妊娠中の抑うつ症状

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一般的に見て、女性が1年間にわたるような明らかな精神的な抑うつ症状に苛まれている人口比率は、各データを集計すると、先進諸国では7%-9%程度である。


妊娠中の精神症状の罹患率はどうだろう。

MED-LINEという世界の医学文献情報のデータベースによると、妊娠後期の12個の研究の平均では

約13%である。

やはり、女性の場合、ホルモンの作用が、精神状態に影響していると言える。

そう、思春期、妊娠中、産褥期、そして閉経前後である。


妊娠中、出産後の不安定さは、一時的な可能性が強く、夫、家族のサポートで乗り切ってほしいものだ。

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EBM(証拠に基づいた医学)という観点からみれば、効果は認められないそうである

母乳率や母乳期間という点からそういう見解なのである。


しかし、母乳という関心、心の準備という点からみれば、その点は重要である。

なぜなら、今回、米小児科学会において、母乳栄養のメリットがずいぶん明らかにされたからである。


読売新聞より、

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news_i/20050307so11.htm


簡単に言うと、生後6か月まで乳児を母乳のみで育てることを強く求める勧告を発表した。

勧告は、米小児科学会誌2月号に掲載されている。


母乳の利点として、


乳幼児の感染症、糖尿病、肥満、ぜんそくなどの発症頻度が減少する。乳幼児の脳の発達が促進される。

母親の乳がんや子宮がん、閉経後の骨粗鬆(こつそしょう)症の発症頻度の低下。


今回は最新の研究成果をもとに母乳栄養は、母子双方に有益であることを強調した。


私の総合的な見解はと言うと、妊娠中の乳首の刺激は、子宮収縮を起こすのでお勧めできない。また、乳房のマッサージも効果が証明されていないのでお勧めできない。


妊娠中にマッサージをするよりも、むしろ、分娩後に頑張ればよいのだと納得して、お産の後に早めに赤ちゃんに接するようにして、母乳の授乳時間と吸わせる回数に制限を与えないことが母乳栄養の確立に重要であることが一方で証明されている。

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骨盤位はこの時期に全体の3%程度にまで自然に減少しているが、この妊婦さん達には3つの選択が考えられる。


1. 帝王切開術による分娩

2. 骨盤位外回転術で頭位に直して陣痛待ち

3. 骨盤位の経膣分娩


3つ目の骨盤位娩出術はもはや下火で、児のリスクが高く現代の産科医療には受け入れられにくいので除外。(2000年にLancet.という一流医学雑誌で26カ国の共同研究の結果が発表されたから)

よって、1つ目の選択的帝王切開か2つ目の外回転術にしぼられる。


今の日本では、1つ目の最初から帝王切開するのが最も一般的だ。

2つ目の外回転術って何かというと、超音波で、児の胎位と胎盤、羊水量などを確認しながら、医者が両手で妊婦のお腹を触りながら児の頭、背中、臀部を順に回して、頭位に戻すことである

成功率は、欧米で約60%前後、当院では40-50%ぐらいである。

経産婦で成功率はすこぶる高い。また、羊水がたっぷりしている妊婦も回しやすい。


よく他の施設で、37週以前に外回転術を施行して、「我々の外回転術は成功率がとても高い」と自慢しているところがあるが、はっきり言って、ズルである。満期前(37週未満)に成功しても、また、逆子に戻ってしまう率も低くないのである。


外回転術の成功後は、しっかり、NST(胎児心拍モニタリング)をして、児が元気であることを確認すれば、妊婦は帰宅して、自然陣痛の発来を待ち経膣分娩を目指すことができるのだ。心配なら、その場で、分娩誘発を開始しても良い。

一方、外回転術が不成功なら、その場で、帝王切開術にすればよいのである。


日本でも、近いうちにこの骨盤位外回転術という手段を希望するかどうかを患者さんに提示するのが標準になるのかもしれない。

帝王切開率を減少させることができるという意味で、外回転術は非常に有望で恩恵のある処置、技術と言えそうだ。

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妊婦の抜歯に注意!

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歯科医にさえあまり認知されていないことがある。

それは妊婦の抜歯の怖さである。通常の削ったり詰めたりの歯科治療なら問題とはならないが、抜歯をすると、妊婦の場合、約60%ぐらいの確率で菌血症(全身の血流に一旦、菌が回ること)となる。全く健康で、心疾患のない妊婦なら問題は起こさない。しかし、女性の6%程度には、生活に全く影響のない小さなものも含めて僧帽弁閉鎖不全が隠れているとされる。これらの女性が菌血症になると、血流に乗った口腔内の細菌が心臓内の心内膜に感染を来たし感染性心内膜炎を起こす可能性が上昇する。この感染性心内膜炎は血栓を作り、脳などの臓器に飛べば脳梗塞となる。子供の頃から、先天性心疾患で苦労してきた患者さんなら、風邪や虫歯にならないよう、ずいぶんと注意され、また、気をつけてきた人生であったはずだ。感染性心内膜炎は、未治療なら約70%ぐらいは死に至ると言われている。

 よって、妊婦の抜歯の際は、その妊婦に心疾患が無いかどうかは重要であり、もし、あれば、ペニシリン系抗生物質を処置前、そして処置後に1回ずつ投与が必要とされる。これは、スタンダードな処置として、1997年に米国心臓学会のガイドライン(JAMA 1997;277’1794)で定められている。


1ヶ月前、帰省で当院にいらっしゃった32週の妊婦さんが、10日以上も左の背中が痛い、痛いと訴えており、私も全く無力で困ってしまい、大学病院の内科医師団に相談した。そして、大学病院の内科のみならず産婦人科連中も巻き込み「わからん、わからん。何だろう。」と入院させてまで困っていたが、ついに数日前に循環器の専門医が、その妊婦さんの心臓の超音波により、心臓内の弁に血栓らしき瘤ができているのを診断し、さらに脾臓という臓器に梗塞巣を発見し原因が究明できた。心臓から血栓が脾臓に飛んで血管が詰まりその組織が壊死を起こし痛がっていたのである。母体の生命の危険のために、赤ちゃんは早産だが、帝王切開で出してしまって、そして心臓の大手術が始まることとなったのである。

原因は、問診によると妊娠初期の抜歯である可能性が高いそうである。果たして、抗生物質は使ったのであろうか?妊婦自身は、心臓疾患の既往も自覚もなかったそうなので、抗生物質は使わなかったのかもしれない。


私は医師になって15年だが、妊婦の抜歯にまつわる感染性心内膜炎は、これで2人目である。






PS) 前回、帝王切開の母体死亡の統計をお示ししましたが、帝王切開のリスクは、母体死亡のみならず、

出血量や癒着、膀胱などの臓器損傷、血栓症の発生頻度、入院期間の長さや痛みの程度等さまざまにいたるのですが、あたかもそれを無視して母体死亡のみをリスクとして見てしまうような誤解を与えたことをお詫び申し上げます