2005-07-25 23:32:45

恩田陸/劫尽童女

テーマ:小説
恩田 陸
劫尽童女
秘密組織「ZOO」に所属していた伊勢崎博士と、超能力を与えられたその娘・遥(はるか)は、永らく「ZOO」から逃亡していたが、追っ手により、再び組織と戦う事となる。
遥と同じく特殊能力を持つ犬・アレキサンダーと共に、孤児院に身を潜めるが・・・。
殺戮のために与えられた超能力に疑問を抱き、悩みつつも成長する少女の様を描く。

正直なところ、設定の面白さに惹かれて読んでみたものの、気になってしまう点が多かったというのがこの本を読み終えての感想。
この作品では、「ZOO」という秘密組織が出てきて、その組織と戦う超能力を持った少女を描いているのだが、幼少の頃は子供的な無邪気さから殺戮を楽しんでさえいて、自分の超能力に関して疑問に思うところも特になかったのだが、成長していくにつれて、自分の能力に対する嫌悪を感じていく・・・という感じで、物語と共に少女の成長を描いているのだが、少女の感情の変化がどうも唐突で、感情移入し難かったように思う。
あと、博士が何故組織から抜ける事となったか等、理由付けがしっかりしていない点もあるところも気になってしまう。

また、ラストの展開だが、恩田陸さんは最後の「締め」を勢いよく書いてしまう傾向にあるのか(「六番目の小夜子」もそういう感じだった)、少し無理があると感じた。
表現は悪いが、漫画誌の「ジャンプ」に連載している漫画が打ち切りになってしまった時のような、少々無理矢理なハッピーエンド(?)という感じがした。「ジャンプ」を読む方なら何となく理解して頂ける、と思う。

・・・散々批判的な事を書いてしまったが、勿論読んでいて面白かったところもあった。主人公の少女が隠れている孤児院に、カウンセラーが何人か来るのだが、そのカウンセラーの中に組織の人間がいるかも知れない・・・という展開になって、「誰が組織の人間なんだ?」と推量するところ等は、緊迫感があって非常に楽しめた。
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2005-07-19 22:05:09

村上春樹/世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド

テーマ:小説

高い壁に囲まれ、鳥以外出ることの出来ない街で暮らす事になった<僕>の「世界の終わり」。
科学者に思考回路を組み込まれた<私>が、とある組織から逃げつつも自分の回路の秘密を知ることとなっていく「ハードボイルド・ワンダーランド」。
二つの物語が同時進行し、交わっていく・・・。

「海辺のカフカ」と同じく(というかこちらの方が先に書かれた)、二つの物語が同時進行するという形式をとっているということで、期待して読んだのだが、やはり期待を裏切らない良い作品だった。
「世界の終わり」では、平和で争いがない街を描き、街の人々や、自然の描写が細かく書かれ、静的な物語が進む。
一方「ハードボイルド・ワンダーランド」では、主人公の<私>を追っている組織や、”やみくろ”という地下に住む生物等、<私>を次々と襲う危機を描き、終始緊張感のある物語が進む。
二つの物語が交わった時、この対比の意味がよくわかる、という造りである。

読み終わった時に「カチッ」とパズルのピースがはまるような感覚があり、それと同時に「ここはどうなっているのか」「あの時主人公はどうしてああいう行動をとったのか」というモヤモヤした感覚が襲う。まだ読み残している作品も多いものの、これが村上春樹の小説の良さかなーと思う。
ところで続編が出るというような話を小耳にはさんだが、どうなんだろう?

追記・・・ひょっとして「海辺のカフカ」がこれの続編にあたるのかな? 影とか、森とか、似たところがあるし・・・。あー、海辺のカフカもう一回読もうかな。
ていうか誰か教えて下さい(切実に)
AD
いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)
2005-06-22 23:00:48

村上春樹/ダンス・ダンス・ダンス

テーマ:小説
著者: 村上 春樹
タイトル: ダンス・ダンス・ダンス〈上〉


「羊をめぐる冒険」から四年。札幌の街で「僕」の冒険が始まった。
「僕」は複雑なダンス・ステップを踏み続けながら、様々な運命を通過していく。
周りの人達が消えていってしまい、喪失を繰り返していく「僕」の辿り着く先とは・・・?

羊をめぐる冒険の続編。だが、結構時間が経っている事もあり、文体や雰囲気は変わっている。(登場人物に名前がつく等々) また「ダンス・ダンス・ダンス」という題名も気になるところかと思われるが、実際のダンスとは関係がなく、抽象的なものとして「ステップを踏む」という表現が出てくるだけである。
僕としては「羊をめぐる冒険が最高傑作」という思いに変わりはなかったが、羊よりもこちらが良い、という方も結構居るようだ。
たしかに、この作品には羊には無い良さがある。

例を挙げると、登場人物の魅力は羊を超えると思う。
中学の頃の、何でもこなし、容姿も端麗という少年だった映画スターの「五反田君」、有名な写真家の娘で、冷めたところのある大人びた13歳の「ユキ」等、登場する人物の誰もがリアルに書かれていて、非常に魅力的。「ぼく」の屁理屈めいた喋りや、ジョークにも磨きがかかっていると思われる。

「風の歌を聴け」から順番に読むのが良いとは思うが、この作品だけ読んでも楽しめるかも。また羊だけ読んでこの作品、というのもあり、だと思う。
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2005-06-05 21:01:11

村上春樹/羊をめぐる冒険

テーマ:小説
著者: 村上 春樹
タイトル: 羊をめぐる冒険 (上)
タイトル: 羊をめぐる冒険 (下)
「風の歌を聴け」、「1973年のピンボール」の主人公<僕>は、妻に出て行かれ、耳専門のモデルをしている女性が新しいガール・フレンドとなった。また、一緒に翻訳の仕事をしていた相棒とは、様々な原因から少しずつ溝が出来るようになる。
そんな<僕>のところへ、<鼠>からの一通の手紙が。その手紙をきっかけに、<僕>の羊をめぐる冒険が始まる。

紹介文を見ると察しがつくと思うが、今回は「展開らしい展開」というものがある。1作目、2作目の作品とはそこが異なっていると思う。
いわば、1,2作目で<僕>という人物の変遷、輪郭をはっきりさせ、3作目、3部作の締めくくりに物語りを展開させる、という感じだろうか。
1,2作目が有るからこそ、この作品のラストシーンでの感慨は非常に深いものとなり、<僕>や<鼠>、ジェイズ・バーのジェイへの愛着が増す。この構造は、読み終えた時に「やられた」と思った。

「喪失感」というテーマには変わりがなく、「1973年のピンボール」で、様々なものを失った<僕>が旅に出て何かを掴もうとするのだが、結局様々なものを失ってしまう。
ネタバレになるため具体的には書かないが、旅を終えた後には色々なものがマイナスされていて、「ゼロ」に近い状態である。

<僕>が旅をして、プラスされたものはあるのだろうか? 読み終えた後自分なりに考えてみたが、あまりプラスされたものというのはないように思う。ただ、<僕>は以前よりもプラスやマイナスを考えなくなっているのではないかと思った。
結局、人間はプラスやマイナスを考えて生きてはいけない、考えるべきではない。あくまで、無理矢理この作品を前向きに捉えるとしたら、こんな感じだろうか。そんな風にまとめつつも、プラスやマイナスを意識しながらせこせこと生きている自分がいる訳だが。

個人的な事を書くと、この作品は今まで読んだ作品の中でベストくらいに面白い作品。
しつこいけども、読むなら是非「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」ときてこの作品をどうぞ。なんのてらいも無く「名作」と呼べる作品だと思える、はずです。
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2005-06-03 22:27:57

村上春樹/1973年のピンボール

テーマ:小説
著者: 村上 春樹
タイトル: 1973年のピンボール
「風の歌を聴け」の続編。
<僕>が東京で生活をしていると、突然謎の双子の姉妹が転がり込んできて、共同生活をする事となる。
一方、<鼠>は、昔と同じようにジェイズ・バーに通いながら、悩みを抱えつつ生きる。
二人はそれぞれの人生を歩み、たくさんのものを失っていく。

何というか、比較的今作の方が展開らしい展開が有った(双子の姉妹の事や、ピンボールを探しに行くところ等)ため、風の歌よりもこちらのピンボールの方が面白く読めた。

今作では<僕>が東京で暮らしている事で、現在に行き詰まっている<僕>と、過去に囚われている<鼠>の、それぞれの思いが対照的に(?)書かれていて、作品全体に流れる喪失感も伝わりやすかった。

「風の歌を聴け」を読んだら間を置かずに読んで下さい。
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2005-06-02 22:57:14

村上春樹/風の歌を聴け

テーマ:小説
著者: 村上 春樹
タイトル: 風の歌を聴け
村上春樹のデビュー作。
1970年の夏、久々に海辺の街に帰省した<僕>が、「ジェイズ・バー」で友人の<鼠>とビールを飲んだり、恋をしたりしながら送る青春の日々と、全てが過ぎ去っていってしまう事への喪失感を書く。
村上春樹の「三部作」と呼ばれる作品群の幕開け。

正直なところ、僕は逆にこれといった展開のない単調な感じが少し苦手だと感じた。しかし文章が上手かったり会話にセンスがあったり(成る程、というような上手い比喩表現が多い)するので、読む事が苦になる事はまずない、と思う。

自分でどう転ぶかわからないと思った事も、結局落ち着くところに落ち着いてしまったりする。
単調な日常だと思っていた事が、少し離れると本当に遠い存在になってしまったりする。
<僕>と<鼠>が何となく感じている、悩みや虚しさを、しつこい感じを残さず、素っ気なく書いているのが良い。

「三部作」を読むならここから。<僕>と<鼠>はずっと登場します。
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2005-05-31 21:44:16

カフカ/カフカ寓話集

テーマ:小説
著者: カフカ, 池内 紀
タイトル: カフカ寓話集

「変身」で有名なカフカの短編を収録した本。「寓話集」とあるが、別に寓話という言葉にこだわっている訳ではなく、この本よりも前に出た「カフカ短篇集」という本があるため、区別するために「寓話集」としたらしい。

正直なところ、難解なために収録されている短編のうち半分くらいしか理解出来なかったが、結構長めの「巣穴」、「断食芸人」という作品と、いくつかの非常に短い(1,2ページくらい)短編は面白かった。
「変身」と「城」は有名なカフカだが、他の短編等はあまり知られていない。しかし短編は「大人の童話」(矛盾してるけど)といった面白さがあり、単純に面白かったり、考えさせられるものがある。

今回は、収録されている中で恐らく一番長い「巣穴」という作品について紹介させて頂く。
この作品は、地中に巣穴を掘って住んでいる生き物(僕はモグラだと思ったが、明示されていないのでどんな生き物を想像しても良い)の一人称によって書かれている。
静けさと安全を愛する主人公が巣穴に居ると、物音が聞こえ始める。小さい生き物か? それとも自分を喰らってしまうような大きく凶暴な生き物なのか?
穴をどう改良すれば良いか、どうすればこの危険を回避すれば良いのか、等と言った主人公の葛藤を書いている。
そもそも、別に外敵が迫っている訳ではないかも知れないのだが、主人公の妄想はどこまでも広がっていく。この作品に限らず、カフカの小説は不安や妄想に溢れていて、恐ろしかったり、共感する点があったりして非常に面白い。
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2005-05-26 22:48:22

森見登美彦/太陽の塔

テーマ:小説
著者: 森見 登美彦
タイトル: 太陽の塔

「何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。なぜなら私が間違っているはずがないからだ。」

京都が舞台の青春小説。
変わり者揃いの友人達、後輩への恋、膨らむ妄想。現役京大生が書く、ひねくれた学生の物語。

この作品ほど、読んでいて笑いが止まらない作品はないのではないかというくらい、終始笑える。
文章で笑わせるというのは難しいと思うのだが、固い文体で妄想全開に語るモテない学生の姿が可笑しくて仕方がない。
主人公を取り巻く、友人達のその変人ぶりといったら凄まじいもので、皆一癖も二癖も持つ男達で、一人ひとり本当に面白い。
青春モノの作品は「爽やか」という印象を受けるものが多いが、この作品は寧ろ逆で、作品の最初の方でも作者自身「男汁にあふれ、読了したあかつきには体臭が人一倍濃くなっているはずである」等と恐ろしい表現をしている(笑)

塩は男なので「あー男ってこうだよな」と共感する部分が有ったが、女性が読むとどのような印象を受けるのか気になる。(しかしまあ女性が読んでも笑い転げる、と思う)
いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)
2005-05-22 12:36:59

村上春樹/海辺のカフカ

テーマ:小説
著者: 村上 春樹
タイトル: 海辺のカフカ (上)

著者: 村上 春樹
タイトル: 海辺のカフカ (下)

「世界でいちばんタフな15歳の少年になる」と決意し、中野区にある家を出る田村カフカ少年。
9歳の時に記憶を失い、猫の気持ちを理解する能力を持つ初老の男・ナカタさん。
一見全く無関係な人々が運命に巻き込まれ、四国にある図書館を通じて繋がっていく・・・。

村上春樹の作品を読むのはこれが初めて。上に書いた紹介文では意味がわからないかもしれないが、「続きが気になる!」と思ってどんどん読んでいく感じの作品なので、こんな感じで。この面白さは読んでみないとわからないかも。

あまり話の展開は紹介できないので、取り敢えず紹介出来る事から。
まず、魅力的な登場人物。個人的に好きな登場人物は、私立図書館で働く、知的な魅力と、ある”秘密”を持った青年・大島さん。
この人と田村カフカ少年の、回りくどい表現や引用(ギリシャ神話等)だらけの会話が読んでいて非常に面白かった。 (この会話パターンが嫌いな方もいるらしい・・・わかる気はする)

また、謎の多い世界観も良い。
ただ、この作品は最初に提示した謎が綺麗さっぱり解ける、という感じではない。上巻のラストと下巻の最初で少しずつ謎が解けていき、最後は哲学的になって何となく終わる感じ。
僕は上巻のラストでかなり盛り上がっていたので、「謎が氷解する」という感じではないラストの展開は少し残念な気もした。

ノンストップで読書したい方にお勧め。時間の無い方は・・・辛いかも。(僕はテスト期間中に読んだ事を後悔しました)
いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)
2005-05-16 23:41:52

恩田陸/光の帝国

テーマ:小説
著者: 恩田 陸
タイトル: 光の帝国―常野物語
物事を暗記する力や、将来を予見する力など、「常野」と呼ばれる地から来た人々は、皆それぞれ、不思議な能力を持っていた。彼らは温厚な性格を持ち、普通の人々の中で静かに暮らしている。
不思議な「常野一族」をめぐる連作短編。

上に紹介した世界で織りなされる短編集だが、三人称で書かれているものから「手紙」という形式をとっているもの、太字を使っているもの等もあり、文体は様々で、話の雰囲気も様々。
統一感がないと言えるかも知れないが、変化に富んでいた方がむしろ読みやすく感じた。
この短編集で非常に残念なのは、短編一つ一つは面白いものの、肝心な「常野」という世界観についての説明が足りず、よくわからず、設定があまり生かされていない気がした事。
「何となく魅力的な世界観」というのが良いのかもしれないが、僕はもう少し「常野」の細かい設定が明らかになったら面白いのに、と感じた。

この本のあとがきに、「少々後悔している」や「次の機会に~」等、恩田陸さん(著者)自身にも少し満足のいかない点が有るようなので、続編に大期待。
少々批判的な事を書いてしまいましたが、世界観は非常に魅力的なのです。
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。