今回は現実での検証依頼です。


「自分は身長185cmで体重が90kgあり、格闘技はやったことありませんが野球をずっとやってました。ボクシングの試合を見ていてフェザー級くらいの王者なら勝てると思うのですがどうです?」


フェザー級と言えば体重で55~57kgくらいでしょうか。依頼者とは30kgほどの差があるわけですね。依頼者は野球をやっていたそうで、体重が90kgあるだけでなく身体能力もそうとうに高いと思います。普通に考えればこれだけの体格差がある相手とケンカをすれば、まず負けることはないでしょう。例えボクシングの経験者といえど、これだけの体格差があれば簡単には勝てません。

しかし、王者クラスとなると話は別です。かじった程度のボクサーであれば体格差で押し切ることはできるでしょうが、相手が王者となると、正面から打ち合ってはくれません。相手との距離をひたすら支配する競技の王者なわけで、格闘技をやったことのない人間が王者に攻撃を当てるのは至難の業です。まず手が届く範囲に入れてくれません。しかも格闘技未経験となると殴られた時の痛みにも慣れていない。僕自身もプロのボクサーとスパーした経験があります。残念ですが、王者クラスのボクサーを同じ人間と思えないような、化物のような強さです。例え体重が30kgも想いとは言え、勝てるとは思えません。


「格闘技で強くなるには、ボディビルやアメフトをやった方が早いときいたことがあります。

  ほんとですか?」


「格闘技」が強くなるためには格闘技をやるのが一番だと思いますが・・・。

多分ですが、一時期テレビで放送されていた格闘技でモンスター路線というのがありました。

それまでは大きくても100kgそこそこの体格のヘビー級選手が戦っていたわけですが、そのモンスター路線というのが放送され始めてから120kgを超える大型選手が出始めました。

最終的には150kgを超える大型の選手が世間を賑わすようになります。

この時活躍していた選手は格闘技の経験などほとんどなかった。その頃格闘技の内容を話し合う掲示板などで実しやかに話されていたのが質問者さんのようなお話です。

確かにアメフトやボディビルをやれば身体能力は高まります。しかし、格闘技が強くなりたいのなら、最初から格闘技をやるのが一番だと思います。補助トレーニングとしてボディビルやアメフトで体の使い方を学ぶのは有効かと思います。


「映画仮面ライダー1号で登場した藤岡氏が太り過ぎ?とても鍛えていると思えないし強そうに見えないのだが・・・不摂生か?」

 

藤岡氏が若い頃と現在で体型が違うのはしかたないと思いますが、それが不摂生のためであると決め付けるのは早いと思います。当ブログにも同じような内容の声が多数よせられています。

格闘技をやっている者とは思えない、腹がタポタポなど。

確かに格闘技をやっている人間の体ではないと思いますよ。だって藤岡氏は格闘技をやっているのではなく俳優ですし、普段たしなんでおられるのも格闘技ではなく武道です。

格闘技と武道では体の鍛え方も違うし、体型も違います。

多分ですが、僕のところにこういう声を届けていただけている方は、ボクシングやキックボクシング、総合格闘技の選手のように割れた腹筋と分厚い胸板を想像しているのではないでしょうか。

確かによく引き締まった鋼の肉体と言えるでしょう。ですが、これは格闘技の体です。

武道と格闘技は違います。僕も空手を始めた頃によく言われました。

格闘技と違って武道は素手で行います。なので素手による打撃に対して強い体を作らねばなりません。素手の攻撃を受けた時にはムキムキの割れた腹筋ではなく、少しボチャっとした体型の方が強いのだそうです。もちろん脂肪の下には筋肉があるわけです。

こればっかりは知らないとどうしようもないでしょう。

僕も空手の師匠に教えてもらうまで知りませんでしたから。

ただ不思議なのは藤岡氏を見て強そうだと思えませんでしたか?途中、上腕がむき出しになるシーンがありましたが70歳とは思えない肉体で、僕は逆にビビリました。


「仮面ライダー1号の藤岡氏のアクションが凄かったと書いていますが、そんなに凄かった?」


凄かったです。パンチはまっすぐに突き出す正拳でしたし、小手投げや小手返しを使う時の体の使い方が。さきほども書きましたが70歳の人間の動きじゃないと思いましたね。

共演していたゴーストのタケルがアクロバティックな動きのアクションシーンを披露していたので地味に見えたかもしれませんが、相手のパンチをつかんで外側に捻りつつ体重移動で投げ飛ばすという基本敵な投げ技ですが、見ていて「上手だな~」と思いました。


「よく仮面ライダーの戦闘技術の解説で「前後の出入り」とか「側面を取る」とか書かれていますが、これはどう強さにつながるのですか?」


格闘において重要な項目の一つに、相手と自分の距離というものがあります。相手からは手が届かず、自分の手は届く。理想的なことですよね。このような間合いをキープするためには、足の使い方が重要になってきます。

前後の出入りというのは言葉通りの動きで、自分が最初に立っている位置から一歩前に出たり、後ろに下がったりすることです。この動きによって自分の攻撃が当たる位置まで移動してパンチ等を打ち込み、相手が反撃してきたら一歩下がって攻撃が届かない場所に移動する。

これが「前後の出入り」です。

そしてこれをさらに改良したのが「側面への移動」です。これも言葉通りの動きですが、少し複雑です。

具体的にいいますと、相手のパンチ等が迫ってきたら、そのパンチの外側に体ごと移動する。

こうすることで、パンチを回避するとともに、相手が攻撃しづらい位置に移動できるわけです。

しかも、この場所は自分にとっては攻撃しやすい場所でもあります。

まさに理想的なポジション。ですが、この場所を取るのは簡単ではありません。

相手の側面に移動するということは、一歩でそこまで移動しなければいけません。素早く、大きな距離を移動しなければいけないため体力も消耗します。相手の動きがしっかり見えていないとできないため、技術も要求されます。その代わり効果は絶大。

これが「前後の出入り」と「側面を取る」という動きの内容です。


「よく戦闘技術の解説にありますが、押し込まれるのと、押し切られるのはどう違うのですか?」


押し込まれるというのは組み合った状態等でパワーのある方が相手をグイグイと下がらせることです。組み合っている時だけではなく、パンチやキックをガードの上からでも叩きつけ続けて下がらせるのも押し込まれるという状況です。


押し切られるというのは、上記の状況でそのまま倒されてしまうことです。

ガードしているにも関わらず相手のパワーが強すぎて徐々に攻撃がはいってしまい、最終的にはダウンさせられる。こういうのを押し切られると言っています。


「管理人さんはパンチやキックよりも組み技や投げ技のポイントが高いように感じますが、なぜ?」


パンチやキックも高度な技術が要求されるのですが、組合いや投げ技を重視するのは理由があります。

皆さんはケンカをしたことがありますでしょうか?漫画やドラマなどと違ってケンカになると相手との掴み合いをすることが多いです。近寄ってつかまえて殴りつける。もしくは近距離で殴り合っていても、防御のために高くあげた腕などが自然と相手を捕まえてしまいます。僕が特殊な経験をしただけかもしれませんが、つかみ合うことはひじょうに多い。この時重要になるのが組み合いのボディワークです。

相手のバランスを崩して転ばせたり、頭を下げさせると、相手はパンチが出せなくなります。よっぽど特殊な訓練をしていないかぎり、この状況を覆すのは難しい。なので、至近距離で組み合っている時のボディワークの技術は高く評価しています。

同じく投げ技も決まれば相手を反撃不能にできますし、投げられまいと踏ん張ったり、投げられて起き上がったりするのは体力をごっそり削られます。なので組み合ったり投げたりする技術というのが高いと技術力を高く評価しています。ただ、打撃の技術力を軽視しているわけではありません。


「昭和と平成ライダーの打撃の技術が違うとよく書いてますが、どう違う?」


一番特徴的なのは「連撃」ですね。数発の打撃を一瞬で打ち込む技術です。ストロンガーやスーパー1がよく使います。連打と連撃は言葉がよく似ているので間違われることがありますが違います。

平成は連打をよく使います。一発一発を連続して数発打ち込みます。パン!パン!パン!パン!というように一発一発を連続して打ち込みます。

対する連撃というのは両手を使って瞬時に連続して打ち込むので、パパパパン!という感じ。

平成では連撃を使いこなすキャラが極めて稀ですが、昭和ではよく見かけます。



以上格闘技のあれこれでした。