Folk Songs(6) Lost In My Mind | AFTER THE GOLD RUSH

AFTER THE GOLD RUSH

とおくまでゆくんだ ぼくらの好きな音楽よ――

 

米国シアトルを拠点に活動するインディ系フォーク・ロック・バンド、ザ・ヘッド・アンド・ザ・ハート(The Head and the Heart)が、この秋3年ぶりのニューアルバムを発表するという報せに一瞬胸躍らせつつも、まるで重力が半減したかのごとく軽く薄味な仕上がりであった2ndアルバムにいたく失望した身としては、期待半分、不安半分といったところでアップされたばかりの新曲を試聴してみると、これが、さらに重力が衰えて、今やフワフワと空中浮遊してしまいそうなくらいスーパーライトな出来栄えなのである。冬の雨に打たれ、重く垂れこめた黒雲を、ドン・キホーテよろしく両手で押し上げようと奮闘していたジョナサン・ラッセルはもうここにはいない。彼は今やリゾートの達人のようになってしまった。

 

5年前の彼らは、フレッド・ニール、トム・ラッシュ、デイヴ・ヴァン・ロンクといった米国民謡の先人達の血脈を受け継ぎ、それらを混合し、オリジナルな言葉とメロディーで勝負していた点において、正しくフォーク・バンドであった。1stアルバム収録の「Lost In My Mind」は、ルーツミュージックへの敬意と、2010年代を生きる若者達の暗澹たる心象風景をミクスチャーした佳曲。この地点に彼らが戻ることはないのだろうか。