ドラゴン藤波とオレ | C.I.L.

ドラゴン藤波とオレ

キミはドラゴン藤波を知っているか!?



と、いきなり昭和の少年漫画のような書き出して恐縮だが、オレ様はとってもドラゴン藤波が大好きである。


過去にも素晴らしいドラゴンワールドをご紹介したことがあった(http://www.908.st/mt/ohara/archives/000889.html ) が、今回はマジメにプロレスラーとしてのドラゴンの素晴らしさを語ってみよう。


しかし途中で挫折して笑いに走る可能性がもの凄く高いことを予めお断りしておく。



まず最初に言っておきたいのだが、ドラゴン藤波は日本でも有数の優れたプロレスラーだということである。


エキセントリックかつ天然な言動のお陰でお笑いイメージの強い人でもあるんだが、そもそもはあのリック・フレアーが認めるほど優秀なレスラーなのだ。


無理にヘビー級に転向して腰をぶっ壊すまでは、攻めてよし、受けてよし、グラウンドもできて身も軽いという、日本のジュニアヘビー級のファイトスタイルを確立させたオールランドファイターだったのである。


怪我さえしなければ、直情型のファイトしか出来ない長州力なんかとは格が違った "はず" なのだ。


まずはそこをご理解いただきたい。


決して単なるネタキャラではないのである。


いやホントだって!



さて、一身に疑いの目を浴びた所で本題に移ろう。


藤波といえば、リングを立体的に活用するドラゴン殺法がその代名詞である。相手の技を何でも受けて、ここぞという時に飛んで、投げて、グラウンドでビシっと〆てみせる。これらを総合してドラゴン殺法と呼ぶ。


さらにドラゴンという名前の付いたオリジナル技も多い。ドラゴンスープレックス、ドラゴンスクリュー、ドラゴンスリーパーなどは知名度が高く、今でも大勢のレスラーが使っている。そしてバックドロップの体勢から相手の腰を自分の膝に落とすドラゴンバックブリーカー、相手の脇に足を差し込んでクルクルっと丸め込むドラゴンレッグロールクラッチホールド、試合の良いスパイスとして使われるドラゴンビンタなども藤波らしさに溢れた技である。


あまり注目されない技なので、ここではあえて 『ドラゴン(ジャパニーズ) レッグロールクラッチホールド』 に注目してみよう。


現在では藤波の愛弟子である西村くらいしか使っていないように思うが、この技はプロレスらしい華やかさを持った丸め込み技である。下手糞な選手が使うとモタモタして魅力が台無しになってしまうのだが、若い頃のドラゴン藤波のこの技を見れば、多くの人が 「お~!」 と感嘆の声を漏らすのではないかと思う。


という訳で、動画を探しましたよ奥さん。


とりあえずその前にお約束の台詞を言っておくけれども…。


ニコニコ動画はありえない!藤波とダイナマイトキッドの試合をアップするなんて許せない!みんなで告発すべきだ!


http://www.nicovideo.jp/watch/sm560353


もうね、お前らこの試合のフィニッシュホールドを見ろと。これがドラゴン藤波なんだと。カニ挟みで相手を倒して電光石火のレッグロールクラッチ。今のレスラーにこの動きを再現できるヤツがいるのかと。ホント教科書通りというか、世界でもこれ以上に美しく決めてみせる使い手はいないんじゃないかと思えるレッグロールクラッチホールドである。


よく武藤を天才と評価する人がいるけれども、遡って考えたらその源流はドラゴン藤波なのである。それに藤波がジュニアヘビー級というポジションを作らなければ、初代タイガーマスクの居場所もなかったのだ。いやマジで。ホントだって。それくらいの功労者なんだって。



そして藤波といえば忘れちゃいけないのが最強の必殺技 『ドラゴンリングイン』 である。


これは主にタッグマッチなどで見られる必殺技で、まず味方のタッチを受けて 「ヨッシャ!!」 と一声あげて手をパチンと叩く。そして軽やかにトップロープに登り、何もせずにストンとリングに着地する。その直後に対戦相手の狙い済ましたラリアットやドロップキックであえなく迎撃されるのがお約束。


日本のプロレス業界において、ドラゴン藤波以外にこの技を使うレスラーはいない。


このドラゴンリングインの凄さを理解できないようでは、プロレスファンは名乗れない。



通常のタッグマッチでは、"タッチ" という行為の前後に下記のような流れが生じる事がほとんどである。



・味方が敵に攻め続けられる。

→何度かタッチしようとするも、その度に邪魔されて再び攻め込まれる。

→味方が一瞬の隙をついて攻勢に転じる。

→なんとか自軍コーナーまで辿りつき、タッチが成立する。

→タッチを受けたレスラーが 「うぉぉ!」 と怒りのアピールなどしつつリングイン。

→キックやパンチといった単純な技で次々と対戦相手を蹴散らす。

→あらかた敵を片付けたら客に向かって力強くアピール。

→攻守交替して次の流れへ。



これがプロレスのタッグマッチでよく見られる、いわばお約束のような展開である。


しかしドラゴンリングインという必殺技を使用すると、この流れが下記のように変化してしまう。



・味方が敵に攻め続けられる。

→何度かタッチしようとするも、その度に邪魔されて再び攻め込まれる。

→味方が一瞬の隙をついて攻勢に転じる。

→なんとか自軍コーナーまで辿りつき、タッチが成立する。

→タッチを受けた藤波が 「ヨッシャ!!」 と声をあげつつ手をパチンと叩く。

→味方コーナーのトップロープに登る。

→何もせずにストンとリングに飛び降りる。

→待ち構えてた対戦相手にラリアットやドロップキックで迎撃される。

→藤波ダウン。

→攻守変わらず、今度は藤波がやられ続ける。



タッチした意味がまるでなし。


普通はタッチすると攻守が変わって試合の流れに変化が出るものなんだが、ドラゴンリングインとはそうしたプロレスのお約束を破壊してしまう恐るべき技なのである。


普通のプロレス技は、ブレーンバスターでもパイルドライバーでも、相手にダメージを与えることが目的である。しかしドラゴンリングインとは、レスラーやファンに対して 「プロレスとはなんぞや?」 と説教を投げかけるとんでもなく哲学的な技なのだ。


このドラゴンリングインを受けた側には、色々な選択肢が与えられる。



----------------


ドラゴンはドラゴンリングインをつかった


<コマンド?>

→ こうげき

ようすをみる

にげる

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このうち "こうげき" というコマンドが最も無難ではある。無防備に降りてくる藤波に一撃入れてしまえば、とりあえずその後は普通のプロレスの試合として流していけるからだ。しょっぱいレスラーでも、とりあえずボロを出さずに済むだろう。


そして次の "ようすをみる" というコマンドもまあ無難といえば無難な選択肢である。「ドラゴンリングインに驚いてフェイントに引っかかってしまった自分」 を演出できるからだ。恐らくその後は藤波がドロップキックなどで襲ってくると思うが、まあ試合の流れは壊れずに済む。


問題なのが一番下の "にげる" というコマンドである。ドラゴンリングインを受けた際に最もやってはいけないのがこれだ。想像してもらえばわかると思うが、藤波がドラゴンリングインでストンとリングに降りてきたとする。その時に対戦相手がいきなりリング外に逃げ出してしまったらどうなるだろうか?




恐らくプロレス史上初めて 「ザ・ワールド」 が発動してしまうだろう。




レスラーもレフェリーも客も、目の前で起こった出来事が理解できず、ピーンと空気が張り詰める。そして誰一人言葉を発せず、次にどう動いていいのか分からず、ただ静寂に支配される。


そう、ドラゴンリングインとは 「場合によっては時間を支配する」 という恐るべき必殺技なのだ。


それに比べたら三沢のエメラルドフロウジョンだの、アンダーテイカーのツームストンパイルドライバーだの、猪木の延髄切りだのなんて技は子供のお遊戯でしかない。かの "ワーム" ですら単なる普通の技である。


相手に肉体的なダメージを与えるだけの技や、最初からお笑い目的の技など、ドラゴンリングインの足元にも及ばないのだ。


私はあえて言おう、ドラゴンリングインであればヒクソングレイシーにも勝てると。


恐らくヒクソンごとき小者ではドラゴンリングインの受け方を知りはすまい。きっと何が起こったのか分からずフリーズしてしまうのがオチだ。ヒクソンは自身の最強伝説がドラゴン藤波の温情によって維持されていると自覚すべきである。


もしドラゴンがその気になったら、ヒクソンは 「リング上でポカーンと立ち尽くすだけ」 という赤っ恥をかく結果になるだろう。


考えてもみて欲しい。あのヒクソンが何も出来ず挙動不審にキョロキョロと周囲を見渡すくらいしか出来なくなってしまうのだ。それがドラゴン殺法の真の恐ろしさなのである。



このように、自身の必殺技によって時間を支配できるドラゴン藤波こそ、日本一のプロフェッショナルレスラーであるという結論を出させていただく。ここまで読んでくださった諸兄であれば、恐らく異論はないはずだ。


蛇足だとは思うがあえて一つだけ問題点を挙げるとすれば、ドラゴンリングインでは絶対に試合が決着しないということか。




という訳で、やはりドラゴンについて語り出すと最後はお笑いになってしまうという証明になってしまった。どこで道を間違ってしまったのだろうか…。