「知的楽観」のすすめ
新年おめでとうございます。
何かと悲観的で暗い見方に満ち溢れているような昨今。
そういう中で、年頭にあたってぜひ強調したい言葉として、
年賀状にも、私が主宰する月刊誌『2020 VALUE CREATOR』(創刊26年)にも取り上げたのは、「知的楽観」である。
知恵があれば、悲観的になることはないという意味である。
これと対をなすものとして、昔からよく知られている
「絶望は愚か者の代名詞である」という言葉がある。
知恵のない者は、ちょっとしたことに慌てふためき、不安感に陥り、絶望的になる。
他人(マスメディアなど)が不安感を煽れば、これに付和雷同して、パニクってしまう。
昨今の日本の状況が、そのようである。
「知的楽観」という言葉を初めて耳にしたのは、
私の前職(といっても27年以上前のことだが)、商業界という出版社で、大規模小売業(ビッグストア、またはチェーンストア)の専門誌『販売革新』の編集長をしていた頃のことである。
第二次大戦後の、米国流通業界のヒーローと言えば、よく知られている
現在世界最大の流通企業「ウォルマート」の創業者 サム・ウォルトンがいる。
しかし実は、もう一人、サム・ウォルトンに匹敵するような巨大な人物がいる。
それは、ウォルマート以前に、世界最大の流通企業であった「Kマート」を創業した
ハリー・B・カニンガム、その人である。
往年の米国流通業界のビッグビジネスであったバラエティストア・チェーンで、危機に瀕していた「クレスゲ」の最年少で、現役ランクとしては最下位のランクにあったカニンガムを、株主総会は彼を社長に大抜擢し、企業再建を委ねたのである。
まさに最悪の条件下、誰が考えても絶望的な状況下でしかないところからカニンガムはスタートし、見事この潰れかかった会社を、わずかな期間で世界最大の流通企業へと、起死回生の奇蹟を現出させたのである。
彼はバラエティストアの「クレスゲ」を、当時まだ世間的には未知数のディスカウントストアチェーン「Kマート」へと大転身させることで、歴史に残る企業再建をやってのけたのである。
このとき、ハリー・B・カニンガムが、一貫してモットーとし続けたのが、
「知的楽観」という言葉であった。
現役を退き、名誉会長になっていた彼を、「商業界」が日本に招請し、全国各地で我が国の流通商業者向けに講演をしていただいたが、
1週間ほどの滞在期間中、私はずっと彼に同行し、何度も、繰り返し、「知的楽観」ということの意味とその大事さを、直接聞かされたものである。
「厳しい状況に追い込まれ、一般的には絶望と思われるような状況こそ、実はチャンスなのだ」とまで彼は言っていた。
本当の危機感(単なる不安感ではない)を持ち、
人も、組織も、なんとかしなければこのままではダメだということで立ち上がり、前に向かってたくましく歩きだすエネルギーが生まれてくるということである。
たしかに、歴史の上で考えると、次代を担っていくヒーローが出現してくるのは、
必ずそれまでの延長ではやっていけない状況のもとである。
戦国乱世、幕末、そして近くは太平洋戦争の敗戦の焼け野原のもと、新しい時代を担う人たちが、それこそ「新しい文化は常に辺境から興る」という言葉通りに「辺境」――つまりそれまでのメジャーではなく、またエスタブリッシュメントの中からではない人たちの間から、登場してきているのである。
そういう意味からいえば、今の日本の状況は、チャンスに満ちた時代ということができる。
過去のパラダイムの延長ではやっていけない――だからこそ不安感や閉塞感が世に充満している、そんな時代状況では、新しいエネルギーが本当は起こってくるものである。
歴史法則に従えば、そうである。
ただ、まだ多くの人たち(メディアも含めて)は、不安を口にし、絶望的雰囲気を発散させながら、まだ昨日の続きでもなんとかなると甘い気持ちでもいる。
その意味で言えば、誰の目にも分かるように、もっと状況が悪くなったほうが次代の創造のためにはいいかもしれないと思うものである。
どん底の状況になった中で、実は明日は拓かれると考えれば、決して世の中は悲観したものではない。






