【法廷ライブ SS元船長第3回公判】(8)

 《環境保護を標榜(ひょうぼう)する米団体「シー・シェパード(SS)」抗議船「アディ・ギル号」の元船長、ピーター・ジェームス・ベスーン被告(45)に対する検察側の質問が続いている。質問は、日本の調査捕鯨船「第2昭南丸」への妨害活動を指示したとされるSS代表、ポール・ワトソン容疑者(59)=傷害容疑などで逮捕状=と、ベスーン被告との関係に踏み込んでいく》

 検察官「(SSの母船)スティーブ・アーウィン号に乗っているとき、ポール・ワトソン容疑者と直接会ったり、話したりしたことはありますか」

 被告「はい」

 検察官「アディ・ギル号に乗っているとき、ポール・ワトソンとは、無線で話したりするわけですか」

 被告「はい」

 検察官「第2昭南丸に侵入することは、ポール・ワトソンと相談して決めたわけですね?」

 被告「はい。確かに、ポール・ワトソンとの話し合いの後に決まったことです。ただ、そのとき、彼から確認されたことは『(ベスーン被告の)個人の判断で行う』ということです。私が判断し、全責任を私が負う、ということです」

 検察官「テレビに撮影させるのは、誰が決めたのですか」

 被告「私です」

 検察官「スタッフとの打ち合わせはあった?」

 被告「そうです」

 検察官「あなたは検察官の取り調べの際に、『テレビのスタッフに撮影させるのは、自分が決めたのではない』と述べていませんか」

 被告「いや、そうは言っていないと思います」

 検察官「ポール・ワトソンと会ったことはありますね」

 被告「はい」

 検察官「甲46号証、写真番号273を示します…」

 《法廷のモニターに写真が映し出される。日本船側から撮影した写真のようだ。夜の海で全体に暗く判別しづらい。検察官が質問を続ける》

 検察官「これは2月11日に、スティーブ・アーウィン号を撮影した写真であることは分かりますね?」

 被告「ノーコメントです」

 検察官「中央に写っている、白髪の男性は誰ですか」

 被告「ノーコメント」

 検察官「ポール・ワトソンではありませんか」

 被告「ノーコメント」

 《ベスーン被告は、証言拒否を3回繰り返したあと、そわそわした様子で振り返り、傍聴席側にある時計を確認した》

 検察官「この前、この法廷で見たビデオに、船員(乗組員)が痛がっている場面がありましたね?」

 被告「はい」

 検察官「船員が演技しているように見えた?」

 被告「ノー(いいえ)」

 検察官「あなたは『日本側のインパルス銃(放水用の機器)に何か化学物質が入っていたのでは』と述べていますね」

 被告「はい」

 検察官「でも、この前に証言した船員は、『水だ』と述べていたのを覚えていますね。それは、船員がウソをついたと考えていますか」

 被告「…インパルス銃に水を入れて、反対活動を阻害することには、意味はありません。それに中身が水なら、私にとっては驚きです」

 検察官「船員がウソをついていると考えていると?」

 被告「あるいは、間違っているか、誤解しているかです」

 《検察官の質問は、酪酸(らくさん)の濃度についての認識に移った。ベスーン被告は「酪酸は、濃度によっては危険」と認識しており、「SSの間では、一般的に(安全だと)信じられている」と説明。SSが濃度についてウソをついている可能性を問われると、「彼らが誤解している可能性はあるが、私には分かりません」と答えた》

 検察官「SSのメンバーにまた会うことがあったら、酪酸を使うことに、賛成しますか、それとも反対?」

 被告「おそらく、賛成しないと思います」

 検察官「薄い酪酸であれば、日本船に撃ってもかまわない、と考えていますか?」

 被告「はい。安全な濃度なら撃ってもかまわないと思います。ただ、安全でないとしたら、私は一切、かかわりあいたくない」

 検察官「日本船に、くさい物をぶつけてもかまわないと考えていると?」

 被告「もし、その船が違法行為をしているとすれば、かまわないと思います。それが傷害を引き起こすとすれば、いいことではありません」

 検察官「アディ・ギル号の所有は、アディ・ギルさんでいいわけですね?」

 被告「はい」

 《アディ・ギル号は、SSに購入資金を提供した同名の米国人富豪にちなんで命名されたという》

 検察官「アディ・ギルさんという人が、船の借金を払ってくれたんですね?」

 被告「金銭的なことについては、発言したくありません」

 検察官「アディ・ギルさんがお金を払ってくれたから、あなたはSSの活動をしていたのでは?」

 被告「違います」

 検察官「以上です」

 《検察官が質問を終えた。続いて予定されていた弁護側の質問は、弁護側の申し出により取りやめになった。続いて、裁判官が質問を始める。傍聴席から向かって右側、若い女性裁判官が口を開いた》

 裁判官「あなたは酪酸を撃ったとき、第2昭南丸の操舵(そうだ)室の扉のすぐ脇の柱のかげに、人が隠れているのが見えたのですね?」

 被告「私が覚えているのは、撃つ前に、彼がちょっと顔を出して、様子をうかがってから、すぐに顔を引っ込めたことです」

 裁判官「隠れている人には、絶対に当たらないと考えたのですか」

 被告「そうです」

 裁判官「さっきの話だと、あなたのゴムボートは、海の上で多少、揺れていたようですね。1メートルほど狙いがずれることがあると考えていたのですね?」

 被告「はい。その程度は想定していました」

 裁判官「それでも、柱のかげの人には、絶対に当たらないと考えたのですか?」

 被告「そうです」

 裁判官「あなたがいう『無害』とか『無毒性』という言葉の意味が知りたい。例えば、レモン汁でも無毒、無害になるのですか?」

 被告「はい」

 裁判官「レモン汁が目に入っても、人体に害はないということになるんですね?」

 被告「目に入ったら、痛いことは痛いと思います」

 裁判官「さっきから良く分からないのですが、あなたはこの事件当時、日本側が『酪酸で負傷者が出ている』と主張していることを知っていましたか」

 被告「知りませんでした」

 《女性裁判官の質問は終わった。続いて、向かって左側の口元にひげを生やした男性裁判官がベスーン被告に問いかけ始めた》

 裁判官「あなたの主張では、酪酸を第2昭南丸に打ち込んだのは、昭南丸とスティーブ・アーウィン号を引き離すため、ということですか?」

 被告「そうです」

 裁判官「どうして、撃ち込むと離れることになるのですか」

 被告「酪酸は極端にくさいので、おそらく清掃作業に追われると思いました。私たちが投擲(とうてき)した酪酸の濃度は、量は不十分でしたが、少なくとも目的は果たすことはできました」

 裁判官「くさいだけだと、航行不能になるわけじゃない。その辺は考えなかったのですか」

 被告「その(航行不能にはならない)可能性は、大いにあります」

 裁判官「すると、『においで困らせる』という以上のものが、あなたの考えの中にあったのでは?」

 被告「ありません」

 《ベスーン被告は、時折、疲れた様子で、うつむいたり、手を動かしたりしながら答えを続けた》

 =(9)に続く

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