2011-11-09

日本企業の暗さ/オリンパス問題の衝撃と謎

テーマ:ダイアローグ@society

この一月ほどマスコミを賑してきたオリンパス問題は、昨日社長が会見し、案の定過去の「飛ばし」損失に関わる1000億円以上の大規模な粉飾決算問題に発展した。
詳細が徐々に明らかになるにつれ、日本企業に共通する土壌を思い暗鬱な気分になるのは、自分だけだろうか。


昨年何度か、八王子地区に点在するその研究開発拠点の一つを訪れたことがある。
さほど大きなサイトではないが、洗練されたデザインの建築が、周囲の森林と溶け合わさるように存在するのが印象的だ。エントランスフロアーはガラス張り、床は白亜のタイル敷きでとても明るい。正面の大きなガラス面から見通せる木々が、多摩川から吹いてくる風にそよいでいた。
オリンパス社は、今や単なるカメラメーカーではない。内視鏡検査装置で世界シェアの70%を誇る、押しも押されぬ世界的な医療機器メーカーなのだ。


マーケットで問題になっている「飛ばし」自体は、旧態依然とした、いわば聞き飽きた古い問題だ。
しかし、その問題を取り巻く構図は、かなり複雑だ。



■ガバナンスはなぜ機能しないか


この問題がなぜここまで急速に明らかになっていったか。
その直接の理由は、先月突如解任されたウッドフォード前社長が、巨額資金の不正支出問題をマスコミに告発したからだ。
ウッドフォード氏は、今年4月に、事件のもう一人の主役菊川前社長(会長)に指名されて、社長に就いたばかりだった。
社長とは、そんなに簡単に解任できるものなのか?
結論から言えば、できる。
社長は、要は社内的な役職(ポジション)に過ぎないため、重役といえども取締役会決議によって解任できるのだ。しかも、今回オリンパス社では、全会一致で決議されたという。要するに、全ての取締役は、「天皇」とも言われた菊川氏の言いなりに過ぎないのだった。
一方、社長は解任できるものの、取締役は解任できない。
取締役とは、株主総会決議によって直接選解任されるものなので、取締役会の権限だけでその地位を奪うことはできない。現にオリンパスのWEBサイトには、現在でもウッドフォード氏の名前が取締役名簿に連ねられている。


90年代以降のグローバル化の中で、コーポレートガバナンス(企業統治及び経営監視)の体制は様々な形で強化されてきた.。とりわけ、日本企業はソニーに代表されるように、多くの会社がアメリカ型の経営組織形態を導入

してきている。
その典型的モデルが、執行役員制の導入による「経営監視」と「業務執行」の分離である。オリンパス社でも執行役員制が導入されている。それに加えて、さらに監視を強化する意味で、2名の社外監査役も選任している。


ところが、公表されている情報によれば、「飛ばし」損失隠しによる粉飾や、その穴埋め操作としてのM&Aを通じた不正資金支出を、前社長(兼会長)の菊川、前副社長の森、常勤監査役の山田の3名以外には、だれも知らなかったそうだ。(果たしてそんなことかできるのか、大いに疑問だが)
ウッドフォード社長時代には、当然副社長はその部下なので、彼は森副社長に対して資金の使途等を追求した。

そうすると、森氏は黙り込んで何も言おうとしなかったという。激怒したウッドフォード氏は、「君は一体だれのために働いているのか?」と叱責したそうだ。彼は平然と、「私は菊川さんのために働いている」と答えたらしい。


要するに、絶対的権力を握る菊川、それに忠誠を誓う古参の部下。この狭い人間関係を、どのような先進的なガバナンス体制も突き崩すことはできない。そのことを、今回の事件は端的に教えている。


経済は、どこまで近代化されても、結局は生きるか死ぬかの問題だ。
その生死を決する最終的な決断には、必ず暴力的な要素が絡みつく。きれいごとだけでは済まされないのだ。
日本企業の組織風土は、一見諸外国に比べて温和なだけに、その「暴力性」は一層陰湿な暗いイメージに包まれる。
誰もが見て見ぬふりをする。殊更に話題にはしない。できればそれなしで済ませたいと本心で思っている。
しかし、多くの人々がそこから逃げている限り、暴力性は水面下に蔓延り、拡大し続けるというのも、また世の真実なのだ。



■菊川前社長への評価


さて、菊川前社長、マスコミではすっかり悪者扱いされているが、どう評価すべきだろうか。
もちろん、今回の1件でマーケットのオリンパス評価はがた落ちで、株価はすでに1ヶ月前の3分の1以下に下がっている。そのため、技術力を持つ優良企業である同社は、海外ファンド等に狙い撃ち買収されかねない状況にも直面している。


ただ、菊川氏への経営者としての評価は、マーケットでは高い。
何せ稼ぎ頭である内視鏡ビジネスをテクオフさせたのは、彼の手腕による。それがなければ、他の多くのカメラーメーカーと同列の1社に過ぎなかっただろう。それを今では、年商1兆円にも近づく大企業に育て上げた。
では、ガバナンスや人材活用の面ではどうなのか?
言うまでもなく、粉飾に手を染めたのはもってのほかだ。ただ、その発端は20年以上前の財テクの失敗にあり、直接の責任が彼にあるかどうかは分からない。
さらには、何のしがらみもないウッドフォード氏を社長に登用し、短期間だったとはいえ社内改革を彼に託していた。自分が「天皇」として君臨し、まともに物を言える人間が誰一人いない状況は一流企業としてよくない、という潜在的な想いが菊川氏にはあったのではないだろうか。それが図らずも自らに火の粉が降りかかる結果を招いたのだが、ウッドフォード氏が社長にならなければ、今回の件はまだ長い期間埋もれたままだったかもしれないのだ。その意味では、菊川氏は、事件発覚の間接的な功労者といえなくもない。


もし可能なら、今後の日本の経営者のためにも、そしてビジネスに携わる多くの者のためにも、自分が経験したこと(=なぜそうせざるを得なかったか?)をいつか率直に語って欲しいものだ。



■残る謎


ところで、当の還流資金の行方のカギを握る、米投資アドバイザリー会社の社長は、現在行方不明なのだとういう。野村証言~ウォール街出身のこの社長は、何でもヨット6隻を保有し、太西洋横断のヨットレースにも参加するほどの腕の持ち主らしい。
オリンパス社にだれが今回の不正資金捻出の手法をアドバイスし、実際にどのように資金が流れたか、未だ全く分かっていない。捜査には、すでに米FBIが動いていて、極めて物々しい。




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コメント

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2 ■katouさん

事件の全容は、まだまだ分からないですね。また、この件はいわゆるグローバル化でもある「時価会計」への対応の中であぶりだされたことなので、同種の問題は多くの大手企業にあるでしょうね。もっとも、上場していないT社は、比較的安全ですか(笑

1 ■無題

この事件の全容を知りませんが、
企業では このような犯罪が明らかになることはあっても、政治の世界はどうなんだろうと思ってしまいます。
そして自分の会社だけは(根拠なく)そんなことないだろうなぁとも思います

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