セカンドビギナーのランニング日記(Road to SAROMAN BLUE)

サロマンブルー。それはサロマ湖100kmウルトラマラソン(100kmの部)を10回完走した勇者に与えられる称号です。いつの日か胸にブルーのゼッケンをつけてサロマ路を走ることを夢見ています。   by Ogaman(おがまん)


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(4)寒さに震えて表彰式を待つ

 最後、ゴールが近づいてくると応援の人も増えるはずです。正義のヒーローとしては、そこで情けない姿を見せるわけにはいきません。余力を残しておかねばなりません。

 とはいえ、市街地が近づくにつれて沿道には応援の人の姿も見えるようになってきました。そんな応援の人やスタッフの皆さんにも情けない姿を見せるわけにいきません。声援には返事をしながら、しっかりと走り続けます。

「カッコいいよ~」

「ありがとう~」

 素顔で走ってカッコいいなどと言われたことはありませんが、この姿だとたまに言われることがあります。たまにはこの姿で走るのもいいものだな、と思ってしまいました。

 しかしここにきてとうとう雨が降り出しました。ポツポツと降り出した雨は、アスファルトに跡を残します。早くゴールしてしまいたいという思いにも駆られますが、無理なスパートをするわけにもいきません。イーブンペースを心がけて走ります。

 ラップは5分14秒、5分13秒と悪くないペースで走れていました。残り1キロという表示を見ると俄然元気が出てきます。

 とはいえ無理なスパートは危険です。競技場に入ってから調子に乗ってスパートしないようにと、自分に言い聞かせます。

 労働者福祉センターの横を通り、交差点を右折するとまもなく陸上競技場です。ところがここ、最後の上り坂となっています。さきほどの激坂と比べたら勾配も緩く距離も短いのですが、精神的には応える坂です。

 その坂を越えて競技場に入ると残りは300メートルです。あとはしっかりとゴールまで走りきるのみです。

 でも……スパートをするつもりはないのですが、10メートルほど前にランナーがいるとついつい追いかけたくなります。ここまではほとんど等間隔できたのに、競技場に入ってからなぜかその間が詰まってきました。

 いや、けっしてスパートしているわけじゃない!たまたま近づいてきただけだ。自分にそう言い訳しながらそのまま抜きました。

 3コーナーから4コーナーを回ります。また10メートルほど前にランナーが一人います。いやいや、スパートはしない……スパートは……最後の直線に入ると、我慢できずしてしまいました。そのランナーを抜くとそのままの勢いで両手を広げてゴールです。ヒーローらしくゴールできたでしょうか。

 最後の1キロは4分24秒というラップを刻んでいましたが、さすがにそこまで速くないはずです。アプリは9.9キロを切る距離を示していましたから、距離は100~200メートルほど短かったのでしょう。それでも5分は切っていたと思います。54分23秒というタイムはコスプレランとしては上出来のタイムです。

 ICタグを外してもらい、水を受け取ると、係員の方が待ち受けていました。

「すみません、コスプレの特別賞で表彰したいので、表彰式まで残っていただけますか」

 狙い通りです。しかし正義のヒーローはそのことは表情に出さず(マスクの下では思いっきり出ていたと思います)、

「わかりました、ありがとうございます」

 と答えました。しかしスーツの下はウェアが濡れているため立ち止まると寒さが身に応えます。

「着替えてきてもいいですか?」

 そう聞いたとたん、係員の方は固まりました。その瞬間、私は彼の意図を汲み取りました。

「あ、お好きになさってかまいませんが……」

「いえいえ、わかりました。このまま待機します」

 めったにいただくことのない賞を貰えるというのですから、そのくらいの我慢はしましょう。いつの間にかまた雨は上がっており、私はスタンドに腰を下ろし、水を飲みながら待つことにしました。

「すみません、一緒に写真を撮らせてもらっていいですか」

 小さなお子さんを二人連れたお父さんがやってきました。もちろんヒーローは喜んで一緒に撮ってもらいます。これも素顔では絶対にありえない出来事です。

 表彰式も種目別に行われており、そのうち回ってくるだろうと思っていました。しかしこの表彰式、意外と時間がかかります。寒空の下で30分ほど待ちましたが、やっと5キロの部が終わったのみです。まだ10キロの部は男女各3組があり、ここまでのペースを考えると時間がかかりそうです。そろそろ寒さが限界となってきました。

 係員の方に確認すると特別賞の表彰までは15分程度かかるだろうとのことです。私は断りを入れてその間に着替えることにしました。

 労働者福祉センターに行くと、更衣室にもうランナーの姿も荷物もありません。係員の方が後片付けの準備をしているようです。このタイミングで戻ってきたのは正解でした。

 Tシャツとタイツとパンツと、黄色いスーツの下で濡れているものはすべて着替えました。そしてその上に再び黄色いスーツをまとい、その上からジャージを着ます。マスクはジャージのポケットに入れ、これでもう私が正義のヒーローであることは誰もわかりません。きっちり15分後に、表彰式会場に戻ります。

 会場では10キロ女子の表彰が始まったところでした。まだまだ時間はかかりそうですが、乾いた下着に替えたのとジャージを着ているのとで先ほどまでよりは耐えられます。

 10キロ女子、団体と表彰は進み、最後に特別賞の表彰です。すでにほとんどのランナーは帰っており、大会のスタッフしか残っていない中での表彰式ですが、私は急いでジャージを脱いでマスクをつけました。周囲からは「早い!」という声がかかり、「ヒーローはいつでも出動できるようでなければなりません」と返します。

 特別賞は私の他に武者姿の若い女性ペアです。3人それぞれ表彰を受け、これにて大会はすべて終了しました。

特別賞

 その頃からまた雨がポツポツと降り出し、その後は本降りになっていきました。ここまで我慢してくれた雨のおかげもあって、終わってしまえばなかなか楽しい「黄色いやつの復活レース」となりました。

 さてこの黄色いやつ、またどこかで走る機会はあるのでしょうか……。(おわり)


(1)いちおう用意して
(2)防寒対策として着ることにして
(3)狙うと決めて愛想を振りまいて


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(3)狙うと決めて愛想を振りまいて

 スタートの号砲とともにJognoteアプリもスタートさせました。今回は感覚のみで走ろうと、腕時計も持ってきていません。終わってからラップとタイムを確認するのみです。

 午前9時のアメダスによると、登別の気温は3.9度だったとか。2007東京マラソンより寒かったようですが、雨が降っていないことは本当に救いでした。

 競技場の第3コーナー付近からスタートし、競技場内を300メートルほど走ってからロードに出ます。

 10キロの部の参加者は300名くらいということもあり、伊達ハーフと比べても密度はまばらです。しかもランナーの皆さんはインコース寄りにコースを取っている人が多く、アウトコースを走ると前はがら空きで自分のペースで走れます。すいすいと前に並んでいたランナーを抜きながら走ります。

 アウトコースを走って4コーナーを回ると、必然的に本部席や応援している市民の皆さんの側を走ることになります。私は飛び切りの笑顔で(マスクのため見えませんが)手を振りながら通過します。大会関係者の皆さんへしっかりアピールすることを忘れません。

 ロードに出て序盤は市街地の中心部を走ります。このあたり、競技場内でペースに乗ってしまったため軽快に走っています。

 今回ははっきりとした目標は設定していませんが、仮装をしているとはいえキロ5分台のペースでは走りたいと思っていました。ただマスクをかぶっていることと最近の練習内容を考えると、50分を切ることは難しいと思っていました。ですからいちおうの目標は60分切りです。

 時計も距離表示もないのでラップは確認できませんが、スタート直後のペースは「60分切り」などというペースどころではありません。それよりかなりいいペースで走っています。

 普段の10キロならこのペースでもいいでしょう。しかし今回はマスクをかぶっています。後半はきつい上りも待っています。そう考えると、このペースはオーバーペースのような気がします。現に早くも呼吸が苦しくなってきました。

 やはりマスクの影響はあります。私は気持ちだけペースを落としました。

 結果的にこの判断は正解だったと思います。後に確認したところでは最初の1キロを4分58秒で走っていました。このまま走っていたらオーバーペースだったことでしょう。

 ただしコスプレランナーとしては人が多いところでこそ元気いっぱいで走らねばなりません。そう考えて、市街地を走る序盤とゴール前の終盤だけは頑張って、厳しい坂が待っている中盤は流して走るというレースプランを立てていました。オーバーペースにならないようにペースを落としましたが、極端に落とすことなく走り続けました。

 ペースを落としたことで、最初のうちはどんどん抜きながら走っていましたが、だんだん前のランナーとは差が開き始め、後ろのランナーから抜かれるようになってきました。しかし私は私のペースを守り、子供を見つけるとこちらから手を振り、声援をかけられるとしっかりと応え、コスプレランナーとしての務めを果たしました。

 市街地は5分06秒、5分23秒というラップを刻んで走ったようです。そのあとは郊外に向かい、やがては山中を目指していきます。

 本人は安定したペースで走っているつもりです。4キロのラップも5分29秒とさほど変わりはありませんでした。このくらいのペースならば問題なく走れます。問題となるのはこの先です。

 人気の少ない山道に入り、コースも緩やかな上り基調となります。この状態が約1キロ続き、その先はさらなる急勾配が待っていることは、昨日の下見でわかっています。

 5キロのラップは6分ちょうどまで落ちていました。走っているときは5分台の後半というイメージでしたが、思っていた以上に勾配がきつかったのかもしれません。そしてこのあたりから勾配がますますきつくなっていきます。

 ベスト体重よりも7キロほど増量している今の体には、上り坂は非常に応えます。しかもこの上り坂は延々と続いており、どこまで続くのかという不安にも襲われます。それを前の日に確認しておいたことは精神的に大きなプラスとなりました。

 この上り区間には二つの橋があります。一つ目の橋を渡りきった先には大きな桜の木があり、きれいに咲いています。空の色が青かったらすばらしい景色なのですが……それでもこの桜の木を楽しみにここまで走ってきました。

桜目指して

 写真を撮るために何度も立ち止まります。あくまでも写真を撮るためです。けっしてサボることが目的ではありません。

 この橋を渡ってしばらく走ると二つ目の橋が見えてきます。こちらは道央自動車道を跨いでいます。そしてこの橋を渡り終えるとまもなく折り返し地点です。そう思うと元気が出てきました。

 折り返し点では立ち止まってまた写真を撮ります。何度も言いますが写真を撮るために立ち止まったのです。サボるためではありません。

折り返し

 しかし急坂に加えて何度もサボったことが影響したようで、6キロのラップは8分18秒もかかっていました。

 折り返してからは急坂のためスピードアップします。そんなに急いで走りたくないのですが、下手にブレーキをかけるとかえって足に負担がかかります。ですから足に負担をかけないように、なおかつスピードを出し過ぎないように意識をして走ります。意識をするだけで、技術的にどうこうというものはまったく持ち合わせておりませんが。

 7キロのラップは4分18秒と、その前の1キロより4分も早くなりました。

 残すは3キロ。しかし急な下り坂を終えると緩やかな下り坂でさえ上り坂と錯覚するくらいつらくなります。ここからの3キロは最後の正念場です。(つづく)


(1)いちおう用意して
(2)防寒対策として着ることにして

(4)寒さに震えて表彰式を待つ


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(2)防寒対策として着ることにして

 大会当日を迎えました。天気予報は雨。そして予想最高気温は8度。寒いのも雨も苦手な私にはとても厳しい条件です。

 しかし起床して外を見るとアスファルトは一部乾いています。いつ雨が降ってもおかしくない空模様ですが、今はどうにか治まっているようです。ゴールするまでこの状態が続いてくれれば……と思いながら支度をしました。

 蛍光Tシャツを着てタイツを穿き、ランニング用のソックスを履き、その上からジャージを着ます。ジャージを脱いでナンバーカードをつけたランシャツを着ればすぐに走れる格好です。

 荷物は前日のうちに用意しています。食事をしてトイレを済ませて出て行けばいいだけなのですが、なぜか予定よりも時間がかかってしまい、前日に考えていたプランより20分ほど遅れ、8時近くなってから家を出ました。

 家から一歩外に出たとたん、肌に刺さるような寒さを感じてしまいました。

 ウェアは半袖しか用意していません。この寒さでは半袖で走るのはつらそうです。かといって長袖を取りに戻るのも面倒です。

 ということで、仮装ランを決めました。けっして特別賞に目がくらんだわけではありません(笑)。でもやるからにはしっかりと目立つパフォーマンスをすることにします。

 車を運転してしばらくすると、ポツポツと雨が落ち始めます。その雨は間欠ワイパーを動かさなければならない程度でさほど強い雨ではありませんが、この気温では非常に応える雨となりそうです。

 なんとかもってほしかったけど……と思いましたが、こればかりは仕方ありません。この黄色いヒーローのデビューレースとなった2007東京マラソン。あのときも気温5度という寒さの中で、しっかりと雨が降っていました。この黄色いヒーローが雨男なのかもしれません。

 ところが車が会場の駐車場に到着する頃になると雨はほとんど上がりました。あと2時間もってくれと祈りながら労働福祉センターに向かいました。

 更衣室に指定されている部屋に行くと、数名の男性ランナーがいました。私は隅っこの目立たぬ場所でジャージを脱ぎ、Tシャツとタイツの上から黄色いスーツを身につけます。背中ファスナーのワンピースですが、ちゃんと一人でファスナーも閉じられます。

 以前コスプレをして走っていた頃は、コンタクトレンズをつけていました。このコスプレをするためにコンタクトレンズにチャレンジしたのです。でもコスプレランナーを引退してからはコンタクトレンズを使わなくなっていました。

 しかし黄レンジャーもどきに変身するためにはめがねをかけていられません。めがねを外してしまいます。マスクをつけると視界が狭くなるうえに裸眼。これでは危なくてスピードを出すことができません。……走る前からタイムが悪かったときのための言い訳です。

 いったんは黄色いスーツの上からジャージを着て、そのまま暖かい更衣室で休みます。競技場には荷物置き場も預かりもなさそうなので、レースに出る姿で行かねばなりません。ギリギリまで暖かい部屋で休んでいることにしました。

 8時40分を回ったところでジャージを脱ぎマスクと手袋をつけて変身します。ところが10年も使っている変身スーツはすでにボロボロです。マスクの中は接着剤もはがれ、そのかけらが目の辺りにあったようです。

「イテッ」

 そうとは知らずにマスクをかぶると、左目に異物が入りました。痛みに目も開けられず大アクシデントです。慌ててトイレに駆け込み、鏡で目の中を確認しますが何も見えません。そうこうしているうちに、いずさは残るものの痛みは引いてきたので、とりあえずそのまま走ることにします。まったく前途多難です。

 そんなアクシデントでちょっと時間を食ってしまい、急いで変身作業を終えて競技場に向かいます。競技場に入ると、トラックを軽くジョグをして体を温めます。

 そうしていると徐々に周りの視線が刺さってくるのを感じます。コスプレ特別賞も設けられたということでもっとコスプレランナーが多いと思ったのですが、意外と少ないのです。それだけに私のいでたちはちょっと浮いているような感じがします。

 やがて子供たちも集まってきました。そして私を見ながら笑っています。大丈夫、インパクトは十分だ。特別賞の手応えを感じながら子供たちにも愛想を振りまきました。

「あー、わかった、特別賞狙ってるの?」

 まったく子供たちは遠慮ということを知りません。

「いや、別に、むにゃむにゃ……」

 黄色いヒーローはたじたじとなって言葉を濁します。

 そんなやりとりをしているうちに、スタート時刻である9時が迫り、スタートラインにつくように指示がありました。私は最後尾に並びました。あの急坂を攻略するには前半飛ばしすぎないことが必須です。コスプレランですし、後ろからゆっくり愛想を振りまきながら走ることにしましょう。

 このときまではそう思っていました。(つづく)


(1)いちおう用意して

(3)狙うと決めて愛想を振りまいて


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