概要

明治大学国際日本学部宮本大人准教授のゼミで3期生の卒論発表会を見てきたのでそのメモを。門外漢によるメモなので間違いに突っ込みを入れてくれると助かる。より正確な内容は後ほど出されるであろう卒論文集を当たってもらいたい。

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この卒論発表を見に行くうえでの目当ての卒論は『世界中にハローするキティちゃん -その人気の理由は何か-』である。当該発表では、キティはなぜ世界中の人に愛されるのか、人はキティに何を求めるのか、について述べていた。ピンク色であることとリボンがあることにより愛され、常に挑戦し続けるキティに人々は勇気と自信をもらっているとのことであった。

キティ以外の発表では、特によかったのは8番の光モノ。テーマの選び方が面白いし、メーカーや販売店でも聞き込み調査を行っており、単に文献を調査するだけで終わらせていないのが良かった。発表時間をきちんと気にしていた様子もよい。次点で2番の女の子写真と5番の百合。どちらもテーマに対する熱意が感じられ、たった計30分の発表と質疑では収まりきらないほどの調査や考察が卒論に含まれているのだろうなと期待させられた。

経緯

たまたま検索に引っかかった以下の2本のブログエントリーを見て、キティが人気となっている理由を知りたくなったからだ。

当該卒論の先攻研究とされる『巨額を稼ぎ出すハローキティの生態』 (東洋経済新報社2004年7月) を自分は読んだことがないが、その本のレビューを読んでみてもキティが売れている理由について明確な結論を出せていないようだ。

http://d.hatena.ne.jp/kitokato/20110707/p1

最後まで読んでみたが、日本での人気だけでなく世界でここまで受け入れられる理由はどうもはっきりしなかったのが正直な感想だ。

http://yasuyukima.typepad.jp/blog/2011/11/hello_kitty_makes_money.html

読み終わっても無駄だったっていう気分にならないトコロがこのニューヨーク・タイムズとビジネスウィークの記者さんたちの腕の見せ所だったんじゃないかな。だって結論無いんだもん。

自分自身もシナモンやキティが好きであるが、その理由がよく分かっていない。この卒論の筆者はどのような結論に達したのかが気になった。

この筆者が所属している宮本大人ゼミではゼミ生がゼミに所属している2年間、同期が持ち回りでブログを書いているようである。その手法は2010-2012年の1期生から続いているようで2012-2014年の3期生も同様のようだ。

そして宮本大人ゼミでは卒論発表会も例年一般公開しているらしい。修士や博士では学位論文の発表を一般公開することは多々あるが学部で一般公開するのは珍しい。

今年も例にもれず3期生が以下の内容で卒論発表会を行うとのこと。

  • 日時: 2014年2月1日 (土) 11時~12時、13時~17時20分
  • 場所:明治大学中野キャンパス高層棟515教室
  1. 11:00-11:30, 小林葵, 『おジャ魔女どれみ』論 -アニメ『おジャ魔女どれみ』に描かれる魔法の果たす役割とは何か-
  2. 11:30-12:00, 豊島綾乃, 「女の子写真」ブームその後 -「女の子写真」は揶揄されるべきか-
  3. 13:00-13:30, 中西茜, 「ゲーム実況」はオワコンか
  4. 13:30-14:00, 堀込一菜, 商業施設と街との関係にはどのような変化が見られるか -今日の商業施設に求められているもの-
  5. 14:00-14:30, 後藤壮史, 「百合」を読む日本人男性の性意識変化の実例と実証
  6. 14:40-15:10, 中尾琴美, 日本において、海外の「少年合唱団」はどのように受容されているのか -1964年の「ウィーン少年合唱団」と2005-2006年の「LIBERA」を中心に-
  7. 15:10-15:40, 徐昦, 世界中にハローするキティちゃん -その人気の理由は何か-
  8. 15:40-16:10, 石田菜名子, 今日のライブ会場で見られる客席での光モノ使用の起源と普及のきっかけは何か
  9. 16:20-16:50, 原田藍子, 「サブカル女子」はなぜ叩かれるのか
  10. 16:50-17:20, 渡島隆弘, 漫画に描かれるホームレス者のイメージ -継承されるパターン化した外見的特徴とその他の特徴-

ぜひとも見に行かねばと、卒論発表会を見に行くことにした。自分にとってのメインはキティであり、発表会は途中でも出入り自由と書かれてはいたが、他分野を学べるいい機会ということで全部見てきた。

卒論を発表するゼミ生は2013年11月から12月にかけてゼミ生のブログに卒論の構想を2回に分けて書いているので、それを事前に読んでおくとより楽しめるとのこと。当該筆者によるキティに関する2回の構想が本節の最初に挙げた2エントリーである。

卒論発表会の位置づけ

学生たちはすでに成績評価用の論文を提出しており、この卒論発表は論文のブラッシュアップのためのものである。ブラッシュアップした後の論文は冊子としての卒論文集としてまとめられ、3月中からネット書店を通じて販売する。

ゆえに主に以下の3点で一般的な卒論発表と異なると感じた。

  • ゼミ生に研究の進捗状況をブログに書かせる。
  • 学部の卒論発表を学外にも公開する。
  • 発表後に卒論をブラッシュアップし冊子として発行する。

時間配分は15分の発表と15分の質疑。多くの場合で発表時間がオーバーしていたが。発表の仕方は卒論の章立てに沿って全体の流れがどうなっているかをなめていく感じが多かった。

聴講者の大半は宮本大人ゼミのゼミ生と藤本由香里ゼミのゼミ生が大半であった。質疑ではオープンクエスチョンをすることが多く、オープンクエスチョンは答えにくいはずであるが、発表者はそれらの質問に詰まることなく答えている場面が多かった。それだけきちんと卒論に取り組んだのだろう。

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今回の3期生の卒論発表会場では2期生の卒論文集が1000円で売られていた。3期生の卒論文集は3月中に完成させ、ネット書店を通じて誰もが買えるようにするとのこと。

7: 世界中にハローするキティちゃん -その人気の理由は何か-

お目当ての卒論なのでブログでは先頭に持って来よう。

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発表内容 7

ハローキティが愛される理由は何のなのか、そして人々はハローキティに何を求めているのか、を問題提起する。仮説は、セールスポイントと言われている無口や無表情だけでなく、ピンク色とリボンも重要な要素である、キティはファンにとっては一緒に成長してきており新しいデザインに挑戦するキティから勇気と自信をもらっている、の2点である。

まずサンリオの歴史と概要を述べる。会社の紹介、キャラクターの紹介、いちご新聞の紹介、キャラクター大賞。 (自分にとっては基本的な情報すぎるのでメモってない)

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キティは常に人気があったわけではない。1974年に初代の清水さんによりキティのキャラクターが開発された。2代目の米窪さんのアドバイスにより最初は横向きに座っていたポーズだったが、その後立たせるようにしたために服の比重が増えていった。初代の清水さんと2代目の米窪さんは数年しかキティを担当しておらず1980年から3代目の山口さんとなった。そのため1970年代が最も売れていなかった。

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1980年代では山口さんがキティに色んなデザインを挑戦させるようになり、1985年のタイニーチャムのシリーズで最も売れるキャラクターとなった。1996年のピンクキルトシリーズは女子高生向けに出したものであったがOLにも売れ、最も売れたシリーズと言える。同時期に華原朋美やプリクラも後押しした。プリクラである操作をすると山口さんとのツーショットも撮れた。

他にも多数のキャラクターがある中でキティがサンリオの看板キャラクターになれた理由を考える。比較対象はマイメロディ、リトルツインスターズ、ポムポムプリンである。どれもシンプルな表情だがシンボルが異なる。 (プリンのシンボルは * の菊門だと思っていた)

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どれもシンボルがあるがキティのリボンには「なかよく」「人の心と心を結ぶ」の意味があり色もさまざまである。35周年デザインでは様々な色のリボンごとに意味を込めたものとなっている。

キティに対する会社のブランド管理を見てみる。ご当地キティによりどこでもキティに会えるようにし、テーマパーク事業で行けばいつでも会えるようにした。海外進出も行い海外でも会え、ライセンス対象の商品を絞ることでキティのイメージを崩さないようにした。このようにキティブランドを管理することで世界に愛されるようになった。

山口さんによるキティのアイドル化計画を検証する。本物のアイドルになれるようにサイン会を開催させ、そこでファンの意見を取り入れることもおこなった。アイドルは進化するものであり、安室奈美恵の交際宣言を見た山口さんは1999年3月3日にピューロランドでキティとダニエルの交際宣言をさせた。 人はキティに何を求めるのか。相原博之の『キャラ化するニッポン』にはキャラクターから得られる効果として、安らぎ、庇護、現実逃避、幼年回帰、存在確認、変身願望、元気・活力、気分転換の8つがあるとされる。キティの場合は以下の効果を得られている。

  • グッズを身につけることで自己アピールをする。
  • 無表情のキティにより安らぎを感じて癒される。
  • ピンク色のデザインにより、母性本能をくすぐる、または幼児性に逃げ込む。
  • 進化するデザインにより、一緒に成長してきたと感じる。

質疑 7a

  • Q: 多数の参考文献に散らばって存在する情報をよくまとめていると思う。参考文献にどのように書かれていたのかではなく、発表者ご自身が考えたことの結論をご自身の言葉で聞かせてほしい。
  • A: 無表情や無口が魅力であると言われているが、ピンク色であることとリボンも重要な要素である。

指導教員コメント 7

  • Q: 今の回答は1つ目の仮説のみへの回答である。もう一つの仮説に対する答えは何か。
  • A: 自己アピール、癒される、幼児性、一緒に成長したくなる、である。
  • Q: いずれも先行研究で言われているものではないのか。
  • A: 先行研究にはそこまで詳しく書いていない。相原さんの先行研究では世代ごとに求めたものは書かれてはいたが、具体的なキャラクターにまでは掘り下げていない。相原さんが挙げた特徴をキティにあてはめ具体化した。

所感 7

キティは難しいテーマ。参考文献リストの先頭となっている『巨額を稼ぎ出すハローキティの生態』 ですら、本ブログエントリーの経緯で書いたように結論を出せていない。他の文献でもキティに関するいろんなエピソードが散りばめられているが、ばらばらのままでつながりがなく、それらから結論を導き出すのは難しいことだろう。ひょっとすると、細かな努力の積み重ねで売れるようになっただけであり、端的に説明できるような直接的な原因はないのかもしれない。

発表者はキティが売れた理由としてピンクとリボンを挙げているが、他社のキャラクターも含めてピンクのリボンはなかったのだろうか。リボンの色という点では大型新人のぼんぼんりぼんは歌『ミラクル★りぼん』でリボンの色とその効果について言及しておりキティ35周年に似る。卒論日記第7回によると、発表者はピューロランドでアルバイトをしているとのことなので、この歌を知らないはずがないだろう。参考文献リストにはカラーマーケティングに関する書籍が多数載っているが、それらを参考にしたうえでの考察は発表中にはなかった。卒論本文には載っていると期待する。この辺のカラーマーケティングなどの別分野からいろいろと持ってこないと、私を含めたキャラオタは頷かせられない。周知のエピソードを持ってこられても、知っとるがな、と一蹴されるだけ。なので、他分野の知識を使っての検討、または同分野であっても深く比較する、参考文献に載っていないことを自力で調査する、などしてほしい。同分野での比較、すなわちメロディ、キキララ、プリンとの比較は発表で軽く触れられてはいたが、卒論本文の3章1節目に詳しく書かれていると期待。

本発表で主張しているピンクとリボンについて、それをサポートできそうな発言や調査をせっかくなので提示しておく。リボンについては辻社長がキティにこめられた3つのメッセージとしてよく発言している。いつから言い出したのか分からないが、このたぐいの発言をよくしている。

  • 第51回定時株主総会
    • 温家宝の孫がキティ好きで、大使館から社長に会いたいという突然の電話があった。大使館からだから仕方なく会って、ぬいぐるみをプレゼントした。プレゼントするときにキティに秘められている3つのメッセージを説明した。1に「かわいい」でかわいがられなさい。2に「リボンの結び」で仲良くしなさい。3に「口がない」で口で指示を出すのではなく助け合いなさい。これを説明したら、あとで大使館から怒られた。温家宝はとても偉い人なのだから説教をするなと。

    • 日本のキャラクターを世界に知らしめていこうと、メッセージ性のあるキャラクターであるハローキティを作った。ハローキティのメッセージは3つあり、「かわいい」から可愛がられるようにしなさい、「リボンの結び」から仲良くしなさい、「口がない」から目の見えない人に対して口で道を教えるのではなく手を出して助けなさい。ヨーロッパでキティが売れているが、それはキティがかわいいからなのではなくキティのメッセージのおかげ。

  • 第52回定時株主総会
    • キティちゃんはかわいいが、単にかわいいだけではない。3つのメッセージがある。「かわいい」というメッセージでは、かわいい格好をしなさいということではなく、皆からかわいがられるように振る舞いなさいという意味。「リボン」は結んで仲良くしなさい。「口がない」のは口で言うのではなく行動で示しなさい。このようにして世界中の人が助け合ってすばらしい社会を作ろうというメッセージが込められている。キャラクターを通して世界中の人が仲良くなってくださいというのがソーシャルコミュニケーションビジネスの意義。

色についてのサポートを出すなら2013年に会うことができたキティの63種類の衣装でのリボンの色だろうか。本発表では主にキティのグッズに焦点を当てていたので、ピューロランドにいるキティで比べるのは間違っているかもしれないが。とりあえず63種類の衣装にある56種類のリボンの色を調べると、赤31、ピンク13、パステルカラー組み合わせ3、赤+青2、青2、黒2、オレンジ1、白1、紫1であった。赤以外ではピンクだけで半数を占めている。まあ参考までに。

キティに関するエピソードを多数紹介紹介しているが、発表ではどの参考文献から持ってきたものなのかはっきりしないことが多かった。年代的に発表者が直接見聞きしたはずではないものが多いのにもかかわらずだ。文章の卒論では大丈夫だとは思うが、念のためどの文献から持ってきたのかが明確になっているかをチェックしてほしい。キティに何を求めるのかの仮説を検証する際に大きく参考にしているであろう相原博之『キャラ化するニッポン』はレジュメの参考文献リストに載ってないので心配になった。参考文献リストに載っている資料は自分が読んだことがあるものもあればないものもある。冊子として発行される卒論文集を後ほど読まさせてもらいたいと思っているが、その時に読者が原典をたどれるようになっていてほしい。いろいろと語られるエピソードの大半は自分を含めキティファンにとっても直接見聞きしたものではなく書籍なり伝聞なりで得たものである。ただ出典が何かまでは整理しておらず、もやもやとした記憶にあるだけのままだ。本卒論には多数の書籍に散らばっているエピソードをまとめ上げたサーベイ論文としての価値もあるはずだ。

最後の追い込み頑張って。所感で厳しく書いたけれども、それだけ読みたいということの裏返しなので。卒論発表会には来られなかったけれども卒論を読みたがっている他のキャラオタさんもいるよ。

文字数制限のため分割

Ameblo の4万文字制限のため後半に分割。

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