2009-02-03 20:14:32

“人類館”の知念正真氏にお会いしました。

テーマ:津嘉山正種「人類館」

戯曲「人類館」の作者である知念正真氏とお会いしました。


おきなわおーでぃおぶっく情報-知念正真氏と


沖縄市のコザ十字路から東へ2kmほど、知念正真氏のご自宅近くにあるカフェ“CASA”にて。

私(高山正樹)は知念さんから興味深いたくさんのお話を伺い、新しい認識を生むきっかけを与えていただきました。


知念正真さんが「人類館」をお書きになったのは、沖縄の「本土復帰」から4年後の1976年のことです。

“人類館事件”という題材を見つけて、これを書こうと思ったが、当時、参考にできる資料は殆どなかった。だから、戯曲を膨らませるために、沖縄の全てを盛り込んで戯曲を仕立てようと考えた、そうして、名作“人類館”は生まれたのです。戯曲「人類館」は、人類館事件の枠を越えて、知念正真が描くひとつの「沖縄観」となりました。

「自分なりに復帰に関して区切りをつけたかったのです。」


しかし、ウチナーヤマトゥグチを舞台で使うことが許されるのだろうか、今でこそたくさんのタレントさんたちがテレビでウチナーヤマトゥグチをしゃべって、それなりに認知されているが、当時の「ウチナーヤマトグチ」は、標準語がうまくしゃべれない結果の言葉、つまり、「へたくそな標準語」でしかなかった。

「標準語もしゃべれないのか」

そんな言葉が、恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がなかったのですと、知念さんは振り返られました。


プロボクサー具志堅用高が、インタビューで父親の仕事を訊ねられ、「海を歩いている」と答えたという話は有名なエピソードですが、沖縄で「海アッチャー」といえば漁師のことで、それを直訳すれば「海を歩く人」となります。

沖縄の海はサンゴ礁に囲まれて遠浅です。久米島などには、100m沖でも、海面はまだ膝の高さというような砂浜もあるのです。そんな海で泳ぐのは無理、歩く方がずっと楽です。モズクなどは、まさに海を歩いて漁をします。そのような漁に携わっている漁師を「海アッチャー」と言うのです。リーフを越えて沖で漁をする場合は「ウミンチュ」で、つまり漁師でもその漁の仕方によって呼び方が区別されているのです。

つまり具志堅用高さんは、遠浅で漁師をしているという意味を込めて「海を歩いている」と言ったわけですが、「本土」の人間には、このニュアンスは全く伝わりませんでした。


直訳した時のこうした誤解や違和感は、もちろん沖縄に限ったことではありません。しかし、生活の有り様の違いが大きければ大きいほど、直訳のギャップを埋めることは難しい作業となるでしょう。


恥ずかしくて仕方が無かったウチナーヤマトゥグチ、しかし、「人類館」の初演で、「女」役を演じた名優北島角子が舞台の上でウチナーヤマトゥグチを発した瞬間から、会場は爆笑の渦に飲み込まれたといいます。それは、「ウチナーヤマトグチ」が、屈折した精神から解き放たれ、武器となった歴史的な瞬間だったのかもしれません。


しかし、いまさら人類館を上演することにどんな意味があるのか、知念さんはとても悩まれたようです。

「もう、あの時のような『笑い』は期待できないと思った。結局上演することになったのだが、実際に笑いは当時の十分の一です。」

でも知念さん、それこそ「ウチナーヤマトグチ」が、現代において堂々と存在している証拠だ、と、僕は思うのです。そして今の観客は、静かではあるが、確実にその言葉を理解しようとしているのではないでしょうか。


ただし、「人類館」には、ウチナーヤマトゥグチではないもうひとつ言葉、「本物」のウチナーグチがあります。「標準語」とは全く別の言葉。使えば方言札を首に掛けられた「ことば」。今でも、大和の人間には全く理解できない「ことば」。


“おきなわおーでぃおぶっく”のCD「人類館」にも、「ウチナーグチ」が収録されている箇所がたくさんあります。しかしライナーノーツには、そのウチナーグチについての注釈や対訳などは、一切掲載していません。それは、知念正真氏の思いに、出来るだけ添いたいと考えたからなのです。

お会いする前、人づてに聞いていた知念正真氏のこだわり、私たちは、それを大切なこととして受け止めました。


「かつて沖縄の人間が内地に来て言葉の壁を前にして苦労していた頃、標準語をウチナーグチに訳してまで、沖縄の人間に日本語を教えてくれようとした人がいただろうか。そんなヤマトゥンチュはひとりもいなかった。同じように、今、ウチナーグチを大和の人間に理解してもらおうとする必要などない。分からなくていいのだ。分かりたければ、そっちからこっちへ、大和から沖縄へ近づいて来い。」


しかし、今日、知念さんのとても暖かくて優しい人柄に触れ、知念さんの思いは、決して対立的なものではないと確信したのです。ただ、言葉を直訳するだけのような安易な理解など要らない、言葉の背後にある沖縄の文化や歴史を深く正しく理解しなければ、ウチナーグチは決してあなた方には伝わらない、そうおっしゃられているのだと、私たちは感じたのです。

「本当の理解」というものが、どれほど困難なものだとしても、その希望を失っては演劇など、あり得ないはずなのですから。


そして…

人類館のCDをお買い上げくださった方々に、何度も聴いて理解を深めて頂くために

おきなわおーでぃおぶっくOfficial Site にてウチナーグチの「日本語」訳を掲載することを、知念正真氏は快く同意してくださいました。

その際は是非とも知念正真氏のメッセージを添えてお届けしたいと思っています。


また、来る2月15日、劇団創造による「人類館」が、うるま市民芸術劇場にて上演されます。

その会場にて、津嘉山正種「人類館」のCDを販売することもお許しいただきました。

「正種のやってることだから、無下に断るわけにもいかんしなあ」

知念先生。ありがとうございました。


おきなわおーでぃおぶっく情報-劇団創造「人類館」東京凱旋公演チラシ
(画像をクリックすると大きな画面でご覧いただけます。)


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