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2016-01-06 22:42:23

プラネタリウムクリエーターが下町ロケット「佃製作所」を徹底検証(中編)

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下町ロケットの序盤では、ライバルの大手企業との間で熾烈な特許紛争が描かれています。私も仕事上、特許を出願して権利化したり、他社と特許権をめぐる攻防も本作ほど熾烈ではありませんが、経験したことがありますので、この特許をめぐる一連の攻防は特に興味深く感じました。

作中では、ライバル企業が、佃製作所のアイディアを盗んだ上で逆に特許侵害だと訴えてきました。そんな事は本当にあるのでしょうか?

結論からいうと、あります


何故最初に発案した側が訴えられなければならないのか?その理由も作中で説明されているとおり、佃製作所は基本的なアイディアを特許として出願し登録されましたが、それを改良するアイディアは出願していませんでした。ライバルの中島工業はそこにつけこみ改良するアイディアで特許を出願したのです。特許出願は、アイディアに新規性があれば、たとえ他人の特許利用を前提としたものでも権利にする事ができます。ですから佃製作所がもし改良を加えた製品を出して、それが中島工業の出願内容に触れるものであれば、中島工業の特許に抵触する事になってしまうのです。繰り返しますがこの点は作中でも丁寧に説明されています。
中島工業が、ただ改良特許(改良発明)を持っているだけならそれで終わるのですが、中島工業がその改良発明を製品化していた場合は、それは佃製作所の基本特許にも抵触することになります。作中ではその点を突いて佃製作所が逆提訴し、結果勝訴(に近い和解)に至ったのでした。
特許侵害は、侵害された側が侵害されたと提訴しなければ成立しません。しかもその侵害の証明は厄介で時間とお金もかかります。本来は特許権のもとでは大企業も中小企業も対等のはずですが、訴訟を勝ち抜ける体力の大小は、訴訟の結果や、そもそも提訴できるか否かにもかかってくるのが現実です。だから中島工業は、自分たちが佃の特許を侵害していることは自覚しながらも、力の劣る佃製作所には自分たちを提訴する力はないと踏んで、改良発明の特許について提訴し、その結果予想外の返り討ちにあって自滅したというわけです。

とまあ、ここも作中の描写の通り。細かい説明不足はありますが、基本的には特許法をほぼ正確に描写しているといえます。
しかし、帝国重工からロケット用バルブの特許買取を打診されるくだりから、少し現実を端折っているなと思う点が出てきます。

帝国重工は開発したバルブの特許を出願したら、佃製作所に先を越されていた事が発覚したため、佃に特許買取の交渉をするわけですが、本来こういう場合、まず大企業側がする事は、特許の無効事由を探すことです。特許は出願したら必ず通るとは限らず、新規性(今までに同じアイディアが公然と知られていないこと)、進歩性(そのアイディアが今までにない優れた効果を齎すこと)が認められないといけません。その審査は特許庁の審査官が行うのですが、審査官も人の子です。特に新規性については、業界紙その他を調べてチェックはしますが、それでも見落とすこともあります。そして重要なことは、一度審査を通って登録された特許でも、後になって実は同様のアイディアが公然と知りえる形で公開されていた(公知)であることが発覚すると、その特許は取り消されてしまうのです。公知というのは、書籍や雑誌、学会誌など、不特定多数に公開されている情報、最近はインターネットの記述なども含まれます。審査官が全世界にわたって100%の審査を行うことは不可能なため、実は先行するアイディアがたとえば海外の小国のローカル誌などに掲載されていたとしても見落とされるということはよくあります。しかしこれは黙っていても発覚することはまずなく、誰かが、この特許は先行事例があり無効である(無効事由)事を証明し、特許庁に特許の取り消しを申請しなければなりません。これを無効審判請求といいます。

企業が他社から特許侵害の訴えを起こされた場合、最初にたいてい無効事由を調べます。そこで無効事由が見つかれば、逆に無効審判請求を起こし、特許を消滅させることを試みるのです。一説には、特許侵害訴訟の中で、およそ半分はこの無効審判請求により特許権が消滅し、原告が敗北するそうです。原告にとっては、侵害品の差し止めや賠償金取得ができないだけでなく、特許自体を消滅させられてしまうので、第三者による実施も防げなくなってしまい、ダメージが大きくなります。ですから、たいてい訴えられた側(実はいきなり訴えることは少なく、警告書を送る事からはじめる)は、無効事由を示した上で、自分だけに無償か格安で許諾してくれたら無効審判請求はしないでおく、などといって取引を持ちかけたりします。うーん、オトナの世界ですね(笑)

そんなことなら審査官がもっとシッカリ調べろよ、といいたくもなりますが、これだけ全世界に情報網が発達し、何億人もの人間が日々アイディアを出しているのですから、それにも限界があります。ですからこういう制度が設けられているわけです。

話がややこしくなりましたが、そのようなわけで本来、帝国重工がまずすることは、佃の特許の無効事由を調べることだと思います。そもそも佃製作所自身が、帝国重工のバルブが特許侵害している事に気づいていないのですから、帝国重工は余裕を持ってこれを行うことができます。そして次に佃製作所に対して無効事由を示し、無効審判請求を起こせばあなたの特許は消滅する。それをされたくなければ特許権を格安で譲るか実施許諾をして欲しい、と交渉を持ちかけるのです。勿論、無効事由が全く見つからない優れた特許であればそれは難しくなるわけですが・・いきなり20億円で買取を打診するのは本来なら早計すぎるなと思いました。

勿論ドラマですからそこまで細かく描いていたら話がややこしくなりすぎ、作品として価値が台無しです。本作では、有力な特許事務所が監修しているようですね。
それもあって、ドラマとしての面白さを保ちながら特許の描写も出来る限り正確にしているという印象を持ちました。

そのような次第で、本当はこれを後編にするつもりだったのですが、特許の説明だけで随分長くなりました。(実はこの説明でもまだだいぶ端折っています)、もし興味を持たれ、これ以上知りたい方は特許の入門書をごらんになることをお勧めします。

それでは、続きはまた次の機会にします。

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2016-01-03 15:04:59

プラネタリウムクリエーターが下町ロケット「佃製作所」を徹底検証(前編)

テーマ:ブログ
皆さん、昨年末にTBS系で放送された連続ドラマ「下町ロケット」はごらんになりましたか?

技術者を主役に中小企業の奮闘を描くという異色の内容に、普段ドラマを見ない40代以上の男性の視聴者を多く集めたそうです。多くの反響を集めながら、一部では本作で描かれる佃製作所の有り方について議論も飛び交っているようです。果たしてこのような会社は実在するのか?実在するとしたらそのあり方は?
放送終了したドラマで今更感もありますが、自ら技術開発を生業とし、中小企業を経営する一人として興味が沸いたので独断と偏見で論証してみました。

1.当社と佃製作所との共通点と相違点
舞台となる佃製作所は、中小企業といっても従業員200名程。一方私の経営する大平技研(14名)に比べると1桁の規模差があります。当社は大まかなグループ分けはありますが部課は存在せず部課長といった役職もありません。それに比べると大企業には及ばずとも組織ツリーが存在しているのが見受けられます。製造業という共通点はありますが、当社の場合は研究開発や設計製造が主体ではありますが、公共施設向けやイベント向けの一品物が主です。その一方でイベント企画や公演等、表に出て直接お客様に触れる仕事も多いです。そして会社規模の割には知名度が高い。一方佃製作所はエンジンという中間製品製造に特化していて、これをある程度量産して製品メーカーに卸す業態が殆どのようです。つまり一般ユーザーに触れる機会はほとんどないものと考えられます。より町工場らしいといえるでしょう。

2.佃社長の人柄
技術者出身ならではの、良くも悪くも経営や利益よりも技術開発を優先しがちなタイプ。これは私自身含め、技術系ベンチャー経営者ではありがちなタイプだと思います。ただし阿部寛演じる佃社長は技術だけに興味を持ち対人関係を苦手とする、いわゆるオタク型というより、社員との和や団結を重視する体育会系の気質も併せ持っているようですね。研究者には比較的稀なタイプですが、技術者の中には割りとよく見かけるタイプだと思います。

3.社員に徹夜残業させる佃製作所はブラックか?
さて、この辺から本題です。劇中しばしば描かれる徹夜シーンに、ブラック企業では?との声もしばしば見かけます。しかし私は、徹夜残業=ブラックと判断するのはやや早計だと思います。何をもってブラックとするかにもよりますが、ポイントは2つです。

a)残業手当は支給されているか?
b)徹夜残業は強制か?


この2点それぞれを論証してみます。
まずa)の残業手当ですが、劇中ではこれについて全く触れられていません。ですが、劇中では社員たちの会社に対する様々な不満が描かれているので、本来出るべき手当てが支給されていなければ当然それにも言及があるはず。となると一応この問題はクリアされていると見たほうがよさそうです。

続いてb)です。劇中では、社員たちは社長に共感し自ら進んで徹夜残業を引き受けているように描かれています。なのでブラックではない・・と言い切れるかは微妙です。確かに大半は進んで徹夜しているのかもしれませんが、200名もいれば、中には不本意な者もいる可能性は決して否定できません。そして大半が進んで徹夜しているからこそ、少数派の徹夜したくない派は、それを言い出すこともできずに嫌々徹夜している可能性もありそうです。

現実の企業経営ではこれは重要なポイントです。社員の不満は常に社長や経営陣の耳に入るとは限りません。少数派だからこそ見えにくい。そして少数派だからこそ声を上げにくく、その分不満は深刻なレベルに達しやすいのです。もし、その不満がある日爆発すれば、社内の和を乱したり、最悪は行政の介入や風評などの社会的なペナルティを受ける可能性だってあります。これが会社運営の難しく恐ろしいところでもあります。

皆で目標に一丸となって進むこと自体は悪くないと私は思っています。しかし同時に、サイレントマイノリティの声にならない声をどうやって聞き分けるか?も大いに考慮すべきところなのです。

4.佃製作所の一番ヤバかった点
ドラマを見ていて、私が経営者視点で一番気になったシーンは、実は主力商品の開発を担当する真野という若手技術者に、社長の夢である水素エンジン開発を命じるシーンでした。真野は主力商品の開発で手一杯であることを理由に難色を示します。しかし佃社長ら経営陣はそれを聞き入れず、それも大事だがこっちもやれと、ほぼ一方的に水素エンジン開発を指示するのです。はっきり言ってこれはまずいです。少なくとも私の感覚ではありえない。

従業員はあらかじめ定められた業務に携わっています。それには然るべき計画も立てられているはずです。突発自体で追加業務を頼まねばならないことは、あります。そしてそれを優先しなければならない場合もあります。会社を取り巻く状況が動く以上、業務の急な変更はあって然るべきなのです。だから水素エンジン開発を指示する事自体は必ずしも間違っていません。

しかし問題は、現業との両立を無理強いしたことです。真野は闇雲に拒否しているのではなく、現業が佳境なため、両立が出来ないとアラームをたてているのです。むしろこういう時に無理だとハッキリ言ってくれる従業員のほうが稀で、大半はそれを言い出せず、問題を発生させてしまう事も少なくありません。

したがって、上司や社長は、労務状況の管理を普段から慎重に行い、もし意見を言われたならば、それは貴重なものだと受け止めて真摯に耳を傾ける必要があります。劇中であれば、少なくとも本当に両立できないかを検証した上、無理があるのなら、その解決策、例えば主力商品の開発スケジュールの見直しや新たな人員配置など、代替案を検討、提案しながら本人を説得すべきでした。
 ここで無理を通せば、本人を過重労働に追い込み、労働コンプライアンス上の問題が発生するだけではありません。現行商品か水素エンジンのいずれか、場合によっては双方の開発に問題が発生する恐れがあります。特に現行商品の品質に問題を出せば、それこそ会社を窮地に立たせかねません。しかもそれが本人の責任ではなく、経営陣の無理強いが原因においてです。こういう無理強いをすれば、言い方は悪いですが、社員は逆に、経営陣に責任を負わせながら、中途半端な仕事をする事も可能になってしまうのです。
色々な意味でこれはヤバイ、と強く思いました。

5.信じあうのがメインバンクとの関係か?
本作ではメインバンクが、理解のない薄情な存在として描かれています。佃製作所の研究開発を道楽やガラクタ呼ばわりする銀行担当者の態度は明らかに非礼かつ非常識。この点は銀行側に大いに非があります。私はこのような非礼な行員に合った事はありませんが、それほど多くの銀行と付き合った経験があるわけではないので、そういう行員がいるのかどうかも判りません。もし実在したらどうでしょうか?このような無礼な態度を取れば当然客離れを起こしますし、万一明るみになれば銀行そのものの予測しがたいイメージダウンに繋がるリスクがあるでしょう。特殊な事情でその企業との関係を切るため、わざと怒らせる戦略も論理的にはあるのかもしれませんが、いずれにしても銀行にとってリスクが高すぎるやり方だと思います。

とはいえ、形勢逆転後の佃社長の態度もまた疑問があるのです。佃社長は、良いときも悪いときも信じあっていくのがメインバンクとの関係だと説きます。しかしこれは筋違いだと私は思います なぜなら佃製作所がそうであるように、銀行もまた利益追求をする営利企業であり、当然、融資のリスク判断をする権利もあるからです。特に金融業界においては、安易に相手を信じて杜撰な審査の融資を重ねた結果、不良債権を膨らせた悪夢もあるのです。銀行が融資判断を慎重にするのは当然であり、いかなる理由でも難しいと判断されたならばそれを飲むしかない。佃社長のすべきことは、融資を見送った銀行を道義的に責めるのではなく、銀行にとって融資をするメリットを明快にプレゼンすることだったのではないでしょうか。

如何だったでしょうか?
今回はこの辺にして、残りは後編に続きます。
特許紛争のリアリティ、帝国重工・財前部長との関係、後編に登場するサヤマ製作所との関係などにメスを当てていきます。

こうご期待!



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2016-01-02 12:56:09

頼まれた通りにやるべきか、工夫を織り込むべきか?

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人に何かを頼まれて、よかれと思って頼まれた事と違う事をして上手くいったと思ったのに理不尽に怒られた経験はありませんか?
それで工夫するのがバカバカしいと学んでしまい、ただ考えずに言われた通りに実行するようになる。当然モチベーションも下がる。こんな事ではもったいない事です。

ですから、こういう問題が何故起きたのかを理解する事が大切だと私は思います。

では何故怒られたのでしょうか?
それはあなたが工夫したことが悪いのではなく、方法の変更を実行前に提案しなかったことに尽きます。

ある結果を得るために、依頼主があなたにAの方法で実行してくださいと指示したとします。
ところがやっていくうちにあなたはBの方法のほうが効率的であったり結果が良いと気づく。
そこでBの方法を選んでその結果を提出する。

そうしたら依頼主は怒ったり機嫌を損ねる。
せっかく工夫して、言われた以上のことをしたのに、とあなたは納得がいかない。

この「無断の方法変更」には2つの問題があります。
ひとつは、依頼主がAの方法を依頼した背景には、あなたが知らない事情がある可能性です。
仕事を頼むときに全ての事情を説明していたのでは能率が悪い。何らかの事情があって説明できない事だってあります。だから仕事の依頼は、必要な結果と(必要に応じて)方法のみを示すのが通常です。

あなたが別の方法を選ぶことで、あなたが知らなかった故に予見できなかった問題が発生するかもしれない。仮に今回そういう問題が起きなかったとしても、あなたが相談せずに方法を変更する人であり、別の仕事で、今後そういう問題を起こす可能性があるということです。それは部分最適ではあっても全体最適を欠きかねない。
その問題を予見して相手は怒っているのです。

もうひとつの問題は(実はこの方が大きかったりする)、無断の方針変更は往々にして依頼主のプライドを傷つけてしまうことです。
依頼主は依頼主なりの考えでAの方法を選んだはずです。ところがあなたはBの方法を選んで、成功したとします。その場合、あなたは、無言で、依頼主の選択能力の低さを示していることになるのです。結果がよければなおさらのことです。しかも相談しないということは、相談しても無駄な相手(よい方法を提案しても理解できない相手)だと判断していると、依頼主には見えてしまいます。これでは依頼主が快く思うわけがありません。
あなたがそうであるように、依頼主もまた、良い結果を出したいだけではなく、自分の存在意義を認められたいものなのです。


だから原則として、依頼された側はその通りにやるべきなんです。
但しもっといい方法を考えつくことはよくあることです。依頼された方法に問題が見つかる事だってあります。
それでも気にせず言われた通りにやり続けるのは決して望ましいはずがありません。
だからあなたのするべきことは明白です。
実行前に、AよりもBの方法がいいのでは?と依頼主に提案し、確認を取ることです。
特に、相手の立場を立てながら、なるべく謙虚な姿勢で、恐れながら、と前置きして提案してみる。
それをするとしないとではまるで相手の反応が違うはずです。
「お、なるほどその通りでですね、その方法でお願いします」

せっかく創意工夫をするのですから、その結果もキチンと評価されたいですよね。























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