下垂体の話を年末に書いていたのですが、
いつのまにか年をまたいでしまいました。
なので、とりあえずは前の予告どおり、
下垂体卒中の話を書いてしまおうと思いました。
といっても下垂体卒中なんてかなりマニアックなテーマなので、
興味がある人はそうたくさんはいないように思いますけれど。
下垂体卒中ってなんなのか?
というと、
下垂体卒中とは、
簡単に言えば下垂体の腫瘍が出血や梗塞を起こす病気です。
下垂体腫瘍の合併症なんですね。
主に問題になるのは出血の方になります。
下垂体は脳の底の真ん中近くに存在して、
周囲には重要な物があります。
なので下垂体卒中が起こるとそういった周囲の物に障害を起こすのです。
前回、
この下垂体の近くには視神経があるという話を書きました。
だから、
下垂体の腫瘍が大きくなると視野の障害が起こります。
なので、
下垂体卒中が起こって出血が起きた際には急激に目が見えなくなってしまったりします。
いきなり半盲になってしまったり失明したりするんです。
恐ろしいですよね。
他に特徴的な症状が、
激烈な頭痛です。
これは症状としてはクモ膜下出血と似ていますよね。
ときに大量出血が起きると、
実際に下垂体卒中による出血がクモ膜下に広がってクモ膜下出血となることもあります。
他には眼球を動かす動眼神経の麻痺による、
眼球運動障害が出たりします。
眼が急に動かなくなってしまうんですね。
こういったいろいろな症状が急に出てきます。
これまでの症状をまとめると、
頭痛、半盲や失明、眼球運動障害 の三つが現れます。
こんな症状が急に出ると考えると、
やはり相当に恐ろしい病気ですよね。
特に下垂体腫瘍が見つかっていない状態だと、
この下垂体卒中で発症することになるので、ショックはすさまじいものがあります。
あと、他にどういう症状があるかというと、
以前に書いたように下垂体はホルモンの分泌基地なので、
成長ホルモンなどの前葉ホルモンの分泌低下が起きてしまいます。
ホルモン分泌低下による症状はこの下垂体シリーズの前の記事で書きましたが、
本当に様々な症状をきたします。
なので、この下垂体卒中の症状は無数におきうるのです。
それでは、
この下垂体卒中はどれくらいの頻度で起きるのでしょうか?
全下垂体腺腫のうち、下垂体卒中の頻度は報告によって、かなりまちまちです。
どちらかというと、
急激な症状で発症するものはむしろ少なく、
手術でとってみると出血もしていた、というような無症候性のものが多いようです。
問題になるのは急激な症状で発症するものですが、
こうした急性発症のもののみを下垂体卒中としてカウントしたとしても
頻度は全下垂体腺腫中の1%を切るとするものから10%弱とするものまでまちまちです。
1%以下であれば、大したことないですけれど、
下垂体腺腫の10%弱も出血が起きるのだとすると、かなり高頻度ですよね。
実際にはそんなに高い頻度ではないような印象はあります。
さて、
急性発症となると劇的に症状を起こす下垂体卒中ですが、
治療はできるのでしょうか?
視野や眼球運動などは元に戻るのでしょうか?
答えは、
治療によって大抵は治ります。
眼球運動障害はほぼ9割以上のケースで治るという報告がありますし、
視野に関しても9割近いケースで治療が奏功します。
下垂体卒中はそういう意味では治療できる病気なんですね。
以前に脳出血は治療は出来ても、
それによって麻痺などが改善することはあまり期待できないと書きましたが、
下垂体卒中は違うんです。
実際に治療はなにをするのか?
という話に関してはこのシリーズの次回に続きます。
下垂体の病気に興味がある方は引き続きお願します。
ただ、
次回はちょっと他の記事を書こうかとも思っています。
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