2005-09-13 21:05:56

「強い男と弱い女は存在しない」って誰かが言ってた

テーマ:劇評

蜻蛉玉

「ニセS高原から」

作:平田オリザ 演出:島林愛

@こまばアゴラ劇場

「なんかあの人すっごいいい匂いしたんだよね~。」「あんた死体の匂い嗅いだの?」

観客にぜんぶ台詞を聞かせようとしない発声はポツドールに似ているけど、

もしポツドール編の人間が一人でも同じ場にいたら、絶句して愛想笑いも忘れてしまうだろう。


「静かに死を待つ人達」という設定を前面に出していたように感じられた。

厳密に言うと、静かではない。

何度も無意味に呼び出された看護婦は、怒って自分でベルを何度も鳴らす。

彼氏の結婚を告げられた村西は、談話室の床にへたりこんで悲しむ。

「みんな死んじゃったんだよ」と入院四年目の福島はのんびり喋る。「自分は死ぬかもしれない」という事実から、目をそらしている人がいない。


この芝居を見て初めて、

「あ、福島って最後死ぬんだ。死んだように見えるんだ。」

と気づいた。

これで原作の脚本もまともに読んでないことがバレてしまったが、筆者のことはさておいて、蜻蛉玉編「ニセS高原から」で一番強く感じるのは死の匂いであり、看護師をふくめた元気な人と病人の境目である。


だって冒頭に引用したセリフで既に、「死の匂い」の話をしている。原作には

「死んだ人の悪口を言うのは禁止なんですよ」

という会話が出ているが、ここにはそんなムードは無い。看病に来ている姉は弟の退院を信じているし、村西はさんざ泣いた後で立ち直るだろう。

不安や苦しみを表に出せる人はしぶとくて強いということがよく分かった。


男女が逆転したことで、エピソードがいくつか減っていた。

福島を含めた二組のカップルが、以前は違う組み合わせで付き合っていたこと。

患者の兄妹(蜻蛉玉編では姉と弟)が、恋愛関係にあるらしいこと。

全体的に隠し事が少なくなったので、無難な現実にどろっと過去がにじむようなシーンも減った。

患者の弟と福島の間の色恋沙汰も、親子愛がゆがんだような感じになって、福島の夢の中で表現される。

詩的な雰囲気が強いぶん、人によってはさっぱりしすぎている印象を受けるかもしれない。

どろどろした部分を思いきり見せることで、青春ドラマっぽさが少し入った。


登場人物の男女を逆転させただけで、こんなに話が変わってしまう。

男女の違いがはっきりした代わりに、演出家と脚本家の境目が分からなくなった作品だった。

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