2004年11月03日

フェードアウト

テーマ:裕子
私は裕子との距離を、徐々に置くようになっていった。

裕子は控えめな女性であったが、
次第に自己主張が強くなってきた。
私は会うたびに彼女を求めたが
裕子はより長い時間の共有を希求した。
これは、二つの世界を往来する私にとって
バランスという秩序を乱す要因となった。

そこに、もう一つ「都合のよいこと」が起きていた。
恵理と多恵子の紹介役となった高校時代の親友が
裕子にアプローチをかけていた。
私はそれを知っていたが、見てみぬふりをした。
結局彼は裕子と結婚する直前まで
私と彼女が付き合っていたことを知らなかった。

こうして私は、彼女への愛をゆっくりと薄めていった。

新人研修の合宿が終わった週末
約1ヶ月ぶりに都内の公園を裕子と歩いた。
たわいのない話の後、いつものように彼女を求めたが
このとき初めて、彼女は私を拒否した。
きっと強く引き寄せたら、彼女は私の胸に戻っただろう。
それを承知の上で、私は静かに身を引いた。

信号待ちの対向車線
フロントガラスの向うに裕子と親友が笑顔で並んでいた。
私がその車とすれ違ったのは、それから数ヵ月後であった。
裕子との別れ。。。
それは、あまりにも自然に穏やかなものであった。
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2004年10月27日

二つの顔

テーマ:裕子
パレットに落とされた二つ目の色は
必ずしも望んでいた色彩ではなかったが
私はゆっくりと、それを溶きはじめていた。

裕子の気持ちが判っていたので
私は勝負を急がなかった。

何気ない話題で
微かにモーションをかけると
冗談混じりの会話で
確かな手ごたえを返してきた。
彼女のはじめての恋愛を
私は完全に支配していた。

二人のバイト先
それをデートの場に変えたのは
桜のつぼみが膨らみかけた頃だった。
私は恋人が歩むステップを
ゆっくりではあるが確実に
一段ずつのぼっていった。

雨中の小さな公園で
はじめてくちびるを重ねると
彼女の頬を涙が伝っていた。
少し戸惑って聞いた理由に
 「うれしい」
との答えが返ってきた。
それが彼女の作戦であったなら
私はもっと楽に
この恋愛を楽しむことができただろう。


私はためらいもなく
多恵子と裕子に向ける
二つの顔を持つようになった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

るるすけさん判決を待つにトラバさせていただきました。
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2004年10月25日

思いがけぬ出来事

テーマ:裕子
私のパレットに
新しい色が落とされた瞬間だった。
ぬけるような青空には
ひばりの声がこだましていた。

地元の女子高を出て専門学校に通う裕子は
背が平均よりも少しだけ高く
とてもスレンダーであった。
比較的地味な性格の彼女には
明らかに恋愛の免疫がなかったが
そのひかえめな言葉の節々に
僅かばかりのプライドをにじませていた。
バイト先での仕事振りも的確で
几帳面な性格を周囲の者に認めさせていた。

そんな彼女に不快感はなかったが
決して女性的な魅力を感じてはいなかった。

ジングルベルの音が街に響く頃
同じバイト先の先輩から
全く予期せぬ知らせが耳に入った。
「裕子ちゃんはお前の事気にしているみたいだけど、彼女いるのか?」
私はとっさに答えた。
「彼女なんて、いないです」

パレットに落とされた二つ目の色は
必ずしも望んでいた色彩ではなかったが
私はゆっくりと、それを溶きはじめていた。
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2004年10月24日

裕子との出会い

テーマ:裕子
描かれたのはいつも
モノクロームの風景だった。

それでも、少しずつ
大学生活が充実してきた。
学業は2度目の奨学金授与者になり
サークルも4部から2部リーグに昇格。
塾と家庭教師のアルバイトはコマ数が増え
同級生のお坊ちゃま達との交流も増え始めた。

私は思い切って
自動車を新調した。
マイケルJフォックスが
テレビで宣伝していた車だ。
フロントスクリーンに映る
見慣れた街の風景は
自分に用意された演出・・・
そんな錯覚に陥った。
車内には佐野元春の「SOMEDAY」を
幾度となく繰り返し、流していた。

ある日、いつものようにバイト先に向かうと
見慣れない子が座っていた。
塾長が、私に新しい仲間を紹介した。
事務手伝いをすることになった裕子は
少しはにかみながら、私に挨拶をした。

私のパレットに
新しい色が落とされた瞬間だった。

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