全仏オープン男子シングルスの決勝で、ジョコビッチがマレーにセットカウント3-1で勝ち、全仏オープン初優勝を果たしました。

 

これでジョコビッチは、全豪・全仏・全英・全米と全てのグランドスラムで優勝したことになり、生涯グランドスラムを達成しました。また、昨年の全英から4大会連続でのグランドスラム優勝となり、ジョコビッチ1強時代となったことを印象付けました。

 

ジョコビッチは2008年の全豪オープンでグランドスラム初タイトルを取りましたが、その後はフェデラーとナダルの厚い壁に阻まれ、中々グランドスラムのタイトルに届きませんでした。

 

しかし、徐々にランキングを上げていき、2011年の全豪で2回目の優勝をすると、その後の大会でも勝ち続け、クレーコートシーズンに入ってもナダルを破ってマスターズ1000の大会に優勝するなど、破竹の勢いで7大会連続優勝して無敗のまま38連勝で全仏オープンに臨みました。

 

当時はナダルがクレーコートで無敵を誇っていましたが、全仏前のマドリードとローマの大会でナダルを下して2大会連続優勝し、ナダルの牙城を崩し始めていました。

 

全仏でもナダルとともに優勝候補に挙げられ順調に勝ち上がりましたが、準決勝でフェデラーに敗れてその年の連勝がストップしてしまいました。しかし、その後の全英で優勝して、初めてランキング1位となり、全米でも優勝します。

 

2011年はグランドスラム3大会、マスターズ1000でも5大会に優勝して、年間最終ランキング1位になりました。

 

それからもグランドスラムタイトルを取り、今回の全仏前までに全豪6回、全英3回、全米2回と、合計11回のグランドスラムタイトルに輝きました。

 

一方で、下の表のように全仏は昨年まで決勝に3回進みながらも、どうしてもタイトルだけに手が届きませんでした。

 

ジョコビッチのグランドスラム大会成績
ジョコビッチ全仏成績

 

ジョコビッチの全仏制覇の前に立ちはだかったのは、なんといってもナダルです。ナダルは「赤土の王者」と呼ばれ、クレーコートでの強さは群を抜いており、ジョコビッチが全仏に初出場した2005年からの10年間で9回優勝していました。

 

ジョコビッチが初めて全仏決勝に進んだ2012年の決勝の相手は、そのナダルでした。雨で順延となり2日間に渡って試合が行われ、ナダルのマッチポイントでジョコビッチはダブルフォルトを犯して敗れました。

 

翌年の2013年は準決勝でナダルと対戦しました。フルセットまでもつれた試合は、第5セット9-7という激闘を制してナダルが勝ちました。

 

次の年の2014年にジョコビッチは2度目の決勝に挑み、再びナダルとタイトルを掛けて戦いました。ジョコビッチは第1セットを取りましたが、第2セット以降の3セットを失って敗れます。このときも2年前と同様に、マッチポイントでダブルフォルトをして優勝を逃しました。

 

2015年は調子が上がらないナダルとは対照的に、ジョコビッチは全豪とマスターズ1000で全て優勝して、優勝候補筆頭として全仏に乗り込みました。そして、ジョコビッチの全仏制覇を阻み続けていたナダルを、ついに準々決勝でストレートで下します。準決勝でもマレーをフルセットの末破り、決勝に進んでバブリンカとタイトルを掛けて戦いました。

 

戦前の予想ではジョコビッチが圧倒的優位と言われており、第1セットをジョコビッチが取った時は、ついに全仏のタイトルを取るかと思われました。しかし、ジョコビッチはナダルとの準々決勝にピークを持っていき、準決勝は雨で2日に渡る試合となったため、決勝まで3日連続の試合となりコンディションが万全ではなく、結局セットカウント1-3でバブリンカに敗れました。

 

3度目の正直もかなわず、またも決勝でジョコビッチは敗れました。ジョコビッチは悔しさのあまり、表彰式では涙を滲ませていました。

 

 

今大会もジョコビッチは優勝候補の筆頭と言われ、あとは運に見放されなければタイトルを獲得するのでは言われていました。当初の組み合わせでは、復調しつつあるナダルとの準決勝が大きな山になると予想されていました。しかし、ナダルが故障で3回戦を棄権したこともあり、堅実に決勝にコマを進めることができました。

 

決勝の相手は第2シードのマレーでしたが、マレーは全仏の決勝進出はこれが初めてであり以前はクレーを苦手としていて、ジョコビッチが自分の力を普通に発揮すれば勝てると思われていました。

 

しかし、ジョコビッチは全仏のタイトルへの思い入れが強過ぎて、それがプレッシャーとなって1セットは緊張から思うようなプレーができず、このセットを失いました。

 

2セットの第1ゲームで、ジョコビッチはサービスゲームでブレークポイントを握られます。ここのブレークポイントを何とか切り抜けてサービスキープをしました。もしこのゲームをブレークされていたら、一気に流れがマレーの方に行ってしまったので、ここを踏ん張ってキープしたのが、この試合の最大のポイントでした。

 

2セットと第3セットをジョコビッチが取ると、第4セットでもマレーのサービスゲームを2回ブレークして、ゲームカウント5-2で自分のサービスゲームを迎えます。このゲームをキープすれば勝てるという段階に来て、再びジョコビッチは思うようなプレーができなくなってしまいます。

 

8ゲームをマレーにブレークされると、次のゲームも取られて、ゲームカウント5-4と迫られます。ジョコビッチはこのゲームでも普段の動きができませんでしたが、何とかマッチポイントを迎えます。しかし、ここでダブルフォルトとストロークミスで、2度のマッチポイントを逃してしまいます。

 

3度目のマッチポイントでは長いストロークの打ち合いになり、マレーが打ったボールがネットに掛かり、ついにジョコビッチが悲願の全仏オープン優勝を果たしました。

 

ジョコビッチは、男子のプロ選手の中でも精神面でのタフさは随一だと思います。そのジョコビッチですら、念願の全仏オープンのタイトルを目の前にすると、精神的に乱れて思うようなプレーができていませんでした。

 

錦織とベルダスコの3回戦もそうでしたが、テニスというのは精神的なものが凄くプレーに影響するというのを改めて感じました(詳しくは「錦織は苦しみながらも3回戦突破」 参照)。

 

 

テレビや新聞では、グランドスラム大会になると「錦織悲願のグランドスラム制覇なるか?!」と煽るのですが、錦織がグランドスラム大会の決勝に進出したのは2年前の全米オープンの1回だけで、グランドスラム優勝を現実的な目標として捉えたのはそれ以降です。それなのに「悲願のグランドスラム制覇」という言葉を使うのは、”悲願”の安売りのような気がします。

 

それに対して、今回のジョコビッチはまさに「悲願の全仏オープン制覇」でした。ジョコビッチはこれで12回目のグランドスラムタイトル獲得となり、歴代4位に並びました。現在の力を考えると、フェデラーの17回も不可能ではないような気がします。

 

また、年間グランドスラムの可能性も残っています。今年3つ目のグランドスラム大会であるウィンブルドンが、今月の27日から始まります。ジョコビッチが年間グランドスラムに王手を掛けるのかどうかが、注目して見てみたいと思います。



 

(関連の記事)

○テニスにおけるコートサーフェスの違い
○錦織と対戦するジョコビッチについて
○錦織とトップ3との差はどれくらい?
○錦織が覚醒した試合
○テニスのプロとアマチュアは違う種類のガットを使用している
○現在の男子テニス界は凄い選手が存在している
○錦織に欠けているのは経験値?
○テニス用語あれこれ

○テニスのトッププロは多くのスタッフを抱えている
○全仏オープン展望(2016)
○日本人4選手が全仏初戦突破
○錦織と大坂が全仏3回戦進出
○錦織は苦しみながらも3回戦突破

○錦織は全仏4回戦敗退


こちらをクリックしてください!