2004年11月08日

反作用

テーマ:江利子
その夜、華やかに見えた舞台の幕が閉じられた。
ふと振りかえると
たった一人で踊っている、埃まみれの自分がいた。

私にとっての痛手は
江利子との恋が成就しなかったことではない。
彼女は確かに魅力的であったが
私の好みとはかけ離れていたし
素行の上でも相容れないところが沢山あった。
彼女を伴侶として選んだ場合、私の人生は
望みもしない誤った方向へ進んでいたことだろう。

私がこの恋で失ったこと、それは
「純粋無垢な気持ちで人を愛する」という
“こころざし”を取り戻し損ねたことだった。
自分を見失うほどの高ぶる感情
ましてやその相手は理想とはかけ離れていた・・・
それほどの熱い想いは、初恋の相手以来であった。。。
その私の最もいとおしい想いが
両天秤という情け容赦ない恋の現実で粉々に打ち砕かれたのだ。

そもそも、これは矛盾だらけの出来事だった。
理想とはかけ離れた相手になぜ熱くなったのか?
江利子の仕掛けた罠の被害者を装いながら
多恵子という存在を無視して何をしてきたのか?
この問いに対する答えや反省は全くなかった。
それどころか、罪悪感に蓋をして
反作用のエネルギーが体の奥底から湧き出てきた。

江利子と過ごした盲目的な日々・・・
それは「都合のよい恋愛」に対する、絶好の口実となっていった。
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2004年11月07日

悪女の天秤

テーマ:江利子
同じ支店内の擬似恋愛
思わせぶりな彼女の態度に
私の手許は完全に狂いはじめていた。

私は迷っていた。
江利子は目に映える、クレーバーな子だった。
彼女といっしょに歩くこと
それは、男として名誉なことだった。
多恵子との関係も捨て難かった。
彼女と時間を共にするのは
もはや私の生活の一部となっていた。
余程の理由がない限り
それを放棄することはできなかった。
江利子はそれに値する女だろうか?

バブルが崩壊し
仕事は時間を追うごとに
難しい判断を伴っていった。
自然と会社を出る時間が遅くなり
時間外の白熱した議論が増えていった。
時に上司の怒鳴り声が、支店内に響いていた。

その日は営業課のゴルフコンペだった。
江利子は私の車でゴルフ場へ向かった。
彼女から意外な一言が発せられた。
「昨日は大変だったね」
私は頷きながら、一つの事実を悟った。
昨日の出来事とは、深夜に及ぶ会議で
困難な議案をめぐって紛糾したことだった。
私はそれを彼女に告げていない。
会議に出席したのは数人だけ。。。

彼女は、私と一つ上の先輩を天秤にかけていた。
それを察知したあとも、しばらくは現実に目を伏せた。
自分を見失った私は、さらに自分を欺くために
彼女の唇を奪おうとした。私の目が醒めたのは
彼女がそれを拒絶して、メンソールを口にした時だった。

「再来週の旅行なんだけど、どうする?」
「その返事、もう少し待ってくれないかなぁ」
「この話は、もう終わりにしよう」

その夜、華やかに見えた舞台の幕が閉じられた。
ふと振りかえると
たった一人で踊っている、埃まみれの自分がいた。
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2004年11月06日

江利子

テーマ:江利子
彼女は、営業課のマドンナであった。
同い年の江利子は都内の短大を出て
この会社へ就職していた。
細身のからだに微かなふくらみ、
男の視線を計算できる、華のある子だった。
喫煙・派手な交際・打算的な相手選び・・・
そんな江利子は、正直言って私の好みではなかった。

あるとき、軽い気持ちで誘った彼女は
何の抵抗もなく二人だけの食事についてきた。
単なる食事で勘違いするような自分ではなかったが
彼女の華は、私の好みを超越して輝いていた・・・
少なくともそのときはそう思えた。

平日の食事から休日のデートへ
二人の舞台は発展していった。

ただし、今回の私には自制心があった。
同じ支店内の恋愛は、崩れると厄介だ。
多恵子との関係も良好で
彼女とは「男女間の相性」も抜群によかった。
私は江利子との関係をプラトニックに保った。

あるとき、興味本位で
私はモーションをかけてみた。
彼女の唇を奪い
微かなふくらみを包み
力強く抱きしめた。
彼女は身を委ね
淡い吐息を漏らした。
私はいったんブレーキを踏み
数週間先の旅行を提案した。
彼女はそれを受け入れた。

同じ支店内の擬似恋愛
思わせぶりな彼女の態度に
私の手元は完全に狂いはじめていた。
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