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DANIELLE DAX
Pop-Eyes (1983)

 アルバムタイトルにもあるように、この作品はひとつの「ポップ」を標榜しているには違いないのだが、我々の思う「ポップ」が、軽かったり、明るかったり、ひょっとすると都会的だったりするのとは裏腹な、なんとなく不安を感じさせる、やるかたないジャケットデザインに象徴された本作には、我々の思う「ポップ」をとことん裏切る危険性が含まれている。敏感な人間は、そういった事情をジャケットを見ただけで感じ取ることができるので、本作に手を伸ばすことはまず無いのであるが、そうでない人間は、興味本位で本作を手に取り、沈黙を保ったまま本作を聴き進め、我々の思う「ポップ」がいかに空虚なものかということを本作をもって知り、ついには「ポップ」を見失うのである。

 少々混乱気味ではあるけれど、とはいえこれも「ポップ」だと言うこともできるだろう。我々は「ポップ」について、偏にその楽しさのみを享受しようとするきらいがあるけれど、それは一方的に有無を言わせないその強制力に、我々が無意識のうちに屈しているということであり、詰まるところ、軽い、明るい、都会的といった装飾を、ひとつの表現につきまとわせる技術こそが「ポップ」ということなのだろう、そういった目線を逆手に取った逆説的な「ポップ」に満ちているのが本作の肝だと思う。「ポップ」という言葉の持つ、一般に真理と思われている事柄について、表面的には背いているようでいながら、その中に一種の正しさを見出そうとする姿勢に、創造的に「ポップ」を捉え直そうとする、批評精神の表れを感じ取ることも可能だろう。

 印象的なこのジャケットも、ここで鳴らされる楽器やおもちゃ類もすべて、ダニエル・ダックスというひとりの女性によって作られている。極めてプライベートに近いかたちで作られている故、彼女の直感や欲望がそのまま音に反映されているようであり、何か、事の起こりを思わせる、超自然的な作用に彩られた無垢な傑作。個人的にも思い入れの深い作品であり、入手当初はただただ不気味だったこのジャケットも、今となっては可愛気すら感じられるようになった。




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