不動産鑑定士&受験生必見!! “不動産鑑定評価基準の解説”

こんにちは、不動産鑑定士の大島です。
これまでの実務経験、講師経験、実務修習指導経験を活かして、不動産鑑定評価基準の解説をしていきます。
初心者でもわかりやすい、目から鱗の解説を目指します。


テーマ:

3.事情補正


取引事例等に係る取引等が特殊な事情を含み、これが当該取引事例等に係る価格等に影響を及ぼしているときは適切に補正しなければならない。

 

(1)現実に成立した取引事例等には、不動産市場の特性、取引等における当事者双方の能力の多様性と特別の動機により売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情が存在する場合もあるので、取引事例等がどのような条件の下で成立したものであるかを資料の分析に当たり十分に調査しなければならない。

 

(2)特殊な事情とは、正常価格を求める場合には、正常価格の前提となる現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる諸条件を欠くに至らしめる事情のことである。


(解説)

取引事例等に係る取引等に特殊な事情がなければ、事情補正の必要はない。しかし、現実の市場で取引された事例等には特殊な事情を含むことがあり、これが取引価格等に影響を及ぼしているときは適切に補正しなければならない。特殊な事情とは、正常価格を求める場合には、正常価格の前提となる現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる諸条件を欠くに至らしめる事情のことであり、以下のような条件(詳細は総論第5章参照)を満たさない場合である。

 

(1)市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること。

 

(2)取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと。

 

(3)対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。

 

これは、建築単価や賃料等についても同様のことがいえる。

現実の市場では、このような条件下での取引も少なくなたいため、それぞれの取引事例等がどのような条件の下で成立したものであるかを資料の分析に当たり十分に調査しなければばらない。

 

 

4.時点修正


取引事例等に係る取引等の時点が価格時点と異なることにより、その間に価格水準に変動があると認められる場合には、当該取引事例等の価格等を価格時点の価格等に修正しなければならない。


(解説)

不動産の価格は、多数の価格形成要因の組合せの流れである変動の過程において形成されるものである。また、建築単価や賃料も常に変化するものである。それゆえ、取引事例等に係る取引等の時点が価格時点と異なれば、その間に価格水準に変動があることが一般的である。従って、このような価格変動がある場合には、取引事例等の価格等を価格時点の価格等に修正しなければならない。

 

 

5.地域要因の比較及び個別的要因の比較


取引事例等の価格等は、その不動産の存する用途的地域に係る地域要因及び当該不動産の個別的要因を反映しているものであるから、取引事例等に係る不動産が同一需給圏内の類似地域等に存するもの又は同一需給圏内の代替競争不動産である場合においては、近隣地域と当該事例に係る不動産の存する地域との地域要因の比較及び対象不動産と当該事例に係る不動産との個別的要因の比較を、取引事例等に係る不動産が近隣地域に存するものである場合においては、対象不動産と当該事例に係る不動産の個別的要因の比較をそれぞれ行う必要がある。



② 地域要因の比較及び個別的要因の比較について

取引事例等として同一需給圏内の代替競争不動産に係るものを選択する場合において、価格形成要因に係る対象不動産との比較を行う際には、個別的要因の比較だけでなく市場の特性に影響を与えている地域要因の比較もあわせて行うべきことに留意すべきである。


(解説)

現実の市場において、市場参加者が取引の意思決定をする場合、不動産の価格形成要因(最寄駅からの距離、前面道路の幅員、日照・通風、接面状況、画地の形状等)を考慮して取引価格等を決定する。つまり、取引をする不動産のおかれている地域要因や個別的要因を反映して取引価格等が決定されるものである。これは建築単価や賃料についても同様のことがいえる。

従って、取引事例等が①同一需給圏内の類似地域等に存するものや②同一需給圏内の代替競争不動産である場合には、地域要因の比較と個別的要因の比較を行う必要がある。

また、取引事例等が近隣地域に存するものである場合には、個別的要因の比較を行う必要がある。

同一需給圏内の代替競争不動産を取引事例等として選択する場合、標準的使用と最有効使用が異なるため、最有効使用に対する地域の特性の影響の程度が希薄である。それ故、地域の特性を形成する地域要因の比較をする必要性が問題となる。しかし、代替競争不動産といえども近隣地域に属しており、街路の幅員、都心との距離等価格形成に影響を与える多数の地域要因が存するため、地域要因の比較を行わなければならない。この場合に重視すべき要因は、戸建住宅地域に存するマンション適地であれば、容積率等のマンション市場の特性に影響を与える地域要因が重視されるべきである。

代替競争不動産については次のように考えるとよい。この場合、地域の特性と最有効使用の関係が希薄であるため、地域分析をするときは近隣地域や類似地域の枠をとってしまい、同一需給圏をひとつの大きな地域としてとらえるとイメージがしやすい。〔図表7-5

 

 

対象不動産と同一需給圏内の代替競争不動産を直接比較するのである。ただし、近隣地域等を考慮せずに直接の比較をすると個別的要因の比較のみをしてしまいがちになるが、価格形成に影響を与える地域要因の比較を省くことはできないことを基準では留意点として指摘している。

AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

第1節 価格を求める鑑定評価の手法


不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は、原価法、取引事例比較法及び収益還元法に大別され、このほかこれら三手法の考え方を活用した開発法等の手法がある。


(解説)

不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は、原価法、取引事例比較法、収益還元法の三手法である。また、これら以外でも、、開発法、賃料差額還元法、借地権割合法等の手法があり、詳細は各論で説明する。

 

Ⅰ.個別的要因の分析上の留意点

1.一般的要因と鑑定評価の各手法の適用との関連


価格形成要因のうち一般的要因は、不動産の価格形成全般に影響を与えるものであり、鑑定評価手法の適用における各手順において常に考慮されるべきものであり、価格判定の妥当性を検討するために活用しなければならない。


(解説)

総論第6章で説明したとおり、価格形成要因を分析した結果は、鑑定評価の手法を適用する場合に適正に反映されなければならない。一般的要因、地域要因、個別的要因のそれぞれが各手法のどの手順で考慮されるのかを把握する必要がある。詳細は、各手法の解説で説明する。ここでは、一般的要因についてのみ言及しているが、地域要因や個別的要因も同様である。

 

2.事例の収集及び選択


鑑定評価の各手法の適用に当たって必要とされる事例には、原価法の適用に当たって必要な建設事例、取引事例比較法の適用に当たって必要な取引事例及び収益還元法の適用に当たって必要な収益事例(以下「取引事例等」という。)がある。取引事例等は、鑑定評価の各手法に即応し、適切にして合理的な計画に基づき、豊富に秩序正しく収集し、選択すべきであり、投機的取引であると認められる事例等適正さを欠くものであってはならない。

取引事例等は、次の要件の全部を備えるもののうちから選択するものとする。

 

(1)次の不動産に係るものであること

① 近隣地域又は同一需給圏内の類似地域若しくは必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域(以下「同一需給圏内の類似地域等」という。)に存する不動産

② 対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等において同一需給圏内に存し対象不動産と代替、競争等の関係が成立していると認められる不動産(以下「同一需給圏内の代替競争不動産」という。)。

 

(2)取引事例等に係る取引等の事情が正常なものと認められるものであること又は正常なものに補正することができるものであること。

 

(3)時点修正をすることが可能なものであること。

 

(4)地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能なものであること。



① 取引事例等の選択について

ア.必要やむを得ない場合に近隣地域の周辺地域に存する不動産に係るものを選択する場合について

この場合における必要やむを得ない場合とは、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産について収集した取引事例等の大部分が特殊な事情による影響を著しく受けていることその他の特別な事情により当該取引事例等のみによっては鑑定評価を適切に行うことができないと認められる場合をいう。

 

イ.対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等において同一需給圏内の代替競争不動産に係るものを選択する場合について

この場合における対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等とは、次のような場合として例示される対象不動産の個別性のために近隣地域の制約の程度が著しく小さいと認められるものをいう。

(ア)戸建住宅地域において、近辺で大規模なマンションの開発がみられるとともに、立地に優れ高度利用が可能なことから、マンション適地と認められる大規模な画地が存する場合

(イ)中高層事務所として用途が純化された地域において、交通利便性に優れ広域的な集客力を有するホテルが存する場合

(ウ)住宅地域において、幹線道路に近接して、広域的な商圏を持つ郊外型の大規模小売店舗が存する場合

(エ)中小規模の事務所ビルが集積する地域において、敷地の集約化により完成した卓越した競争力を有する大規模事務所ビルが存する場合

 

ウ.代替、競争等の関係を判定する際の留意点について

イの場合において選択する同一需給圏内の代替競争不動産に係る取引事例等は、次に掲げる要件に該当するものでなければならない。

(ア)対象不動産との間に用途、規模、品等等からみた類似性が明確に認められること。

(イ)対象不動産の価格形成に関して直接に影響を与えていることが明確に認められること。


(解説)

不動産の鑑定評価を行う場合、資料に基づいてさまざまな判断をしなければならない。そもそも鑑定評価で求める価格は、基本的には正常価格であるが、これは現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値であって客観性を有する価格(誰もが納得する価格)を求めるものである。

 

例えば、依頼者と対象不動産を確認しに現地へ赴いて、その場で不動産鑑定士が「この土地は3,200万円ですね。私は鑑定士を20年やってますからわかります。」と評価をしてしまったらどうだろう。依頼者はきっとその鑑定士には二度と依頼を出さないだろう。これは鑑定士の主観であって、全く客観性がなく、誰も納得しない。では、豊富な資料に基づいて緻密な計算をし、鑑定評価額を試算して依頼者に提示した場合はどうだろう。「この数字の根拠は、この資料とこの資料をこのように分析して決定しています。」というふうに説明をすれば、鑑定評価額に客観性が付与されて、依頼者もなるほどと納得するだろう。これが、鑑定評価が資料に基づく判断であると言われる所以で、その資料が豊富にあり、適切な資料を活用することでより客観性が高まり、適正な価格が求まることとなる。つまり、量と質の両方を備えた資料を活用することにより精度の高い鑑定評価が可能となる。

資料についての詳細は、総論第8章で説明するが、資料の種類としては確認資料、要因資料、事例資料等がある。このうち事例資料は、鑑定評価の手法の適用に必要とされるものであり、取引事例(取引価格の事例)、建設事例(建築工事費の事例)、収益事例(純収益の事例)、賃貸事例(賃料の事例)、分譲事例(マンションの取引価格の事例)等がある。

これらの事例を取引事例「等」と言うが、鑑定評価の手法それぞれに必要とされる事例資料は異なるため、適用する手法に必要な取引事例等を収集選択する必要がある。また可能な限り豊富に収集すべきであり、依頼の多い地域などの取引事例等については、案件の都度にわかに収集するのではなく、変化する地域の動向を見失うことのないように日常より計画的に収集していることが望ましく、売買物件の動向、取引の成立状況等についても日常の鑑定評価業務を通じて絶えず注意し、情報を入手するように努める必要がある。

このように、収集した取引事例等から、手法の適用に当たって適切な事例を選択し活用していくこととなるが、次の要件を備えるもののうちから選択すべきである。

 

① 投機的取引であると認められる事例等適正さを欠くものであってはならない

投機的取引とは、転売差益を目的とするような取引であって適正価格を求めようとする鑑定評価に活用する事例としては適切ではなく、このような適正さを欠く要因が内在する場合には取引事例等として採用するには不適切である。投機的取引か否かの判断は、主に取引目的が最終的に利用を前提とするか否かによって行うこととなる。その判断に当たっては、当該取引事例に係る取引事情、取引当事者の属性、取引価格の水準の変動の推移等、各事例に係る個別の分析を行うのみならず、日常の鑑定評価業務を通じて収集される多数の事例の分析・検討を通じて把握される価格水準及びその将来の動向等を踏まえてそれぞれの事例の個別性を吟味しなければならない。

 

② 場所的同一性

採用する取引事例等は、周辺環境等が類似している地域から選択すべきである。この場合に選択すべき地域として最も望ましいのは、言うまでもなく近隣地域(対象不動産の存する地域)である。次に望ましいのが、同一需給圏内の類似地域である。近隣地域とは異なるが、近隣地域の特性と類似する特性を有する地域であるからである。基本的にはこれらの地域から取引事例等を収集すべきであるが、収集した取引事例等の大部分が特殊な事情による影響を著しく受けていること、その他の事情により十分な事例の収集ができない場合がある。このような場合には例外的に近隣地域の周辺の地域から事例を選択することも認められる。ただし、周辺の地域である以上、近隣地域と地域の特性の類似性が低く(或いは類似性がなく)、その選択の許容性としては、近隣地域と周辺の地域間に価格牽連性が認められることが条件である。〔図表7-3〕 

 

 

例えば、対象不動産が商店街に存する更地(商業地)で、取引事例がその背後に広がっている住宅地の場合をイメージするとよい。近隣地域が商業地域、周辺の地域が住宅地域で類似地域とはならないが、近隣地域の価格水準を100とした場合に、周辺の地域の価格水準が概ね70という価格の牽連関係が客観的に把握できる場合は、周辺の地域の住宅地の取引事例を採用して補正することが可能であるため採用することができるわけである。

 

また、対象不動産の最有効使用が近隣地域の標準的使用と異なる場合の取引事例の選択については注意が必要である。〔図表7-4〕にあるように具体例を挙げることができるが、いずれも対象不動産の用途が、近隣地域や同一需給圏内の類似地域の特性とは異なることとなる。

一つ目の例で説明すると、近隣地域の特性(標準的使用)は戸建住宅地域であり、同一需給圏内の類似地域の特性も戸建住宅地域となる。しかし、対象不動産は規模が大きくその最有効使用がマンションの敷地であれば、典型的な需要者は、マンションの開発を目的とする開発業者等となり、対象不動産と代替競争関係の働く不動産も画地規模の大きな土地となる。それ故、戸建住宅地域である近隣地域や同一需給圏内の類似地域には、画地規模の大きな土地が少ないこととなる。

これは、最有効使用が地域の特性の制約下にあるものの、その関連性が希薄であるため、標準的使用と最有効使用が異なることによるものであるが、近隣地域や類似地域はあくまでも近隣地域の特性により把握されるため、最有効使用の用途と近隣地域や類似地域の用途に食い違いが生じるわけである。このような場合には、地域の範囲を柔軟に捉えて、同一需給圏内で異なる地域の特性であってもマンションの素地の取引事例を広く収集して評価に活用すべきである。

このような取引事例のことを「代替競争不動産」という。

 

 

同一需給圏内の代替競争不動産に係る取引事例等を選択する場合の代替、競争等の関係の判定は、次に掲げる要件に該当するものでなければならない。

 

(ア)対象不動産との間に用途、規模、品等等からみた類似性が明確に認められること。

マンション素地であれば、同程度の規模のマンション素地の事例を、ホテルであれば同程度の規模・品等のホテルの事例等を選択しなければならない。

 

(イ)対象不動産の価格形成に関して直接に影響を与えていることが明確に認められること。

対象不動産と代替競争不動産とが代替競争関係になければならないことは当然であるが、地域の特性の制約が希薄であるため、相互に直接影響を与えているものを選択しなければならない。

 

なお、いずれの場合であっても、同一需給圏外から取引事例等を採用することは認められていない。これは、総論第6章でも説明したように、同一需給圏外に存する取引事例等は対象不動産と代替競争関係にないので比較対照する事例としては不適切である。

 

③ 取引事情の正常性又は正常補正可能性

採用する取引事例等は、現実の市場において取引されたものであり、取引に当たって個別の事情が介在することが少なくない。それ故、採用する取引事例等は、まず特殊な事情が介在していないものが望ましいが、特殊な事情が介在している場合であっても、それを補正することができるものであれば採用することができる。

 

④ 時間的同一性

原則として、採用する取引事例等は、過去に遡ったものとなるため、時点修正をする必要がある。この場合、遡る期間が長ければ鑑定評価の精度を下げてしまうので、できる限り価格時点に近い事例を採用して時点修正を行って活用すべきである。反対に、過去に遡りすぎた古い事例のため、時点修正を適正に施すことができないような場合は、採用する取引事例等としては不適切である。

 

⑤ 要因比較の可能性

採用した取引事例等は、地域要因の比較や個別的要因の比較を行って評価に反映させていくが、要因の比較ができないような事例は選択すべきではない。例えば、対象不動産が住宅地域に存する場合に、商業地域の事例を選択した場合、居住の快適性という視点で要因比較をすべきであるが、商業地域の取引価格がそもそも収益性という観点で決定されているわけで、この価格を無理やり居住の快適性という視点で捉えても比較対照とはなりえないからである。また、対象不動産が更地である場合に、借地権の取引事例や底地の取引事例を採用しても比較対照する事例としては不適切である。言い換えると、種別・類型の異なる事例は、原則として地域要因の比較や個別的要因の比較ができないわけである。

 

 

 

 

 

AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

第7章 鑑定評価の方式


不動産の鑑定評価の方式には、原価方式、比較方式及び収益方式の三方式がある。

原価方式は不動産の再調達(建築、造成等による新規の調達をいう。)に要する原価に着目して、比較方式は不動産の取引事例又は賃貸借等の事例に着目して、収益方式は不動産から生み出される収益に着目して、それぞれ不動産の価格又は賃料を求めようとするものである。

不動産の鑑定評価の方式は、価格を求める手法と賃料を求める手法に分類される。それぞれの鑑定評価の手法の適用により求められた価格又は賃料を試算価格又は試算賃料という。



この手法の適用に当たっては、多数の取引事例を収集し、価格の指標となり得る事例の選択を行わなければならないが、その有効性を高めるため、取引事例はもとより、売り希望価格、買い希望価格、精通者意見等の資料を幅広く収集するよう努めるものとする。

なお、これらの資料は、近隣地域等の価格水準及び地価の動向を知る上で十分活用し得るものである。


(解説)

総論第1章で説明した内容で、「価格の三面性」という概念がある。価格の三面性とは、不動産を含んで全ての財は三つの側面から経済価値が決定されるという考え方である。そしてその三面性とは、費用性、市場性、収益性のことを言い、これらは三者の相対的稀少性、有効需要、効用にそれぞれ対応するものである。

 

 

そもそも、不動産の鑑定評価とは、不動産の価格形成過程を追究し分析することをその本質とするのであり、価格形成要因→三者→経済価値の分析をすることである。そして、その分析検討を通じて、最終判断である経済価値を貨幣額で表示する。このとき、経済価値は費用性、市場性、収益性の3つの側面から決定されるのであるから、鑑定評価においても3つの側面から経済価値にアプローチすることとなる。それ故、不動産の経済価値を試算する方式として三方式があり、費用性(相対的稀少性)に対応する「原価方式」、市場性(有効需要)に対応する「比較方式」、収益性(効用)に対応する「収益方式」がある。

原価方式とは、不動産の再調達に要する原価(費用)に着目して価格又は賃料を求める方式であり、比較方式とは、現実の市場における不動産の取引事例や賃貸借等の事例に着目して価格又は賃料を求める方式であり、収益方式とは、不動産から生み出される収益(家賃や売上)に着目して価格又は賃料を求める方式である。〔図表7-1〕

 

不動産の鑑定評価で求める経済価値には価格と賃料がある。鑑定評価の方式は三方式あり、これに対応し、基本的に価格を求める手法も、賃料を求める手法もそれぞれ三手法に分かれる。価格を求める三手法は、原価法、取引事例比較法、収益還元法が基本的な手法であるが、それ以外にも、開発法、賃料差額還元法、借地権割合法等がある。新規賃料を求める三手法は、積算法、賃貸事例比較法、収益分析法が基本的な三手法であるが、それ以外にも、賃貸事業分析法や継続賃料を求める手法として、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法がある。〔図表7-2

 

 

取引事例比較法は、現実の市場において発生した取引を基礎として試算価格を求めるものであり、事例資料として採用するものはあくまでも成約された(売買契約が締結された)取引価格である。しかし、取引事例以外であっても、取引事例比較法の精度を高めるために活用されるべき資料もある。例えば、売り希望価格、買い希望価格、精通者意見(地元不動産業者の意見等)は、採用する取引価格の妥当性を検討する上で活用し得るものである。また、売り希望価格は上限価格としての性格、買い希望価格は下限価格としての性格、精通者意見は地域のタイムリーな相場を捉えた価格であり、十分に参考となるものであり、これらの資料を時系列的に収集して分析することにより、取引価格水準の推移を把握し、将来の動向を予測するために重要な資料となる。

 

 

Chapter43へ≫

AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

2.最有効使用の判定上の留意点


不動産の最有効使用の判定に当たっては、次の事項に留意すべきである。

1)良識と通常の使用能力を持つ人が採用するであろうと考えられる使用方法であること。

2)使用収益が将来相当の期間にわたって持続し得る使用方法であること。

3)効用を十分に発揮し得る時点が予測し得ない将来でないこと。

4)個々の不動産の最有効使用は、一般に近隣地域の地域の特性の制約下にあるので、個別分析に当たっては、特に近隣地域に存する不動産の標準的使用との相互関係を明らかにし判定することが必要であるが、対象不動産の位置、規模、環境等によっては、標準的使用の用途と異なる用途の可能性が考えられるので、こうした場合には、それぞれの用途に対応した個別的要因の分析を行った上で最有効使用を判定すること。

5)価格形成要因は常に変動の過程にあることを踏まえ、特に価格形成に影響を与える地域要因の変動が客観的に予測される場合には、当該変動に伴い対象不動産の使用方法が変化する可能性があることを勘案して最有効使用を判定すること。

 

特に、建物及びその敷地の最有効使用の判定に当たっては、次の事項に留意すべきである。

6)現実の建物の用途等が更地としての最有効使用に一致していない場合には、更地としての最有効使用を実現するために要する費用等を勘案する必要があるため、建物及びその敷地と更地の最有効使用の内容が必ずしも一致するものではないこと。

7)現実の建物の用途等を継続する場合の経済価値と建物の取壊しや用途変更等を行う場合のそれらに要する費用等を適切に勘案した経済価値を十分比較考量すること。



(2)最有効使用の判定上の留意点について

① 地域要因が変動する予測を前提とした最有効使用の判定に当たっての留意点

地域要因の変動の予測に当たっては、予測の限界を踏まえ、鑑定評価を行う時点で一般的に収集可能かつ信頼できる情報に基づき、当該変動の時期及び具体的内容についての実現の蓋然性が高いことが認められなければならない。

② 建物及びその敷地の最有効使用の判定に当たっての留意点

最有効使用の観点から現実の建物の取壊しや用途変更等を想定する場合において、それらに要する費用等を勘案した経済価値と当該建物の用途等を継続する場合の経済価値とを比較考量するに当たっては、特に下記の内容に留意すべきである。

ア.物理的、法的にみた当該建物の取壊し、用途変更等の実現可能性

イ.建物の取壊し、用途変更等を行った後における対象不動産の競争力の程度等を踏まえた収益の変動予測の不確実性及び取壊し、用途変更に要する期間中の逸失利益の程度


(解説)

最有効使用の判定に当たって留意すべき点は以下の通りである。

1)良識と通常の使用能力を持つ人が採用するであろうと考えられる使用方法であること。

偏りのない考え方で、特別な能力のない一般の使用能力を持つ人が採用するであろうと考えられる使用方法である。例えば人気のある芸能人が繁華性のない地域でタレントショップを経営しても儲かることもあったりするが、このような場合は特別な能力がある場合であり採用すべき使用方法とは言えない。

 

2)使用収益が将来相当の期間にわたって持続し得る使用方法であること。

不動産の利用形態が最適なものであるかどうか、仮に現在最適なものであっても、時の経過に伴ってこれを持続できるかどうか、これらは常に検討されなければならない。したがって、不動産の価格(又は賃料)は、通常、過去と将来とにわたる長期的な考慮の下に形成される。つまり、判定すべき最有効使用とは、短期的で、現在のみ効用が高い使用方法ではなく、長期的に効用が持続できる使用方法でなければならない。

 

3)効用を十分に発揮し得る時点が予測し得ない将来でないこと。

移行地や見込地の場合には、現在最も効用を発揮しているのではなく、移行後、転換後に最も効用を発揮することとなる。このような場合には、変動の原則や予測の原則を活用して、移行の時期や転換の時期を予測することとなる。この場合に移行・転換する時点が予測の限界を超えた時点であってはならず、予測可能な範囲での最有効使用の判定でなければならない。

 

4)個々の不動産の最有効使用は、一般に近隣地域の地域の特性の制約下にあるので、個別分析に当たっては、特に近隣地域に存する不動産の標準的使用との相互関係を明らかにし判定することが必要であるが、対象不動産の位置、規模、環境等によっては、標準的使用の用途と異なる用途の可能性が考えられるので、こうした場合には、それぞれの用途に対応した個別的要因の分析を行った上で最有効使用を判定することとなる。

不動産の最有効使用を判定する場合に標準的使用が有力な標準となる(一般には一致する)が、標準的使用は地域の特性が具現化したものであるため、最有効使用は地域の特性の制約下にあると言える。従って、最有効使用の判定をする場合、標準的使用との相互関係を明らかにする必要がある。つまり標準的使用と最有効使用が一致するのかしないのかを明確にする必要がある。〔図表6-10

 

 

対象不動産の位置、規模、環境等によっては、標準的使用と最有効使用が一致しないケースもある。このような場合に最有効使用の判定は特に慎重になる必要があり、標準的使用と同一の用途と異なる用途の両面から個別分析、市場分析を行い、最終的な最有効使用の判定を行っていく必要がある。例えば、対象不動産が戸建住宅地域内の面大地である場合に、標準的使用は戸建住宅の敷地であるのに対して、最有効使用が、マンション用地と判断される場合がある。このような場合でも、戸建住宅地として個別的要因を十分に分析して、マンション用地としての個別的要因の分析結果と比較対照の上、最終的な最有効使用の判定を行うべきである。

 

5)価格形成要因は常に変動の過程にあることを踏まえ、特に価格形成に影響を与える地域要因の変動が客観的に予測される場合には、当該変動に伴い対象不動産の使用方法が変化する可能性があることを勘案して最有効使用を判定すること。

価格形成要因は、常に変動の過程にある。価格形成要因が変動すれば、標準的使用や最有効使用も常に変化する。このような場合には、最有効使用を柔軟に考えて、ある時点までの最有効使用とそれ以降の最有効使用を異なる使用方法で判定することもあり得る。例えば、新駅が3年後に開設される場合に、現在から3年間は駐車場として利用し、その後は店舗の敷地としての使用と判定することも可能である。

この場合に、地域要因の変動の予測に当たっては、予測の限界を踏まえ、鑑定評価を行う時点で一般的に収集可能かつ信頼できる情報に基づき、当該変動の時期及び具体的内容についての実現の蓋然性が高いことが認められなければならない。新駅が開設されるのが単なる噂程度のものであってはならず、その実現がどれ程確実かを見極めた上で、予測可能な範囲で判定を行わなければならない。

 

以上に加え、建物及びその敷地の最有効使用の判定に当たっては、以下の内容に留意しなければならない。

6)現実の建物の用途等が更地としての最有効使用に一致していない場合には、更地としての最有効使用を実現するために要する費用等を勘案する必要があるため、建物及びその敷地と更地の最有効使用の内容が必ずしも一致するものではないこと。

建物及びその敷地の最有効使用の判定で、更地としての最有効使用と現実の建物の用途・構造等が一致していない場合、継続使用か、用途変更等か、取壊すかの判定を行う必要があるが、用途変更等と取壊しには費用がかかるものであり、この費用が多額である等の場合には、更地としての最有効使用と現実の建物の用途・構造等が一致していないけれども継続使用することが最有効使用と判定される。このとき、更地としての最有効使用の用途・構造と現実に継続使用する建物の用途・構造は異なることもある得る。

 

7)現実の建物の用途等を継続する場合の経済価値と建物の取壊しや用途変更等を行う場合のそれらに要する費用等を適切に勘案した経済価値を十分比較考量すること。

建物及びその敷地の最有効使用の判定で、更地としての最有効使用と現実の建物の用途・構造等が一致していない場合、継続使用か、用途変更等か、取壊すかの判定を行う必要があるが、この判断は、経済合理性の観点から行う。つまり、継続使用する場合の経済価値と、用途変更等や取壊した場合の経済価値を比較して、最も経済価値が高い使用方法はどれかを判断する。端的に言うと、費用対効果の考え方であり、費用を投じてでも用途変更等や取壊した方がいいのか、それとも更地としての最有効使用に一致していないけれども継続使用する方がいいのかの判断である。

この場合に、以下の点に留意する必要がある。

ア.物理的、法的にみた当該建物の取壊し、用途変更等の実現可能性

取壊しや用途変更が現実的に可能かを検討する必要がある。物理的に用途変更が不可能な場合にそのような最有効使用の判定をしてはならないのは言うまでもない。

イ.建物の取壊し、用途変更等を行った後における対象不動産の競争力の程度等を踏まえた収益の変動予測の不確実性及び取壊し、用途変更に要する期間中の逸失利益の程度

取壊しや用途変更等を行う場合には、工事を行う必要があり、その期間対象不動産を利用することができない為、逸失利益が発生する。また、収益物件の場合等には、工事を行った後に、入居者の募集を改めて行うこととなるが、その収益の予測が不確実になるため(どの程度の入居率を確保できるかがわからないため)この点も考慮しなければならない。

 

建物及びその敷地の最有効使用の成立根拠は次のとおりである。

対象不動産が市場で供給された場合、複数の買い希望者が現れる。Aさんは、継続使用を前提として金額の提示を行い、Bさんは用途変更等を前提として金額の提示を行い、Cさんは取壊すことを前提に金額の提示を行う。結果、一番高い金額を提示できる者がこの不動産を取得でき、その場合の使用方法が最有効使用であり、その金額がその不動産の経済価値ということになる。考え方は土地の最有効使用の場合と同じである。

■第6章終了■

 

 

Chapter42へ≫

Chapter**へ≫

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

Ⅱ 個別分析の適用

1.個別的要因の分析上の留意点


個別的要因は、対象不動産の市場価値を個別的に形成しているものであるため、個別的要因の分析においては、対象不動産に係る典型的な需要者がどのような個別的要因に着目して行動し、対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度をどのように評価しているかを的確に把握することが重要である。

また、個別的要因の分析結果は、鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきである。



(1)個別的要因の分析上の留意点について

対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度を把握するに当たっては、次の点に留意すべきである。

① 同一用途の不動産の需要の中心となっている価格帯及び主たる需要者の属性

② 対象不動産の立地、規模、機能、周辺環境等に係る需要者の選好

③ 対象不動産に係る引き合いの多寡


(解説)

不動産の経済価値は、個別的要因によって個別的に形成されているものであるため、個別的要因が対象不動産の価格形成にどのような影響力をもっているのかを分析する必要がある。

この場合に、対象不動産に係る典型的な需要者が、

① どのような個別的要因に着目して行動するか

② 対象不動産と代替競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度をどのように判定しているか

を把握することとなる。

ここで、典型的な需要者という表現がある。対象不動産の経済価値を判定するとき、対象不動産が合理性を有する現実の市場においていくらで取引されるかを考えるが、この場合に対象不動産自体が供給される(売りにだされる)ことが前提で、その不動産に対してどのような需要者が存するのか、その需要者がいくらの価格を提示できるのかを分析検討していくこととなる。この場合に最も高い価格を提示できるのが典型的な需要者ということになる。

個別分析では上記①及び②を典型的な需要者の観点から把握するが、①については住宅地域であれば居住の快適性や利便性に影響を与える個別的要因に着目して取引の意思決定を行なうし、商業地域であれば収益性に影響を与える個別的要因に着目して取引の意思決定を行なうといえる。

②については、個別分析における市場分析という位置づけで理解するとよい。例えば、対象不動産が住宅地域における戸建住宅であれば、①の通り居住の快適性や利便性に影響を与える要因に着目して行動するが、この場合に対象不動産と代替競争関係にある不動産と比べて、優位な点と劣位な点を比較分析して、その結果、対象不動産の市場における競争力の程度を判断し経済価値を判定する。例えば対象不動産が投資対象となるような賃貸マンションである場合、建物のグレード、オートロックの有無、宅配ボックスの有無、駐車場・駐輪場の有無、エレベーターの有無、入居状況、維持管理の状態等については他の不動産と比較して対象不動産がどの程度優位あるいは劣位なのかを分析し、市場での経済価値を判定するのである。

対象不動産の優劣及び競争力の程度の判定にあたり、以下の点に留意しなければならない。

① 同一用途の不動産の需要の中心となっている価格帯及び主たる需要者の属性

② 対象不動産の立地、規模、機能、周辺環境等に係る需要者の選好

③ 対象不動産に係る引き合いの多寡

①については、いわゆる売れ筋の価格帯であり、その価格帯で需要者の中心は誰かということである。戸建住宅の場合であれば、地域的に2,500万円から3,000万円の物件がよく売れているが、3,000万円を超えると売れにくくなるといった市場の状況等をイメージするとよい。この場合の典型的な需要者としては、エンドユーザーとしての個人と考えられたりする。

次に、②の対象不動産に対する需要者の選好については、対象不動産の用途等により異なるが、典型的な需要者がどのような要因を重視して経済価値の判定や取引の意思決定を行なうかということである。

最後に③については、対象不動産に対する需要がどの程度存在するのかということである。

地域分析における市場分析と個別分析における市場分析の内容について比較してまとめると、〔図表6-9〕のようになる。

 

 

地域分析と同様に、鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等において個別分析の結果を反映して行わなければならない。例えば、典型的な需要者が居住の快適性や利便性を重視するのであれば、取引事例比較法の適用においては、居住の快適性や利便性の観点から格差付けを行うこととなる。対象不動産が更地で最有効使用が戸建住宅の敷地であれば、試算価格の調整では比準価格を重視して重み付けを行うものと考えられる。

 

 

 

Chapter41へ≫

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

第2節 個別分析

Ⅰ 個別分析の意義


不動産の価格は、その不動産の最有効使用を前提として把握される価格を標準として形成されるものであるから、不動産の鑑定評価に当たっては、対象不動産の最有効使用を判定する必要がある。個別分析とは、対象不動産の個別的要因が対象不動産の利用形態と価格形成についてどのような影響力を持っているかを分析してその最有効使用を判定することをいう。


(解説)

総論第4章で説明したように、不動産の価格は、その不動産の最有効使用を前提として把握される価格を標準として形成されるため、不動産の鑑定評価を行うに当たっては、対象不動産の最有効使用を判定する必要がある。

対象不動産の最有効使用は、地域の特性が具現化した標準的使用が手掛かりとなって判定される。また、個別の不動産の価格は、その不動産が属する地域の価格水準という大枠の中で決定されるものである。従って、地域の特性や地域の価格水準を把握する地域分析とは密接な関係がある。

個別分析とは、対象不動産の個別的要因が対象不動産の利用形態と価格形成についてどのような影響力をもっているかを分析して最有効使用を判定することである。つまり、個別的要因によって対象不動産は他の不動産とは異なる個別性を有することとなり、対象不動産をどのように使用すべきか、その場合にはどれ程の効用を享受できるのかを分析して、最も効用が大きくなる場合の使用方法を最有効使用と判定することができる。

ここで、最有効使用について考え方をまとめておく。2つの最有効使用の判定を理解していただきたい。更地の(更地としての)最有効使用の判定と、建物及びその敷地の最有効使用の判定である。

更地の(更地としての)最有効使用の判定は、対象不動産が、更地で建物が存しない場合に、対象地上に何を建てるべきかを判断し、効用が最大となる最高最善の使用方法を判定することである。低層の店舗を建てるべきであれば、最有効使用は低層の店舗の敷地と判定され、高層の事務所ビルを建てるべきであれば、最有効使用は高層の事務所ビルの敷地と判定される。

次に、建物及びその敷地の最有効使用の判定は、建物が存する場合であり、二段階に分けて最有効使用を判定していくこととなる。第一段階は、前記と同様に更地としての最有効使用の判定であるが、対象建物がないものとして(つまり更地として)、対象地上に何を建てるべきかを判断し、効用が最大となる最高最善の使用方法を判定することである。これは、現実に存する建物の用途や規模と一致するかどうかとは無関係である。それ故、現実の対象建物の用途・規模と一致する判定もあれば、一致しない判定もあり得る。次に第二段階の最有効使用の判定をするが、第一段階の判定結果を踏まえて、対象建物を継続使用していくべきか、取壊しや用途変更等をしていくべきかを判定することである。

 

 

具体的には、①更地としての最有効使用に対象建物が一致していれば、継続使用するべきであるという判定ができる。②更地としての最有効使用に対象建物が一致していない場合に、取壊しや用途変更等が経済合理性を欠くとき(費用がかかりすぎて、取壊しや用途変更等をすべきでないとき)も、継続使用するべきであるという判定ができる。③更地としての最有効使用に対象建物が一致していない場合に、取壊しや用途変更等が経済合理性を有するときは、取壊しや用途変更等を行うべき(継続使用はしない)という判定ができる。〔図表6-8

 

 

 

 

 

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

2.対象不動産に係る市場の特性


地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある。

また、把握した市場の特性については、近隣地域における標準的使用の判定に反映させるとともに鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきである。



(3)対象不動産に係る市場の特性について

① 把握の観点

ア.同一需給圏における市場参加者の属性及び行動

同一需給圏における市場参加者の属性及び行動を把握するに当たっては、特に次の事項に留意すべきである。

(ア)市場参加者の属性については、業務用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の業種、業態、法人か個人かの別並びに需要者の存する地域的な範囲。

また、居住用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の年齢、家族構成、所得水準並びに需要者の存する地域的な範囲

(イ)(ア)で把握した属性を持つ市場参加者が取引の可否、取引価格、取引条件等について意思決定する際に重視する価格形成要因の内容

 

イ.同一需給圏における市場の需給動向

同一需給圏における市場の需給動向を把握するに当たっては、特に次に掲げる事項に留意すべきである。

(ア)同一需給圏内に存し、用途、規模、品等等が対象不動産と類似する不動産に係る需給の推移及び動向

(イ)(ア)で把握した需給の推移及び動向が対象不動産の価格形成に与える影響の内容及びその程度

 

② 把握のための資料

対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、平素から、不動産業者、建設業者及び金融機関等からの聴聞等によって取引等の情報(取引件数、取引価格、売り希望価格、買い希望価格等)を収集しておく必要がある。あわせて公的機関、不動産業者、金融機関、商工団体等による地域経済や不動産市場の推移及び動向に関する公表資料を幅広く収集し、分析することが重要である。


(解説)

地域分析において、地域要因を分析して地域の範囲、地域の特性、地域の価格水準等を把握していくが、この場合に常にその背景にある市場を分析・把握しておく必要がある。

市場分析によって市場の特性を把握していくが、把握する内容は、

1)市場参加者の属性

2)市場参加者の行動

3)同一需給圏における市場の需給動向

の3点である。

 

1)市場参加者の属性

市場参加者の属性の把握とは、同一需給圏内で、どういう者が売主(供給者)として不動産を売却しているのか、どういう者が買主(需要者)として不動産を取得しているのかを把握することである。例えば、対象不動産が賃貸マンションを建築できるような比較的規模の大きな更地である場合、同一需給圏内で、対象不動産と代替競争関係にある不動産の売主がどのような者かを把握すると、工場を閉鎖して、その跡地を売りに出しているケースや、企業の老朽化した社員寮を売却しているケースがあったりする。このような場合、主な供給者としては、工場事業者や一般企業と考えられる。一方で、このような土地を取得する需要者を把握すると、土地を仕入れて賃貸マンションを建築し、入居者を募集(リーシング)して、収益物件として私募ファンド等の投資家に売却をするケースや、ビジネスホテルを建築してホテル事業を営むケースがあったりする。このような場合、主な需要者は、開発能力をもつ不動産業者やホテル業を営む企業等と考えられる。〔図表6-7〕

 

 

このように市場参加者の属性をまず把握していくが、業務用不動産の場合と居住用不動産の場合とでそれぞれ以下の点に留意する必要がある。

① 業務用不動産

主たる需要者層及び供給者層の業種、業態、法人か個人かの別並びに需要者の存する地域的な範囲

② 居住用不動産

主たる需要者層及び供給者層の年齢、家族構成、所得水準並びに需要者の存する地域的な範囲

 

2)市場参加者の行動

市場参加者の行動の把握とは、市場参加者がどのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することである。つまり、先程の例で言うと、開発能力をもつ不動産業者であれば、開発によって建築される賃貸マンションがどれ程の賃貸収益力があるのかという観点から賃貸マンションを建てるべきかどうかといった判断をするし、ホテル業を営む企業であれば、そのホテルがどれ程の事業収益力があるのかという観点からホテルを建てるべきかどうかといった判断をする。このときに、前者であれば最寄駅からの距離、スーパー等の商業施設への接近性、小学校や中学校の学区等の価格形成要因が重視され、その賃料水準や空室率を考慮し、賃貸収益力の程度が判断されることとなる。また、後者であれば、周辺地域の大規模工場や企業の有無等ホテルの利用客の質や量、周辺の競合物件の多寡等の価格形成要因が重視され、その宿泊料金や稼働率を考慮し、ホテルとしての事業収益力の程度が判断されることとなる。

このように、市場参加者が前提とする利用形態によりそれぞれ着目する視点が異なるため、重視する価格形成要因も異なるので、不動産鑑定士は想定し得る市場参加者がどのような観点から利用形態を検討して、要因の分析判断を行っているのかを把握する必要があり、それを踏まえて最も高い価格を提示できる需要者を判断して最有効使用を判断していくこととなる。

 

3)同一需給圏における市場の需給動向

不動産の経済価値は、需要と供給の原則でも説明したように、需要と供給の均衡点で決定される。需要が供給を上回れば価格は上昇するし、供給が需要を上回れば価格は下落するわけである。それ故、対象不動産に係る市場参加者を把握し、各市場参加者が今後どのように変化していくのかという、需要と供給のそれぞれの変化の動向を把握していく必要がある。例えば工場跡地がまだまだ売りに出される可能性のある地域であれば、供給は増加すると推測できるし、金融機関の貸し渋りでファンド市場が低迷してきているのであれば、そこを出口とする不動産開発業者の土地の仕入れは減少していくだろうと推測できる。このような市場の需給動向が予測される場合には、供給は増加するものの、需要は減少するので価格水準としては今後下落していくことが予測できるわけである。これらを適切に把握するためには、同一需給圏内で用途、規模、品等等が対象不動産と類似する不動産に係る需要と供給の推移や動向を把握し、それが対象不動産の価格を上昇させるのか、あるいは下落させるのか(地域の価格水準を上昇させるのか、下落させるのか)、そしてその程度を把握する必要がある。

 

対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、平素から、不動産業者、建設業者及び金融機関等からの聴聞等によって取引等の情報(取引件数、取引価格、売り希望価格、買い希望価格等)を収集しておく必要がある。あわせて公的機関、不動産業者、金融機関、商工団体等による地域経済や不動産市場の推移及び動向に関する公表資料を幅広く収集し、分析することが重要である。

資料に関しては、総論第8章で詳しく説明するが、ポイントになるのは、資料には平素から収集しておく資料と案件を依頼される毎に収集する資料があることである。簡単に言うと対象不動産を確定確認する資料等は、案件を依頼されなければ収集できないわけで、平素から収集することはできない。しかし、地域に関する資料等は平素から収集が可能であり、上記のような取引等の情報や公表資料も平素から収集して、常にその相場等を把握するように要請しているのである。

 

基準の文章の最後に、「把握した市場の特性については、近隣地域における標準的使用の判定に反映させるとともに鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきである。」とある。把握した市場の特性、つまり市場参加者の属性、市場参加者の行動、同一需給圏における市場の需給動向を念頭に標準的使用を判定し、鑑定評価手法を適用することや試算価格又は試算賃料の調整をすることを要請している。

標準的使用の判定については既に説明したとおりであり、市場分析の結果をも十分に反映させ、近隣地域を取り巻く市場において供給者や需要者が今後どのように変化していくかを考慮して標準的使用を判定しなければなない。

また、「鑑定評価手法の適用」、「試算価格又は試算賃料の調整」への反映については、例えば、対象不動産が規模の過大な土地であり、市場分析の結果として典型的な需要者が開発業者であれば開発法を適用することを検討する。また、対象不動産が収益物件であり、市場分析の結果として典型的な需要者が投資家であればDCF法を適用することを検討する。また、このような場合には、試算価格の調整においても、開発法による価格やDCF法による収益価格にウェイトを置いた調整をすることとなる。

 

Chapter39へ≫

Chapter41へ≫

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

(2)同一需給圏

同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。それは、近隣地域を含んでより広域的であり、近隣地域と相関関係にある類似地域等の存する範囲を規定するものである。

一般に、近隣地域と同一需給圏内に存する類似地域とは、隣接すると否とにかかわらず、その地域要因の類似性に基づいて、それぞれの地域の構成分子である不動産相互の間に代替、競争等の関係が成立し、その結果、両地域は相互に影響を及ぼすものである。

また、近隣地域の外かつ同一需給圏内の類似地域の外に存する不動産であっても、同一需給圏内に存し対象不動産とその用途、規模、品等等の類似性に基づいて、これら相互の間に代替、競争等の関係が成立する場合がある。

同一需給圏は、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によってその地域的範囲を異にするものであるから、その種類、性格及び規模に応じて需要者の選好性を的確に把握した上で適切に判定する必要がある。

同一需給圏の判定に当たって特に留意すべき基本的な事項は、次のとおりである。

 

① 宅地

ア.住宅地

同一需給圏は、一般に都心への通勤可能な地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。

なお、地域の名声、品位等による選好性の強さが同一需給圏の地域的範囲に特に影響を与える場合があることに留意すべきである。

イ.商業地

同一需給圏は、高度商業地については、一般に広域的な商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その範囲は高度商業地の性格に応じて広域的に形成される傾向がある。

また、普通商業地については、一般に狭い商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。

ウ.工業地

同一需給圏は、港湾、高速交通網等の利便性を指向する産業基盤指向型工業地等の大工場地については、一般に原材料、製品等の大規模な移動を可能にする高度の輸送機関に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その地域的範囲は、全国的な規模となる傾向がある。

また、製品の消費地への距離、消費規模等の市場接近性を指向する消費地指向型工業地等の中小工場地については、一般に製品の生産及び販売に関する費用の経済性に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向がある。

エ.移行地

同一需給圏は、一般に当該土地が移行すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、移行前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

 

② 農地

同一需給圏は、一般に当該農地を中心とする通常の農業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する農業経営主体を中心とするそれぞれの農業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

 

③ 林地

同一需給圏は、一般に当該林地を中心とする通常の林業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する林業経営主体を中心とするそれぞれの林業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

 

④ 見込地

同一需給圏は、一般に当該土地が転換すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、転換前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

 

⑤ 建物及びその敷地

同一需給圏は、一般に当該敷地の用途に応じた同一需給圏と一致する傾向があるが、当該建物及びその敷地一体としての用途、規模、品等等によっては代替関係にある不動産の存する範囲が異なるために当該敷地の用途に応じた同一需給圏の範囲と一致しない場合がある。


(解説)

同一需給圏とは、対象不動産と一般に代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。つまり、対象不動産と代替・競争関係が成立する不動産の存する圏域である。よって、近隣地域と相関関係にある類似地域等の存する範囲を規定し、このような類似地域を、「同一需給圏内の類似地域」という。そして、近隣地域と同一需給圏内の類似地域とは、隣接すると否とにかかわらず、その地域内の不動産相互の間で、代替・競争の関係が成立し、両地域はそれぞれ影響を及ぼすものである。

また、近隣地域の外かつ同一需給圏内の類似地域の外に存する不動産であっても、同一需給圏内に存し対象不動産とその用途、規模、品等等の類似性に基づいて、これら相互の間に代替、競争等の関係が成立する場合がある。〔図表6-6

 

 

同一需給圏は、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によってその地域的範囲を異にするものであるから、その種類、性格及び規模に応じて需要者の選好性を的確に把握した上で適切に判定する必要がある。

 

基準では、種別毎に同一需給圏の判定をする際の留意点を列挙している。この中で、地縁的選好性という文言があるが、これはその土地や地域について思い入れや、こだわりがあることであり、地縁的選好性があれば、その土地や地域から立地的に近い範囲を好むことを意味する。それ故、住宅地域の場合、例えば生まれ育った地域や市町村、あるいは両親のいる実家の近くでマイホームを探すこと等が多く、地縁的選好性が働くものである。それに対して、高度商業地は、いかに収益を上げられるかという観点で立地の選定を行うため地縁的選好性が働かないものである。しかし、商業地でも、普通商業地の場合は商店街のような中小規模の店舗をイメージするとよいが、自宅の近くで店舗営業をしたり、店舗併用住宅でそこで生活もするというケースが多く、地縁的選好性が働く傾向があると考えてよい。

 

見込地と移行地については、その種別が、転換や移行の前後で異なるため、熟成度の程度により同一需給圏の範囲の考え方が異なる。熟成度がまだ低い場合は、転換前、移行前の種別の同一需給圏と一致する傾向があり、熟成度が高い場合は、転換後、移行後の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。

 

建物及びその敷地の同一需給圏については、他の記載が土地の同一需給圏であるのに対して、建物及びその敷地は、対象不動産が複合不動産である場合の考え方である。この場合、「一般に当該敷地の用途に応じた同一需給圏と一致する傾向がある」としている。つまり、住宅地域内の戸建住宅が対象不動産であれば、敷地の用途は「住宅地」であり、住宅地(土地の同一需給圏)の同一需給圏と一致することが多いということである。ところが、後半では、「当該建物及びその敷地一体としての用途、規模、品等等によっては代替関係にある不動産の存する範囲が異なるために当該敷地の用途に応じた同一需給圏の範囲と一致しない場合がある。」とある。これは、住宅地域内に工場が建っているような場合をイメージするとよい。つまり、敷地の用途はあくまでも「住宅地(住宅地域の中にある土地の種別はあくまでも住宅地)」であるが、そこに土地の最有効使用とは異なる工場が建っている場合である。この複合不動産を市場で取引をする買主は、対象不動産と比較検討する不動産は、あくまでも代替競争関係にある工場であり、工業地の同一需給圏が前提となる。従って、敷地の用途である住宅地の同一需給圏とは異なる同一需給圏になることがある。

 

 

 

Chapter38へ≫

Chapter40へ≫

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

(1)近隣地域の地域分析について

① 近隣地域の地域分析は、まず対象不動産の存する近隣地域を明確化し、次いでその近隣地域がどのような特性を有するかを把握することである。

この対象不動産の存する近隣地域の明確化及びその近隣地域の特性の把握に当たっては、対象不動産を中心に外延的に広がる地域について、対象不動産に係る市場の特性を踏まえて地域要因をくり返し調査分析し、その異同を明らかにしなければならない。

これはまた、地域の構成分子である不動産について、最終的に地域要因を共通にする地域を抽出することとなるため、近隣地域となる地域及びその周辺の他の地域を併せて広域的に分析することが必要である。

 

② 近隣地域の相対的位置の把握に当たっては、対象不動産に係る市場の特性を踏まえて同一需給圏内の類似地域の地域要因と近隣地域の地域要因を比較して相対的な地域要因の格差の判定を行うものとする。さらに、近隣地域の地域要因とその周辺の他の地域の地域要因との比較検討も有用である。

 

③ 近隣地域の地域分析においては、対象不動産の存する近隣地域に係る要因資料についての分析を行うこととなるが、この分析の前提として、対象不動産に係る市場の特性や近隣地域を含むより広域的な地域に係る地域要因を把握し、分析しなければならない。このためには、日常から広域的な地域に係る要因資料の収集、分析に努めなければならない。

 

④ 近隣地域の地域分析における地域要因の分析に当たっては、近隣地域の地域要因についてその変化の過程における推移、動向を時系列的に分析するとともに、近隣地域の周辺の他の地域の地域要因の推移、動向及びそれらの近隣地域への波及の程度等について分析することが必要である。この場合において、対象不動産に係る市場の特性が近隣地域内の土地の利用形態及び価格形成に与える影響の程度を的確に把握することが必要である。

なお、見込地及び移行地については、特に周辺地域の地域要因の変化の推移、動向がそれらの土地の変化の動向予測に当たって有効な資料となるものである。


(解説)

①について

近隣地域の把握(近隣地域の明確化)と地域の特性の把握にあたっては、対象不動産を中心に外側に向かって地域要因をくり返し調査分析して、地域要因や地域の特性が異なるところで地域の範囲を区分していく。これは、地域要因を共通にするかという観点で把握していくので、どこまでが近隣地域でどこからがその周辺の地域になるかの境界線を見出すことでもあり、内側の地域要因と外側の地域要因を広く分析して近隣地域を把握することが必要である。〔図表6-4

 

 

②について

近隣地域の相対的位置の把握に当たっては、近隣地域や(同一需給圏内の)類似地域の地域の特性を把握して、それぞれの優劣を把握する。例えば、〔図表6-5〕のように、それぞれの地域の特性を有する近隣地域、類似地域A、類似地域Bがあるとする。各地域の優劣を判断し、優る順に並べ替えると、類似地域A、類似地域B、近隣地域の順となり、各地域の相対的位置関係が判断でき、近隣地域の価格水準を100とした場合に、類似地域Aは125、類似地域Bは110というように各地域の格差も見えてくる。

 

 

さらに、「近隣地域とその周辺の他の地域の地域要因との比較検討も有用」とあるが、この近隣地域の周辺の他の地域とは、近隣地域の周辺地域であり、類似地域ではないため近隣地域と利用のあり方の同一性はない。しかし、近隣地域とその周辺の地域との間に、一定の価格牽連性を認めうる場合がある。例えば、商業地域とその背後地の住宅地域などがわかり易い例で、商業地域の価格水準が100に対して背後の住宅地域の価格水準が60であれば、その関係を活用して、地域格差を見出すことができ、評価にあたって十分に参考となり得る。従って、近隣地域の周辺の地域の地域要因の分析、比較検討も有用であるといえる。

 

③について

価格形成要因についての資料を要因資料といい、要因分析は要因資料についての分析を行うこととなる(要因資料については、総論第8章を参照)。特に地域要因に関する要因資料を地域資料というが、近隣地域のみの資料を分析するわけでなく、より広域的に分析しなければならない。そのためには、案件が依頼されるたびに地域資料を収集するのではなく、日常から広域的に地域資料を収集し、分析することに努めなければならない。

 

④について

近隣地域の地域要因を分析する場合、要因自体が常に変動するので、まず要因の変化について過去からの推移を分析し、これを踏まえて将来への動向を予測しなければならない。つまり、時系列的な動態分析をしなければならない。このとき、やはり近隣地域内の要因分析のみを行うのではなく、近隣地域の周辺の他の地域の地域要因も動態分析し、この周辺の地域が近隣地域にどのように影響を与えるか(波及の程度)といった分析も行う必要がある。

また、地域要因を動態分析する場合に市場の特性が近隣地域内の土地の利用形態及び価格形成に与える影響の程度を的確に把握することが必要である。これは、市場の特性を把握することで、市場参加者の属性、行動、市場の需給動向を把握するが、需要者の属性や増加の程度等を把握し、近隣地域内の利用形態がどのように変化していくか、価格水準がどの程度上昇又は下落していくのかを把握しなければならない。

全ての地域が常に変化しているものであるが、特に異なる種別にまで変化しようとしている見込地や移行地の場合は、その変化の程度が大きいので、特に周辺地域の地域要因の変化の推移、動向がそれらの土地の変化の動向予測に当たって有効な資料となるものである。

 

 


(2)近隣地域の範囲の判定について

近隣地域の範囲の判定に当たっては、基本的な土地利用形態や土地利用上の利便性等に影響を及ぼす次に掲げるような事項に留意することが必要である。

① 自然的状態に係るもの

ア.河川

川幅が広い河川等は、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断する場合があること。

イ.山岳及び丘陵

山岳及び丘陵は、河川と同様、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断するほか、日照、通風、乾湿等に影響を及ぼす場合があること。

ウ.地勢、地質、地盤等

地勢、地質、地盤等は、日照、通風、乾湿等に影響を及ぼすとともに、居住、商業活動等の土地利用形態に影響を及ぼすこと。

 

② 人文的状態に係るもの

ア.行政区域

行政区域の違いによる道路、水道その他の公共施設及び学校その他の公益的施設の整備水準並びに公租公課等の負担の差異が土地利用上の利便性等に影響を及ぼすこと。

イ.公法上の規制等

都市計画法等による土地利用の規制内容が土地利用形態に影響を及ぼすこと。

ウ.鉄道、公園等

鉄道、公園等は、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断する場合があること。

エ.道路

広幅員の道路等は、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断する場合があること。


(解説)

近隣地域の範囲の判定(類似地域の場合も同様)に当たっては、基本的な土地利用形態や土地利用上の利便性等に影響を及ぼす事項に留意する必要がある。一般に前記に列挙された事項により地域が分断されることが多く、近隣地域の範囲を判定するに当たっての根拠となるものであるとともに、これらの事項に留意して近隣地域の判定を行う必要がある。

 

 

Chapter37へ≫

Chapter39へ≫

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

(1)用途的地域

① 近隣地域

近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容とを持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって、居住、商業活動、工業生産活動等人の生活と活動とに関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つものである。

近隣地域は、その地域の特性を形成する地域要因の推移、動向の如何によって、変化していくものである。

② 類似地域

類似地域とは、近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域であり、その地域に属する不動産は、特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを持つものである。この地域のまとまりは、近隣地域の特性との類似性を前提として判定されるものである。


(解説)

〔図表6-3〕を見ていただきたい。

近隣地域と類似地域の関係を表した図であるが、まず近隣地域とは対象不動産の属している用途的地域であり、この用途的地域とは、用途的観点から区分される地域のことである。地域を区分する場合、行政的観点からの区分をしたり、自然的観点からの区分をしたりすることも可能である。しかし、鑑定評価を行う場合に地域の区分はあくまでも用途的観点から地域を区分していき、分析することとなる。

 

 

さて、対象不動産の属する地域を用途という観点から一区切りした場合に把握される地域を、近隣地域という。そして、そこには用途に関して同一性を認めることができる不動産が地域の構成分子として近隣地域を形成しており、地域の特性(用途)が生まれる。図の場合は戸建住宅であるため、住宅地域ということになる。この地域の区分は、都市や農村といった規模の大きなくくりではなく、一般には「対象不動産を中心に北へ50m、東へ30m、南へ50m、西へ20m(←これはあくまでも一例)」といったように把握されるものである。

一方、類似地域も、近隣地域と同様に用途的地域であり、用途に関して同一性を認めることができる不動産の集合体であるが、近隣地域の特性(用途)との類似性を前提に把握される。つまり、近隣地域が住宅地域であれば、住宅地域が類似地域として把握されるわけである。ここで一つ理解しておきたいことがある。この類似地域という概念は、あくまでも近隣地域の特性(用途)との類似性を前提に把握されるものであり、対象不動産と代替・競争関係の成立する不動産が存する圏域(同一需給圏)内にその類似地域が存するか否かを問わない。言い換えると、近隣地域の特性(用途)との類似性があればどこに存しても類似地域となる。

なお、近隣地域の地域要因や地域の特性は、対象不動産の価格形成に直接の影響を与えるのに対して、(同一需給圏内の)類似地域の地域要因や地域の特性は、対象不動産の価格形成に間接的に影響を与えるものである。

また、地域要因の推移・動向により、近隣地域や類似地域もまた常に変化するものである。

 

 

 

Chapter36へ≫

Chapter38へ≫

いいね!した人  |  リブログ(0)

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。