ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」


テーマ:

最近、より強く感じるようになったのですが、

外来をやっていると、2種類の患者さんがいます。

 

簡単に言うと、

医師(私)のアドバイスを信頼してくれる患者さんと、

私ではなく、検査(MRI)だけを信頼している患者さんです。

 

もちろん、これは私がまだまだぺーぺーだからなのでしょうが、

だいたい半々くらいの印象です。

 

世間的に名の通った先生や、教授、など高い肩書のある先生になると、

きっと前者の方が圧倒的に多くなるのでしょうが、

 

私のように世間的には無名な医師の外来診察となると、

半々というよりも後者の人の方が多いような気がします。

 

たとえば、

私のやっているような一般的な脳外科の外来にくる患者さんというと、

多くが頭痛と頭部打撲です。

 

医学的にみて、たとえば頭痛の患者さんの中でMRI検査を必要とするような方は、ごくごく一部であって、

ほとんどの患者さんがMRIをとったとしても空振りです。

 

まあ、もちろん、頭痛症状とは全く関係なしに、

なんらかの病気や異常が見つかることも稀にはあるのですが、

それでもたいていは必要のない検査です。

 

特に緊急性や、病気の存在が怪しくない頭痛患者さんの場合、

私のアドバイスを信頼してくれる患者さんは、頭痛についていろいろとその原因や対策を説明すると、納得して帰って行ってくれるのですが、

MRIだけを信頼してる患者の場合はそうはいきません。

 

こういった患者さんはそもそも頭から、

「そうは言われても検査してみないと信用できない」と考えているので、

何を説明してもたいして聞いてはいません。

 

聞いてはいるのかもしれませんが、

疑念を持ったまま話を聞いているので、頭の中は、

「なんとかMRIをしてもらおう」という一心で、内容まで頭に入ってこないのです。

 

どう説明しても決して納得して帰ろうとはせず、

心配ないですよ、といっても渋り続けるパターンです。

 

これで無理やり帰すと、また数日後に他の医師のタイミングをはからって、

また同じ病院を訪れたり、もしくはMRIを撮ってもらえるまで、

他の病院を探し歩いたりするようです。

 

つまることこ、

こういった患者さんの場合、結局は医師の持っている医学的な知識などは信用せず、

結果が目に見えるMRI検査のみを信頼しているのです。

 

こうなると、もう、こういった患者さんにとっては、

外来診察医である私は不要で、

極論いうと、MRI検査をする技師さんと、どこかの放射線科医の読影結果だけあれば、

彼らの要求は満たされることになります。

 

MRI検査というのは3万程度の費用がかかります。

ただ、健康保険によって、一部の高齢者は1割、

その他の人は3割負担となるので、本人の払う金額は1万円以下で、

残りの金額は国の税金から払われています。

 

ただ、税金といっても、もとをただせば、我々納税者が払っているわけですから、

無駄な高額検査は自分たちのまわりまわってクビを締めることになります。

 

本来、病気の存在が疑われる、もしくは緊急性のないMRI検査については、

医師はオーダーするべきではなく、

そういった患者さんは自費で脳ドックなどの検診を受けるべき、

というのが医療費を抑制しようとする国の方針となっております。

 

ただ、実際の医療現場では、

MRIを撮られるまでなかなか引き下がろうとしない患者と、

多大な労力を払って患者を説得するよりもMRIを入れてしまった方が楽、という医師によって、

実際には不要な検査が乱発されているのです。

 

病院自体はMRIは撮ればとるほどもうかるので、

むしろ、検査の乱れうちを推奨するようなところも多いです。

 

開業の診療所などでは、医師の診察の前にほとんどの患者にMRIを撮ってしまうようなクリニックもあるくらいです。

 

こういったクリニックは病院と、そこにかかる患者にとってはwin-winで、

病院は儲かるし、患者もすぐにMRIを保険でとってもらってラッキー、

となるわけですね。

高額な脳ドックを受ける必要がなくなります。

 

過剰な医療費が国の財政を逼迫するという問題がありますが、

たとえばこのMRIの話などは、どんな制度を国がつくったとしても、

なかなかおしとどめられるものではありません。

よっぽど強制力のあるMRI撮影の指針などがつくられない限りは無理です。

 

緊急性や病変が疑われると言われればMRIを行うことを否定することはできませんし、

検査自体の重要性や、検査機器の価格を踏まえると、撮影に伴う単価を大幅に下げるわけにもいかないからです。

 

国民全体の意識が変わらないかぎりは、

現状から脱することはないでしょう。

 

解決策があるとすれば、

技術革新によって検査機器のコストが下がり、それに伴って撮影単価を下げることくらいしかないかもしれませんね。

 

しばらく外来をやっていると、

こういったMRI目的の患者さんはすぐにわかるようになりますが、

 

逆に、そういった患者さんをMRIなしに帰すことは難しいということもわかってきますし、

実際、ほとんどが何もないといっても100%というわけではないことから、

撮らなかった場合に訴えられるリスクというのも、非常に僅かではありますが頭をよぎります。

 

その結果、

あ、この人は私たち(医師)のことは信頼していなくて、MRIだけが目的なんだなぁ、

とやや寂しい気持ちになりながら、検査をオーダーする、

というのが我々の日常なのです。

 

まあ、もちろん、自分が患者になった場合を考えれば、

不安なときは少しでも確かな検査(MRI)の結果を見ないと安心できない、

というのはわかるんですけどね。

 

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