ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」


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昨日、ある医療ドラマの最終回を見ました。


そう、

「医○4」です。


ある方のコメントで医療ドラマへの感想を求められたので、

ちょっとたまには書いてみようかと思います。


しかも今回のこのドラマの最終回には脳外科の手術も関わっていましたので、

正直、かなり楽しんで見る事ができました。


実際に現実味がどうか、ということではなく、

ちょっとありえないと思いつつも脳外科医的には、

そうきたか!すごいな! と、盛り上がってしまうような内容でした。


ドラマでは、

心臓と脳の動脈瘤が同時破裂!

というまず普通はお目にかからないような最悪の状況が描かれていました。


僕自身、

そんな経験は全くありません。


そこで同時に止血のための手術をしようというのですから、

もうこれは現実の医療では滅多にありえないウルトラな手術ですね。


この同時手術が勃発するという事自体がまず、

滅多にない状況と言えるでしょう。


そして、

その手術の内容はまさにチーム○○でしか成し得ない超絶なものでした。


心臓の部分に関してはあまりわかりませんが、

まあ、あーいった再建術というのはあり得るんじゃないかと思います。


脳に関しても、

あの術式自体はもちろん超高難度の手術ですが、

有り得ないわけではありません。


脳底動脈瘤に対するクリッピングは難易度高ですが、

動脈瘤治療に熟練した脳外科医であれば可能です。


そして、今回のドラマで行われた、

脳血管バイパスを併用したflow control surgery、


これも関西の某有名大学が主に

flow alterationと呼んで治療を行っています。


脳底動脈はちょうどトンボのように見えるので、

Mission dragonfly と呼んで、この困難な疾患の治療に挑んでいます。


よって、

今回登場した脳外科の手術は実際に行われているものではあります。


しかし、

いくつかの点でやはり今回のドラマの手術は人智を超越した神業としか言えません。


それは、

圧倒的に手術時間の問題です。


次回に続きます。



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今年もインフルエンザが流行しているようです。

しかしながら、ピークは越えつつあるのかもしれません。


今回は新しいインフルエンザワクチンについて少し書きます。


脳外科とはちょっと離れた話題です。


インフルエンザワクチンを毎年受けている人はきっとこの記事を読んでいる方にも少なくはないでしょう。

二の腕の裏側に注射するあのワクチンです。


現在インフルエンザのワクチンと言えば、この筋注によるワクチンですね。

しかしこのインフルエンザのワクチン、

決して感染そのものを予防するための物ではないということをどれだけの人が知っているでしょうか?


「ワクチンを打ったからインフルエンザにはかからないはず」


そう思っている人の方が多いのではないでしょうか。


実際には今のワクチンを接種したとしてもインフルエンザにはかかります。

喉や鼻の症状は防げないのです。


では何のために今のワクチンを打っているかというと、

重症化を防ぐためです。


毎年流行る季節性のインフルエンザはまれに免疫の弱い小児や高齢者に肺炎や脳炎などを起こし、

0.1%未満の死亡率があります。


これを防ぐためにワクチンを打っているようなものであり、

感染そのものを予防するためではないのです。


これは何故かというと、

筋注したワクチンは体内でIgGというタイプの抗体を作りますが、

そのIgG抗体は感染の入口である粘膜の防御には役立たないからです。


インフルエンザの感染は鼻や喉の粘膜から起きるのですが、

その感染を防ぐためにはIgA抗体が必要です。


そして、

そのIgA抗体をつくるために必要なワクチンは筋注ではなく、

経鼻ワクチンなのです。


鼻に噴霧するこのワクチンは鼻や喉の粘膜にIgA抗体を作ります。

そうすることによってインフルエンザの感染そのものを予防することが出来るのです。


とはいえ、この経鼻ワクチン自体は必ずしも新しい物ではありません。

この経鼻ワクチンは1990年代後半から研究されていました。


しかし、

なかなか実用化までのハードルが高く、現在も実用化には至っていないのです。


そんな経鼻ワクチンがいよいよ実用化に向けて動きつつあるようです。

このワクチンが完成すればついにインフルエンザの感染そのものを予防できるようになるかもしれません。


今後、日本でこのワクチンが世界に先駆けて承認、使用されるようになればと願います。


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今回はストレスやプレッシャーと脳について書こうと思います。


2月はいろいろと忙しく、なかなかブログを更新できませんでしたが、

3月は書いていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。


プレッシャーのかかる場面で、

鼓動が早まり、息苦しくなり、頭がまるでオーバーヒートしたかのようにうまく働かなくなる


こんな経験は誰でもあるのではないでしょうか?


多くの人に共通してプレッシャーのかかるシーンには、

たとえば受験の筆記試験などがあるでしょう。


重度の緊張の中、試験に臨むものの、


いざ開始のブザーがなって試験問題をめくった瞬間、

いきなり最初の問題の答えがわからなくて頭が真っ白になる、


これはまさにストレスとプレッシャーの悪しき影響なのです。


最初の問題が解ければ自然と緊張は落ち着くものですが、

最初からつまづくとプレッシャーはさらに強まるからです。


しかし、世の中にはプレッシャーに押しつぶされて十分に実力を発揮できないタイプと、

逆にプレッシャーの中でより集中力を増すタイプがあります。


近年、

そういった個人によるストレスに対する脳の耐性のメカニズムが明らかにされてきました。


もちろん単一の要因で脳のストレス体制が決まるのではありません。

生い立ちや教育、経験などの後天的因子が強く影響することも分かっています。


しかし、

遺伝的な脳の特性として、プレッシャーに強い人と弱い人がいるのは事実のようです。


これには

COMT(catechol-O-methyltransferase)と呼ばれる酵素の働きが影響することがわかっています。


個人のCOMTの設計図はCOMT遺伝子にコードされているのですが、

このCOMT遺伝子の型によって、その人のCOMTの活性が決まってきます。


そして、

COMTの活性が人のプレッシャーに対する耐性を左右するのです。


COMTが何をしているのかというと、ドーパミンなどの神経伝達物質の分解を行います。


ドーパミンというのは非常に重要な神経伝達物質で、

思考、感情など様々な脳の働きに関与しています。


特に人間の思考をつかさどる前頭葉前皮質の機能を調整することでも知られています。


つまり、このドーパミンの量を調整するCOMTによって、

前頭葉の働きが影響を受けるのです。


COMTには2つの変種があることが知られています。


1つはドーパミンをゆっくり分解するタイプで、

もう1つは早くにドーパミンを分解してしまうタイプです。


このタイプの違いがプレッシャーに対する耐性に関与しているというのです。


ドーパミンの量は多すぎても少なすぎてもよくなく、

脳が判断力、問題解決力、思考力、集中力を発揮するためには適切な量に調整されなければいけません。


そうすると、通常の状態ではこの「ゆっくり分解」タイプの方が能力に勝るという結果がでています。

実際にIQの値として10ポイント高いとする検査結果もあるようです。


むしろ「速く分解」タイプは通常状態ではどんどんドーパミンが取り除かれ、

前頭葉がうまく働かず、無気力となってしまうようです。


しかしストレスがかかると状況は変わります。

ストレスは前頭前皮質にドーパミンを増やし、過剰になります。


そうすると、「ゆっくり分解」タイプでは大量のドーパミンが注ぎ込まれた前頭葉は機能しなくなってしまいます。


これこそがプレッシャーで頭が真っ白になっている状況ですね。


この状況では、「速く分解」タイプの方が有利です。

溢れるドーパミンを分解し、適正量に保ってくれるからです。


むしろこの「速く分解」タイプの人はストレスがかかりドーパミンが増えた状況でこそ、

脳が最大限の働きをすると言えるでしょう。


この差が、

一発勝負の試験など、プレッシャーのかかる状況に対する生まれつきの耐性として表れるそうです。


みなさんは自分をどのタイプだと思いますか?


ある程度プレッシャーがあり追い詰められている状況でも、

頭がクリアーに働くような人は後者と言えるでしょう。


しかし、

この「ゆっくり分解」タイプの人もそうだといって、「私はプレッシャーに弱いんだ」と悲観する必要はありません。


なぜなら、訓練と発想の転換によってプレッシャーを乗り越え、

パフォーマンスを改善することができるからです。


繰り返し、適度なプレッシャーを何度も負荷されることによって、ストレスに慣れることが出来る他、

「適度なストレスはパフォーマンスを向上する」などと発想を転換して臨むことで、

プレッシャーを力にすることもできるという実験結果もあるようです。


「ゆっくり分解」タイプの人は一発勝負には弱いとしても、

むしろ普段は「速く分解」タイプより集中力や気力を維持しやすいと言えますから、

結果として訓練にしろ、何にしろ、長期的には多くの物を積み上げやすいのかもしれません。


あとはストレスに対する耐性を上げ、プレッシャーの中でもそのプレッシャーを適度にコントロールし、

実力を発揮できるようになれば良いのでしょう。


さて、

ここまで長く書いてきましたが、自分がどちらのタイプか、なんとなく分かりましたか?


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