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2007-02-17 14:50:23

「クーデンホーフ・カレルギー回想録 思想はヨーロッパを征服する」

テーマ:書籍_歴史・地理・世界情勢

今、ユーロが強いですね。(数年前にユーロをたくさん買っておけば・・・)


EU(欧州連合)の成長振りは、経済を中心とした、国家間の、

それぞれの国が独立自尊しながらのゆるやかで平和的な協力関係、

というものについて考えさせられます。


そのEUの母体となる運動を起こした人物は?


一人に絞ることはできないでしょうが、この人物無くしては、EUの歴史も変わっていたかも知れません。


それは、

リヒャルト・ニコラウス・栄次郎・クーデンホーフ=カレルギーRichard Nicolaus Eijiro Coudenhove-Kalergi )です。


彼は、第一次世界大戦後、29歳にして、「パン・ヨーロッパ(汎ヨーロッパ)」という書物を執筆し、ヨーロッパ連合を提唱します。


彼は、幼い頃から次のような強い信念を持ちます。


"国家間の永遠の仇敵関係は、結局のところ、

無知、先入観、および国民の欺瞞に基づくものである"


この言葉を私は強く支持したいです。


カレルギーは、パン・ヨーロッパ執筆後、理想を実現すべく、

国際的な政治の舞台で非常に精力的な活動をします。

当時の欧米各国の権力者・政治家達に積極的に、

パン・ヨーロッパの精神性と利益を説いて回るのです。


彼の理想は、第二次世界大戦を経た各国の反省から、

ようやく具体的に経済協力機構などという形で実現していきます。


その頃には直接的な活動なくとも、既に彼の理想の方向に向かっており、

また特定の国家に就いて政治家としての活動を行えなかった彼は、

現在では、必ずしもカレルギーの働き自体への歴史的評価は低いようです。

実際に私も、高校の世界史レベルで彼の名前を見たことがありませんでした。


しかし、クーデンホーフ・カレルギーの運動の歴史への貢献は、

ヨーロッパの有力政治家達に、平和的なヨーロッパ統合についての

理想を植え付け、現在のEUに至るまでの流れの中で、

精神的に大きな影響を与えた点といえるでしょう。



その点において、カレルギーの活動を、

現在の21世紀の世界へと視点を置き換えて、

再評価することは有意義だと思います。


彼は、ヨーロッパ統合を理想としましたが、現在であれば、当然ながら、

ヨーロッパやアジア、アメリカ・アフリカという枠組み、

それは同時に、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教・仏教といったような、

それぞれの民族の根幹をなす精神性すら、尊重しつつも超越した世界全体の平和の実現です。


それはユートピアかもしれません。
しかしこのカレルギー回想録の中で、カレルギー自身が、

パン・ヨーロッパはユートピアである、という非難に対して、こう応えています。

"1913年には、ポーランドもチェコスロバキアもユートピアであったが、1918年には現実になった。

1916年にはロシアにおける共産党の勝利はユートピアであったが、1917年には現実になった(・・・)

世界歴史は一連の脅威と実現されたユートピアから成っている。(・・・)

最初の数千人が数百万人を説得し、昨日のユートピアを明日の現実に変えさせるだけの信念の力と宣伝力とを持っているか否かにかかっているのである。"



カレルギーはさらにドイツ、イタリアの例を挙げ、

精神面でのアイデンティティの革命が、

可能であることを説きます。


ドイツやイタリアはかつては、「ドイツ国民」、「イタリア国民」という共同体の意識を持っていませんでした。

各都市が各王国として存在していたわけですね。(バイエルン王国、ザクセン王国など)


それが、例えばドイツの場合、ナポレオン支配への対抗から、

それまでの、バイエルン人、プロシャ人、ザクセン人といった意識から、


まず第一に「自分達がドイツ人」であり、

各王国の市民であることは二の次である、


という「心の革命」が起き、統一ドイツ帝国が誕生します。

(フィヒテの「ドイツ国民に告ぐ」などが心の革命を促しました。)

イタリアもほぼ同様です。



この心の革命を、21世紀に当てはめるならば、やはり国家や宗教や民族を超えた、

まず第一に「自分達が地球人」であり、各国家や宗教の違いは二の次である

と認識することだと思います。
スイス・インドなど多言語国家は既に実現しています。

ならば21世紀は、多文化がそれぞれ尊重された共同体を目指す時でしょう。


カレルギーは言います。

"ヨーロッパの諸民族は充分に苦難の道を歩んで来ました。

ヨーロッパの諸民族は充分過ぎるほど憎しみ合って来ました。

いまやこの苦難と憎悪に終止符を打つ時期、

すなわち和解と確信の時期が来たのであります。"

21世紀の今、ヨーロッパの諸民族、という言葉を、

世界の諸民族」と置き換えて、

和解について考える時期のはずです。




この本は、1958年のクーデンホーフ・カレルギー自身の自叙伝です。

(原題はEine Idee erobert Europa)

29歳で出版したパンヨーロッパから35年後の著作です。

自身の両親、生い立ちについてから、パンヨーロッパ思想の形成、

パンヨーロッパ執筆後の第二次世界大戦前後の世界各国の

首脳達との会談などがリアルに描かれます。

代表作パンヨーロッパより間違いなくこちらを読むべきだと思います。



さらに、この本を現在の日本人にお奨めする理由が2つあります。

母が日本人であり、カレルギー自身東京生まれである。

 (名前の一部の「栄次郎」で分かりますね。)

現在安倍晋三首相の掲げる「美しい国」及び愛国精神について道を誤らないように考察する。


①については、リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギーは、

オーストリアの駐日大使であった父ハインリヒ・クーデンホーフ=カレルギーが、

日本人女性青山ミツと結婚して、東京滞在中に産まれています。

母については、「クーデンホーフ光子」という名前で手記や小説化されたものが本になっています。

松本清張も「暗い血の旋舞」という小説にしています。

私は知りませんが、クーデンホーフ光子の生涯を描く吉永小百合主演のドラマもあるとか。

日本人として知っておくべきでしょう。


②について、カレルギーはこう警告しています。

"過激な愛国主義は半教養者の偏見に他ならない"

この言葉の意味、及び、

"国家間の永遠の仇敵関係は、結局のところ、

無知、先入観、および国民の欺瞞に基づくものである"

この言葉の意味を忘れずに、安倍首相の美しい国・愛国教育を眺める必要があると思います。



この「クーデンホーフ・カレルギー回想録」は、

一人の人間の自伝としてではなく、

第一次・第二次世界大戦を経て、ヨーロッパ統合へと向かっていく、

最も複雑で激動の数十年間を、その渦の中心にいた一人の人間の、

回想録という主観的な目を通して記録されたヨーロッパの生のドラマ

としても、とても興味深いです。


尚、日本でも、カレルギーの影響を受けて設立された団体がいくつかあるようです。

念のため一応書いておきますが、私はそれら団体とは無関係の一般民です。


クーデンホーフ・カレルギーに関しての面白い論文がpdfでネット上にあったのでリンクを貼っておきます。

大学の教授による、客観的で、単なるカレルギー崇拝でない、論文です。エピソードも面白いです。

→「欧州統合運動とクーデンホーフ・カレルギー」

残念ながら、クーデンホーフ・カレルギーの著作は現在ほとんど絶版で、

入手しにくいので、復刊を求めます。

同時に翻訳もやり直して頂きたいです。



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鹿島 守之助
クーデンホーフ・カレルギー回想録―思想はヨーロッパを征服する (1964年)



青山ミツこと、クーデンホーフ・ミツコ自身が子供のために残した手記です。

クーデンホーフ光子の手記

シュミット村木真寿美
クーデンホーフ光子の手記

↓クーデンホーフ・ミツコについて、松本清張も評伝を書いています。

暗い血の旋舞

松本 清張
両像・森鴎外 暗い血の旋舞


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コメント

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4 ■>舞莉亜さまへ

コメントありがとうございます。
レスが早くてびっくりしましたが、こちらも乗っかって、即レス対応してみようと思います。

香水については、リンク先に書いてある通り、今では、ゲラン社自身が宣伝のために、クーデンホーフ光子の影響の可能性もアピールしているみたいです。

あと、念のためですけど、「眼球譚」のバタイユは哲学者のジョルジュ・バタイユですよね。(私は「文学と悪」が長らく積ん読です・・)
ミツコの方は、クロード・ファーレルという作家の「ラ・バタイユ(英語で戦闘=ザ・バトル)」という作品の名前です。映画にもなっているみたいですけど私は知りません。

カルタコムは本当にありがとうございました!!
それと、舞莉亜さんに教えて頂いたベリーダンスのCD購入しました!
早速聴きましたよ。アラビアンな感じ良いですね。これからいろいろ楽器とかの知識もつけながら楽しみたいと思います。
ありがとうございました!

3 ■そうだったんですか。。

なぜだか実しやかにそういわれてますよね。
私はバタイユは「眼球譚」しか思い浮かびませんでした。読んだのが少女のとき(?)だったので未だにとても印象に残っています。後、ブコウスキーと。。笑。
ここ凄いですよね聴いたことの無い国とかも網羅されてて小躍りしたい気分でしたヾ(@^▽^@)ノ

2 ■>舞莉亜さまへ

コメントありがとうございます。

カレルギーについて私は去年まで全く知りませんでした。
吉永小百合のドラマの頃は日本でも話題になったのでしょうか?カレルギーは来日も結構しているみたいなのですけどね。

香水のミツコについては、確かにその話は聞きますけど、実際はちょっと違うみたいです。直接的には小説の主人公のミツコみたいですよ。
http://www.law.tohoku.ac.jp/~tozawa/RCK%20HP/mitsuko-c2

カルタコムのサイトは凄いですね。
ありがとうございました。
アマゾンはタイトルとかが分かっている時には便利ですけど、それ以外では検索に出てこなかったり逆に余計なものが出てきたり、使いにくいです。
このサイトは素晴らしい!!
アフリカ・オセアニアの音楽とか全く知らないので、これから聞いていきたいです。
音楽だけじゃなく、その地域の伝統の舞踊などもこれから知っていけるといいなぁ、と思うのですけどね。

ありがとうございました!!

1 ■EUの父さんですねっ♪

ドラマ観たと思います。クーデンホーフ・カレルギーさんについてもドキュメンタリーな番組を観たと思います。
青山通りは青山さんのお家が在ったところだったらしいです。後、ゲランの香水「ミツコ」は彼女がモデルと聞いたことが有ります。個人的にはおばさんくさい匂いだと思いますが。。笑。

昨日Reda Darwishと言うタブラ他ドラム奏者のCDを探して居てみつけました。
http://www.culta.com/index.html
アマゾンも最近は豊富ですが・・民族音楽の網羅っぷりが凄いです。個人的にはスゥーヒィーやトルコの弧旋踊・アゼルバイジャンの祭り・モロッコのベルベル等・・欲しいものいっぱいでした(^_^)v試聴も出来ます。

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