岩井志麻仔 『ぼっけえ、きょうてえ』
テーマ:ホラー小説
- 岩井 志麻子
- ぼっけえ、きょうてえ
第六回ホラー小説大賞受賞作品。
本の題名になっている「ぼっけえ、きょうてえ」は、岡山地方の方言で、「とても怖い」の意――。
との説明文が添えられている。
表題作の「ぼっけえ、きょうてえ」以下、四つの短編が収められている。
いずれの作品も、物語の時代設定は明治、その舞台は岡山地方である。
そして、典型的な怪談仕立ての作品ばかりで構成されている。
したがって、ホラー小説としての目新しさはない。
しかし、作品は、どれも伝統的な日本特有の湿った土壌からしか、醸成し得ないものばかりだ。
それを効果的に演出するためには、どうしても、現代とは異なる明治という時代設定と、昔からの風習と土着性が色濃く残る地方都市という舞台が必要だったのだろう(まあ、著者が岡山出身というのも大きいとは思うけれど)。
どの作品も、伝統と因習に縛られた人間関係の息苦しさと、狭い村意識から来る、自分たちとは異質なものへの畏怖と侮蔑、そして憎悪の感情が、怪異な事件を生み落とす仕掛けになっている。
そして、死の腐敗臭が漂ってくるような濃密な愛憎劇から引き起こされる怪異話は、派手な演出はないが、頁を繰るにつれ、次第に怖気が這い登ってくる感覚に浸れる。
地方の方言を駆使した文体も、なかなか表現力に富んでいて、美しくて、残酷で、不気味な物語に上手く溶け込んでいる。
個人的には、流行のサイコパスや超常現象をテーマにしたものよりも、土俗的な怪談が好みなので、堪能できました。
切れ味: 可
お勧めの関連書籍
石川 淳
横溝 正史
岩井 志麻子








