ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」


テーマ:
何回か創部感染について、書いています。

これまでは、
どういったことが創部感染のリスクになりうるのか?

ということと、
脳外科と創部感染について書いてきました。

創部感染がとても嫌なものだということは十分、
すでに伝わっているとは思います。

誰だって、手術の後に傷が膿んでしまって、
傷口が開いてしまったら気が気ではないですよね。

しかも、
痛みがあって、熱まであったら、

それだけで正気ではいられないと思います。

頭部の創部感染の場合は、
最悪、頭蓋骨まで見えてしまったり、

骨を固定している金属プレートまで見えてしまうというような事も起こりえます。

想像すらしたくないことだろうと思います。

今回は、
患者さんにとってはものすごく辛いこの創部感染に対して、

我々がどう対応するのかを書きます。

実際に創部感染を抱えている方などの参考になればと思います。

さて、
対処法ですが、

大きく分けると二つしかありません。

それは、

「抗生剤治療」



「外科的治療」

の二つです。

外科的治療というのは、
感染のある組織を除去することですね。

これには手術によって直接、感染組織を除去する方法と、
チューブなどを入れて感染のある膿や浸出液を排出するドレナージという方法が含まれます。

これらを併用したり、使い分けたりして治療を行います。

まず、
全例に行うのは抗生剤治療です。

軽い感染創であればこの抗生剤だけでも良くなる事があります。

しかし、抗生剤だけで良くするためには、条件があります。

それは、
感染物の「たまり」がないということです。

以前にも死腔という言葉を紹介しましたが、
抗生剤が効くためには血流がある必要があります。

血流のない、
たとえば膿のたまりや、血腫、壊死組織などには血流がありませんから、

そもそも抗生剤が届きません。

なので、
こういった「たまり」がある場合には抗生剤だけでの治療というのは、
理論上難しいということになります。

この「たまり」を取り除くには、
物理的にアプローチを組み合わせるしかありません。

それこそが、
外科的な治療なんです。

汚染組織の切除であったり、切開排膿、ドレナージ、どれも「たまり」を除去するための方法です。

外科的に傷を開いて汚染組織を除去するというのが一番大掛かりですね。

傷を改めて一部開いて、膿だけだしてしまうというのは、
簡単な処置です。

この場合、中にチューブを置いてくる事で、
「たまり」の排出ルートを作ってあげられます。

こうやってチューブによって排膿することをドレナージといいます。

実際に、
抗生剤とドレナージを併用して排膿することで、

ある程度までの創部感染は良くなります。
ドレナージさえ行えれば、そもそも抗生剤さえ必要ないとする考え方もあります。

たとえば、

チューブをいれなくても、あえて傷を開いたままにしておいて、
毎日膿を排出させつつ、

傷が盛り上がってくるのを待つ形でも傷は治ります。

感染のある汚い膿がどんどんと外に出されさえすれば、
人間の体は自然と傷を埋めるように治っていくんです。

ただ、
この盛り上がるのを待つ形で治した場合は、

かなり時間がかかることと、やはり傷の痕は強く残ってしまいます。

それでも、お腹の傷の感染などでは、
こういったドレナージの方法だけで対処できることが多いように思います。

しかし、
脳外科の創部感染の場合はもうちょっと複雑です。

お腹の傷などと比べて、
大掛かりな全身麻酔の手術が必要となってしまうことが多いんです。

その理由は、
人工物と、骨弁です。

前回の記事で書いたとおりですね。

これらは血流がない物体なので、
菌が巣食ってしまった場合は、もう摘出するしかないのです。

抗生剤は効きません。

なので、創部感染が人工物や骨弁に波及している場合は、

これらを全て取り除かなければいけません。

そのためには再び、元の手術と同じように傷を開く必要があるので、
全身麻酔をしての手術が必要なんですね。

せっかく、
元の位置に固定しなおした骨弁と、固定のためのプレートを全部取り除くのです。

そうしたら、
骨もなくなっちゃうし、どうするんだ??

と思われるかもしれません。。

しかし、感染がこれらを原因としている場合は、
取り除くしか方法がないのです。

抗生剤とドレナージだけで型がつくのは、
これらに感染が巣食っていない、比較的軽症の場合なのです。

とりあえずはこれらの感染物を全て除去して、
傷をとじ、感染が無くなるのを待ちます。

そしてその後、
頭蓋骨をもとの形に戻すための手術を再度行うのです。

これを頭蓋形成術といいます。

次回は、
感染による骨弁除去後の、この頭蓋形成について書きます。


読んだらクリックしてね↓


このブログの順位がわかります↓


人気ブログランキングへ


当ブログが電子書籍と紙の書籍で書籍化されています。

オンラインでの注文は↓から。是非読んでみてください。




電子書籍↓


サクッと読める!「脳」の話/名月論



¥300円

Amazon.co.jp


紙の書籍↓

誰も教えてくれない脳と医療の話 脳神経外科の現場から/名月 論

¥1,365 Amazon.co.jp
誰も教えてくれない脳と医療の話

¥1,365

楽天


読んだらクリックしてね↓


このブログの順位がわかります↓


人気ブログランキングへ

いいね!した人  |  コメント(4)
PR

[PR]気になるキーワード