2015-10-05 20:34:19

マンモス・ステップ~失われた野生王国

テーマ:動物、古生物うんちく

野生動物の王国といえば、どこを思い浮かべるかと言えば、
アフリカ大陸東部のサバンナ地帯ではないだろうか。


まばらに林立するアカシアの木とイネ科の植物で覆い尽くされた草原に
アフリカゾウやキリン、シマウマ、そしてライオンやヒョウなどの
様々な動物が暮らしている。

アフリカサバンナの動物

いずれも他の場所とくらべて、明らかに大型な陸獣が勢揃いしている
野生の王国だ。


この野生の王国を育んできているのは
大地を覆い尽くすほどのイネ科植物、一般的に「草」とよばれる植物の
繁茂によるところが大きい。


大量のエサを必要とするゾウやウシ科などの大型草食獣たちの食料資源として
まかなえることができたのはこのイネ科植物でなのだ。


イネ科植物は他の植物とちがい、成長点が根(の近く)にあることである。
他の植物は成長点が茎の先端にあり、そこを動物たちに食べられてしまうと、
再生することはない。

しかし、イネ科の植物は成長点が根の近くにあるため、
根さえ残っていれば、いくらでも再生ができ、
大型草食獣によって根こそぎ食い尽くされることはないというわけである。


植物の成長点


実は大昔にも別の場所でこのアフリカサバンナのような野生の王国が
存在していたという!


それは意外なことに、地球史上もっとも寒さの厳しい
2万年前ほどの氷河期、ユーラシラ北部や北アメリカの北極圏に近い場所なのだ。

もっとも気温の低い時代の高緯度地域という極寒の地である。


現在、この場所は氷河期にくらべて温暖(それでもかなり寒い)であるものの
地面にコケや地衣類が生える程度の植物がほどんど育成していない
不毛なツンドラ地帯である。

このような場所で
かつてアフリカサバンナのような大草原が広がり、大型草食獣が闊歩する世界が
あったことは、にわかに信じがたいことであるが、
たしかにそこにはアフリカサバンナの動物に引けをとらない大物が数多く生きていた。


マンモスステップのマンモスたち

まず挙げれる代表的なものはケナガマンモス だろう。


シベリアの永久凍土で氷漬けとなった「マンモス」のミイラがよく発掘されるが、
その胃には内容物にはたくさんの草が残っている。

食事の9割はイネ科植物を食べていたようだ。


ケナガマンモスはユーラシア大陸から北アメリカに広く分布し、
これらの地域にケナガマンモスの食事をまかなう大草原

あったことはたしかなようである。


このようにユーラシア大陸から北アメリカ大陸までにいたる広大な草原を
「マンモス・ステップ」とよばれている。



マンモスステップの草食獣

このマンモスステップには他にも
寒冷適応のためか長い毛で覆われたサイ「コエロドンタ」
サイの仲間でももっとも大型だったは「エラスモテリウム」
伝説上の神獣ユニコーンともいわれるほど、頭頂部に2mもあったと推測される
巨大な角をもっていた。


また
シカの仲間である「オオツノジカ」 のオスは差し渡し3、5mもという立派な角を
もっており、シカのように毎年、その巨大な角が抜け落ちては生え変わるという。
重さ40kgもあるといわれるこの骨の塊を毎年つくるほどの栄養を与えてくれる
環境がそこにはあったのだ!


そして
これらの大型草食獣を獲物としていた肉食獣はもっと強烈だ。

ユーラシア大陸には「ドウクツライオン」 そして北アメリカに渡ったその子孫である
「アメリカライオン」 は史上最大のネコ科動物といわれ、

現在にいるアフリカのライオンよりもずっと大型だった。


マンモスステップの肉食獣

忘れてはならないのがサーベルタイガーといわれている「スミロドン」 の存在だ。

長さ20cmを超える長大な犬歯に目がいくが、後足よりも前足が長く頑強で、
大きさはライオンと変わらないものの体重は2倍近くあったといわれている。


走ることに不向きで機動力はないものの、パワー押しの格闘タイプのネコ科動物
であり、大型草食獣をターゲットとした典型的な捕食者だったようだ。


ほかにも「ショートフェイスベア」 という後足で立ち上がると3mをゆうに超える
史上最大級のクマや現在のハイイロオオカミよりも大型のダイアオオカミ は、
ハイエナのように骨をも噛み砕く強力なアゴの持ち主だったといわれている。


さて、
こうした野生王国も長くは続かなかった
1万4000年前になると地球規模で気温が上昇し、平均気温が7℃も跳ね上がった。
これで氷河期が終わり、現在のようなジメジメとした湿潤なツンドラ気候へと変わり、
積雪も増えるようになってきた。


寒さと乾燥に強かったマンモスステップのイネ科植物は次第に姿を消し、
カバやハンノキといった低木やコケ類などのツンドラ植物へと植生が変わっていったのだ。


気候の変化にダイレクトに示す植生の変化は
イネ科植物をエサとしてきた大型草食獣の食糧不足を招き、

生存の窮地に追われたのはいうまでもなく、
それを獲物とする強力な肉食動物もしだいに姿を見せなくなり、
失われた野生の王国となってしまったようだ。



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コメント

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15 ■無題

「マンモスが生きていたらな~」とはじめ人間ギャートルズを見て思っていた子供時代

14 ■ダイアウルフこそ

マスティフ犬やグレートデン、ロットワイラーなどの祖先でしょう。

13 ■#OHRFM

何言ってんの?この時代、人間関係無いじゃん。

12 ■無題

気候だけじゃねぇだろ。まず人間が戦争しかり駆逐しかりつまんなくてしょっぱいことばかりやっているから、大量絶滅が進行形で起こっているんでしょ。もっとそういう文化的なとこから考えろよ、自然のせいばかりしやがって。

11 ■はじめまして

以前、先生の本をスッキリで紹介していて、
購入しました。
その時は、著者まで気にしていませんでしたが、
恐竜を調べていてこのブログに辿り着きました。
とってもハッピーです。
これから過去ブログを読ませて頂きます。楽しみです。

10 ■イネ科草本について

新生代に現れたのですね。単子葉植物では進化しているのでしょうか?

9 ■ブログ見ました!!

最近人のブログを読むのにハマってます♪私も結構ためになりそうな事を書いてるので読んでみてください♪読者なっても大丈夫ですか?

8 ■無題

シベリアの泥炭層が形成されたのが11000年ほど前。温暖化の時期に遅れること3000年。この間シベリアにはまだ草原が残っていたことになります。しかもその間植物遺骸は腐らずに堆積を続けていた。マンモスがいたころは草は食べられるので堆積物化す事はなく、雪が解けると剥き出しの地表に陽光を受けて十分に生育することができたでしょう。マンモスが減少して枯れ草が溜まるようになり、何百年も積み重なって地表は日が当たらずに冷え、新しい草が生えることもなくなり、そこで初めてツンドラ化したのです。
それまで何度も間氷期を乗り越えて来たマンモスとシベリア草原の歴史にピリオドを打ったのはやはり人類ではないかと思います。
低緯度地方で大型獣がある程度生き残ったのは、同じ時代に人類がイネ科植物の利用を始めたからではないかとも思っています。

7 ■そういえば

たしか銀河英雄伝説でお馴染みの田中芳樹氏のSFでダイアオオカミ(向こうではカニス・ジルスと書かれていました)が蘇って群れで人間を襲うなんて話がありましたよね

6 ■博物館にいますね。

その哺乳類の御先祖様達。ダイアウルフは確かにバカでかいオオカミですな。北欧神話のお化けオオカミ、フェンリルがそんな感じかなぁと思いました。

5 ■無題

「雷竜」の次に「稲科」とは興味深い。哺乳類の繁栄に貢献したから人類も。余談ですがスミロドンという呼び名は定着しませんでしたね。(メダロットではライバル級だし仮面ライダーWでも強敵ですが)それにしてもいつの時代も肉食動物は草食動物と比べ、シンプルなデザインですね。

4 ■無題

「雷竜」の次に「稲科」とは興味深い。そして人類も。余談ですがスミロドンという呼び名は定着しませんでしたね。(メダロットではライバル級だし仮面ライダーWでも強敵ですが)

3 ■古生物フリーク

かつてのツンドラがサバンナだったとは…彼らはその恩恵を受けていたからこそそこで栄えたのか。
絶滅哺乳類の良さはもっと知られるべきだと思います。

2 ■無題

イネ科の成長点の話はなるほどと思いました。
あるいは因果が逆で
動物に食べられない位置に成長点がある植物がそれぞれの地域で進化したのかもしれませんね。

1 ■無題

この時代はロマンある。ドウクツライオン、スミドロン見たいけど会いたくないな。
イネ科は新しい種だから、恐竜時代にはなかった。草食恐竜という言葉はいつ修正されるのか。よく考えたら、草食獣という言葉も正確じゃないですね。象は木の葉食べますし。

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