銀行の為替デリバティブ商品 「得している間は・・」の議論
テーマ:デリバティブ銀行の為替デリバティブ商品による損失・被害・倒産が社会問題になっている。
昨日(10日)も事務所に「為替デリバティブ問題対策セミナー」のFAXが入った。丸山和也弁護士・自民党参議院議員や、金融ジャーナリスト森岡英樹が15日、東京で弁護士向けの講演するという。
銀行のデリバティブ商品が社会問題として表面化した要因の一つに、東京商工リサーチの倒産情報がある。同社は以前より、「円高倒産」の統計を取っている。
円高で利益を上げるはずの輸入企業が、銀行のデリバティブ商品で次々に倒産していることが、数字で示された。
なお、銀行のデリバティブ商品が輸入企業に集中している点は、
・統計 → 金融庁の調査結果
・理由 → 以前のブログ記事
----
■「得している間は・・・」の議論の不当性
他方、デリバティブ商品を購入した中小企業に対して、次のような批判もある。
「得している間はメリットを享受して、損失が出てから銀行を非難するのは、いかがなものか」
デリバティブに詳しくない多くの弁護士や裁判官は、上記の印象を持つことが多いかもしれない。
しかし、デリバティブ倒産の原因となっている銀行の通貨デリバティブ商品については、上記批判は当てはまりにくい。デリバティブに詳しい元大手銀行の外為担当者として、断言できる。
それは、将来のリスクの対価が、初期の利益に置き換えられているからです。
■絶大なリスクの対価としての、初期のメリット・利益
つまり、デリバティブ倒産(通貨デリバティブ損失倒産)の原因となっている通貨オプション複合商品は、長期一括契約であり、
1)リスクの大きいロングタームのオプションの売り
2)1)のリスク料の代わりとして、短期では勝って当然のオプションの買い
が組み合わされているのです。
オプションの取引では、リスク・メリットが大きいほど、オプション料が高くなる。
直物が110円の場合、100円に到達するリスクは、1ヶ月、半年、1年、3年、5年と、期間が長期になるほど高くなる(ディスカウント+ボラティリティ)。そこで、オプションの売り手は、絶大なリスクを負う対価として、多額のオプション料を取得できる。
ところが、現在問題となっている銀行の為替デリバティブ商品においては、中小企業は多額のオプション料を受け取っていない。代わりに当初は利益となる(or利益となる可能性が極めて高い)取引が締結されている。
長期オプション(売)の絶大なリスク(倒産するほどのリスク)の対価としての、多額のオプション料金が
ア 銀行の莫大な収益 (暴利と言って良い)
イ 中小企業の、当初は勝って当然の有利なオプション(買)取引
に置き換えられて、「ゼロコスト」になる構造です。
従って、問題の商品においては、当初は利益が出るのが当たり前であり、これは、本来受け取ることが出来るリスク料(オプション料)の代わりの(しかも、大幅な銀行利ざやを引かれた上での)メリット、という構造になっています。
相談を受けた弁護士や、事案を担当する裁判官は、
「勝っている間」「利益が出ている間」はメリットを享受し、損失が出てから問題を訴えるのはおかしい、
という印象を受けるかもしれない。しかし、これは誤りだと言って良い。商品そのものが、そもそも、そのように仕組まれている。
将来の莫大なリスクの対価として、当初は勝って当たり前のポジションが組まれている、というのが、デリバティブ倒産の原因となっている銀行の為替オプションのトリックです。
相談を受けた弁護士、訴訟を担当する裁判官が、このような仕組みを早期に理解することが、問題の適正な解決に不可欠であるように思う。
1 商品性
2 適合性
3 説明義務
4 (銀行の)暴利
という4点において、非常に問題が大きい商品・取引内容であることについて、充分に見抜いて欲しい。








