巨大企業による農産物独占はありうるか? | あなたも農業コンサルタントになれる

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  わけではない / by 岡本信一

巨大企業による農産物独占はありうるか?


昨日のエントリーについて若干の誤解が生じているようなので、補足する意味で今日のエントリーを書いてみる。

まず、タイトルに対する答えはイエスである。

しかしながら、巨大企業が農業現場に参入するという意味は、なにも参入企業が農産物栽培するということだけではないということです。

以前書いたものとも重複するがもう一度書いておきます。

わたしが書いているのは、現在加工用の農産物が増え続けていて、それらは常に安定した量・品質を求められている。そういったことから考えると、必要量の調達のためには農家・農協の囲い込みが始まるという意味で書いている。簡単にいえば、流通の系列化が始まるということなのである。

よく考えてみると現在でもほとんどの農産物は、系列化されている。農家の方の供給先というのは、外食、スーパー、中食、加工などかなりのものが当初から販売先が決まっている半契約栽培的なものである。

現状、農産物流通の激変期のために様々な取り組みがなされているが、そのうち淘汰され大きな系列とそれ以外というようになるだろう。と予測しているということです。

その際、農家が立たされる立場というものが激変すると考えられるので、農家・農協など現場で生産する側は栽培技術を磨く必要があるということなのです。


現在となにが変わるのか。

一般的に現在は、契約栽培的なものでも一対一で価格交渉が行なわれています。これは流通量がさほど大きくなく、価格交渉が可能なためです。しかし、普通に考えて契約栽培的なものは、価格はどんどん固定化してゆくでしょう。

取引量が莫大になればなるほどそうなるということです。

農家サイドから価格交渉を出来る余地が小さくなる可能性が高いのです。

その際、どうしても販売して欲しい農家であったり、ある程度の量(現在、価格交渉が出来る場合、この量を持っているということが最重要)を持っていたりすれば、価格交渉権をもつことができるわけです。


さて、もう一度どのように農産物流通が変化するのか、予測を書いてみます。

現在、市場流通から直接取引への過度期です。卸売市場の流通量は毎年劇的に減っており、市場は形骸化しつつあります。市場流通を担ってきた各社は、川下と川上の間に入って、やり繰りしていますが限界が近づきつつあり、従来のようなゆるいやり方では調達が難しくなってきている。

即ち、きっちりと産地を囲い込む必要が出てきているわけです。大口需要家がきっちり産地を抑えるようなことが起きると、他の各社も調達に支障をきたすようになるため同じように産地をもっと強固に抑える必要が出てくる。

大口需要家数社が産地をきっちりと固めてしまえば、小さい需要家は更に調達に支障をきたすようになります。

これがわたしのいう系列化です。

現在も系列化は行なわれていますが、まだゆるやかなもので中間で流通を担っている業者が融通しあうことで成り立っていますが、その限界が近づきつつあるのです。

その系列化の中で最も強力なのは、需要家が直接農産物を栽培するということですが、それは主流にはなりません。しかし、一部の需要を満たすことができれば一般に流通する量が減り、需給が逼迫するわけです。

周りの業者も囲い込みに向わなければならなくなり系列化が進む理由です。


そのように系列化が強まると、需要者=流通業者=生産のそれぞれの皆さんがハッピーになるための方法はわかっています。耕起から始まって、消費者の口に入るまでの流れを一貫して最適化することです。

現在、需要者=流通業者=生産の間は、狐と狸の騙し合いではないですが、販売する側はいかに悪いものと高く売るか、購入する側は良い物を安く買うか、と言う交渉を行っているに過ぎません。しかし、系列化が強まった時に必要なことはお互いがメリットがあるような取引、生産を連携して行えるかにかかってくるわけです。

現状ではお互いが騙し合うような取引も多いわけですが、取引に参加する人たち全員がハッピーになれるような形を作ったところが今後巨大化することになるでしょう。

そのために生産サイドは、どのようなオーダーにも応えることができるような栽培技術があれば、何処とでも組むことが可能になるわけです。


実はイメージ的にこのようなことはこれまでも行なわれてきたわけですが、需要者側の企業が農業現場に入り込んできたことで、現場の問題が理解されつつあるわけです。現場の問題点とはなにか。

ズバリいうと、栽培技術が非常に遅れている、という点です。

需要者側が入り込んでくるまでは、この問題は顕在化していませんでした。天気が悪ければ取れないのはアタリマエのことである、と思い込んでいたわけです。

現在、需要者側の栽培における興味は、ハイテク(植物工場やITの活用など)に向かっていますが、いずれ普通の露地野菜の分野の問題点にも気づくでしょう。

先日書いた、ほ場内が均一でない問題、施肥が不適切な問題、土壌の良し悪しが本当はわかっていない問題、などなどわたしが指摘できるくらいですから、外部から入り込んできた企業が気づかないはずがありません(というか、わたしが指摘しています(笑))。

そのようなことに気付いた企業は、なにをするでしょうか?

自らが栽培をしたほうが良いと思うのか、それとも栽培技術指導を行いながら、農産物を購入するということでしょうか。どちらとも言えませんが、農家の栽培技術が企業よりも劣るようでは話しにならないのは明白です。

そのために農家は栽培技術を磨くことが必須である。と考えているわけです。


わたしの予想があてになるかどうかはともかく、農家が栽培技術を磨き現状を打破しなければならないのは明らかです。

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