2005-09-19 16:19:17

謳いあげるよりも感じてください

テーマ:劇評

劇団アランサムセ

「アベ博士の心電図」

作:朴 成徳 演出:金 正浩

@新宿タイニィアリス

高校の文化祭のようだと思った。

運動部の生徒たちは文化祭になると困るし楽しむ。文化部と違って、露店をやったりお化け屋敷をやっても許されるからだ。ふだんから文化的な活動をしているところは催し物が限定されてしまう。

朝鮮高校のバレー部の人達は、劇をやることにした。

十五年前に起こった事件を基にした劇を。


心臓外科の権威であるアベ博士が、

記憶喪失に陥った少女を利用して人の脳を支配しようとする。

彼女は一九九〇年に起こった、朝鮮高校がインターハイを辞退させられた一件の「過去」であった。

少女は権利を乞うのをやめ、自らを誇ることで博士から逃れようとする。


博士の目論見がいまいち定まっていない。

「国家的なプロジェクト」だと言ったり「人工脳を作る」と言ったり、要するに少女をどうしたいのかが見えてこなかったのが残念だ。

情熱的な長ゼリフが多かった。伝えようとしてつい沢山喋り過ぎてしまったような印象を受ける。

結成十六年になる劇団だそうだ。

チラシには「全て日本語で上演します」と書かれている。

元々は全部ハングル語のセリフで、もっとシュプレヒコールに近い内容だったらしい。作品の傾向が変わることに反発を覚える人達も少なくないようだ。

友人知人でなくても面白がれるような芝居を創りたいという願いが、劇団の歴史に足を取られている。

今回の公演の中でも、バレー部のインターハイ出場禁止という形でその構図が出てきた。

個人的な話になるけど、平和をテーマにした区のミュージカルなどに、少しの間携わっていた。

だからアリス・インタビュー で脚本家が語ったことは何だか身に迫って感じられる。

共感はシュプレヒコールからは生まれない。観客の内側から湧いてくる気持ちに、外からの訴えかけは負けてしまう。

在日朝鮮人の苦悩を完全に理解するなんて絶対に日本人には無理だろう。

どんなに仲良しな二人の個人の間だって、限度のあることだと思う。

わからないから日本はとりあえず謝り続けるしかないし、わかってもらえていないと感じるから朝鮮半島の人達は怒る。

だが、喪失感なら少しはわかる。

自分を見失うことへの恐怖、理不尽に可能性を断たれたことへの怒りや悲しみなら理解できる。

アベ博士のマッドっぷりや沢山の歴史の情報の陰に埋もれてしまった感情をこそ、主軸にすえるべきだったように思う。


障害は多いだろうが、そのことを特別に考慮することはできない。ナショナリズムが関係しているという点を除けば、方向性でもめている劇団は沢山ある。

ただ、歴史が苦手な十代の日本人として、現在のアランサムセの方向性は正しいと思う。

迎合する必要はない、もっと日本の芝居を盗んでください。今まで感じてきたことを、もっと沢山の人々に伝えてほしい。

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