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2017-04-18 07:46:19

ACSAに関する報道について

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金曜日、参議院において日米・日豪・日英ACSA(物品役務相互提供協定)が採決されました。民進党は本件について反対し、小生が反対討論を行わさせていただきました。

 

翌日の一部紙の報道を見て、大変驚きました。民進党並びに共産党は、ACSA締結により、戦闘に巻き込まれるおそれがあると指摘してきた、とあるのです。末尾に要旨を掲載したとおり、党を代表してその見解を表明した反対討論は衆議院では行われず、参議院で小生が行ったもののみです。そこには報道にあるような反対理由は、ただの一文字もありません。

 

国民に対して理解していただく努力や、訴求力を求められるのは党です。しかしながら、少なくとも報道は無いものからねつ造するのではなく、まずはファクトを伝える責務があります。あまりにも不思議な状況になっているので、下記に反対討論(http://miteiko.sangiin.go.jp/KJSS/UIClass/KAS_0020.aspx?kaigiName=本会議&notSetFlg=0)の要旨を掲載させていただきます。

 

【反対討論要旨】

民進党は、アメリカ、オーストラリア等、一定の国との間でACSA協定の締結を推進していくこと自体には賛成だが、今回の日米ACSAには、我が党が反対してきた安保法制における存立危機事態及び重要影響事態等が明記をされている。民進党は、正式な党の合意の中で集団的自衛権の行使が違憲であると断言したことは一度たりともなく、憲法の便宜的、恣意的解釈には一貫して反対してきた。一昨年の安保法制は、主として自衛隊を遠くに派遣し米軍の下請にするものであり、我が国の安全を直接支えるものではない。我が国の直接の安全保障に対し貢献しない安保法制において、遠くで他国軍の下請にするための事態を新たに日米ACSAに書き込んで改正を行うこの協定案には賛成できない。
自公政権は、冷戦時代の基盤的防衛力構想から脱却する必要を認めながらも、そのための戦略を構築することができず、十年以上も我が国の安全保障戦略は冷戦時代のままに放置した。これに対し、民主党政権で初めて冷戦時代の戦略を見直して、動的防衛力構想を確立する二二大綱を整備した。しかし、政権交代をすると、自公政権はあろうことか大綱を凍結し、一年以上も日本を戦略なき状態に漂流をさせ。その挙げ句に作られた現行の二五大綱では、動的防衛力構想のほぼコピーにすぎない統合機動防衛力なる言葉が冠されました。安保戦略を漂流させた挙げ句に政治的な言葉遊びではいけない。
集団的自衛権の行使についても、真に日本の存立を脅かすような具体的なケースを示すことができたならばいざ知らず、政府が示した三つの事例に根拠はない。立法事実がなく、現実的な想定すら示せない存立危機事態を書き込んだACSA改定を行うことは無責任で、相手国に対しても失礼。
日本の領土、領海を守ることに関心があるのであれば、我々が政府の安保法制よりも早く提出をした領域警備法を審議すべき。喫緊の日本の領土、領海に対処する法制を作った上で、必要な事態を書き込んだACSA協定を審議すべき。
日豪並びに日英ACSAについても同様です。安保法制採決以前、政府は、弾薬の提供については特段のニーズはない、これを当時の周辺事態法に含めず、またその法的判断も避けてきました。今回の英国並びに豪州とのACSAには、存立危機事態や重要影響事態は明記されずそれぞれの国の国内法に従うという部分について、これらの事態は理論的に含まれている。論理的に可能であることを日豪、日英共に確認しているが、具体的なケースを想定してニーズが表明されたわけではないという答弁もあった。特定のケースを想定してニーズが表明されていないという状況は維持されており、協定案に書き込めばニーズが出るという議論は到底受け入れらない。国民に対する説明責任がまっとうされていない。

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2017-04-09 22:48:34

ハーン・アッ=シャイフーンにおける化学兵器使用と米国によるシリア・空爆

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米国がシリアにトマホーク巡航ミサイルを撃ち込みました。本件については、考えるべき点が多く、我が国に対する影響も小さくないと考えます。

ついては、長文になりましたが、現時点でのとりあえずの考えを以下のとおり取りまとめましたので、掲載いたします。

 

1. 米国の意図

(1)   先週、ヘイリー国連大使がアサド政権転覆はもはや米国の対外政策の優先事項ではないと述べていたばかりであったことに鑑みれば、シリア軍によるイドリブ郊外ハーン・アッ=シャイフーンへの化学兵器使用への報復としての米軍による空爆には唐突感が付きまとう。米政権は、被害に遭った子供たちを含む民間人への被害を強調するが、トランプ大統領の対外政策の中でも真っ先にシリア人難民受け入れ拒否を実行したことを思えば、シリア人の人権問題を重要と考えてきたかについては疑問符を付さざるを得ない。

(2)   今次空爆においてトランプ大統領の最大の目標は、弱いオバマ大統領に自らを対置させ、決断力・行動力のある強い大統領であることのアピールにあったように思われる。2011年以来シリアは内戦に陥っているが、2013年、オバマ大統領は化学兵器使用を「一線を越えた」と評価し、対シリア攻撃を計画した。それにもかかわらず、計画が実行に移されないままに、露による仲介により、シリア政権がCWCに加盟し、OPCWの査察を受け入れることで問題は収束し、結果、米国による武力行使は行われずに終わった。トランプ大統領は、バッシャール・アル=アサドの政権が「多くの一線を越えた(Cross Many Many Lines)」と、オバマ大統領の発言を想起させるような主張をしたが、そこにはオバマ大統領の政策の失敗を強調する意図が見え隠れしている。

(3)   「一線を越える」ことが米国による対シリア武力行使を直ちに意味し、米国によるシリア情勢への介入をもたらすことが米国の伝統的な意志であると考えることは困難である。2013年に対シリア武力行使が取り上げられた際、民主党内には武力介入に否定的な意見が多かった。また共和党内には、米国による対イラク武力行使が米軍を泥沼に引きずり込んだ経験から、介入計画が不十分との批判が上がった。なお、報道によればトランプ大統領自身、当時、介入すべきではないとツイートした由である。

(4)   今回の空爆を前にし、極めて短い時間でトランプ大統領の考えが変わり、マティス国防長官とマクマスターNSC補佐官主導で空爆が決定されたようだ。トランプ大統領を含む米政権関係者は、この空爆と並行して、「将来におけるアサド大統領の役割は無い」、「すべての文明国家はシリアにおける紛争停止に貢献すべきである」等、アサド政権退陣に向けた国際社会の連携を強調しているようである。しかし今回の攻撃は、米国がハーン・アッ=シャイフーンへの化学兵器による攻撃の拠点となったと主張するホムス南東部のシュアイラート軍用空港の滑走路、航空機、格納庫、レーダー及び対空兵器に限られているようであり、それ以上に拡大する物理的な兆候は見られていない。また、かつて米軍はイラクやアフガニスタンにおいて大規模な作戦前に慎重にビルドアップを重ねてきたが、シリアに対してはこれまで、米軍の大きな動きは見られていない。したがって、限定された目標以上に攻撃を行い、シリア政権放逐にまで軍事力行使を重ねるかについては、現時点ではその可能性は高くないようにも思われる。

(5)   米軍によるシリア空爆は、国連において対シリア協議が継続されている中で実施された。米政権は空爆当初、化学兵器使用を防ぐという米国にとり死活的な国家安全保障の国益のために行動したとした。また、国連の対シリア措置協議が長期化する可能性が出てくると直ちに行動し、「これまでのシリアに対する政策はすべて失敗した」と主張し、シリアの化学兵器使用に対し行動したとした。

(6)   空爆翌日には、よりまとまった形で、以下のような主張が行われた。

〇 シリアによる民間人に対する化学兵器使用は明白であり、化学兵器による攻撃を行った施設に対する米国の攻撃は適当である。

〇 今回のシリアによる化学兵器使用の他、3月25日並びに30日にはハマーで同様の攻撃を行っており、行動しなければアサド政権は化学兵器の使用を恒常化させかねなかった。

〇 2013年にアサド政権はすべての化学兵器を破棄することに合意したはずである。ロシアが2013年以来の約束を実施させる責任をとることに失敗した以上、誰か他の者がこれを実現させるべきである。

〇 トランプ大統領は、いかなる政府や主体であっても、一線を越えたならば行動に移す。トランプ大統領はこのメッセージを世界に対して行った。

 

2. シリア情勢

(1)   シリア情勢は混迷を極めており、出口が見えない状況にある。米国の空爆についての議論から逸れることになるので極めて簡潔に言えば、シリアでは、ロシアやイランが支援するアサド政権軍、IS,イスラーム系武装組織、クルド勢力および米国やサウジなどが支援する反体制派が5つどもえで戦っており、いずれの勢力も内戦を終結させ支配権を確立するには至っていない。しかし昨年12月のアレッポ東部陥落以降、米国支援の反体制派は重要拠点を失いった。これに対してアサド政権は勢いを増し、シリアの将来についての国際的な協議の枠組みも、米国やサウジ等の湾岸諸国がはじかれて、露、イラン、トルコ主導に変わってきていた。

(2)   空爆直前のアサド政権は、2013年以降最も安定した時期にあった。そのような中で政権側は、敵対する勢力を退け、政権を維持させる方途を模索してきた。しかし、シリア内戦を終結させるほどに強くないこともまた事実であった。5万程度の規模に縮小した政府軍は、露の空爆、イラン革命防衛隊やレバノンのヒズボッラーの支援を受けなければならず、そのような中で支配地域を拡大し、安定させるために、政権側が化学兵器を使用することが必要と判断したとしても不思議ではない。

(3)   米軍空爆はかかる状況で行われた。それは、シリア協議で傍流に追いやられた米国が、再びシリア情勢に関与する宣言であり、反体制派への支援ととられるのかもしれない。しかし現実は容易ではなく、今回の空爆は短期的にはシリア中部に勢力を有する反体制派やイスラーム系武装組織を後押しするのみならず、ラッカを拠点とするISにとってもプラスになった。

(4)   シリアで5つどもえになっている中、ISのせん滅が先か後かという議論はあろうが、いずれにしてもISを除く4つの勢力争いに一定の結論が出なければ、シリアは安定しない。今回の空爆は、立場を後退させていた米国が支持する反体制派を勢いづかせ、反体制派に対するシリア軍の攻撃拠点にダメージを与えた影響はあろうが、それだけで状況を一変させることは困難かもしれない。もとより、今回の攻撃をもって米国がシリア内戦終結に向けたイニシアティヴをとり、アサド政権退陣を求めても、現時点でその実現の可能性は極めて低い。更なる米国の関与が反体制派を強化するならば、5つどもえの状況が当面強化され、混迷は深まることになりかねない。

(5)   米国の根本的な介入は軍事的にも国際法的にもハードルが高く、米国にとっての泥沼化は、米国内の反発を招くことになろうし、そもそも、米国にそのための戦略が存在するかは疑問と言わざるを得ない。また、反体制派内に信頼できる人物や組織がほぼいない状況も依然として継続している。

 

3. 国際社会と日本

(1)   米軍による空爆の影響の範囲は、アサド政権及びシリア情勢に限られないのみならず、状況によっては国際社会に大きな影響を与えることが考えられる。

(2)   国際法的には、米軍による一方的な攻撃を正当化する根拠は希薄と考えざるを得ない。ティラーソン国務長官がシリア軍によるハーン・アッ=シャイフーン攻撃を批判したときに引用した2013年の国連安保理決議2118号は、たしかにシリアに対して化学兵器の使用や保有を禁ずるものである。しかしながらこの決議は、強制力の行使にかかわる国連憲章第七章をひかず、25条の加盟国による決議順守義務をひいているに過ぎない。それどころか決議前文において、現在のシリアにおける危機は、2012年のジュネーヴ宣言に基づく包括的且つシリア主導の政治プロセスを通じてのみ解決されることが強調されており、武力行使の根拠にはなろうはずもない。化学兵器の使用は許容されるべきものではないながら、これが米国の死活的な国益を侵すものと判断されようとも国連憲章の言う自衛権を構成するには至らない。さらに、人道的な武力行使を単一の国の判断で行使することを許容するならば、これは極めて悪しき前例となりかねない。

(3)   ハーン・アッ=シャイフーンにおいて化学兵器が住民に深刻な影響を及ぼしたことについては、一定の共通理解があり、事実と言えよう。しかし露は、反体制派が保有していた化学兵器庫にシリア軍が攻撃を加え、その被害が住民に拡大したと主張している。シリア軍が化学兵器を使用したと主張する現時点の米国の根拠は、かつてシリア軍が化学兵器を使用した(と米国が主張する)際に、同じ飛行機が同じ飛行場から飛び立ち、その結果住民に被害が出たからというものであるが、この状況証拠だけでは、双方の議論を終結させる決定的なものにはならないように思われる。2013年の際にも、議論が空回りし、結局国連の調査ミッションが派遣され、当初使用したと考えられる場所と別な場所で化学兵器使用の痕跡が発見されることになった。本来は空爆以前にミッションが派遣されるべきだが、重要なことはファクトであり、化学兵器の問題を終わらせるためにも、これからでも遅くないので調査ミッションの派遣を進めるべきであろう。なお一部では、シュアイラート軍用基地の化学兵器関連施設が空爆されたとの報道もあるが、同基地は2013年以来、OPCWの査察監視下にあり、貯蔵庫のようなものが存在するとすれば、後からばれてしまうので、この報道は疑わしいように思われる。

(4)   米国の空爆は、アサド政権を支えながら昨年12月以降にはシリア情勢をめぐる国際社会の主導権を握り、化学兵器に関する危機回避のイニシアティヴをとってきたロシアを刺激するものである。ロシア軍はシリア国内に相当入り込んでおり、昨年にはまんまと49年という長期(更新可能)のタルトゥース港租借権まで手に入れた。また、今回空爆をされたシュアイラート軍用基地もイランと共に使用してきたとされるどころか、昼間には借り受けたサイトに軍事アドバイザーを常駐させていたとすら言われている。ロシアはメンツを丸つぶしされたことに怒りを隠せないようだが、これにとどまらず、主導権を握ってきたシリアをめぐる国際社会の動きやシリア内政における米国の巻き返しに抵抗していくに違いない。本日の米露外相電話会談では露側から強い抗議が行われ、シリア国内の衝突回避(de-conflict)措置も一方的に凍結されたとのことであるが、来週に予定されているティラーソン米国務長官の訪露は極めて厳しいものとなりそうである。なお、木村北大名誉教授は常々、米新政権発足時には露に歩み寄るが、国際紛争が発生して両国関係が厳しくなるのが過去4代の米政権のたどった道のりであると述べておられるが、トランプ政権にとっても大きな試練となることであろう。

(5)   前述の通り、今回の空爆には国際社会、就中、北朝鮮に対する「一線を越えたら、行動する」というメッセージが含まれている。このようなメッセージを携えた行動を見せつけたからこそ、米中首脳会談の前半部では、米側が主導権を握り、中国に行動を促すことができているのであろう。北朝鮮は反発を見せているようだが、言葉とは反対に、政府・軍首脳の心中には穏やかならざるものがあるはずだ。

(6)   しかしながら、今回の空爆が直ちに東アジア情勢を解決に導き、あるいは米主導で動かすことを約束するものにはならず、注視が必要である。今回の空爆は、前述の通り、シリア情勢を動かす上で重要だが不十分で決定的なものにならなかった。同様に、中国に対しても、北朝鮮に対しても、ショックを与えるには十分であろうが、それが将来における中国の北朝鮮に対する根本的な姿勢の変化や、北朝鮮による行動パターンの変更をもたらすと断ずるのはあまりに早い気がする。特に、かりに米国がシリアに対して深入りすることになれば、二正面はできなくなると北朝鮮が考える可能性が出てくる。逆にシリアに対する攻撃がこれで終了すれば、シリアにおける米国の立場は失われ、計画なき空爆に対する内外の批判にトランプ政権がさらされる可能性もある。ショックを用いる手法で米中首脳会談において主導権をとるやり方も一つではあるだろうが、いかにも近視眼的で、大国としては珍しい博打のような手法に見えてならない。

(7)   国際社会の米国による武力行使に対する評価は様々だが、英国やサウジのようにシリア情勢ではじかれた国々はおおむね米国の攻撃を支持し、逆の立場の国々は批判的な反応を示している。EUなどは、日本と同様に武力攻撃そのものを支持することを避けつつも、人道的な立場を強調しているようである。それぞれの国々が自国の国益に沿った反応を示しているのは当然であろう。トルコなどは、シリア国内に部隊を駐留させ、状況に応じて露と米の間を行ったり来たりしてきたが、今回の空爆では、Safe Heavenやノー・フライゾーンの確立を求めるなど、クルド勢力駆逐に有利で且つシリア政府の動きを止めることに利益を見出しているようである。

(8)   日本政府は今回のシリア空爆に際し、空爆を支持するのではなく、その「決意」を支持するという巧妙な言辞を用いた。予測の難しいトランプ政権の立場をおもんばかったということもあろうが、それ以上に、ますます緊張の度合いを強める北朝鮮情勢をめぐり、米国の北朝鮮に対する強い立場を抑止力として維持させることを意図しているのであろう。しかしながら、最終的な武力行使の「決意」は必要であろうが、国際法を味方に付けるべき我が国にとって、国際法がないがしろにされた状況を甘受することは適当であったのだろうか。シリアにおける道筋と戦略を明確にしないままでの攻撃は、短期間で終われば米国を当てにしてきた反体制派の期待を裏切ることになる一方、再び反体制派が力をつけてくれば群雄割拠の状況が長期化し、その「つけ」はシリア国民に押し付けられて難民問題がさらに深刻化するかもしれない。それどころか前述の通り、シリアに拘泥すれば、逆に北朝鮮は、二正面作戦が困難と考えて、時を稼ぎながら、対米抑止力の強化に努めて核開発と長距離ミサイル開発に力を入れるかもしれない。平和的なシリア問題の解決に国際社会が本腰を入れられるような環境作りに日本も乗り出す必要が高まったと言えるのではないか。また北朝鮮については、「飴と鞭」の使い分けが最も彼らに理解できる言葉と考えるところ、脅しで終わらせるのではなく、北朝鮮が受容でき、中国も最終的に乗ることできるような枠組みを動かすことが重要ではないか。なお、北朝鮮情勢のみならず朝鮮半島情勢は流動化しており、邦人退避を含めた最悪の場合のシナリオを真剣に検討すべき時が来ているのかもしれない。                          

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2017-04-05 00:36:06

長嶺駐韓大使帰任と慰安婦像問題

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 韓国との関係は隣国であるがゆえに難しい。互いに感情的にならざるを得ない側面がある一方、隣国であるがゆえに利害関係に基づき冷静に判断せざるべき点も少なくない。慰安婦像設置をめぐる日韓の問題についても同様である。長嶺駐韓大使の帰任は致し方ないながら、同大使の帰任以降、北朝鮮による挑発行為による朝鮮半島情勢の緊迫化、トランプ政権の強行姿勢、朴大統領逮捕に関連する韓国国内事情の変化と対日関係悪化の可能性等、大使レベルで喫緊に対応すべき問題が次々と発生した。

 このような状況に対しては、注意深い外交が不可欠である。我が国として譲ることができない点については明確に主張しつつ、メリハリのある形で、日本の国益に大きな影響を与える問題について協力できる余地を探りつつ、次期政権で主要なポストに就きそうな人物との人脈を模索するという、古典的ではあるが丁寧な外交が必要とされているように思われてならない。

 しかしながら現政権の一連の姿勢は、誤ったメッセージを与えかねないのみならず、メリハリのついたものではなかった。釜山総領事館前の慰安婦像問題を含む新たな問題以前の昨年の「不可逆的な」日韓合意の対象となった在韓大使館前の慰安婦像問題への対処は不適切であった。日本政府は、威勢のいい言葉でPRしたこの合意の履行がとん挫して国内的に不興を買うのを恐れたためか、韓国側をおもんばかったかのような腰砕けの態度に終始した。

本件合意については、昨年1月7日並びに3月17日の小生の国会質問で、慰安婦像は「撤去」ではなく「移動」であることを認めた。その上で、相手側が慰安婦像を移動しなくとも我が方が約束した10億円が支払われることを明らかにしたのであった。それから1年、韓国が慰安婦像を移動せずに合意を履行せずとも政府は、抗議どころか「適切に履行されるもの」と希望的観測を述べ続けた。韓国による「振り込め詐欺」に日本側がお墨付きを与えた状態を放置したことが、新たな慰安婦像設置を含む状態を引き起こしたのではなかったか。「不可逆的な合意」は皮肉なことに、旧来からの対日敵視勢力の立場を継続・強化させることを助長させたのではなかったか。

 このような中で新たな慰安婦像が設置されて日本側世論が沸騰すると、政府は大使を帰国させた。この帰国は致し方ない。また、現下の朝鮮半島情勢に鑑みれば、昨日の帰任も当然である。しかしながら、例えば先般の北朝鮮によるミサイル発射の直後に、高いレベルでの協議を必要としているとして、朝鮮半島情勢と共に慰安婦問題の合意履行を求める外務大臣書簡を携えさせて緊急に帰任させる等の措置を採ったならば、よりスマートに現状を打開すると共に、両国の間で協力すべきことと、我が国が強く求めていることを韓国側に理解させられたのではなかったか。

 現在の政府がバラマキ外交に徹する一方で外交音痴である状態は、今に始まった話ではないが、隣国に対する外交については、国内世論ばかり気にするのではなく、戦略的且つ最新なものでなければならない。

 

この点については、政治家としてしっかり政府を追及してまいります。長嶺大使の帰任決定前ですが、先月9日には、委員会で本件を取り上げました。ポイントは、以下の通りです。また、一部手直ししてありますが、正確を期してほぼ全文の委員会のやり取りを議事録から抜粋して、長文で恐縮ながら、ポイントの後に付しておきます。

① 10億円を振り込んだのに像が移動すらされていないことについて

② 財団の運営費用が我が国資金から出される可能性があることについて

③ メンツだけではなく、より幅広い視野で対韓外交を進めることについて

 

○大野元裕君 慰安婦像の問題については、不可逆的な解決を定めたとされる日韓合意から一年以上がたちました。在韓日本大使館の前の像については今どうなっているんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 在韓国日本大使館前の慰安婦像についての御質問ですが、これは一昨年の合意によって、韓国政府として、日本政府が公館の安寧、威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、適切に解決されるよう努力すること、これを韓国政府として確認をしているところです。こうした日韓合意の中身は誠実に履行されなければならないと考えています。

 その日韓合意の中身としましては、財団の設立等の対応が進んでいるわけでありますが、残念ながら、在韓国日本大使館前の慰安婦像については、現状動いておりません。以前と同じままであります。

○大野元裕君 大臣は大変お優しいので、韓国側の立場をおもんぱかり、合意が適切に実施される、解決されるべきというお言葉を何度も繰り返されておられますけれども、この移動すら具体的に働きかけるつもりというのはやっぱりないんでしょうか。

 しかも、なおかつ昨年七月には和解・癒やし財団設立された。この財団なんですが、当初聞いていたのは、運営費は韓国側が負担し、我々の十億円を含めて拠出を行っていく、こういうふうに聞いているんです。ところが、先月末なんですが、財団の運営費は我が方からの拠出金により賄われることが明らかにされました。韓国政府は、これまで日本政府が拠出した十億円の全額を元慰安婦のために使うとしてきたはずなんですが、財団側は、政府の予算削減などの現在の状況を考慮し、最小限の行政費用を日本の拠出金から賄うとしたと言われていますが、これについて事実関係を確認されておられますか。

○国務大臣(岸田文雄君) 御質問がありました運営費についてですが、これは韓国政府が予算から支弁すること、これを想定しておりました。しかしながら、二〇一七年度予算において韓国の国会で当該予算が認められなかった、こういった事実が発生をいたしました。そして、その後の取扱いについては今現在まだ決まっていないというのが実情であります。

○大野元裕君 決まっていないというのはおかしくないですか。我々はそういう想定の下に十億円払うという話については誠実に履行したわけですよね。もう既に我々の責務を果たしているわけですよね。その上で、これを彼らが予算をどう組もうが、癒やしのために使うというふうに言っている以上そこに使っていただく、あるいはその運営については韓国側で責任持つ、そんなことは当然ではないんでしょうか。

 大臣、この確認をもしされたとすれば、抗議し訂正を求めたんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) この財団の運営費については、韓国政府自体がこれは基本的に韓国政府から支弁することを想定していた次第であります。ただ、その後の動きとして、韓国国会において予算が承認されなかったということであります。その上でどうするかということにつきまして、韓国政府としても、これは真剣にどうするのか、これを決定していかなければならない立場にあると考えます。

○大野元裕君 お答えいただいていないようです。訂正を求めて抗議したんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 韓国政府もこの運営費は自ら出すということを想定しておりました。ただ、韓国国会でこれが承認されなかったわけですので、今後どうするかをこれは韓国政府として決定しなければならない、これが現状であると思います。訂正云々ではなくして、韓国政府としてどうするのか、これを明らかにしなければならないと考えます。

○大野元裕君 外務大臣、血税が元手です。そして、想定と異なる、合意と違う、不可逆的というのは恐らく変わらないということだと思うんですけれども、その不可逆的な合意に基づくものであって、それが違う形で使われたとしたらば返還を求めるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) これは仮定に基づいて申し上げるのは控えなければなりません。

 いずれにしましても、一昨年の日韓合意は、合意の内容、国際社会が高く評価した内容であります。日韓両政府ともこの合意を履行する大きな責任を担っていると思います。中身を誠実に履行するべく両国が努力をしなければならない、このように思います。

○大野元裕君 両国が責任を負っていることは分かります。合意もありました。しかしながら、我々はその責務を果たしたけれども、慰安婦像は一センチたりとて動いていない。そして、中身については違うふうに使われている。こういうのを世に「振り込め詐欺」と言うんじゃないんですかね。それは、我々は国民の血税を元にしてそれをしたと。それを履行させるのは当然政府の責任であって、そうでない場合にはお金返してもらうのは当然のことなんじゃないんですか。

 しかも、仮定の話には答えないとおっしゃいましたが、先ほどから外務大臣は、こういう想定でしたというふうにおっしゃっておられます。我々は、やはり責任を持った形で、できないものについては返還を求めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) この運営費に日本から拠出された資金を使う云々の話は、財団の関係者で一部そういった発言をしたということは承知をしておりますが、これは韓国政府が何かそういったことを発言したとか決めたとかいうものではないと承知をしています。

 韓国政府においては、国会の承認が得られていない現状にあるわけでありますので、その上でどうするのか、これをはっきりさせなければなりません。この推移についてしっかり注視していきたいと思います。そして、慰安婦像そのものについては、是非この合意に基づいて韓国政府が誠実に対応することを我が国としてもしっかり注視し続けていかなければならないと思います。

○大野元裕君 それはおかしいですね。大臣、私が一番最初に大臣に、確認しましたかと聞いているんです。相手国政府がどうされるかということも含めて確認をするというのは当然の話じゃないんですか。それはほっておいて、これからそうするべきであるというのは、おもんぱかるのはいいですけれども、しっかりとなさることが外務省の仕事ではないんでしょうか。いかがですか。

○国務大臣(岸田文雄君) 先ほどから御説明しているように、韓国政府も運営費は自らの予算で出すということを考え、そしてそれを国会の承認を得るべく手続を進めたわけであります。ところが、承認が得られていないというのが現状であります。韓国政府も、この運営費については今申し上げたような考えに基づいて作業を進めていた、これが事実であります。ただ、国会の承認が得られていない今、今後どうするか、これを韓国政府として真剣に考えなければならない、こうしたことだと思っています。

○大野元裕君 不可逆的な合意をお互いに実施する責任を担っていると、韓国側の事情でそれがうまくいっていない。これは二国間の国際合意やマルチの国際合意でも、もちろん承認されなければ、例えばですよ、国会が承認をしなければ、それぞれの国の批准手続が行われなければそういった機関にお金振り込まない、これは当然であります。ただ、我々はもう既に振り込んでいますから、そうですよね、だからこそ、振り込め詐欺と言われないためにもしっかりとした措置をお願いをしたいというふうに申し上げているんです。

 時間がないので、最後にもう一点だけ伺います。

 大臣、韓国との関係というのはこの慰安婦問題だけにとどまりません。私は、言うべきことはしっかりと言って合意をしっかり実施させるというのはとても大事だと思うんですが、もう一つ大事なことは、韓国というのは常に隣人です。そして、今北朝鮮をめぐる状況は風雲急を告げており、国益に鑑みてより広い視野というのも両方大事だと思うんです。

 もちろん、メンツだけの外交、これだけでは駄目です。その上で我々は、例えば釜山の問題もそう、総領事館前のですね。それから今回のお金もそう。韓国側での高いレベルで働きかけていくということも同時に大事だと思います。つまり、メンツだけじゃなくて、高いレベルで北朝鮮を含めた東アジアの情勢等についてお互いに利益となるところについては進めていくということも私は両方大事だと思うんです。

 その意味でも、アメリカを含めて韓国と共通の利益については、お互いに関係の悪いこと、都合の悪いことはあるかもしれないけれども、もう一方で、しっかりとしたパイプをつないでいくということは我が国の国益にかなうんだと思っていますけれども、大臣、私の最後の質問になりますけれども、そういった幅広い視野での、北朝鮮それから東アジアを見据えての韓国との関係について、最後にお伺いしたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、日本と韓国の間においては大変難しい課題も存在いたしますが、一方で、韓国は、我が国にとりまして戦略的な利益を共有する大切な隣国であります。ましてや今、北朝鮮のこの状況が大変緊迫した状況にある。こういった状況を考えますときに、韓国との意思疎通、米国も含めたしっかりとした連携、この大切さは言うまでもありません。

 是非、協力できる分野においてはできるだけ協力の幅を拡大するべく努力をし、そして、ひいては日本の国民の命や暮らしや、そして繁栄を守っていくために努力を続けていかなければならない、このように考えます。

○大野元裕君 日本の外交・安全保障、正念場です。しっかり頑張っていただきたいと思います。

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2017-01-02 23:18:54

今年の中東

テーマ:国際政治

Japan-in-depthに 【大予測:中東】トランプ政権で混迷深まる を投稿しました。

 

よろしければ、ご覧ください。

 

http://japan-indepth.jp/?p=32268

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2016-12-26 00:19:34

イスラエルによる占領地での入植停止要求決議

テーマ:国際政治

 23日、国連安保理において、イスラエルが占領しているパレスチナの地への入植を停止することを求める決議が採択された。国際法に基づく平和構築及び本当に長い期間、占領政策と人権侵害、離散、生活苦に悩まされてきたパレスチナ人の思い、さらには国連の紛争に果たすべき役割に対し、歴史的な決議となった。何よりも、パレスチナ人にとって大きなクリスマス・プレゼントとなったはずである。
 今次決議は、イスラエル非難決議にことごとく拒否権を行使してきた米国が棄権に回ったことで14か国の賛成をもって成立した。ユダヤ票を支持層としてきた民主党であるにもかかわらず、イスラエルと距離ができていたオバマ政権であればこそ、の棄権であったかもしれず、またイスラエル政府の強い反発もあると同時に制裁等の措置が含まれてはいないものの、この一歩はとてつもなく大きい。

 

 本決議の骨子は以下のとおりである。
 〇 東エルサレムを含む占領地において、即時且つ完全に入植を停止し、関連する国際的義務を履行すべきである。
 〇 67年以降に占領した地域における入植に正当性はなく、国際法を著しく阻害しており、二国両立、公正、永続的且つ包括的な解決といいう原則に反している。
 〇 テロを含む民間人に対するすべての暴力行為およびあらゆる挑発と破壊行為を防止し、イスラエルとパレスチナ双方が国際人権法を始めとする国際法、これまでの合意及び責務を履行するための迅速な措置を講ずるよう求める。
〇 国連安保理書決議、土地と和平の交換原則を含むマドリード合意、アラブ和平イニシアティブ、カルテットによるロードマップおよび67年より始まったイスラエルの占領終結の原則に基づく包括的、公正且つ永続的な和平を遅滞なく実現するために、国際社会並びに域内の外交的努力と支援を集中化・加速化するよう求める。

 占領地への入植は、東エルサレムを併合するためか、同地を取り巻くように加速化している。数年前からは、国際社会の目を逃れるためか、政府によるものではない「自発的入植」が増加するも、政府はそこに水道施設を拡張させる等の支援を行っている。イスラエルでは、あのネタニヤフ氏が「左」に見えるほど右傾化が進んでいる中、自暴自棄に追い込まれるパレスチナ人の行動も懸念されてきた。包括的な和平という言葉が空虚になる最後のチャンスが訪れたと信じたい。

 

 なお、賛成した14か国の中には日本政府も含まれている。安保理における決議では、公正であるべきにもかかわらず、自国の利益のために南スーダン決議では反対に回り、核廃絶決議では棄権すら行わなかった現政権ではあったが、今回の賛成についてはこれを評価し、今後もこの立場を推進していただきたい。

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