2005-10-14 02:02:39

おもしろくて、胸が詰まる

テーマ:劇評

Uフィールド

『森の奥へ』~カフカ『審判』より~

構成・演出:井上弘久

@中野ザ・ポケット


「気をつけたことの一つは、場所を不明確にすること。

日本のようで日本ではない場所、外国のようにも感じるが、特定した外国ではない場所。」

                                            ―当日パンフレット・演出の言葉より


演技や人の名前は西洋風、

でも人々の暮らす町はケータイも普及しているしスポーツクラブもある。

そして町の外れの裁判所と、

その裏にある深い森。


80年代に活躍した「転形劇場」の役者が10年ほど前に結成した、

実力派の劇団である。

十人に満たない劇団員は結成時からほとんど変わっていない。

毎回、

その回の作品に合わせた客演の役者を入れている。

今回は「無機王」の渡辺純一郎や高校生の女の子が出演しているが、

劇団員と客演の人数がほとんど同じなのに、作品のカラーや完成度が揺らがないところがすごい。


Kという名前の男が、突然逮捕された朝から話は始まる。

「なぜ俺が逮捕されるんだ?」というKの質問には誰も答えてくれない。

理不尽だとKは怒って無罪を証明しようとするが、

どうしても、どうあがいても勝ち目を見出せない。


「(支配しているのは)明らかにおかしいシステムなんだけど、

『おかしい』って言った途端その人は連れてかれちゃうっていう。

舞台になってる町っていうのには、そういうイメージがある。」


終演後に上の言葉を役者の一人から聞いたときは、「ああ、北朝鮮みたいな」と返した。

でも今思い返してみて違うと思う。

あれは現代の日本だ。

もちろん世界のどこにもあんな場所は無いんだけれど。


理不尽な裁判所は、特に後半には圧倒的に怖い存在になる。

けど一方でKを追い詰めていくのは、名前の無い群集だ。

マスコミのカメラにとりあえずポーズをとってみたり、

形の無い何かによって簡単にもてはやす対象を変えていく複数の人々。

「あぁこんな人いるよな」と時に笑いをはらんで表現される人々が、世間で脚光を浴びていたKを森の奥へと追い込んでいく。


あまりにも内容が濃すぎるので、芝居の詳しい内容はほとんど説明できない。

ネタバレになってしまうからだ。

一つだけ書こう。

作品の中にくり返し登場する、握手のシーンをぜひ見てほしい。印象的な場面の多い作品だったが、あのシーンが一番胸がきりきりした。

どうしてもどうしても分かり合えない場合というのも確かにある。

それがいたたまれないほど切なくて、泣きたかったけどぎりぎりで泣けなかった。


Uフィールドは舞台上に言いようのない閉塞感をあぶり出した。

この作品は完全にカフカの原作を飲み込んでいる。

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コメント

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2 ■おかあたまだ~^ ^

公演お疲れさまでした。

おかぁたま達に役者としてお世話になったことがあるから、心ない劇評は書かないようにしてきました。
こうしてUフィールドの公演の評を書くときに、知り合いだからって気を遣うことも、恩を仇で返すような批判もしたくなかった。
芝居が面白くて、劇評書いてお礼のコメントもらえて、あたしも一つ肩の荷が下りた思いがします。

「髄」。おぉそうか、骨髄みたいなもんですかね。あれは美味しいですよね。内臓系のお肉は好き。

また呑みましょう。
コメント有り難うございました。

1 ■ありがとう!

オバタのコメントを読んで、どうしてもこの言葉しか思いつかない。
これは、そんじょそこらにあふれている「ありがとう」じゃないぞ。
しかも、うれしいぞ!
あ~、一時でもアンタのかあちゃんやっといてよかった。(ってほぼ無意味)
これからもしっかり書いてくれ!
なんか知らんが、アンタの書く文章には「髄」みたいなものがあるような気がするさ。

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