[政治・経済]中小企業支援の理想と現実
「振興銀検査妨害、対策会議でメール削除決定 (2010年6月12日、読売新聞)」によると、
「中小企業向け融資を専門とする日本振興銀行(本店・東京都千代田区)の検査妨害事件で、同行の役員らが金融庁の立ち入り検査前に対策会議を開き、出資法違反の疑いが強い取引内容を示した電子メールなどについて、削除する方針を決めていたことが、関係者の話でわかった。警視庁は検査妨害に同行役員らが組織的に関与した疑いが強いとみており、会議に出席した役員らから事情聴取を進めている。」
「関係者によると、対策会議は昨年6月から金融庁の立ち入り検査が始まるのを前に開かれ、同行の役員ら4、5人が出席した。同行は貸金業者から債権を買い取り、その後、出資法の上限金利(29・2%)を上回る45・7%の手数料を上乗せして業者に買い戻させる取引を行っており、同行のサーバーには、この違法性の強い取引の内容などを示すメールが多数残されていたという。」
「このため、対策会議では、これらのメールを削除することを決定。その後削除したが、検査で発覚したため、会議のメンバーらは「誤って消してしまった」と、ミスと主張することも確認したという。」
「警視庁は、この対策会議で検査資料の隠蔽(いんぺい)が決定付けられた可能性が高いとみており、会議の状況や協議された内容などについて詳しく調べている。金融庁は容疑者を特定しないまま、同行の役職員と法人としての同行を銀行法違反(検査忌避)容疑で刑事告発。これを受けて警視庁は、同容疑で同行本店を捜索するなど、捜査を進めている。」
とのこと。
この事件が本当であれば、この事件自体とても問題なのですが、みずあめ的には、そもそも中小企業向け融資を専門とする銀行業自体に、理想と現実のギャップがあるのではないかと思っています。そう考えると、銀行が生き残るために違法行為を行うに至っても、仕方がない(?)面があるのかなあと。
日本振興銀行にしても、新銀行東京にしても、中小企業が貸し渋り・貸し剥がしに直面し、銀行から融資を受けられないという問題を背景に、中小企業を支援することを目的に設立されました。この理念だけを見ると、すばらしいですよね。
ただ、いずれの銀行も経営赤字を抱えています。経営赤字の要因には、融資の基準が甘かったなど、銀行経営上の問題もあるかと思いますが、そもそも、リスクの高い顧客(中小企業)ばかりを顧客とした銀行というビジネスモデル自体がダメなんじゃないでしょうか。
現在、銀行が融資を行えない場合は、消費者金融が銀行よりもより高い金利でお金を貸し付けています。大手の銀行では、グループ会社に消費者金融を持っていて、言いか悪いかという議論は別として、貸出先のリスクに応じて対応する窓口を分けているのです。
消費者金融と銀行の違いは、預金預け入れ業務の有無です。銀行には預金で集めたお金を顧客に融資し、融資先からは返済金額+利子が戻り、利子の一部を預金者に還元しているのです。つまり、銀行は、融資から得られる利子収入の全てを手にすることができないのです。この点、消費者金融には預金者がいないので、利子収入は全て消費者金融の手元に残ります。
預金者から見れば、一般的には、その銀行の理念ではなく、預金の利回りがよい銀行を選びますよね。だから、「うちは貸し倒れリスクの高い中小企業を支援するので、そういう企業を相手にしていない普通の銀行と同じ利子は提供できない」と言っても、受け入れてもらえないのです。しかも出資法によって、貸出先に求めることができる上限金利があるので、違法行為を行わなければ、融資に当たって、本来のリスクに見合った利率よりも低い利率になることもありうるのです。
「リスクに見合った利率よりも低い利率で融資し、ハイリスクな融資を行わない銀行と同程度の利回りを預金者に提供しなければならない」という銀行モデルが成り立たないのは、自明のことではないでしょうか。
そういうことは想定されつつも、上記2行が設立されたのは、中小企業支援という美しい名目的な理由を掲げつつも、本当は銀行設立に係わっている一部の人が、単に「銀行を作りたい」という思惑があったからなのでしょう。日本には銀行があり余っていますから、普通の銀行を作っても、「何で作るの?」と言われてしまうのですが、「いや、既存の銀行とは違います。社会的使命を持って作られた新しい銀行です」と言えば、設立にあたって表向きには納得してもらいやすかった、というところなんでしょうね。
みずあめ的には、貸し倒れリスクの高い中小企業向け融資については、それを専門とする銀行に求めるのではなく、銀行あるいは銀行グループ全体に対して、貸し倒れリスクの高い融資先を一定の割合で持つことを義務付た方がいいと思っています(この際、義務を違反した銀行には罰金を課すこともセットで必要です)。リスクのないところだけに融資をするのではなく、融資が難しい顧客にも融資を行うのが銀行の社会的使命とするのです。銀行または銀行グループにとっては、融資が難しい顧客を抱えることは、不採算部門を抱えることになるので厄介なのですが、銀行または銀行グループ全体で採算が取れるようにしていけば良いのです。
そうなると、ある程度の規模の経済がないと全体で採算が取れないので、弱小銀行は、吸収合併され、銀行の数自体が減少することになり、あり余る銀行のリストラが進むという点でも良いと思います。
あとは、リスクの高いところへの融資は、銀行ではなく、消費者金融やファンドがすればいいと思います。間違っても日銀が融資してはいけません!






