2004年12月04日

多角形の終焉~5~

テーマ:
冷静な私は、彼女に一つの愚問をした。
「今日は帰さないよ」
その言葉に彼女は取り乱した。

「泊まるなんて、出来るはずないじゃない!」

そんなことはわかっていた・・・
私は、彼女の行動を見たかったのだ。
彼女は私の真意を理解せず、表面的な言葉だけで振舞った。
私は数ヶ月ぶりの再会に、もっと熱く
楽しい時間を過ごしたかっただけだった。
あのとき「ありがとう、私も一緒にいたいけど・・・」
と答えたら、きっと私の横には今でも彼女がいた筈だ。

私は「送っていくよ」と一言だけつぶやいて
最寄駅に向かった。改札をくぐる彼女を見届けて
ホテルへの帰路についた。途中で電話をしていると
圭がひとりで戻ってきた。

「このまま帰ると、終わってしまいそうで・・・」

彼女は、やはり馬鹿ではなかった。
私の態度の変化に鋭敏に反応した。しかし、遅かった。
人は極限状態に追い詰められたとき、その人本来の姿を現す。
今回のことで、私は彼女の真の姿を見たような気がした。

「もう遅いよ。君の気持ちは解ったから・・・」

それが最後の会話となった。

私は圭との関係を断った。
彼女と築いた数年間の歳月は
たった数時間の出来事で無となった。
あっさりとした、幕切れだった。

それから半年後、圭は会社を辞めた。寿退社だった。
運命は冷酷である。彼女が会社を去るとき
私は東京の本社に戻ってきていた。
彼女の最後の出社日・・・
私は花を届けようと、業者へ手配した。
一度は愛した圭への、せめてもの思いだった。
しかし、花を手にしたときの彼女の気持ち・・・
それを考えると複雑な思いになり、結局キャンセルした。
本当のやさしさとは何か?を考えさせられた瞬間だった。

圭には、私の知りえないところで様々な苦悩があったと思う。
色々な感情が交錯するが、私のとった行動は
お互いのために、結果的に間違っていなかったようだった。

私のパレットには
何もなかったように
多恵子一色の絵の具が残っていた。
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2004年12月03日

多角形の終焉~4~

テーマ:
圭を人生の伴侶として選ぶことは正しいのか?
そして、彼女を敢えて試すことにした。

私は意識して、結婚の話を遠ざけた。
そして、将来の希望を語りつつも
在阪中の入籍は出来ないことを告げた。
私の言葉に、最初は従順だった彼女も
時間を経るごとにあせりがみえはじめた。
そのあせりは深い感情の波となって現れた。

その日は留学試験のために上京していた。
私は帰省せず、都内のホテルに宿をとっていた。
もちろん、圭との時間を作るのが目的だった。
そのホテルに顔を出した圭は、最初から機嫌が悪かった。
せっかくの再会を楽しみにしていたのに
彼女の感情的な態度に辟易となった。
それでも私には、まだ余裕があった。
冷静な私は、彼女に一つの愚問をした。

「今日は帰さないよ」

その言葉に、彼女は取り乱した。
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2004年12月02日

多角形の終焉~3~

テーマ:
このあと、圭の態度に大きな変化が現れた。
私は彼女の行動に、強く心を揺さぶられることになる。

圭はもともと感情の波が激しいほうだった。
ときどき訳もなく不機嫌になり
大抵の場合黙っていた。
交際する前からある程度はわかっていたし
二人の関係が深くなっても、それは許容できる範囲だった。
ところが、圭のご両親に挨拶をしてから
その波の振幅が、とても激しくなってきた。

私には思い当たる節があった。
彼女は結婚を意識しすぎていた。
その一方で、私はそれほどでもなかった。
このギャップが、彼女を不安定な状況に
追い込んでいたように思えた。
それと同時に一つの疑問があった。
彼女は結婚が目的で、私と一緒になることはその手段なのか?
そう思える場面が出てきた。

圭を人生の伴侶として選ぶことは正しいのか?
自問自答を繰り返し、気持ちを整理しはじめた。
今から思えば、このときの私は怖いくらいに冷静になった。
そして、彼女を敢えて試すことにした。
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2004年12月01日

多角形の終焉~2~

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遠距離恋愛は、恋を終了させるには都合がよかった。

多恵子と圭は
遠距離恋愛のハンディを補う
様々な努力をしてくれた。

多恵子は比較的自由に外泊が許されていたので
月一回以上のペースで来阪した。その都度
私達は密度の濃い時間を過ごすことが出来たので
大きな恋愛の危機は回避できていた。

圭は厳しい家庭環境であったが
異動した数ヵ月後に一度、来阪してくれた。
彼女とそのご両親にとってはとても大きな決断だったと思う。
圭との主なコミュニケーションは電話と手紙だったが
その文章には、感心することが多かった。
私は圭の手紙を楽しみにしていたし
彼女の感性を感じとることが出来る、貴重な手段であった。

私は、このまま恋愛を楽しみたいと言う気持ちが強かったが
圭は結婚というものを強く意識し始めていたので
彼女の歩むペースは、極端に速くなっていった。

多恵子と圭、この二人の間で私のこころは揺れていたが
「恋人としては多恵子、妻としては圭」
という意識が強まっていった。
人生の伴侶を考えた場合・・・
私には圭のきめ細かい感性が大きな魅力に感じられた。
それは、多恵子の女性としての魅力をしのいでいた。

その年の瀬に、私は帰郷のため上京した。
そして圭を私の母校に案内し、そこで
私の貧しい家庭環境と生い立ちを話した。
木枯らしに葉を落とした蔦が絡まる校舎の前で
私には、私が切り開く将来しかないことを理解してもらった上で
圭の目指す方向で二人の未来を考えたいと言った。
彼女は涙を流し、静かに頷いた。
これは、非公式なプロポーズともいえる出来事となった。

その時の私は。。。
多恵子の存在に、敢えて目を伏せていた。

年が明けて、私は圭の家へ挨拶にいった。
はじめての訪問なので
交際しているという挨拶だけだったが
圭の家族は私をあたたかく迎えてくれた。
彼女の実家は、見事なまでの理想的な家庭で
私もこんな家庭を築きたいと思った。

このあと、圭の態度に大きな変化が現れた。
私は彼女の行動に、強く心を揺さぶられることになる。
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2004年11月12日

都合の良い関係

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二人は当たり前のように次のデートの約束をした。
今から思えば、奇しくも江利子との初デートと同じ流れだった。

ただ、江利子の時とは違い
圭との恋愛はスムーズだった。

彼女の独占欲は強かった。
案の定、江利子は支店内で私との事を話し始めたが
圭は全く動じなかった。それどころか
私との関係を親しい仲間に匂わせて
江利子が煽る自慢話をことごとく打ち消していった。
江利子とその相手は、見事に支店の中で孤立しはじめ
そして、多くの人たちが私達を応援してくれた。
圭のとった見事な行動は、一歩間違えると大きなリスクとなるが
そのときの私にとっては非常に心地よかった。

私は二人に必要なステップを
ためらわずに一歩ずつ進んでいった。
お互いの気持ちを確かめ合ったのは
初デートから一ヶ月くらい経った時だった。

圭の男性経験について
私は全く拘ってなかったが
彼女の経験は浅かったようだ。
初めてではなかったので
圭は私を無難に受け入れたが
女性としての悦びを知ったのは
間違いなくはじめてのようだった。
そして彼女が私を締め付ける力は
残念ながら、非常に弱かった。
それでも私は彼女を激しく求めたが
彼女の耐久力が尽きることが多かった。
いわゆる、男女としての相性はよくなかったのだ。

そもそもこの恋愛はずるいものだった。
私には多恵子が存在してたにも関わらず
江利子との恋の反作用で、圭との関係を築いていた。
また多恵子の存在は、圭との関係で不足していたものを
都合よく補っていた。

こうして私のパレットには
圭という新しい絵の具が落とされ
その鮮やかな彩りが私のキャンバスを染め始めていた。
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2004年11月11日

フェイント

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私はさりげなく彼女を誘い、彼女もそれに答えた。
江利子と圭は不仲であり、それを知った上での約束だった。

最初のデートはパスタ屋だった。
大学の後輩がバイトをしていた、小洒落たお店だった。
仕事が終わったあと
二人はその店がある隣駅で待ち合わせた。

江利子とのことを、私は正直に話した。
圭は、私と江利子との関係を全く知らなかった。
かといって、聞いても驚きはしなかった。
彼女には大人の女らしい落ち着きがあった。
圭は黙って全てのストーリーを聞き、そのあと静かに言った。
「かわいそうなM君」
M君とは江利子が付き合っている
私を天秤にかけて選んだ相手のことだ。

私は驚いた。
圭は江利子の裏口を言わず、その相手を哀れんだのだ。
私はなぜそう思うのか?とたずねると
ようやく江利子の噂されていた蛮行の実態を
それも、言葉を選んで話しはじめた。
その内容が真実かどうかは定かではなかったが
何よりも、ただ圭の対応に強く惹かれるばかりだった。

その夜、圭とは長い時間話をした。
彼女もまた、自らの過去を話してくれた。
お互いが二人の将来に何かを期待していたが
その何かをすぐに確かめようとはしなかった。
それでも、私には確信があった。
彼女が自分を見る眼に、私は何か特別なものを感じていた。
彼女もまた、私が恣意的に送ったまなざしに気付いていた筈だ。

二人は当たり前のように次のデートの約束をした。
今から思えば、奇しくも江利子との初デートと同じ流れだった。
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