おさるの読書ネタ・資格ネタ・日々あれこれ

会社役員⇒個人事業代表⇒システム責任者兼新規事業開発室長⇒平社員⇒ニート ⇒個人事業代表そしてまた平社員に。次は何でしょう? ※当ブログのAmazonのリンクから本を購入していただけると本代の足しになるので助かります~


テーマ:
【サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 】
池内 恵 (著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4106037866/

サイクス=ピコ協定 百年の呪縛


○この本を一言で表すと?
 中東の問題を歴史的な見地と現代の地政学上の見地から紐解いた本


○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
・ページ数の少ない本だと思っていましたが、各章のテーマごとに簡潔かつ十分に根拠や説明がされていて、充実した内容でした。

・歴史的な経緯が各時期の各民族、勢力の地図で説明されていてわかりやすかったです。

・2016年に起こった出来事など、最新の出来事をトリガーとしてテーマを論じるという手法のシリーズの一冊目で、今後も継続して出版するとのことなので、追いかけて購入したいなと思います。

・私はサイクス=ピコ協定について、「イギリスとフランスが中東を分割統治しようとした」程度の知識しかなく、バルフォア宣言、フサイン=マクマホン書簡と合せてイギリスの三枚舌外交の1枚程度の認識でしたが、中東問題の諸悪と世間で見られていること自体を初めて知りました。(第1章 サイクス=ピコ協定とは何だったのか)

・サイクス=ピコ協定がオスマン帝国崩壊後の国家の秩序を再び与えるための解決案であり、中東の混乱がヨーロッパの各国家の突出を招き、ヨーロッパ内の国際秩序に影響を与える西欧列強間の競争・対立に繋がる「東方問題」を解決するために締結されたという観点は興味深いなと思いました。(第1章 サイクス=ピコ協定とは何だったのか)

・サイクス=ピコ協定はそのまま実現されたわけではなく、諸勢力の台頭に応じて結ばれたセーヴル条約・ローザンヌ条約を経ているため、この三つの協定と条約を一まとまりのものとして考えるというのは正しい見方だなと思いました。セーヴル条約はサイクス=ピコ協定に関わったイギリス・フランス・ロシアのうち、ロシアが崩壊し、フランスが実効支配に伸び悩む中、民族主義勢力が台頭してサイクス=ピコ協定を植民地主義と批判する証拠と考え、現地勢力の意向を反映した条約だそうです。セーヴル条約が民族ごとに領土分割を考えるものだったことから、逆に民族が混在した中東地域に混乱を招き、セーヴル条約締結後にトルコ民族主義勢力として台頭したムスタファ・ケマルのアンカラ政府がトルコを実効支配したために条約内容を実現させることが困難となり、アンカラ政府をトルコ共和国として承認した休戦条約がローザンヌ条約で、この二度の実態に合わせた変更を経て現在に繋がっているという話は、ある程度流れを知っていたものの、断片的に理解していたものがすっきりと整理されて明確になったように思えました。(第1章 サイクス=ピコ協定とは何だったのか)

・アメリカ等の大国の介入や、トルコ・イラン等の地域大国の動きで中東は今後も様々な方向性で動く可能性について示唆されていました。(第1章 サイクス=ピコ協定とは何だったのか)

・クリミアを争った露土戦争と近年のクリミア併合を一つの流れとして考えるのは強引で、当時と現代では意味合いもかなり違うと思いますが、ロシアがクリミアを中東への橋頭保として現在はシリアに介入していることは興味深いなと思いました。(第2章 露土戦争と東方問題の時代)

・時代が変わっても、トルコが弱くても強くてもヨーロッパが困るという「東方問題」という考え方は面白いなと思いました。当時ではヨーロッパの勢力争いの温床として、現在では難民の防波堤として、意味合いは異なるものの、結果的に似たような見地に至るのは興味深いです。(第2章 露土戦争と東方問題の時代)

・トルコ・イラク・シリアに大きく分割されたクルド人の立ち位置が整理されていて分かりやすかったです。どの国でどういう勢力が築かれ、各国ごとに活動の内容が大きく違い、アメリカもトルコではテロ組織扱い、シリアでは味方扱いするなど、周辺の利害関係者も多様な対応をするなど、かなり複雑な話だなと思いました。「トルコのもう一つの顔」という本で、クルド民族自体が複数の民族をまとめた考え方で、クルド民族内にも少数民族が存在することなどが書かれていましたが、「民族」を区切ろうとすると様々な基準があり、民族問題を解決することはそう簡単にはいかないものだと改めて思いました。(第3章 クルドの夢はなるか?)

・民族主義で民族ごとに領土を認めると、強制的な民族移動や民族浄化に繋がり、民族虐殺にも繋がるというのは中東だけでなく様々な時代、地域で起こっていることだなと改めて思いました。抑圧的な政権が「アラブの春」などをきっかけとしてその力を弱めたことでその国を出る選択肢ができ、結果難民を増やすことに繋がっているというのは、完全な善・完全な悪などなく、立ち位置によって良し悪しが変わる世の中の姿を現しているように思えました。(第4章 再び難民の世紀へ)

・「アラビアのロレンス」という映画を通して当時と現代の中東国際政治について述べていました。現地勢力と国際勢力の思惑が交差して当地に影響を与えるというのは世界のどこでも変わらないと思いますが、中東ではそれが顕著だなと改めて思いました。(第5章 アラビアのロレンスと現代)


○つっこみどころ
・過去の歴史との対比にこだわり過ぎていて、100年前のサイクス=ピコ協定とその後の2つの条約が定められた状況とは大きく異なる現在に対しても当時の再現である、当時の状況が潜在的に継続しているという主張はこじつけ感が強いなと思いました。
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