テーマ:
根をもつこと(下) (岩波文庫)/シモーヌ・ヴェイユ

¥819
Amazon.co.jp

なんか最近大当たりが多すぎる気がしますが、これは本物のなかの本物。傑作の中の傑作。です

人間どうせ生きるならヴェイユのような足跡を残したい。

シモーヌ・ヴェイユという人物ですが、なかなか波乱万丈。ナチスの手に堕ちた祖国フランスを出奔し、ロンドンの自由フランス本部に合流する。パラシュート部隊への参加を志願したものの、当然却下。身体の弱さと共に(女性ですし)、ド・ゴール体制へ、あまりにも批判的(というか基本的には歓迎しているものの、本質的にこの人は批判精神が旺盛すぎる)だったため、窓際で将来のフランスの精神的再建のための文書を書かされる。半ば窓際族となったヴェイユだが、逆に誰にも邪魔されることなく大量の超高品質の論考を大量に書き続け、それが戦後フランスにとってかけがえのない宝となる。しかし、無理が祟って、新たなフランスの姿を見ることもなくロンドンで死ぬことになる。享年34歳。

あまりにも質の高い論考であり、扱う内容が多岐に渡っているのでどうしても全体を見渡した紹介をすることは難しいので、一部の気になった記述を引用します。

すでにパスカルは、神の探求において誠実さを欠くという罪をおかした。彼は科学の実践をつうじて知性を鍛錬してきらので、この知性に自由裁量を与えるならキリスト教の教義のうちに確信をみいだすにちがいない、とは考えられなかった。かといってキリスト教なしですます危険についても考えたくなかった。そこで知性による探求を始めたものの、そのさい探求が自分をどこに導くべきかをあらかじめ規定しておいた。あらぬところに導かれる危険を避けるために、意識的かつ意図的にひとつの示唆に自己を服させた。しかるのちに証明を求めた。確率や示度の領域では、きわめて重要な諸事象に気付いた。だが厳密な意味での証明となると、賭けの議論だの預言だの奇跡だのといった瑣末事しかとりあげなかった。彼にとってさらに深刻だったのは、一度たりとも確信に達し得なかったことだ。ついぞ信仰を得ることはなかった。手に入れようとさがしまわったからだ。

なぜ、この断章が気になったのかといえば、大学でパスカルの『パンセ』『プロヴァンシャル』を読んでいるからです。このヴェイユのパスカル観はすこし特別でありながら、僕の心のなかで密かに感じていたパスカル観とかなり合致したのです。
パスカルは腐敗したイエズス会を非難するなど非常に厳格なキリスト教護教論者として知られており、そのあまりの徹底ぶりと報われなさは尊敬とともに憐憫をも誘う人物。
そのパスカルをヴェイユは一刀両断する。しかも、その批判する点が非常に納得できる点。
パスカルの著作を読めば余りの議論の精緻さに、なんの本を読んでいるのか分からなくなるほど。そこに、ヴェイユは信仰をあくまで求めながらもついに得られなかった人物の姿を見た。僕個人としても、パスカルの信仰の姿勢のあまりの特異さに以前から注目していただけに、あらたな見解で、しかも自分の意見に近いものに出会えて良かった。


次は引用の引用

アリオストは主君のエステ公に向かって、自作の詩篇でおおむね次のような要旨を述べてなお、いささかも赤面することがなかった。存命中のわたくしは貴公の掌中にある。わたくしが富者となるか貧者となるかは貴公の算段ひとつである。しかし将来の貴公の名はわたくしの掌中にある。300年後貴公の評判が善いか悪いか無であるかはわたくしの算段ひとつ。互いに手を結ぶが双方の益。わたくしに庇護と富を与えよ、されば貴公を称揚しよう。

なかなかおもしろい。この論点においてヴェイユはウェルギリウスまでも断罪する。

あと、アルビジョワ十字軍に関して、ヴェイユはキリスト教最大の過ちとして痛烈に断罪する。教皇の許しを得た軍が町を全滅。さらにはフランスの一地方の文化までもを根絶やしにするという「犯罪」をヴェイユは決して許さない。ヴェイユの視点(一個人、フランス人などといったものをはるかに超越した)から見ると、アレキサンダーもナポレオンもカエサルもナチスと同様の存在となる。時代の古さは言い訳としては絶対に認めない。2000年前の絶滅を現代の絶滅と同一視するという視点は意外と珍しいように思う。どうしても、「当時はそういう時代だった」という固定観念から離れなれない。

あまりにも豊かな内容を含む本なので、言いたいことの一割どころか一分くらいしか言えない。それといくらなんでもこの暑さのなかではまともに頭が働かない、後にクーラーが利いているときに続きを書こうかと思います。
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

ダッチさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。