2009-05-18

今日の透析ちゃん

テーマ:透析日記(回顧録)

今のところ知っている人はごく身近な人に限られているが、
オレは腎不全を患っている。
腎臓移植か人工透析を受ける以外に、生きる道が無い。
オレは一般的に言うところの身体障害者だ。
今年1月に身障者デビューを飾ったオレは、今、週に2回透析を受けている。

今日は透析の日だったわけだけれども、最初に「透析です」と言われた時、
オレはもちろん驚愕したし恐怖を覚えた。
その感情はどこから来るかというと、「未知」からなんだな。
みんな、透析なんて知らないでしょ?
人工透析なんて名前ぐらいしか知らなかった。

とにかく大変な負担だということとか、知識はそれだけ。

どこで、どういうことを、どのぐらいするのかも知らない。
そんなオレが、ある日病院に行って約1時間後には透析を宣告される。
生まれて初めて、めまいを感じた。

そして今のオレはどうかというと、
本当のところ、これでけっこう幸せだ。
腎臓機能は失ったけど、それ以上に得たものがたくさんあったり。
これは決して負け惜しみではない。
オレは腎不全を告げられてから今まで、健常者を羨ましく思ったり妬んだりしたことは一度も無い。
その境地の顛末というのは、基本的に家に引きこもり、

原稿と向かい合うばかりの漫画家にとってかなりスリリングで面白いものだった。
いつかこの話をマンガにしてやろうと思っているので、

そのための備忘録の意味も込めて、

今後透析日、月曜と金曜は「腎不全ブログ」といたします。
よろしくお願いします。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
10月25日

この日付は多分今後も忘れないと思う。
「i.d.」第3話の原稿、下書き3ページ目。

その時オレは、ふと喉が痛くなりかけていることに気付いた。
また風邪か。
ここ数年、風邪となると喉にくるようになっていた。
別に気にすることもなく、そのまま仕事を続けて就寝。

次の日は、残念なことに喉がばっちり痛い。
仕事を休むわけには当然いかないので、うがいするやらルル飲むやらで症状をごまかす。

夕飯。
その日はオムライスでした。
オムライスが好き!とかいうと限りなく子供っぽいけど、

まあ好きなわけですよオムライス。
でもその、好きなはずのオムライスにまったく食指が動かない。
吐き気がする。
半分ほど食べたところでギブアップ。部屋に戻り、仕事に戻ることにした。

椅子に座って一息。
「……」
おかしい。
吐き気が引かない。
ただ椅子に座ってるだけなのに吐き気が引かないって。
オレは基本酒に強い方なので、今まであまり吐いた経験が無い。
経験が無いから吐くのに慣れてなくて、いざ吐くとなるとちょっと恐怖を感じる。
なんとか落ち着けようと深呼吸した。

でも、こみ上げる波は一向に収まらない。そしてついにその波が喉を越えた。
間一髪でトイレに駆け込んで、そういう意味ではセーフ。
「メシ食って吐き気がするなんて、今まで無かったな。でもまあ、風邪だからな」
無惨にトイレに浮き崩れるオムライスを横目で見ながらむりやり納得。

2~3日して喉の痛みは治った。
しかし、食事時の吐き気が収まらない。

普段は平気なのに、食事を喉に通すと猛烈な吐き気がこみ上げて来た。
「なんで!」
考えてみて、どうもこれは「i.d.」の原稿に入れ込み過ぎて、
それがストレスになっているのではないかしらという説にたどり着いた。

うん、それしかねえや。
恋人との電話でオレは笑ってそう話した。
確かに今回の第3話はノリが悪かった。

きっとそのせいで胃でも痛めたんだろうて。

11月

「i.d.」入稿。
いまだ吐き気収まらず。困ったわね。
入稿を終え時間ができたので仕方なく、地元の医者へ。
最初に問診票みたいなのに記入する。

その時にもばっちり、「ストレスのため吐き気」って書いた。
オレはどうもこういうヘタレなとこがあるんだ。
具合悪くて医者行ってるくせに、なんか重大な病気だったら困る!と思って、症状を軽めに言ってしまう。
実際に診察の時になっても、

「ストレスなんです。どうもね、仕事忙しいし…」

と、ストレスに起因するという結論に自ら医者を導くようなマネをした。意味無い。
そして見事、

「ストレス性の胃炎でしょう。漢方出しときますから」

という診断を勝ち取った。
勝訴!
「初診だし、血液検査だけします?」

と言われ、オレは思わず拒否る。
血液検査なんかやって、なんか重大な病気だったら困るじゃん!

こうしてヘタレなオレは漢方をゲットし、その日の夜に予定されていた
飲み会に合流した。

「岸さん、なんかやつれてないですか?顔色も良くないような…」
飲み会メンバーの一人が言った。
「いやー、仕事のストレスでちょっとね。でも薬もらってきたんで!」
もうすっかりストレスのための吐き気教団の一員になったオレは、ハイに答える。
実際その飲み会では普通に飲み食いが出来た。

「ほら!な!ほらあ!」とオレは周りの心配をよそにテンション高かったけど、

今思えばあれは薬を貰ったという暗示にかかってたんだろうな。

そして11月2週目。
「i.d.」第4話の原稿に取りかかったオレは、再び吐き気に襲われた。

やっぱりまた、食事時。
食い物を口に入れた途端、それが戻ってこようとする。やべえ漢方効かねえ。
「つまりこれは、やはり『i.d.』の原稿が原因だ!」
今思えばまことに滑稽だが、当時のオレはそう信じて疑わなかったし、

というかそう信じたかった。
まさか、なにか病気にかかっているなんて、そんなさ。

「なんか漢方が効かない感じです。相性が悪いようなのです」
オレはまた医者を「誘導」して、別の漢方をゲットした。

これで大丈夫!

でも、


いくら真面目に薬を飲んでも


まったく


吐き気は引かなかった。


「これは…おかしいんではないだろうか」
毎晩、こう考えて寝た。明日は体調が戻っていますように。
朝になり、食事のテーブルにつき、一口食べる。
ダメだ。今日もダメ。
いや、でも食わないと死ぬ。
手に汗かきながら、必死に吐き気を散らしつつ、なんとか一口ずつ飲み込む。
そのうち食事を見るだけで吐き気に襲われるようになった。
ここまでくると食事が苦痛になってくる。
おかしいと自分で思いながらも、それでも医者にきちんと行こうとは思わなかった。
ヘタレももはや芸術の域。

その頃、オレは家族と折り合いが悪かった。
具体的内容は差し控えるが、そのためオレは今度はこの吐き気の原因を家族にぶつけていく。
この折り合いの悪さがストレスとなっているのだ!
オレが家族と過ごす時間はどんどん減り、

裏付けのない被害者意識を抱えたまま、部屋に閉じこもって原稿と対峙するようになっていった。
オレはこの時毎晩のように恋人に、家族の悪口を吐き出していた。
まさに身も心もぼろぼろの状態。


そしてある夜、風呂に入ろうとして気付く。

洗面台の鏡に映った裸の自分の姿。
びっくりするぐらい痩せていて、あばらが見えていた。
少し太っているぐらいだった腹はみんなどっかへ消えちまったよう。

そんな状態でも、仕事はできた。
どれだけ体調が悪くても、原稿に向かうと気力が戻る。

「やっぱオレにはこれしか無えぜい」
そんな風に前向きに考えたところで、実のところそれはただの言い分けでしかない。
原稿が忙しいから、原稿に向かえば大丈夫だから、そうやって診察を先送りにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つづく

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