黒野 耐 『参謀本部と陸軍大学校』
- 黒野 耐
- 参謀本部と陸軍大学校
会社、労働組合、宗教団体など、ある目的のもとに作られた組織というのは、その成長期には、組織の構成員たちのモチベーションも高く、システムが未整備である分、かえって煩わしい規律や形式的な慣行に縛られずに、物事に対して、臨機応変に対応できることが多い。
しかし、成長期を過ぎて、成熟期、ないしは衰退期に入ると、モチベーションやモラルは低下し、前例主義、複雑な命令系統、陰湿な派閥争いが横行するなどして、組織は動脈硬化に陥る傾向にあるようだ。
そのまま放っておけば、組織自体のご臨終を迎えることも。
つまり、組織も、全ての生物と同じように、誕生し、成長し、やがては死に至るわけであるが、本書では、それを、旧日本軍の参謀本部、ならびに、その養成機関であった陸軍大学校を俎上に載せて、分析を試みている。
著者は云う。
――組織と人材養成の問題は、軍隊だけではなく、一般社会の組織体においても、永遠のテーマであると考えられる。
軍隊と一般社会では、現われる形や事象は異なるが、組織が機能不全に陥り、優れた指導者の養成に失敗する本質的要因は普遍である。
こうした問題認識から、参謀本部を中心とした統帥組織と、その人材を供給してきた陸大の教育問題を中心に、主に陸軍70有余年の歴史をたどることにより、失敗の本質を明らかにするのが、本書の目的である――。
ということで、組織の設立と運営、人材の育成に興味をもたれる方には、必見の力作であります。
切れ味: 良
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