世界新聞社の冒険①

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「だから、俺はある意味ではバックパッカーではない」と世界新聞社の松崎敦史は言う。この言葉は自分がバックパッカーであると同時に記者であり、ライターでもあるという想いに由来されるのだろう。



世界新聞社デスク、松崎敦史、30歳。



バックパックを背負って世界各地をまわり、訪れた先々での体験や感じ取ったこと、また調べ上げたことを自身のブログ『世界新聞』に掲載している。時に社会派的に、時に東スポ的に、時にプレイボーイ的に。彼にとって、「観光」という言葉は「取材」という言葉に置き換えられる。




世界新聞社は自分のブログの他に大手ニュースサイトでの連載を持っていて、週一回のペースでそのサイトに記事を寄せている。その寄稿には金銭のやりとりが発生しているし、締切もあるので彼の旅は自由旅行でありながらある種の束縛を抱えている。移動は週末の連載記事の締切に合わせて計画され、自分のブログに関してはほぼ日刊を心がけているので、記事を書く時間は常に確保されていなければならない。インターネット環境は宿を選ぶ上での必要条件となる。


ホンジュラスの首都テグシガルパに到着した時、連載の締切が迫っていたのでどうにかしてWiFiが飛んでいる宿を見つけなければならなかった。夜中、治安の悪いテグシガルパをさまよい、さんざん探し回るがどうにも見つけることができない。それどころか「WiFi」という単語はホンジュラス国民の間に浸透していなかった。


自力で見つけ出すことを諦めた彼はタクシーの運転手に「WiFiが飛んでる宿に連れてってくれ」と頼み込んだが、「My wife?マイワイフなら家にいるけど、それがどうした?」という運転手の返答に彼はほとんど絶望した。という、エピソードには笑わせてもらった。



日本人宿で皆で楽しく飲んでいても、ブログを更新するためにさっと席を外す。そして、記事を書き上げるために誰よりも遅くまで起きていることは少なくない。ゆっくりしたい日があっても、その気持ちを抑えてネタをつかむために毎日のように街に出かけていく。彼の行動やスケジュールは「それが記事になるか否か」によって決定されていく。その尺度が常に存在する。世界中のマスメディアが人々の興味や関心を刺激し続けるために絶えずに新しい情報を追うように、それと同様に、彼もまた独りで、たった独りで、そのレースに挑んでいる。そして、彼が発信する情報は常に自分の足で稼いできたもの、自分の目で見たもの、自分の耳で聞いたものである。たまに派手なデタラメや童貞的なろくでもない妄想を記事にすることもあるが(彼は童貞ではない)、基本的にでっちあげでもなければ、コピーしてペーストしたものでもない。







気ままな一人旅にこうした制限まで設けて、彼が日々の更新を継続していくのは何故か?







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