新型出生前診断:産科婦人科学会、倫理面で指針作成へ 高精度の診断、安易な実施に歯止め
毎日新聞 2012年09月02日 西部朝刊

 日本産科婦人科学会は1日、妊婦の血液から胎児の染色体異常を高精度で調べる新たな出生前診断について、他の学会と連携し倫理上の対応などを盛り込んだ指針を作成する方針を固めた。安易な実施に歯止めをかけるのが狙いだ。

 新型の出生前診断は従来と異なり、採血だけで、ダウン症や発育不全などで生まれることが多い三つの染色体異常を高精度で判別できるとされるが、安易な中絶が懸念される。また、平原史樹・横浜市立大病院長らが5月に遺伝に詳しい産婦人科医に調査したところ、回答者63人のうち19人が、計36人の妊婦から「出生前診断を受けたが、主治医の説明では理解できない」と意見を求められていた。

 同学会は「現時点では、新型の出生前診断の実施機関はなかった」としながらも、普及すれば、主治医の説明不足と妊婦の理解不足を背景に、混乱が広がりかねないと判断。「採血だけで済むので、産婦人科医以外の医師も検査にかかわる可能性がある」(落合和徳・倫理委員長)として、日本小児科学会など他学会と検討会を設け、指針を作ることにした。指針では、遺伝カウンセリングの整備など実施機関の条件を盛り込むとみられる。

http://mainichi.jp/area/news/20120902ddp041040006000c.html


血液による出生前診断のニュースは私にとっては福音だった。
何故なら私は羊水検査による出生前診断を受けた経験があるからだ。

新宿区内の某大学病院で受けた。

最初の主治医はせっかちな感じの初老の女医だった。
最初から羊水検査は希望していたけれど、私が尋ねるより前に主治医のほうから羊水検査の話を始めた。
「羊水検査による事故は300人に一人だ。でもあなたのように子宮筋腫がある妊婦はリスクが上がる。事故率が1%以上になる。私は過去に二人羊水検査後に流産した事例がある。二人ともあなたと同じような筋腫持ちだった」
「じゃあ検査は受けないほうがいいですかね?」
私が聞くと、女医は
「実際にダウンちゃんが生まれて、育てられませんと言われてもこっちは責任持てないわ」
と暗に検査を勧める様な口ぶりだった。
覚悟を決めて検査の予約を入れた。検査は16週目である。

検査前に主治医への不信感が募り、主治医を代えてもらった。
新しい主治医は中年の男性だった。
「羊水検査は障害者が生まれたら社会的に不経済だとの考えがヨーロッパから来て始まった。羊水検査は子宮に針を刺すという攻撃的な検査だ。事故の確率は300人に一人。筋腫があったら多少事故率が上がるかも知れないけれど、その筋腫の妊婦の事故率の資料は手元にはない」
失礼だとは思いつつ、
「先生の検査で事故があったことはありますか」
と聞いたら、
「一件もない。でもそれは運がいいだけだ」
との答えが返ってきた。

検査が近づくにつれ不安が募ってきた。
もし胎児に異常があったら、胎児は諦めるつもりだった。綺麗ごとは言うまい。

羊水検査で流産したらどうしよう・・・・・、胎児に異常があったらどうしよう・・・・。

まっさきに浮かんだのは噂好きな同僚たちの顔だった。
私の妊娠はすでに職場に知られていた。
「流産」なんて、格好の噂話のターゲットだ。

16週になった。胎動こそ感じられなかったが、おなかは大きくなりつつあったし、おなかを触るとこぶしほどの塊がすでに感じられる。検査の結果は3週間ほどかかる。更に胎児は大きく育つだろう。もう掻爬手術は出来ない。陣痛をつけて産み落とす形で胎児を殺すのだ、殺、殺、殺、殺、殺。

羊水検査。平日の午後だった。一人で病院に行った。平らな診察ベッドに横になる。
おなか全体に赤チンを塗った。エコーのプローブ(探触子)にも。
エコーで胎児の血管を赤と青で映し出し、医者は私の腹部にマジックで印をつける。麻酔の細い注射を一本打った。ついで羊水検査用の針の封を切る。直径1ミリはありそうな太さだ。針と言うよりも針金だ。
医者はプローブを私の腹部に当てる看護師に
「動かさないでよ」
と鋭く命じた。そして勢いをつけて、針をへその左側に突き刺した。
腹部を強く圧迫される感覚。痛みもなく針は子宮に入っていった。医者はエコーの画面を見ながら針を更に奥へと進めていく。私は細く呼吸を続ける。看護師が
「上手ですよ」
と私を励ます。
「羊水が上がってきましたよ。見なさい」
と医者。私は目を細く開けて注射器に満ちていく無色透明な羊水を認め、また目を閉じた。
恐怖のため足が痙攣するように震えてくる。強い生理痛のような痛みの波が下腹部から押し寄せてくる。
痛みの波が到着する前に針は私から離れた。
傷口に絆創膏(普通に売っているOQバンだった)を貼り、再び腹部にプローブを当て、胎児の心音を私に聞かせる。ごめんねと私は胎児に心の中で謝る。
そのまま20分間診察ベッドの上に横になり、化膿止めとおなかの張り止めを保険外で処方された。タクシーで帰った。
もし胎児に異常があったら1週間後に仮結果が届く。

その夜は化膿止めによる湿疹が出たが、それ以外は特に異常がなかった。
2週間後に結果が届いた。陰性だった。

これが羊水検査の実態である。こんな恐ろしい検査なのだ。

しかし血液検査ならばどうだろう。妊婦にも、更にデリケートな胎児にも負担はない。妊娠10週目で検査が出来て、結果は1週間後である。もし堕胎するとしても妊婦に精神的肉体的な負担は少ない。

女は自分の運命を受け入れるしかないのだろうか?
どうして科学の力で自分の未来を決めてはいけないの?

このブログの記載で不愉快な気持ちになる方がいたらごめんなさい。出生前検査を受けようか迷っている方の参考になればと思い、書かせて頂いた。