世界の脳動脈瘤治療。 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

先日、日本で世界各国の脳血管内治療を、

LIVE配信で見ることのできる学会があったので、行ってまいりました。

 

トルコ、中国、アルゼンチン、米国、そして日本(神戸)でのそれぞれの施設での血管内治療の様子がライブで視聴できるという、

貴重な機会で、国際学会にあたるのですが日本の神戸で開催されたのです。

 

治療のライブを見るという試み自体はもともと国内でも毎年行われておりますが、

世界中のライブが見られるものが国内で開催されるのは貴重でした。

 

主なトピックは2つで、

1つは動脈瘤治療の変化、もう一つは昨日記事にしたAVM治療のTVEだったように思います。

 

やはり一番驚いたのは脳動脈瘤治療です。

 

どう驚いたかというと、

まあ、ライブだから、ということもあるのでしょうし、海外のどこもかしこもが同じというわけでもないのでしょうが、

とにかく、なんでもかんでもフローダイバーターという流れが加速しているような印象をうけました。

 

どういうことかといいますと、

日本ではフローダイバーターを使っていい動脈瘤の適応というのはかなり限定されていて、

現在のところ、大きな内頚動脈瘤でかつ、内頚動脈瘤で、部位も限定されています。

通常のコイル塞栓術では根治が難しい動脈瘤を対象に適応となっていった流れがあります。

 

ところが、先日のライブでみたところ、

どうも海外では、国によっては、なのでしょうが、なんでもかんでもフローダイバーターを留置するだけで、

治してしまおう、という風潮が強まっている印象でした。

 

以前からそのような傾向があるのは聞いていましたが、

少なくとも日本では普通に、十分に安全にコイル塞栓術が可能そうな、

5-6mmの内頚動脈瘤であったり、

 

正常血管の分枝との分離が難しく、日本であれば、おそらく開頭クリッピング術が選択されるであろう、

中大脳動脈瘤などが、

フローダイバーター留置のみという方針で治療されていました。

 

フローダイバーターでは多くの症例がしばらくたってから動脈瘤の閉塞が起こり、

正常血管の閉塞などの合併症もしばらく経ってからのことが多いものですから、

フローダイバーターを設置したあとに果たしてその患者の動脈瘤が安全に根治したのかは、ライブではわからないものです。

 

ですので、ライブでは、無事にフローダイバーターがこのように置かれました、でおわるのですが、

それではたして本当に良かったのかどうか?僕と同じように疑問をもった日本の脳血管内治療医はおおかったのではないかなぁと思いました。

 

そういうわけで、

ちょっと違和感をかんじる治療が多かったようにおもいます。

 

ただ、他にも、動脈瘤内に網状の球体のようなデバイス、

WEBと呼ばれているデバイスを留置してくるだけで治療してしまう方法や、

新しいものが多く見れたので非常に有意義な機会であったことは間違いありません。

 

海外でのこの、ちょっと行きすぎのようにも思うフローダイバーターの積極的利用は、

どこかで何か問題が露見して、少しブレーキがかかるのか、

もしくはさらに加速していくのかはわかりませんが、

 

少なくとも日本ではこれからも活用の機会が増えていくでしょう。、

ただ、なんでもかんでも、フローダイバーターということには、日本では決してならないような気がします。

 

この辺はやはり、治療医の気質が日本と海外では違うのだろうなぁ、と感じました。

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