2011-11-27

自分を動かすのが一番難しい/落合博満・『采配』

テーマ:ダイアローグ@story

ずば抜けたスター選手がいるわけでもない中日球団を4度のリーグ優勝に導き、プロ野球の歴史に新たな頁を切り開いた落合が、先日ユニホームを脱いだ。
プロ野球に特別な感情があるわけでもないのに、なぜかとても寂しい出来事だった。


その理由は彼の著書との出会いにある。

約10年前、解説者時代に著した『コーチング~言葉と信念の魔術』という本を読んだ。



ダイアローグ・ドキュメント


その内容は、選手時代の厳しい鍛錬の経験を生かして、解説者の傍ら、各球団のワンポイントコーチ等を行った経験とノウハウを紹介したものだった。
「押し付けをしない」、「個々の選手の個性を生かす」、「選手が自分で考えて成長する」といった、今のマネジメントにつながるエッセンスは、ほとんどこの本に書かれていたように記憶する。


その思想は、とても従来のプロ野球指導者(※それどころか一般の野球指導者も含めて)とは思えない、清新なものだった。しかも、落合は野球をビジネスライクに進めるということを強く意識していて、自分の仕事との共通性も感じたものだ。
ビジネスライクというのは、何も「儲け主義」という意味ではない。人と組織が長期的な利益を実現するように全力を尽くすという意味だ。そこから、落合の指導理念は、人材育成の方法を極めて強く意識するものになっていた。


さて、日本シリーズを終え、まさに監督業としての有終の美を飾ったこともあり、彼の新刊・『采配』(ダイヤモンド刊)が、現在書店の店頭に山積みになっている。ネットで購入し、早速読んでみた。



ダイアローグ・ドキュメント


まず「落合流」の基本は、目標を持って生きようとする限りは、自分をごまかさずに常に全力を尽くすべきだという、厳しさにある。


 -「嫌われている」「相性が合わない」は、逃げ道である
 -「体技心」(※「心技体」ではなく)……、技術を持っている人間は心を病まない
 -「ひとりで居られること」と孤独とは、まったく意味が違う。孤独に勝たなければ、勝負には勝てない。
 -「気持ちを切り替える」…、考える力のない人の方便である。今日の戦いに全力を尽くさなければ、明日は来ない。


さらに、その「厳しさ」は、勝ち抜き、生き残るためのノウハウにつながっていく。


 -「今一番大事なことは何か」を見誤るな!
 -高い実績を残した者だけが、自分の引き際を自分で決めることができる。
 -若手諸君、成長したけりゃ結婚しよう!
  ※スランプ等困難な状況に直面したときに、心を許しあえる「つながり」が必ず必要との意味。


その一流選手としての勝ち残りのノウハウを、指導とマネジメントの方法に応用しているところが、落合の稀有なところだ。


 -勝負に絶対はない。しかし、最善の策を講じていけば、次に勝つ道筋が見える。
 -自分にない色(能力)を使う勇気が、絵の完成度を高めてくれる。
 -チームリーダーという存在によって、競争心や自立心が奪われていくことは、組織においてはリスク以外の何者でもない。
 -「(コーチ陣に対して)どんなに遅くなっても、練習している選手より先に帰るなよ」
 -組織を預かる者の真価は、大敗を喫した次の戦いに問われる。
 -注意しなければ気づかないような小さなものでも、「手抜き」を放置するとチームには致命的な穴があく。


そのマネジメントの中で最も中核となるのが、技術の指導ではなく、もっと長期的な人材育成への考え方だ。


 -仕事の進め方には、「絶対的な基本」がある。しかし、「絶対的な方法論」はない。
 一流には自力でなれるが、超一流には協力者が必要
 -人材の育成は守るべき順番を守り、必要な時間はかけなければならない。


最後に、そうした一見「ノウハウ」(要するに、方法論)と思えることの底流に、落合氏なりの温かみが貫かれているところに、読む者は感銘せずにはいられない。

そして、その温かさの根拠とは、大学中退、東芝府中への工員としての就職という不遇な若い時代から、選手、解説者、監督という栄光の時代に至るまで、自分自身を真摯に振り返り見つめ続ける生き方の姿勢にあることを

知らされる。


 -「できない人の気持ち」は、若い頃の私自身の気持ちそのものである。


 -人や組織を動かすこと以上に、実は自分自身を動かすことが難しい。



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コメント

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2 ■katouさん

この本の中に、長嶋が監督としてうまくいかなかった理由が解説してあるのですが、それは「彼はペナントレース全部勝つつもりで試合をやっていた」からなのだそうです。
たしかに、これでは「兵隊」は疲弊し、スターリングラードのドイツ軍になりそうですよね。会社なら数年で倒産でしょうか。

1 ■無題

一流選手は一流監督になれない、なんてのをまことしやかに言われている時代がありましたが、落合さんはそれを見事に実現しました。
貴ブログを読んで、野球と業務って似てると思いました

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