とがった僕とまるい君と

テーマ:
今夜も満月が遊びにきている。
彼女はいつものようにゆったり。
僕はかりかり。明日病院の検査の結果がわかるのだ。
「何とかなるわよ」
と満月。
「何ともならない!」
とぼく。
「病院なんて嫌いだ!検査、検査で薬ばっかり出して」
「まあまあ」
と満月。
「何とかなるわよ」「まあまあ」「心配しないで」
この三つが満月の口ぐせ。
「じゃあ、君がかわりに行ってくれるかい?」
「あたしはお月様だから。お月様が病院に行くとみんなびっくりするでしょう」
満月が真剣な顔で言ったので、思わず吹き出してしまう。
「そりゃあ、そうだ。お月様を診てくれる先生なんていないし。満月は病気にならないの?」
たずねてみると、
「たまにはなるわ。でも何とかなるわよ」
「何とかなる、本当に?」
「うん。三日月の時に、とがった所が欠けたことがあって、ちょっと焦ったけど、流れ星が見つけてくれた」
「痛くなかった?」
「痛かったよ。わんわん泣いちゃった」
それを聞くと、ぼくはちょっと安心した。「何とかなるわよ」の満月でも泣くことがあるんだ。
胸の中のしこりがふわっと軽くなる。
「検査の結果が悪かったら、ぼくも泣くよ」そう言ってみると
「うん、それがいいわ」と満月。続けて、
「しんは見栄っ張りだから。悲しい時にはとことん悲しむのが一番。心配しないで」
心配がなくなったわけではないが、ぼくはベッドに横になった。満月は口笛を吹きはじめた。
サティーのジムノペティー。ちょっと音程がはずれているけど、それが満月らしい。
ぼくが眠りに落ちる寸前、満月はまだ星が光る明けがたの空へ帰っていった。
AD

トントントントン

窓を叩く音。

夢から起こされ

不機嫌な顔で外を見ると、

あっかんべエーをしたお月様が、 空に逃走中。 

ひどいじゃないですか、ぼくがさけぶと 

おなかかが出てるから寝冷えするよ 

とお月様。

見ると確かにおへそが顔を出している。

ありがとうございました。
お月様にお辞儀。

お月様の笑い声が 

うすい銀色のかけらになって

空から落ちてきた。
 

AD

実はぼくも火星人です

テーマ:
とある
パーティ会場
無理やり
友達に
連れられて
ぼんやり
ウーロン茶を
飲んでいると
たれ目で
色白の
男性が
やって来て
実は
わたしは
火星人です
という
はあ
うなずくと
にっこり笑って
鋭い犬歯を
みせつつ
この地球の
生きにくい
ことと
いったら!
見栄や

ごまかし
ばっかり
人を人とも
思わず
人を
蹴飛ばさないと
生きていけず
まあまあ
とぼくは
つぶやくが
男は
まくし立て
ついには
ぼろぼろ
なみだを
こぼし
地球にも
いいとこ
ありますよ
と言おうとした
ぼくは
それを
ぐっと
飲み込み
実はぼくも
火星人
ですと
言ってしまったら
男は
ぼくの手を
握り締め
おいおい
と男泣きで
ぼくは
苦笑いしたまま
立ちつくす
ばかり

AD

イルカと眠る3

テーマ:
眠れない
振られたせいだ
付き合っていた子に
ぐず
と言われた
くず
かもしれない
と思ったりもする
ぼくは
人に愛されたこと
がない
両親の愛は
条件付
いい子だったら
愛してくれた
そんなことを
考えながら
寝返りを
うった時
となりに
イルカが
こんばんは
おだやかな
イルカのあいさつ
振られた
ぶっきらぼうに
いってみる
あらあら
軽い調子の声
だけど
イルカの声
はやわかい
ふわっと
ぼくを包む
ちょっと目を
閉じて
とイルカ
力を抜いて
一瞬ごおっと
風の音
目を開けると
ぼくは縁側
むかしの
ばあちゃんの家の
縁側
ばあちゃんに
抱かれたぼく
泣くぼく
ばあちゃんは
日向くさい匂い
がする
よしよし
よしよし
ばあちゃん
がいってる
大人のぼくも
泣く
泣きわめく
胸の中の
黒い固まりが
少しずつ
少しずつ
小さくなる
そのまま眠った
起きたらイルカは
いなかった
早くに死んだ祖母
を思い出す
かすかに
潮の匂いがした

































































とがった僕ととまるい君と 3

テーマ:
コンコンと
窓をたたく音
机の上で
眠っていた僕は
はっと目を覚ます
満月が
窓の外にいた
開けると
すうっと
入って来た
こんばんは
声に張りがない
ちょっと
青ざめている
こんばんは
僕が
言い終わったとたん
満月が
泣き出した
声をころして
静かに泣いている
まるの上半分が
ふるえている
そして
青いなみだが
ぼろぼろ
僕は
おろおろ
泣いた満月
なんて
見たことがない
心配しないで
満月みたいに
言うこと
なんかできない
ぼくは
とがっているから
トゲだらけだから
でも
満月のなみだで
トゲの一本ぐらいは
ぬけたような
ふうっと
体が動いて
満月を
抱きしめた
何もいえないから
これしか
できなかった
ぎこちなく
照れくさい
気持ち
なんだか
僕も
悲しくなって
なみだが
じんわり
そのままで
ずっといて
僕はまた
眠ってしまった
目を覚ますと
ノートに
満月のまるい字で
ありがと