日本はおもてなし後進国?

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 多文化おもてなしフェスティバル2015は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、外国人コミュニティの活性化による「おもてなし力」の向上を目指しています。
 外国人観光客の誘致のためには、「地域分散型誘致」「外国人目線」「広域・異業種連携」などが必要であると提言されている観光学者の鈴木勝・共栄大学客員教授を講師にお迎えし、2015年4月25日に勉強会を行いました。
 今の観光政策の課題や現状、そして在日外国人コミュニティが持つ可能性などについてお話いただきました。そのポイントを紹介させていただきます。


海外での豊富な観光事例を用いて講義する鈴木教授

■訪日外国人が1,000万人を突破し、さらに伸びる!
 円安やビザの緩和が追い風となって、一昨年(2014年)に日本を訪問した外国人の数は1,341万人となり、過去最高を記録しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けては、外国人受入環境の整備やMICEの誘致のためのプロモーションの強化が行われています。
 MICEとは、会議や研修(Meeting)、報奨・招待旅行(Incentive Tour)、国際会議や学会(Convention, Conference)、展示会(Exhibition)の頭文字をとった観光用語で、一般の観光旅行に比べて、参加者の滞在日数が長く、消費額が大きいことから、国や都市の観光競争力を高める効果があるとして海外でも注目されています。
 
■日本の観光の課題である広域連携の弱さ
 日本では政府と都道府県の活動の足並みが揃っているとはいえず、市区町村レベルでも例えばある市の観光マップは、その市の周りが白紙になっているようなことがあります。しかし、京都・大阪・神戸が互いにPRし合えば、観光客の行動範囲は広がるでしょう。
 交通機関の広域・異業種連携においても、日本は課題が多いです。例えば、外国人がJR各社の鉄道・路線バスが乗り降り自由で利用できる「ジャパンレールパス」は、新幹線のぞみは使えませんし、他の鉄道やバス、フェリーなどと連携していませんし、海外からネットで購入することもできません。
 それに対して、スイスでは列車、バス、フェリー、遊覧船などの交通機関を安く利用できる「スイスパス」を発行していますし、それぞれの国の通貨でネットを通して簡単に購入できます。
 
■在日外国人が主役の日本のインバウンド観光
 JATA(日本旅行業協会)が発表した2012年度第1種旅行業者の取扱い金額は、国内旅行が52.3%、海外旅行が43.2%に対し、外国人旅行は4.45%に過ぎません。日本の観光業界は国内旅行やアウトバウンド向けのサービスが中心です。現在訪日外国人数が増加しているとは言え、日本のインバウンド観光は韓国・中国系の会社などの海外の旅行会社によって、大部分担われています。
 また、日本ではホテル協会の集まりなどに外資系ホテルの外国人総支配人が出てくることはあまりありません。しかし、例えば日本で営業する外資系ホテルの外国人総支配人が海外のメディアに対して「東北はもう大丈夫です」と言えば、日本人が言うよりも説得力が出るのです。訪日外国人のおもてなしを考えるには、今後は日本ホテル協会の中に外資系ホテルの外国人総支配人にも入ってもらい、外国人目線の施策を考えていくことが必要です。外国人が入ると、物事が思うように進まないとは言ってられないでしょう。
 
■在日外国人コミュニティの持つ可能性
 私はJTBオーストラリアのシドニー支店の立ち上げに際して、ガイド養成の必要があったのですが、その時に戦後、オーストラリアに結婚して渡った日本人がいることを知り、その人たちをリクルートしてガイド養成することを思いつきました。外国人観光客のニーズを知るには、その国を訪問してリサーチすることも必要ですが、在日外国人コミュニティの人材を活用することは大きな可能性があると考えています。日本から海外への情報発信でも、在日外国人コミュニティは非常に大きなポテンシャルを持っています。例えば、在日外国人の親せきや友人といった訪日外国人を想定してみると、宿泊による経済効果はあまり多く期待できませんが、長期滞在の消費による経済効果は期待できる、といったケースです。
 
■おもてなしの国ではない日本
 日本は、レストランや旅館のお客に対するホスピタリティでは世界一ですが、外国人観光客に対する一般市民のホスピタリティは非常に低く評価されているのが現実です。
 
☆経済同友会が最近指摘した(2015年4月9日)発表データをご覧ください。
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2015/150409a.html
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2015/pdf/150409a.pdf
「主な強み」はNO.1「高い顧客志向度」。
これに対して、「主な弱み」に、NO.74「外国旅行者に対する非歓迎的な態度」があります。
これは最新の統計(2013年度)で、それ以前は、さらに悪い評価でした。
(2011年度:91位/2009年度:106位/2008年度:98位/2007年度74位であった。)

<私が、経済同友会で一昨年発表した際のパワーポイント:世界ランキングの英文を翻訳>

http://www3.weforum.org/docs/WEF_TT_Competitiveness_Report_2013.pdf
(JAPAN P.211参照)


☆これも私が、経済同友会で一昨年発表した際のパワーポイントです。


 結論としまして
 「旅行・観光との親和性」は、2013年度は、77位ですが(日本にとって、トップの評価の物差しが追加された影響が大でしょう)、それ以前の評価はほとんど、ドンジリ。128位、131位、131位でした。
 
 日本人が外国人コミュニティと一緒に作り上げる「多文化おもてなしフェスティバル」のようなイベントは、普通に街を歩いている一般市民が気軽に多文化に触れておもてなし力がアップできる、よい機会となるでしょう。
 
【講師プロフィール】
1945 年千葉県生まれ。67年早稲田大学商学部卒業後、㈱日本交通公社(現・㈱ジェイティービー)入社。主に海外、国際業務に従事。シドニー支店開設次長、外人旅行事業部豪亜FIT課長、北京事務所長、JTBワールド取締役アジア部長、JTBアジア・取締役日本支社長を経て、2000年退社。同年大阪観光大学(旧称・大阪明浄大学)観光学部助教授、02年教授、08年3月名誉教授。
08年4月から桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授。現在は共栄大学客員教授。
09年から国連世界観光機関(UNWTO)観光専門家委員会委員(Tourism Expert)。13年6月オープン「佐々木榮松記念釧路湿原美術館」運営NPO法人理事。
専門は、「国際ツーリズム振興論」「観光マーケティング論」。
著書に、『観光オピニオン・シリーズ』全5巻(NCコミュニケーションズ)、『中国にうまく滞在する法』『中国人とうまくつきあう法』(以上、日中出版)、『オーストラリア学入門』(早稲田経営出版)、『国際ツーリズム振興論』(税務経理協会)、『55歳から大学教授になる法』(明日香出版)、『観光大国 中国の未来』、『旅行業入門』(いずれも共著、同友館)などがある。
 

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