2011-04-03

継続する危機、見えてくる問題/福島原発の現在

テーマ:ダイアローグ@society

「福島危機」はここへ来て、原子炉よりも先に電力会社そのものが崩壊するのではないかという、笑えない状況になってきた。
東電の株価は連日暴落をつづけ、すでに先月末にはメガバンク3行から1兆9千億円もの緊急融資を受けている。それでも今後の資金繰りに問題が生じる恐れがあるため、政府は公的資金の投入を決断した模様だ。


現在、基準の何千倍にも達する「汚染水」の流出とその対策が問題になっている。
消防による放水といい、電源の回復作業といい、ひとつ防いではまたひとつ危機が生まれる。福島原発の危機対応は、完全に後追いの「いたちごっこサイクル」にはまってしまっているように見える。
たしかなのは、そうしている間に時間がどんどん過ぎて、危機のレベルが深刻になっているということだ。



■現場に行かないだけでなく、現場を知らなかった経営陣


福島第一原発で危機対応に当たる何百人という作業員達(そのほとんどは東電本体ではなく、関連会社の従業員)は、半ば不眠不休で、しかも非常食を中心とした一日2食での生活を余儀なくされているという。また、心配する家族との連絡もとれない状態らしい。
すでに避難勧告が出された原発近隣には宿泊施設もないので、休む場所もない。たまたま50㌔ほど離れた茨城県の港に停泊していた海洋練習船が、原発従業員達に宿泊場所と食事・入浴を提供したらしい。世話役の航海士の証言では、彼らは温かい食事と入浴に対して、涙を流して感謝していたという。

東電の社長は1度本社で記者会見をしただけで、現場を視察することもないまま、体調を崩して入院しているという。そのため代わって記者会見を開いた勝俣会長 は、「そのようなところ(※社員達が非常食2食の悲惨な生活を余儀なくされている状況)にまで配慮する余裕がなかった」と発言した。

これまで、これほどの危機的状況に対して、なぜ東電経営トップは現場で先頭に立って指揮しないのかと、強い疑問を抱いてきた。
すでにこの危機は、「原発の技術的なことはわからないから…」というような言い訳で済ませられるようなレベル

ではないはずだ。トップが陣頭指揮しないから、危機対応に必要な体制が依然として作れない、正確な情報集約もできず政府他との協力体制も築けないという、悪循環に陥っていることは明らかだろう。


■「利益を追求しない企業」の弱さ


「原子力発電のような危ない事業を今後も民間会社に任せておいていいのか」という議論が、徐々に生まれてきている。
一方で、日本の電力会社はそもそも「民間企業」と言えるのだろうかという根本的疑問がある。
なぜなら、電力事業への参入が進められているとはいえ、現在でも電力会社は地域独占企業だ。特定地域への広範な電力供給は、関東地方であれば東電にしかできない。
その事業の最大の特徴は、一般の民間企業が行うような利益追求をしなくてもよい、という点にある。利益が足り

なかったら電力料金の値上げを申請すればよい。また、「商品の供給」、つまり電力が足りなければ、多額の広告費を投入して節電を呼びかければいい。それでもだめなら、今回のように「計画停電」を平然と実施することもできる。

およそ、このようなことができる企業は独占企業以外にはありえない。例えばトヨタやパナソニックのように、ど

んなに有力な大企業であっても、これと同じことを行えば、市場の信頼を失ってほぼ間違いなく倒産するだろう。
ところが、電力会社だけは(正確にはガス会社も)、少なくともこれまではびくともしなかった。


もっとも、これにはたしかに良い面もあり、例えばカリフォルニアでかつて起こったような、多数の電力会社が個

別の利益追求に走った結果電力供給が足りなくなって大規模停電に至るというようなことは、少なくとも日本では

起こっていない。


ただそれ以上に、「地域独占体制」は、企業組織を深刻な形で蝕んでいることが、今回の危機からも分かる。
その象徴とも言えるのが、極端な「内向き体質」だ。
一般企業のように「利益追求」という最大の目標がないので、何を考え何を行えばよいかという行動基準が極めて曖昧なのだ。そのような状態に置かれると、人はそれぞれ個人的な目標(例えば、仕事のやりがいとか…)を持つか、企業活動とは本来関係のない別の共通目標を持つようになる。
「別の目標」がより崇高なものであればよいが、人間社会、大抵の場合そんなにうまい話にはならない。保身、体

面の維持、「上」への極端な気遣い、学歴・学閥主義、手続き・慣例の重視、情報の隠蔽・改ざん……ということ

に大体は流れていくものだ。
東電で今起こっていることは、電力会社もその例外ではなかったということの、何度目かの証明にすぎないのかもしれない。


  白河の 清きに魚の 住みかねて 元の濁りの 田沼恋しき


一見「濁り」(=利益追求、競争…)と見えたものの方が、実は意外にきれいでしかも人間によく馴染んでいて、「清い」(=公益追求、安全安心…)と思い込んでいたその底にはどす黒い汚れが堆積していたというのは、いつの世にもよくあることと言うべきか。


■なぜもっと多くの要員を投入しないのか?


「福島50」というような、戦い続ける現場作業員を讃える言葉が生まれてくる、それはそれで大切なことだろう。

ただ、50名とか数百名といったレベルでこの危機を乗り切ることができないのはすでに明らかだろう。


例えば、最近いやというくらい耳にする「○○ミリシーベルト」という放射線量の測定単位。これはより正確には

、「○○ミリシーベルト/時間」というように、時間単位での放射線レベルを表している。だから、現場作業員は

胸にあたかもカラータイマーのような測定器を装着し、許容放射線レベルを上回らないよう管理しながら作業を進める。限界放射線レベルに達すれば、当然要員の交替が必要になる。
つまり、作業要員は一時に必要な人数の何倍も必要なのであり、さらに一定の期間の中では繰り返し交替が必要なわけだ。それを考えれば、ロジスティクス面も含めて、何千名、何万名という要員投入があっても決して多すぎることはないはずだ。


■「あなた方しかいない!」でいいのか?


菅首相は、危機発生直後に東電幹部を前に、「あなた方しかいない! 撤退は許さない」と怒鳴ったという。
しかし、この一言こそが、民主党政府の統治能力の決定的欠如を如実に示しているのではないか。
一国のリーダーであれば、「最早あなた方には任せておけない! 私が自らやる!」というべきだったのだ。
「チェルノブイリ級」に近づくこの福島危機の打開には、すでに国家の総力と決死の覚悟が求められている。
当然「軍」を中心にした強力な指揮系統による対応を、政府と国家の命運を賭けて遂行すべきだろう。
その上で、危機対応に必要な盤石の組織を築き、潤沢な要員を継続的に投入できる体制を早急に作り上げるべきだ。


■長期的に最も深刻なエネルギー問題


「原発反対」を唱える人々や政治勢力は昔から存在した。
今回の福島危機によって長期的に最も懸念されるのは、そうした勢力が増すだけでなく、原子力発電によるエネルギー供給が立ち行かなくなってしまうことだ。


「原発は危ない」、こんなことは小学生でも分かっている。
それなら逆に、夏にも冬にもエアコンを一切使わず、高層ビルでもエレベーターを使わず、電車にも乗らないで生活できるのか。さらには、万が一仮にそれができたとして、そのとき今でもデフレと少子化に悩む日本経済の状況は一体どうなるのか。国民はそのような縮小経済の悲惨な生活レベルに堪えられるのか。
少なくとも原発反対を唱える勢力からは、こうした疑問への回答は一切提示されない。


資本主義経済を持続させるかぎり、原発抜きでのエネルギー政策は不可能なのだ。
原発に次ぐ電力供給を賄う(※東電管内の場合)火力発電。その大半の燃料を賄う石油とLNGは、現状の消費を続ける限り、およそ30年で枯渇するというのが定説だ。
また、一部エコロジストが唱えるような、風力や地熱によって代替エネルギーとするなどというのは全くの幻想、

もしくは「デマ」といってもよいほどの空理空論にすぎない。
要するに、原発は危険だがほぼ絶対に必要、この前提しか私たちの社会にはありえない。このことを、今回の福島危機を契機に、しっかりと見つめなおすしかない。


いずれにしても、福島第一原発が消滅するのはほぼ必定。東電管轄外である福島や新潟といった地方に原発を新設することもまずできない。

とすれば、最大の電力需要を発生させている首都東京に、次の原子力発電所を建設するのが、ごく自然な選択となるだろう。

資本主義経済を持続させるつもりなのなら。


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コメント

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2 ■katouさん

こんばんは。ジャカルタからのコメントと思うと、感慨が違いますね(笑)
今回の津波クラスに堪える補修は、容易ではないでしょうね。
この非常時に、自衛隊を中心にもっと要員を大量投入して欲しいのですが、なぜやらないんですかね。

1 ■無題

原発問題は、出口が見えないです
電力を復旧する前に、既存の原発に対し、今回の地震クラスに耐える改修工事を行うのが、急務でしょう。

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