「演劇部、ねぇ…」
僕は家で宿題をしながらそうっと呟いた。
「演劇部がどうしたの?」
大学生になった姉が聞いてしまったのか、僕に尋ねてくる。
「姉ちゃんの頃の演劇部ってどんな感じだった?…例えば顧問とかやる劇とか、違った?」
「んー、顧問は違うかなぁ。今はなんだっけ、古田先生?だったっけ。前は原野先生がやってたんだよ。」
「ハラぴーが演劇部とか似合わねぇ」
姉はくすっと笑ってその場を立ち去った。
ー次の日。
今日は新入生歓迎会だ。俺達の出番は終わって、そろそろ演劇部の番だ。
『演劇部の皆さん、お願いします』
演劇部の出し物は1年生だけでなく2・3年生も楽しめるので結構人気である。
後ろのほうからやけにでかい拍手が聞こえてくる。どうやら赤ずきんをもじったものらしい。
「母さん母さんこれをあのババアのところへ持っていけばいいの?」
赤い頭巾がひらりと揺れる。主役は鈴華だった。
「そうよ。あと銃も持って行ってね」
「何のために?」
「そうね…護身用?」
どうも変に改変されているので、中学生にはウケがいいらしい。みんな笑っている。
【赤ずきんは森へ出かけました】
「喉乾いたな・・・自分用の飲み物持ってくればよかった…未成年だから葡萄酒とか無理…!」
「おやおやどうしたんだいお嬢さん」
【そこに現れたのは狼でした】
「わぁ全裸だー近づかないでください気持ち悪いですー」
「棒読みぃいいいいい…そんなこと言うと食べますよ」
「意外と礼儀正しいんですね狼さん…こんなときは銃があるので大丈夫ですよ」
「わーやめてくれ!いやマジで!何でもしますから!」
【そう言って狼は帰っていきました。】
「これで一件落着だね!
1年生の皆も準備は怠らずに、学校生活を楽しんでいってくださいね!」
体育館に大きな拍手が鳴り響く。鈴華は華麗にお辞儀をした。
少し別次元の人みたいに見えた。