2005-11-01 22:51:16

浅田次郎/蒼穹の昴

テーマ:時代小説

<あらすじ>
汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう────
優れた文明を手に入れた外国勢力に狙われ、体制が崩れつつある清朝末期、貧しき糞拾いの少年・春児(チュンル)は、占い師の老婆から途方もない予言を聞く。それを信じ、科挙試験を受ける兄貴分・文秀(ウエンシウ)に連れられ、都へ上る。
春児の信じる予言、文秀の科挙試験・・・二つの夢は果たしてかなうのか?

一方、大清国の支配者である西太后は、人知れず国の行く末を憂え、自らの使命の重さを嘆いていた────
若き俊英が創る新しき時代と、旧き権力が守る中国三千年の歴史。二つの想いや野望が紫禁城に渦巻き、中華四億の命を翻弄する。
全ての夢見る人に捧げる大作宮廷ロマン。

<書評>
文庫本の背表紙にある紹介文をまとめて、多少テンションを上げて紹介させて頂いたが、この作品
を紹介しようと思うと、自然とテンションが上がってしまうようなので、ご勘弁の程を。
というのも、この作品は僕が今まで読んだ小説の中でもかなり面白い方で、「歴史小説」というジャンルに限ると、ひょっとしてこれが1番じゃないか、というくらい良いのである。

この作品は、清朝末期という時代の特異さ、その中で生きる人間な懸命な様子が壮大に描かれていて、いかにも歴史小説、という感じのスケールの大きい作品である。僕は中国史の知識など皆無だったが、浅田次郎を信じて、全四巻のこの超大作を読み始めた。よく考えるとかなり無謀な試みだったが、それでも「面白い!」と感じたからすごい。

ところで、司馬遼太郎の歴史小説などを読んで、面白い歴史小説の「条件」は一体なんなのか、と考えたときに、
・様々な立場(特に相対する立場の両極面)の人間の視点から、歴史を立体的(?)にとらえている
・その時代の特異な雰囲気、情勢などが、読んでいて伝わってくる
・登場人物それぞれの性格を書きわけ、長所も短所も、全てひっくるめて一人の人間を描いている
という点が大きいなーと思う。歴史をただの美談にせず、様々なことが詳しく書かれているほうが厚みがあり、読んでいると、まるでその時代にタイムスリップしたかのような錯覚を感じるのである。
思うに、この作品は上に挙げた要素を持ち合わせているから、たとえ歴史の知識がなくとも、その時代の空気を感じて、一気に読む事が出来るのである。


ただ、三巻~四巻の前半あたりは、少し勢いが落ちているかなと思う。二人の新聞記者が出てきて、情勢を客観的な立場から語る事で読者に解説する、という形をとっているのだが、やはりあまり客観的に書かれると、それまでの「いったいどうなるんだ!?」という好奇心がなくなるので、知識が無い者には少々退屈だった。

また、歴史小説になっても変わらぬ、浅田次郎節も魅力である。時代に翻弄されながらも男の友情や自分の信条は絶対に貫く、という熱い登場人物は、まさに浅田次郎と歴史小説の組み合わせがマッチしていたために生まれたいえると思う。

どうもまとめきれなかった感がありますが(あらすじ書いてる時点で力尽きた)、とにかく読み出すと止まらなくなる傑作であるということを書きたかったのです。以上。


・・・ところで、文庫版1~4巻の帯に書かれた言葉が格好良かったのでご紹介。
1巻・・・極貧の少年に与えられた途方もない予言 そこに「希望」が生まれた
2巻・・・若きエリートが志す新しい時代 その前に「試練」が立ちはだかる
3巻・・・慈悲深き女帝が護る旧世の栄華 憂国の「熱情」は奔流となってほとばしる
4巻・・・運命に立ち向かい生きる道を切り拓くすべての夢見る人に捧げる「賛歌」
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2005-07-07 23:39:51

浅田次郎/天切り松 第三巻

テーマ:時代小説
浅田 次郎
天切り松 闇がたり3 初湯千両


浅田次郎「天切り松」シリーズの三巻目。今回は今まで名前だけでまともに登場していなかった、「仕立て屋銀次」が登場する。

三巻目になっても天切り松の面白さは衰えない、どころか、それぞれの登場人物像が更に深まっているように思える。

この本に収録される話で、僕が最も気に入ったのはやはり「銀次蔭盃」。名前だけ出てきてまともに登場しなかった「仕立て屋銀次」が登場する。

天切り松が持つ、親分子分の契りの証である盃の話から始まるのだが、天切り松は何故か二つの盃を持っている。一つは地味(?)な素焼きの盃、これは安吉親分のもの。もう一つ、天切り松は銀の盃を持っていた。これこそが「仕立て屋銀次」の盃である。
では何故天切り松は、渡世にあるまじき「二つ盃」をしていたのか・・・?

という感じで展開するのだが、この話のラストシーンは本当に感動する、というか、読んでいて鳥肌が立つ出来である。
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2005-06-13 21:10:36

ARISAWA KEN/英雄よみがえる!!

テーマ:時代小説
著者: ARISAWA KEN
タイトル: [歴史パロディ] 英雄よみがえる!<日本編>


歴史パロディ というホームページから生まれた、歴史上の偉人を軽~くコミカルに、しかし史実に基づいて小説にした本。

世間で”偉人”と呼ばれる、格好良いがどこか親しみづらいイメージを持つ人達を、「本当は人間なんだから、格好悪いエピソードの一つや二つ持ってるんじゃないか」と疑ってみたり、毅然とした態度で苦難を乗り越えていったと思われている人達を「本当は不安で仕方がなかったけど、見栄を張っていただけなんじゃないか」と捉えるなど、歴史を面白く、親しみやすい形で書いているのが良い。

とにかく、この本のように、思わず笑ってしまう「歴史の本」というのは稀だと思う。この[日本史篇]では、文字通り日本史に出てくる源義経や織田信長などの人物を扱っているのだが、桶狭間の戦いの前に焦って「やばいよ、どうする?」なんて言っている信長を想像するだけで笑いがこみ上げてくる。

「歴史はわかりにくいし、つまらない」と思っている方は、是非この本を読んでみて下さい。歴史上の人物も同じ人間、失敗談や親しみやすいところもちゃんとあるのです。
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2005-06-07 22:59:00

浅田次郎/天切り松闇がたり(残?)

テーマ:時代小説
著者: 浅田 次郎
タイトル: 残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉
浅田次郎の人気シリーズ「天切り松」の第二巻目。
表題作の「残俠」は、ある日目細の安吉一家のところに、清水の次郎長の子分・小政と名乗る老俠客が現れる。さて・・・という話。
二巻目ではそれぞれの話もバラエティに富み始める。

表題作をもっと詳しく紹介しようかとも思ったが、個人的に一番気に入った、「百面相の恋」というお話を紹介させて頂く。
偽帝大生にして、帝大生顔負けの知性を持つ経済犯、「百面相の常次郎」。題名の通り、この常次郎が恋をする話なのだが、これがやたらと感動する。

あらすじを簡単に説明すると、常次郎には互いに好き合う人がいながらも、自分は実は本物の帝大生ではないため、結ばれるべきではないと考え、苦悩する、という話。
本来、恋愛もの(しかも筋は結構ありがちな感じ)は苦手な僕だが、「声になる言葉は、全部嘘になってしまうような気がしてね」という常次郎の言葉に素で感動。良い。
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2005-05-09 01:08:40

幻色江戸ごよみ

テーマ:時代小説

著者: 宮部 みゆき
タイトル: 幻色江戸ごよみ

下町に住む町人の姿を描く、時代小説短編集。
どの作品も、市井作品に宮部みゆき独特のミステリー色を加えたような作品になっている。

最近話題の、宮部みゆき。僕は、今のところ、この人の本はこの本一冊だけしか読んでいないのだが、その文章の秀逸さ(読みやすく引き込まれる)と、独特なミステリー感はよくわかった気がする。
ただ僕は、「時代小説が読みたい」と思って読んだので、時代小説とミステリーの合体のようなこの作品群は、いまいち「時代小説感」に欠けているような気がして、物足りない部分もあったと言える。
勿論、作品一つ一つがよく出来ていたため「つまらない」と感じた作品は無かった。「宮部みゆきが読みたい」と思って読んだ人はどう感じたかが気になるところ。
ちなみに、僕が一番面白かったと感じたのは「首吊り御本尊」という作品。毎日の辛い奉公に耐える、奉公人の捨末が店の大旦那に呼ばれ、掛け軸に描かれている、首を吊ってにこにこ笑っている男、「首吊り御本尊」について語り始める・・・という話。少し不気味なところが、何とも言えず面白い。

時代小説特有の読み難さがほとんど無い、と思うので、初めて読む時代小説としては最適かと思われる本。
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2005-05-07 16:04:05

酔って候

テーマ:時代小説
著者: 司馬 遼太郎
タイトル:酔って候<新装版>

幕末の動乱の中にあって、自らの知恵をたのみに決断をし、世間の期待を背負った「四賢候」と呼ばれる殿様達。すなわち、土佐の山内容堂、薩摩の島津久光、伊予宇和島の伊達宗城、肥前の鍋島閑叟。この本には、それぞれの殿様に関する四つの短編を収録している。
短編集ではあるが、この本一冊でひとつの作品であるといった感がある。

僕が気に入ったのは、やはり表題作の「酔って候」
鯨海酔候(常に酔っている鯨の意、らしい)と名乗り、自らの人生を「詩」になぞらえるという、非常に激しく特徴的な藩主であった山内容堂の苦悩・人生観を書ききっている
また、「伊達の黒船」という作品は、藩主というよりも一人の無名人を書いた作品。
器用な傘屋が藩に命じられ、黒船を造るという話で、「幕末のプロジェクトX」という感じで非常に面白かった。
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2005-05-04 13:31:16

天切り松 闇がたり

テーマ:時代小説
著者: 浅田 次郎
タイトル: 闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉
浅田次郎の、大正ロマン溢れる小説。1~3まで出てます。ちなみに、「天切り」とは屋敷の天井を奇麗に切り取って進入するための盗みの技術の事、「松」とは主人公・松蔵の事、「闇がたり」は六尺四方にしか聞こえないという夜盗の喋り方の事です。
留置所にやって来た謎の老人は、かつて「天切り松」と呼ばれた高名な義賊。「やい、若えの。こうして噂でもねえ騙りでもねえ本物の天切り松に出会ったおめえは果報者だ。」というと留置所の若者たちに自分の青春時代を振り返って語り始める。

この作品は、読んでいると本当に止まらなくなる。この作品を面白くしている要素を挙げるとキリがないが、魅力的な登場人物や感動的な話、読みやすく秀逸な文章等により、他の小説には無い痛快さを実現しているのではないかと思う。
「面白い」と素直に思える作品が読みたい方は、是非この本を読んで欲しい。

ところで、3巻の文庫化はまだですか集英社さん・・・。
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2005-05-01 10:13:55

竜馬がゆく

テーマ:時代小説
著者: 司馬 遼太郎
タイトル: 竜馬がゆく〈1〉
 「竜馬がゆく」は、僕が初めて読んだ時代小説。坂本龍馬の生涯にスポットライトをあて、1~8巻で幕末の動乱が展開していく。
 この作品の良いところは、龍馬の個性がよくとらえられている所だと思う。髪はグシャグシャ、風呂にもろくに入らない、論議に熱が入るとおかまいなしに唾を飛ばしてくるという、とてもだらしない龍馬だが、国を動かす事となると、次から次へと手を打っていく、というように、迷惑なところも偉大なところも、全てをひっくるめて魅力的に描かれている。
 また、この作品は龍馬と誰かが出会うシーンを、とても細かく、面白く描いていたと思う。例えば、勝海舟や西郷隆盛と初めて出会うシーン、越前藩藩主・松平春嶽に大胆にも金を借りに行くシーンなどは緊張感に溢れ、読んでいて鳥肌がたつ程のもの。
 思えば龍馬の仕事は、人との「出会い」や「協力」で大成していったものなので、非常に良いところをついて面白い小説に仕上げているという感じがする。
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