前回のブログ記事を書いてからだいぶ日にちがあいてしまいました。
いやはや、
年度代わりはいろいろ異動などがあって忙しいものですね。。
さて、
さっそく続きを書こうと思いますが、
今さら何の話だってくらい時間が経ってしまいましたね。
申し訳ありません。。
ご容赦ください。
前回紹介した「医○4」の最終回、
そこに登場する元全米ナンバーワン脳外科医「岡○」の何が神業かって、
なによりもそのスピードが神業であると書きました。
脳底動脈の動脈瘤というのは、
数ある動脈瘤の手術の中でももっとも深部にある、難易度の高い動脈瘤です。
ここに到達するアプローチは代表的な物が2つあります。
一つは前頭葉と側頭葉の間からシルビウス裂を分け入っていくアプローチと、
もう一つは側頭葉の下からのアプローチの2つです。
ドラマではこの2つが登場していました。
「シルビアンフィッシャーを開けるぞ」 と言っていたのは前者のアプローチ。
そして、
クリッピングが出来ないと分かって、フローコントロールに切り替える時に
「サブテンポラールアプローチの視野が必要だ」
と言っていたのが後者です。
一般的な脳外科の手術では皮膚を切って、その下の筋肉を処理し、骨をあける開頭までの所用時間が、
だいたい30分から、時間がかかると1時間程度です。
骨が外れて、そのあとに脳を覆う硬膜を切開してから、
ようやく脳にアプローチします。
脳へのアプローチでは、脳とその血管を傷つけないように、
脳を覆うくも膜だけを切開して、展開していくのですが、
これがくも膜下出血後は血のせいで難しくなります。
要は脳の表面が血まみれになっているわけですから、
念入りに洗浄して血を流さなければ、切っていいくも膜か細い血管かがなかなか見分けがつかないのです。
つまり、
くも膜下出血後の脳へのアプローチは、出血がない状態より時間がかかるのです。
そこでこの、脳の前頭葉と側頭葉の間を指す シルビアンフィッシャー をきっちり分ける作業には、
それなりに30分から手間取ると1時間前後の時間がかかることが多いのですが、
このドラマの岡○は5分程度でこの操作を終了させました。
脳の一番深部にある脳底動脈まで到達するには、
より広くこのシルビアンフィッシャーを分ける必要があるので、これは神業です。
さらにそこから脳底動脈瘤を確認するまでが5分程度。
同様にこれもやはり早いです。
そして極め付けはそこから、
動脈瘤のクリップが出来ないと判断した後です。
アプローチをサブテンポラールに切り替えてから、
バイパスを行うのですが、このバイパスは脳の最も深部でのバイパスになります。
このミクロの術野で血管をつなぐ手技は、
最も上手な脳外科医でもやはり10分以上を要します。
通常の十分に練習を積んでいる脳外科医で20-30分というのが平均。
今回のような深部だともっと時間がかかるでしょう。
しかもいきなり縫い始める前に周囲の準備が必要ですので、
実際にはもっと時間がかかるものです。
しかし、岡○はこの辺りの手技をすべてトータル10分程度でやりきりました。
これはまさしく神速です。
「いくらドラマでもそりゃちょっと早すぎるでしょう、どう頑張っても全部で1時間はかかるよ」
というのが本音ですが、
まあ、そこは医○ですから良いとしましょう。
加えて、
動脈瘤の根っこが石灰化して硬化しているから、
「クリップをかけたら動脈瘤がふっとぶ!」
というような解説がドラマ中にありましたが、
実際には動脈瘤がちぎれるというようなことよりも、
硬いからクリップをしても閉じない、ということの方が多いはずです。
とまあ、
いろいろありましたが、それでも面白かったですね、このドラマ。
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