弁護士法人 大阪弁護士事務所 

代表社員弁護士 重次直樹 (本部)重次法律事務所

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2017-02-18 11:10:04

高裁事件:増額和解と控訴審からの当事者参加

テーマ:金融経済・政治

今週は,高等裁判所に何度も行きました。

 

一つは,交通事故の被害者(過失0)が,加害者(保険会社は三井住友海上火災)から「債務不存在確認訴訟」を提起された事案です(一審で棄却確定)。これを受けて,被害者は(もともとは寛大な処分を求めていましたが),逆に加害者の刑事告訴を行い,有罪判決が確定し,加害者に交通前科が付きました。民事の一審(被害者の反訴請求)は200万円弱(+遅延損害金)の一部認容判決でしたが,高裁の和解勧試は300万円で,訴訟上の和解が成立しました(既取得を含め500万円台後半,治療費以外500万円余)。怪我との対比では取り過ぎですが(自賠責の後遺障害非該当のむち打ち),職種(運搬運転)と勤務先の規模・対応から,退職を余儀なくされ,再就職も容易でない高年層の方の事例です。退職による損害はずっと大きいので,日本の損害賠償額の小ささに,ため息が出ます。弁護士保険がなければ,手取りは更に減っていました。

 

もう一つは,新聞記事にもなった事件の控訴審で,独立当事者参加をしました

29.2.14に事件番号の調査を始めてから,急速に話が進み,同日に閲覧・謄写,2.15追加閲覧謄写,2.16被控訴人の役員と面談,控訴人(団体理事長)と面談,(独立)当事者参加申出書の作成,2.17朝一番で高裁に参加申出書を提出,という,駆込み乗車的な手続きでした。既に高裁での第一回期日が終わっており,ゆっくり出来ませんでした(高裁は期日一回で結審が多い)。

 

控訴事案は,一審と同じ内容での決着が多く,知人の高井重憲弁護士のサイト(控訴審専門サイト)によると,司法統計上,平成24年の全高等裁判所における控訴審の統計では,判決1万1429件中,棄却が8839件(77%)です。

http://www.kouso-soudan.net/category/1990137.html

 

控訴審にも,地裁→高裁と,簡裁→地裁があります。地裁→高裁の方が,棄却率が高くなっています。たとえば,司法統計によると,平成27年度では,控訴審のうち,

・地裁→高裁 判決8935件中,6749件が棄却(76%)

http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/528/008528.pdf

・簡裁→地裁 判決3248件中,2228件が棄却(69%)

http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/519/008519.pdf

 

※高裁は第37表,地裁は第28表です(手違いかシステムエラーか何かで,リンク先が両方地裁に変わっていましたので,修正しました。) 司法統計の検索画面は以下。

http://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/search

 

控訴審では,和解でも,「判決になっても原審と同じ判断ですが,和解しませんか?」,という勧試も少なくないのが実情です。取消判決も,原判決を少し変えた程度も含まれます。取下げも多く,大逆転の比率は少ないのです。

 

以上が,交通事故事件で既払い+300万円では本当は不満でも,控訴審としては大満足で和解した理由であり,独立当事者参加を,駆込み乗車でも,するしかないと思った理由です。

 

新聞記事にもなった事件の独立当事者参加については,詳しく書けませんので,本稿はここまでです(可能になれば,報告します)。

 

---【追記1】-------

高裁の民事控訴事件(ネ号事件)の終局区分については,大阪弁護士会の山中理司弁護士が,平成12年から平成27年まで,まとめていますので,紹介します。16年間の総計では,判決のうち棄却は75%です。

http://media.toriaez.jp/m0530/415455462347.pdf

終局区分のまとめページ

http://www.yamanaka-law.jp/cont7/115.html

山中理司弁護士のサイト(トップ)

http://www.yamanaka-law.jp/index.html

 

---【追記2】-------

逆に,地裁1審は認容率が高く,平成27年の司法統計では,判決のうち棄却は16%(欠席裁判を除いても25%)です。

http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/510/008510.pdf

(19表。判決59874件中,棄却は9414+113=9527件:判決の16%)

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2017-02-05 09:31:34

「スノーデン」 (オリバー・ストーンの映画)

テーマ:金融経済・政治

昨日(29.2.4),高校時代の同級生の誘いで,映画「スノーデン」を見た。

 

彼は誕生日が私と全く同じだが,以前に母を亡くし,最近,父が脳梗塞で倒れ,食事も話もできない状態になっている。先日,誘いの電話が行き違いになって,会って話が出来ず,代わりに昨日,昼前から夕方まで一緒に過ごした。昨日は,家族や死生の話になると思っていたら,その件は,気持ちの整理がついたようで,余り話題にならなかった。

 

彼の父が入院している近くに美味しい豆腐屋があり,私も土曜に車で買いに行くので,お店の紹介も兼ねて彼用に豆乳と厚揚げを買って届けに行き,そのまま私の自宅に連れてきてお茶をしたのち(「御用邸」というチーズケーキが買ってあった),梅田に出かけた。

 

彼は兼業で米を作っており,最近は研究熱心で有機栽培に成功し,昨年の米は特に美味しかった(我が家も彼の有機米を買っていて毎日食べている)。そこで,梅田が本拠の私は,米のご飯が美味しい店に連れて行き,注文の都度,一人一人,釜でたくご飯を食べた。13分待ちだが,その間に頼んだ一品の「山芋たんざく」が気に入ったようで,「合鴨ロースト」「牡蠣佃煮」 など,すでにセットでおかずも注文しているのに,彼は一品注文を連発していた。昨日の炊き上がりはよくない方だったが,それでも,お店の味は,気に入ってもらえたと思う。私はご飯を大盛にして,一杯目を玉子ご飯,二杯目を白飯で食べた。おかずは,よく注文する「豚肉せいろ」のセットにした。彼のおかずはお店が注文を間違え,少し待たされる間(「かつおのたたき」だったので,その後,すぐに来た),私の豚せいろを少し分けたところ,それも気に入っていた。

 

食事と違って,映画は,映画として余り面白くなく,ドキュメンタリーとしても,知っている内容がほとんどで,目新しさはなかったが,いろいろと考えさせられる内容だった。

 

私は20年以上前,銀行の調査室で情報通信業界を担当しており,同業界の政治性,諜報機関との関係,NSAの存在と活動内容については,知識があった。アメリカが同盟国を含めて世界中を組織的に盗聴しており,NSAの活動にIT企業が協力していることなど,当たり前の事だった。既に1960年代には,全世界の各家庭,企業,公共団体を全て盗聴できる通信システムの構築を,米国は国家政策としていたことも,何かの本で読んでいた。

 

他方,20数年前の調査室時代と異なるのは,米国が更に進んで,インフラを破壊する悪意あるウィルス(マルウェア)を埋め込んで,実際に攻撃するなど,サイバー戦争の時代に入っていること。

 

これも,イランの核開発を妨害した「スタックスネット」が報道されているし,福島原発事故について,スノーデンと同じく元NSAのジム・ストーン氏が,福島事故はサイバー攻撃が真相だと訴えたり,元ジャパン・タイムズ編集長による「島津論文」が,福島事故と「スタックスネット」の関係を含む福島事故の裏事情を解説するなどしている。

 

もっとも,日本のインフラへのマルウェア設置・サイバー攻撃について,ジム・ストーンや「島津論文」により伝えられるのと,スノーデンの証言が巨匠オリバーストーンにより映画化されるのでは,影響力が格段に異なり,信ぴょう性も変わる。

 

スノーデンは日本のアニメやゲームのファンで,これがコンピュータや日本語に詳しくなるキッカケにだった。NSAの局員として,日本の横田基地に勤務したスノーデンの告発として,実際に,米国が日本のインフラにマルウェアを埋め込み,日本が同盟国でなくなった場合には,いつでもインフラを破壊できる状態にしている,という映画の内容は,目新しい情報ではないとしても,情報の信ぴょう性や影響力を大きく増したことは,間違いないだろう。

 

映画は午後3時からの部で見たが,1時間前にチケットを買った時は,残りわずかで,並んで見られる席は最前列か2列目の片隅だけで,それ以外で残っていたのも,2席だけだった。

 

内容から,公開する映画館も多くないだろうし,公開期間も長くないかもしれない。

 

情報通信システムと諜報活動・サイバー攻撃について,予備知識のない人には,衝撃の内容かもしれない。

 

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日本はサイバー技術で米国に圧倒的に劣っており,中国やロシアも米国からは大きく遅れている。

 

圧倒的なサイバー技術を有する米国に,横田基地など提供する施設を利用されて,インフラ破壊のマルウェアを埋め込まれている,という元NSA,元日本勤務のスノーデンの証言を,巨匠オリバー・ストーンの映画で伝えられた日本は,どうするべきなのか?

 

サイバー技術の向上や人材育成に努めることが,喫緊の課題とされるだろう。

 

他方,スノーデンが告発に踏み切ったのは,(彼の告発がフェイクでないなら)「良心」からと思われる。

 

日本のゲームやアニメのファンで,それが高じて,コンピュータや日本語に詳しくなり,日本人・日系人も多いハワイでも勤務し,日本でのインフラ攻撃用のマルウェア設置などのNSAの活動で良心的に葛藤し,福島原発事故(2011.3.11)後の2012.12までに告発の具体的な準備行動を起こし,2013.5に告発に成功した,という経緯であれば,サイバー空間の力と技術で対抗することより,アニメや文化で自然に日本ファンが増えるなど,人的・文化的交流の厚みが増して行くことのほうが,案外,安全保障に資するかもしれない。

 

いずれにしても,IT技術が,国にも個人にも企業にも,非常に重要な時代が続くことは間違いなく,必ずしも学校教育での比重が大きいとは言えないIT技術や,その活用について,各自が研鑽を積むことが重要だと思います。

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2016-11-14 19:14:31

トランプの移民政策と,ジョージ・フリードマン「100年予測」

テーマ:金融経済・政治

メキシコ国境に万里の長城を築く,費用はメキシコに払わせる,というトランプの主張は,荒唐無稽で暴言の代表のように伝えられる。

 

他方,メキシコ・ヒスパニック移民は,この先100年の米国最大の脅威との指摘がある。

 

未来予測本のベストセラー,ジョージ・フリードマンの「100年予測」(原題「THE NEXT 100 YEARS」,早川書房)である。

 

 

著者のフリードマンは,「影のCIA」の異名をとる情報機関ストラトフォーの創設者,と謳われる。

 

この本は,興味深く,未来予測本の中でも価値があると思い,複数,保有している(文庫本は手元に複数,単行本もどこかにあると思う)。

 

内容は,国際関係を中心としつつ,幅広い問題を扱う(例えば女性の社会進出)。

 

中心テーマの国際関係では,以下を大胆に予測する。

 

・21世紀初めに,米国に挑戦するのはロシアだが,かつての冷戦時ほどの力はなく,またもロシア崩壊で終結する   ※中国は本質的に不安定で,張子の虎

 

・21世紀半ばに,日本・トルコ・ポーランドの三国が,対抗勢力として傑出するが,米国はポーランドを取り込んで日本・トルコを締め付け,宇宙戦争で勝利する

 

・戦争に勝った米国は,2060年代に黄金時代を迎える

 

21世紀の終盤,経済大国に成長したメキシコが,米国内の膨大な移民と呼応して,米国の覇権に挑戦する

 

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移民問題・メキシコ国境問題は,現在の問題である。

 

他方,今世紀末頃,メキシコは経済大国となり,米国内の移民と呼応して,今世紀最大の米国の挑戦者となる,と予測されている。

 

太平洋・大西洋に囲まれ,「ユーラシア分断政策」(日露離間,日中韓離間を含む)で安全と繁栄を保つ,という米国の基本政策によって,解決できないのが,メキシコ問題・移民問題である。

 

トランプの主張を,荒唐無稽と一笑に付すべきでないように思われる。

 

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2016-11-10 09:13:54

トランプ勝利

テーマ:金融経済・政治

米大統領選で、ドナルド・トランプが当選した。

 

(左はベストセラーのトランプ自伝、右はトランプが通った教会の牧師のベストセラー※)

 

日本では、マスコミの論調も含めて、

・トランプはいずれ失速、当選しない

・トランプが当選すると大変なことになる

・トランプ=暴言、差別主義、下品  vs  ヒラリー=知的、常識的

・トランプ=保護貿易・孤立主義  vs  ヒラリー=自由貿易・同盟尊重

といった理解・報道が多かった。

 

マスコミや「識者」の論調を、そのまま信じるのは危うい。

 

1992年も、日本のマスコミはクリントン当選を予測できず、直前まで父ブッシュの再選を当然視していた。

 

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トランプが共和党予備選で当選し、本選でも当選して、私はむしろ、良かったと思っている。特に、ジェブ・ブッシュの当選を阻んだのは良かった。ブッシュ父子は中東で戦争し、罪のない民間人を大量に殺して、日本に資金を要求した。ヒラリー当選なら、4年後は共和党に代わる可能性が高くなり、ブッシュ出馬の危険性は,より高くなっていた。

 

ヒラリーも軍事産業とのつながりが指摘されている。

 

トランプが当選して、米国のロシアに対する危険で挑発的な政策(ウクライナ・シリアなど)が改善されることを期待する。ウクライナやシリアでも多くの民間人が殺されている。シリアは難民問題の起点にもなっている。トランプはロシアとの関係改善を主張し、ISへの米政権の関与を批判してきた。日露関係には好影響を与える可能性が高いと思う(日露分断は米国の伝統的政策ではあるが。。)。

 

ブッシュ政権のWTCテロ対応批判、米政権のIS関与批判など、トランプは大胆に発言していた。

 

米国人はマスコミに騙されることなく、良く見ている、と、今回のトランプ当選を見て、思った。

 

911当時のNY市長,ジュリアーニ氏も,トランプ氏を支援している。

 

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元NHKアナの木村太郎氏は、28.3.4、関西のテレビ番組で、「トランプ当選確率は99%、残りの1%は暗殺の危険」と大胆に予測しており、今回、見事に的中した。(直前、ヒラリー優勢が伝えられた時期も、トランプの可能性は充分あると発言していた)

 

私も同じような見方をしていて、ニックネームアカウントに次のように投稿していた。

・28.5.21 

28.3.4木村太郎が関西ローカルで話したことは正解。(3.5ツイート)トランプが大統領になる可能性はかなり高い、という木村太郎の意見は同感だ。日本には共和党の大統領の方が良い、という意見には同意できないが・・・キッシンジャー・ニクソン・父ブッシュは日本には過酷な政策を取った。

・28.5.21

米大統領選,2.21に書いた通りになってきた。…英語が理解できるなら、ヒラリー演説のつまらなさ、トランプの面白さが分かる筈。何時までも本命ヒラリー、トランプはいずれ失墜という学者・評論家の解説を信じるのは危うい。1992年も日本のマスコミはクリントン当選を予測できなかった。

・28.3.5

トランプが大統領になる可能性はかなり高い、という木村太郎の意見は同感だ。日本には共和党の大統領の方が良い、という意見には同意できないが・・・キッシンジャー・ニクソン・父ブッシュは日本には過酷な政策を取った。

・28.2.21

英語が理解できるなら、ヒラリー演説のつまらなさ、トランプの面白さが分かる筈。何時までも本命ヒラリー、トランプはいずれ失墜という学者・評論家の解説を信じるのは危うい。1992年も日本のマスコミはクリントン当選を予測できなかった。

 

ただ、トランプ夫人がオバマ夫人の演説を盗用した際は、「この人がファーストレディはまずいかな」と思った。その後の世論調査でヒラリーがトランプを引き離したため、トランプはダメなのかな、と感じた時期もあった。他方、ヒラリーは直前の世論調査で圧倒していた筈のサンダースにも苦戦しており、米世論調査は当てにならず,木村氏と同様、トランプの可能性は充分あると思っていた。

 

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本選後の演説を聞くと、ヒラリーは理屈っぽく、学者の講演のようだった。トランプは親分肌を示し、堂々としていた。長年、企業のトップを務め、テレビで高視聴率を取っただけあると思う。

 

レーガンは、父ブッシュに知性では勝てなくても、謙虚さ、語り口の柔らかさで、好感度は抜群であり、予備選で父ブッシュを圧倒し,大統領も2期8年務めた。父ブッシュは予備選でレーガンに歯が立たず,副大統領に甘んじた後,大統領を1期だけ務めた。

 

ゴア元副大統領も、知性で子ブッシュを圧倒したが、尊大な感じで、話もつまらなかった。クリントン・ゴア政権の8年の繁栄を引き継いで当選が当然視された時期もあったが,クリントンの女性醜聞もあり,接戦の末,落選した(ただし,フロリダの投票結果には不正選挙の疑いがある。当時のフロリダ知事がジェブ・ブッシュ)

 

ヒラリーはゴア氏に似ており、選挙向きの人柄でない。

 

レーガンに学んだトランプの勝利は、自然な結果だと思う。

 

 → 関連記事 トランプ,「成功のための10の法則」

 → YOU TUBE  ドナルド・トランプ「成功のための10の法則」 

 

 

※冒頭写真左の「積極的考え方の力」は,原著と翻訳にかなりの違いがあること,キリスト教関係の記載が多いことには,注意が必要です。冒頭写真右の「トランプ自伝」は単行本ですが,絶版で,現在,文庫本が購入可能です。

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2016-10-04 18:20:34

放射線診断専門医の画像所見…交通事故による高次脳機能障害など脳神経関係

テーマ:交通事故

先日,紹介された放射線診断専門医を訪問し,交通事故の被害者の画像をいくつか見ていただいた。

 

特に,高次脳機能障害が強く疑われる事案,頚椎症性脊髄症の事案など,脳神経関係については,自賠責が後遺障害の等級認定に消極的であることが知られている。例えば,高次脳機能障害については,労災では14級から認定があるが,自賠責では9級からであり,いわゆる3要件(脳外傷の傷病名,事故直後の意識障害レベル,画像所見)が必須と言われている。

 

脳神経関係は未解明の事象も多く(高次脳機能障害も比較的最近になって解明された),骨折などと比べて画像等の他覚所見による立証が難しく,医師の中でも画像の専門家である放射線診断専門医からヒントやアドバイスを頂ければと考えて,訪問した。1時間の面談時間で複数の事件を相談したが,大変有意義だった。

 

例えば,高次脳機能障害が疑われる被害者の脳の画像について,「脳の委縮」「びまん性軸索損傷の痕跡」について,当日持参した多数の画像の中から,放射線診断専門医の指摘は素早く,的確と思われた。

 

上記画像を,医学書の典型的な高次脳機能障害による脳委縮の画像例と比較すると,一見して明白な委縮は,直ぐには分からない。

 

しかし,放射線診断専門医は,上記写真の右側上部(実際には前頭葉の左側)が,左側上部(前頭葉の右側)と比べて,丸みが欠けて尖って小さくなっており,「脳の委縮」は明白であると指摘した。しかも,当日持参した数百枚の画像(MRI,CT,XP等)の中から,速やかに選び取って指摘した。

 

上記写真の上部右側にある赤丸の左下部分には,脳の中心より右側(実際は左脳)だけ,脳溝が拡大している。また,同じ赤丸の中央やや下の部分には,脳萎縮が認められる左脳側(写真では右側)に,びまん性軸索損傷とみられる白い影が見られる。

 

びまん性軸索損傷の白い影は,上記写真でも,写真中央より右側(実際は左脳側)に見られる。

 

医学書の掲載事例と比べると,脳萎縮は分かりにくいが,同医師によれば,専門書の画像は,「ホームラン事例」であって,そのような例は少ない,との説明だった。

 

確かに,教科書事例に比べて脳委縮の程度は小さいが,指摘された部分は,確かに脳の委縮,脳溝の拡大が見られる。委縮が見られる左脳側に,びまん性軸索損傷と見られる白い影も見られる。

 

1時間の間に,数名の交通事故の被害者について画像診断を求めたが,指摘は素早く,的確と思われた。

 

上記写真の事件は,当初,他の弁護士が受任していたが,ビジネス系の弁護士で,おそらく高次脳機能障害の知識に乏しく,本人の性格上の問題について,事故由来の性格変化との認識はなく,コミュニケーションが取りにくいと説明していた。

 

他の交通事故の被害者の紹介で,事故から1年8か月後に受任したものの,容易でない。

 

既に全国展開する交通事故専門の行政書士グループ(関連会社に医療コンサルもある)によって,自賠責保険への異議申立,損害保険料率算出機構への異議申立を済ませている。

 

同事務所の努力により,非該当から12級に3ランクアップされたが,非器質性での認定であり,器質性の高次脳機能障害は「0回答」のままだった。

 

同グループにより機構への異議申立も行ったため,再度の異議申立は出来ない。高次脳機能障害を主張して訴訟を提起するか,非器質性の後遺障害12級を前提とする示談や紛争処理センター申立てを行うしかない。

 

訴訟も見据えて模索する中,紹介された放射線診断専門医を訪問して,本当に良かった感じている。頚椎症性脊髄症の事案についても,有力な材料と思われる指摘を複数いただいた。

 

もっとも,高次脳機能障害による脳の委縮が顕著になるのは,事故から6か月以上経過してからであり,当該被害者の画像はCTは多数あるものの,MRIは3か月後のものしかない。現在,高精度のMRI画像を取っていただくよう,家族の方にお願いしている。

 

高次脳機能障害に関する医学書を多数読んでも,当該被害者の何百枚ある画像のどこがポイントか分からなかったが,専門医の指摘で一挙に打開された感じがした。もちろん,当方も医学的に勉強し,医学上知識を持って整理して専門医に説明したのであり,また,「脳萎縮」「びまん性軸索損傷」の重要性について知識があったから,専門医に質問し,その説明を理解できた。医学書による基礎知識の習得は重要であり,勉強せず医師に任せきりでは,医師に質問できず,医師の説明を理解出来ない。

 

医学書,主治医との面談のほか,画像では放射線診断専門医のアドバイスは有力な助けになると感じた。医学的に難しい事案の訴訟や交渉において,今後,活用したいと思う。

 

 

関連記事

 → 医学書と交通事故の後遺障害・等級認定の異議申立

 

 

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