そういう根源的で、射程の長いフローの問題として「会社」を考える時代に差し掛かっていると思う。

新自由主義の効き目がなくなり、グローバリズムがもてはやされるけれども、それも先は見えている。「社会的企業」はこれからの社会で重要な役割を果たすものだと思うが、その脆弱な基盤を考えると、まだまだ課題が多い。

「ベンチャー起業家」はもちろん、「社会起業家」も結局この国の経済社会ではメインストリームにはならず、「後期資本主義」、下り坂ニッポン経済の存在感のある担い手、真打ちははこれから登場してくると私は予想している。それはまた稿を改めて。



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