不妊症に使用する漢方薬ってどんな薬剤?・・・その3 桂枝茯苓丸 | 医療法人オーク会 不妊ブログ|体外受精、卵子凍結など生殖補助医療を専門に診療しています

不妊症に使用する漢方薬ってどんな薬剤?・・・その3 桂枝茯苓丸

医師の岩木有里です。

これまでにお話した 1.当帰芍薬散、2.温経湯は、日本漢方で言う
実証・虚証のうち、虚証の時に使用する頻度の多い薬剤ですが、
桂枝茯苓丸は、実証の時に使用しやすい薬剤です。

また、桂枝茯苓丸は 駆瘀血剤の主たる薬剤の一つで、血流を良く
していきます。卵巣を刺激するホルモンを分泌する臓器や子宮・
卵巣への血流が良くなれば、妊娠にもつながるということが、
イメージしていただけると思います。

桂枝茯苓丸に含まれる生薬をみていきます。
桂枝(ケイヒ)  クスノキ科トンキンニッケイの樹皮を乾燥したもの
         停滞した水分などを取り除きます。
茯苓(ブクリョウ)サルノコシカケ科マツホド菌の菌核を乾燥したもの
         利尿作用を高め 体力を増強させます。
芍薬(シャクヤク)ボタン科シャクヤクの根茎を乾燥したもの
         筋肉の痙攣を和らげ 血管の状態を良くします。
牡丹皮(ボタンピ)ボタン科ボタンの根の皮を乾燥したもの
         血管の熱を冷まして 整えていきます。
桃仁(トウニン) バラ科モモの種の殻をとり 日干しにしたもの
         炎症を抑え 血液を流れやすくします。

桂枝茯苓丸は 上半身への血流の偏りがあり顔面にほてりがある瘀血状態に
対し、駆瘀血剤として作用し、血流を良くして下肢の冷えも改善していきます。
子宮筋腫を伴う不妊症の方に使用しやすい漢方薬です。

桂枝茯苓丸のホルモンに対する作用を見てみます。
間脳・下垂体の活性化により 卵巣機能を改善すると考えられています。
最近では 卵巣に対する直接的な作用が確認されてきています。

桂枝茯苓丸は、実証(比較的体力のある方)に対して使う頻度が多いのも
あると思いますが、体外受精までステップアップする以前の症例で、
温経湯、当帰芍薬散に比べ 妊娠率が高いという報告があります。

また、はじめは虚証に対し当帰芍薬散を使用し、体質が変化し実証となり、
桂枝茯苓丸を使用し、妊娠が成立する症例も見られます。

次回は 加味逍遥散のお話をさせていただく予定です。