オカミのナカミ

広島のすみっこで居酒屋を営む女将のブログです


テーマ:



娘ふたりが大学進学で広島を離れると、当然のごとくオーナーとオカミだけの暮らし(ときどきお姑さん出現)が始まった。
普段から会話がない、趣味が合わない、気も合わないという、なんで結婚したんだというふたりなのだが、娘がいなくなってからの沈黙たるや、ハンパない。
何かに似ていると思ったら、NHKでたまにやっている囲碁の対局とそっくりだ。




食卓を挟んでお互いが相対峙し、いただきますというと、無言で箸を取る。




「先手、オーナー、冷酒と焼き魚」



チッチッチッチッ・・・10秒・・・・・20秒。



「後手、オカミ、白飯おかわり」





という女性のアナウンスが聞こえてくるような状況だが、別段それが苦痛というわけでもなく、たまに醤油や佃煮を手渡しながら、今日はなんや暑いわぁなどと、返事があってもなくても困らないような会話をし、お茶をすすっている。





こうやって血の気が多い私たちも、歳を経るごとに枯れて落ちつき、いわゆる「正しい年寄り」になっていくのねと、淡い憂いが去来する。
まぁそれも悪くないと、テレビを見ながらキュウリの浅漬けをボリボリかじっていると、突然オーナーがチッと舌打ちし、キムチと豚バラのオムレツを箸でつついた。





先手・オーナー
「このオムレツ、火ィ通しすぎじゃあや。炒り卵を固めたみたいになっとろうが。半熟に仕上げるけぇ素材同士がなじむのに、これじゃあバラバラで一体感がないけぇ旨もうないわ」





後手・オカミ
「あ~、やっぱり。失敗したなとは思たんやけど、ごめんごめん」




先手・オーナー
「失敗したなと思うもんを、しれっと出すんがオマエらしいわ。作り直す気はサラサラないんじゃけぇの」




後手・オカミ
「いやいや!出す時、どないしよかと迷ったんよ。でも、なんか言われたら補修できるわと思ったけん、そのまま出したんよ。ちょっと待ってえな」




台所に行き、冷蔵庫から卵を取りだし、お椀と一緒に食卓に戻ってくるオカミ。
オーナーの目の前で卵を割り、卵黄と卵白にわけた。





先手・オーナー
「それどうするんや」




後手・オカミ
「こやって黄身だけ潰して、上からかけたら半熟っぽくなるねん」




つぶした卵黄を、件のオムレツの上からタラ~っとまわしかけるオカミ。




後手・オカミ
「はいっ!補修完了!」





先手・オーナー
「・・・・・・・・・。」






チッチッチッチッ・・・10秒・・・・・20秒・・・30・・・






「なめとんか、オマエ」





7手完。
オーナー、キレ負け。






食事が始まったときより、テーブルは重苦しい空気に包まれた。
完全に無音になった夫婦の食卓に、テレビの音だけが響いてくる。







いいアイデアだと思ったのになぁ。





正しい年寄りへの道のりは遠い。






広島ブログ

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